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役員は雇用保険に入れるか — 適用除外の列挙に役員は無い。兼務役員雇用実態証明書と、労災保険の特別加入

法人の取締役は、原則として雇用保険の被保険者になりません。例外は、次の2つに当たる兼務役員です。

代表取締役は被保険者になりません。兼務役員は兼務役員雇用実態証明書を提出し、保険料と給付は役員報酬を除いた賃金で計算します。

労災保険も、役員は原則として対象外です。入るには中小事業主等の特別加入を使います。

結論 — 役員の労働保険には入口が3つある

「役員は労働保険に入れない」と一括りにされがちですが、雇用保険と労災保険は根拠条文がまったく別で、入り方も別です。先に全体を表にします。

区分原則入る方法根拠
雇用保険(役員のみ) 被保険者にならない 方法なし 雇用保険法4条1項(「雇用される労働者」に当たらない)
雇用保険(兼務役員) 労働者的性格が強く雇用関係があると認められる場合に限り被保険者(代表取締役は除く) 資格取得届等+兼務役員雇用実態証明書+雇用の実態を確認できる書類 雇用保険法4条1項/厚生労働省(ハローワーク)の取扱い
労災保険 対象外 中小事業主等の特別加入(規模要件+事務組合への委託) 労働基準法9条/労災保険法33条1号・2号、34条

健康保険と厚生年金保険は、これらとまた別です。役員も法人に常態的に使用され、労務の対償として報酬を受ける場合は原則として被保険者になります。健康保険法3条1項・厚生年金保険法9条が「使用される者」と定めており、雇用契約を要件にしていないためです。「社会保険」とひとまとめにすると、役員の扱いは正反対のものが混ざります。この2つは本記事では扱いません。

兼務役員が被保険者になる条件 — 従業員の身分・労働者的性格・雇用関係。代表取締役は対象外

厚生労働省(ハローワーク)の案内は、兼務役員の扱いを次のように書いています。

法人の取締役・監査役・理事等は、原則として雇用保険被保険者となりません。ただし、取締役・監査役・理事等であっても、同時に部長・支店長等の従業員としての身分を有している場合に、その者の就業実態・就業規則の適用状況等から総合的に判断して、労働者的性格が強く雇用関係があると認められる場合に限り、被保険者となることがあります。
〔編注: 業務取扱要領は、代表取締役は被保険者とならないとし、監査役は名目的に就任しているに過ぎず常態的に従業員として明確な雇用関係があると認められる場合に限り例外としています。〕

要点は次の3つです。

判断が総合的であるため、どこを見られるのかは様式そのものから読み取るのが確実です。実際の兼務役員雇用実態証明書が最初に聞くのは、次の2つです。

様式の欄選択肢意味
代表権有 ・ 無代表取締役は「有」。代表取締役は被保険者とならない(業務取扱要領)
業務執行権有 ・ 無業務を執行する権限を持つかどうか。定款で確認される

宮城労働局の必要書類一覧は、定款を提出させる目的を「代表権・業務執行権の有無等の確認」と明記しています。定款に記載が無ければ、定款に加えて申立書を作成することになります。つまり、この2つが判定の起点です。

監査役は、そもそも使用人を兼ねられない

ハローワークの案内は「取締役・監査役・理事等」と監査役も並べていますが、会社法335条2項は「監査役は、株式会社若しくはその子会社の取締役若しくは支配人その他の使用人又は当該子会社の会計参与若しくは執行役を兼ねることができない」と定めています。監査役については、部長等を兼ねるという前提自体が会社法上とれません。

兼務役員雇用実態証明書は何を聞いているか

様式は1枚ですが、聞いている項目は役員(委任)関係と従業員(雇用)関係を左右に並べて対比させる作りになっています。経理担当者にとって重要なのは、そこに決算での計上区分まで含まれていることです。

区分様式が聞いていること
就業規則適用状況(1.全部適用/2.適用無し/3.一部適用=適用除外条項を記載)
出勤義務常勤/非常勤(出勤指定日)、出勤日の勤務拘束時間、所定労働時間(週)
服務態様代表権の有無、業務執行権の有無、役員名称/前職名称・現職名称、就任年月日/雇用年月日
担当業務役員としての担当業務内容(具体的に)/従業員としての労務内容(具体的に)と指揮命令権者
給与等役員報酬(月額・年俸)と従業員賃金(月額・年俸)を別々の欄に記入。役員報酬以外の報酬の有無、上記以外の賃金(賞与等)の有無
決算決算の際、役員報酬として計上する/しない。決算の際、賃金・給料として計上する/しない
その他加入済みの社会保険(労災保険・健康保険・厚生年金保険・その他)、諸帳簿等への登録整備状況(労働者名簿・賃金台帳・出勤簿・雇用契約書)
経理処理そのものが判定資料になる

様式は「決算の際、役員報酬として計上するか」「決算の際、賃金・給料として計上するか」をそれぞれ別に聞いています。宮城労働局の書類一覧には、役員報酬額等が確認できない場合の提出書類として総勘定元帳(役員報酬額および従業員賃金額が記載された部分)まで挙がっています。

役員報酬と従業員賃金を1本で計上していても、名称だけで従業員賃金が無くなるわけではありません。労働の対償に当たるかを実態で判断し、内訳を確認できる記録が必要です(雇用保険法4条4項)。兼務役員として届け出るなら、勘定科目の段階で役員報酬と給料手当を分けておくのが自然な形です。

提出時に併せて求められる確認資料は、東京・飯田橋の案内では次のとおりです。いずれもコピーで、賃金台帳と出勤簿は就任前後おおむね2か月分(前1か月・後1か月)とされています。

添付を省略できる場合が2つあります。法人ベース・レジストリで登記情報を確認できる場合は、登記簿謄本を省略できます。社会保険労務士の審査事項の付記がある届出は、公共職業安定所長が精査を要すると判断した場合を除き、確認書類の添付を省略できます。

提出のタイミングは2通りあります。新たに雇い入れた人が最初から兼務役員である場合は、資格取得のときに雇用保険被保険者資格取得届と併せて提出します。すでに被保険者である従業員が取締役等に就任した場合は、就任後すみやかに提出します。

「就任してから提出まで」を放置しない

宮城労働局の一覧は、遡って資格取得も同時に処理する場合には加入時からのすべての期間の賃金台帳・出勤簿が必要になり、6か月以上さかのぼる場合には、さらに「遅延理由書」が要るとしています。遡って資格取得まで処理することになると、集める書類が増えます。

業務取扱要領では、遅延理由書は原則として6か月以上の遡及確認手続きで提出させます。確認日の2年前の日より前を取得日とする場合は別の取扱いです。

対象外の役員に就任した場合の資格喪失日

雇用保険の被保険者が、被保険者として扱われない取締役等に就任した場合、資格喪失日は就任した日です。

兼務役員として引き続き被保険者となる場合は、この資格喪失の扱いとは別です。

保険料も給付も「役員報酬を除いた賃金」で計算する

兼務役員が被保険者になったとき、給与計算でいちばん間違えやすいのがここです。北海道労働局は次のように案内しています。

雇用保険料の算定や失業給付の算定の基礎となる賃金には、取締役等としての地位に基づいて受ける「役員報酬」分は含まれません。

雇用保険法4条4項は「賃金」を「賃金、給料、手当、賞与その他名称のいかんを問わず、労働の対償として事業主が労働者に支払うもの」と定義しています。役員報酬は委任の対価であって労働の対償ではないため、この賃金に入りません。

具体例を置きます。取締役営業部長として、役員報酬40万円と従業員としての賃金30万円、合計70万円を毎月受け取っている人のケースです。

項目金額雇用保険の賃金に含めるか
役員報酬(取締役としての地位に基づくもの)400,000円含めない
従業員賃金(営業部長としての労働の対償)300,000円含める
合計支給額700,000円—
雇用保険料の算定基礎300,000円—

合計の70万円に料率を掛けると、保険料を2倍以上多く徴収してしまいます。料率そのものは雇用保険料率の記事を参照してください。

合計70万円を払っていても、雇用保険が見るのは30万円だけ 毎月の支給額 役員報酬 400,000円(委任の対価) 従業員賃金 300,000円 雇用保険の賃金 300,000円 だけ ← 労働の対償ではないので入らない(4条4項) 合計70万円で計算すると、保険料も失業給付の基礎も2倍以上ずれる 同じ切り分けが、離職票に書く賃金額にもそのまま効く
兼務役員の雇用保険は、役員報酬を除いた従業員賃金だけを基礎にする。保険料の徴収と給付の算定の両方に同じ切り分けが効く。

現物給与・実費弁償などの扱い

上の金額例は、毎月の金銭支給だけの場合です。金銭以外の支給などは、次のように扱います。

実費弁償・恩恵的支給の判断と現物給与の範囲・評価は、厚生労働省の業務取扱要領50402〜50404を確認してください。基本手当の賃金日額の算定には、別途、臨時の賃金や3か月を超える期間ごとの賃金などの区分があります(同50451〜50454)。

役員の地位が残っていると失業給付は出ない

北海道労働局の案内は、もう一つ重要な点を挙げています。

「被保険者となる取締役等」が離職した際に、引き続き、取締役等の地位を有している場合には、失業給付は受けられません。

これは条文の定義とも整合します。雇用保険法4条3項は「失業」を「被保険者が離職し、労働の意思及び能力を有するにもかかわらず、職業に就くことができない状態」と定義し、同条2項は「離職」を「事業主との雇用関係が終了すること」としています。

兼務役員の場合、従業員としての雇用関係が終了しても、取締役としての委任関係は残ります。部長職を解いて従業員としての地位がなくなり、取締役等の地位だけが残るという形をとると、雇用保険の被保険者ではなくなる一方で、失業給付の対象にもなりません。

退任の順序と時期が結果を分ける

「役員報酬を下げて実質的に引退したから失業給付を」という相談は実務でよくありますが、判断されるのは報酬額ではなく取締役等の地位を有しているかどうかです。地位が残っている限り、金額をいくら下げても結論は変わりません。

個別の事案でどう扱われるかは、就任・退任の登記や議事録といった事実関係によって変わります。実際の手続は管轄のハローワークにご確認ください。

役員が外れる理由は「適用除外」ではない

雇用保険法4条1項は、被保険者を次のように定義しています。

この法律において「被保険者」とは、適用事業に雇用される労働者であつて、第六条各号に掲げる者以外のものをいう。

構造は2段になっています。まず「適用事業に雇用される労働者」であること、そのうえで6条各号に当たらないこと。役員としての地位だけの人は前段で落ちます。役員としての地位だけの人と会社の関係は原則として委任であって雇用ではないため、6条を見るまでもなく入口に入りません。例外は兼務役員が被保険者になる条件の章のとおりです。

実際に6条を読むと、そのことがはっきりします。6条の6つの号は、所定労働時間・雇用見込み期間・季節的雇用・学生・漁船の船員・公務員等に関するもので、役員・取締役・監査役という語はどの号にもありません。6条の適用除外にも、日雇・マルチジョブホルダーや一定の学生などの例外があります。各号の対象の範囲と例外は、厚生労働省の業務取扱要領と雇用保険の加入条件の記事で確かめてください。

「役員は適用除外」と説明されることがあるが、条文にその号は無い

役員としての地位だけの人が被保険者にならないのは4条1項の「雇用される労働者」に入らないからであって、6条で除外されているからではありません。

言葉の綾ではなく、兼務役員が被保険者になりうるかどうかの結論が変わります。4条1項の入口の話なので、従業員としての身分を併せ持ち労働者的性格が強く雇用関係があると認められる場合に限り、その部分について入りうるのです。これが兼務役員で、代表取締役は対象外です。

雇用保険法4条1項は2段構え。役員のみの地位は原則「1段目」で落ちる 1段目(4条1項 前段) 適用事業に雇用される労働者か 2段目(6条各号) 適用除外の6つに当たらないか 役員のみ(委任)=原則ここで落ちる 時間・期間・季節・学生・漁船船員・公務員等(例外あり) 6条の6つの号に「役員」という語は1つも無い =役員が外れるのは「除外」ではなく「入口に入っていない」 だから、兼務役員は条件付きで入りうる 取締役 + 部長・支店長等の従業員としての身分 = 兼務役員 → 労働者的性格が強く雇用関係があると認められる場合に限り被保険者 代表取締役は対象外
雇用保険法4条1項・6条の構造。役員としての地位だけの人は2段目(適用除外)ではなく1段目(入口)で原則として外れる。兼務役員は労働者的性格が強く雇用関係があると認められる場合に限り入りうる(代表取締役は対象外)。

事業主と同居する親族の扱い

個人事業の事業主と同居する親族は、原則として雇用保険に加入できません。実質的に代表者の個人事業と同様と認められる法人も同じ扱いです。ただし、厚生労働省のQ&Aが挙げる次の3つの条件を全て満たす場合は加入できます。

すべての法人で、代表者と同居する親族がこの原則により対象外になるわけではありません。

労災保険 — 入口は労働基準法9条

労災保険は雇用保険とは別の入口を持っています。労働基準法9条の定義がそれです。

この法律で「労働者」とは、職業の種類を問わず、事業又は事務所(以下「事業」という。)に使用される者で、賃金を支払われる者をいう。

役員はこの「使用される者」に当たらないため、労災保険の対象になりません。業務中にけがをしても、労災保険の保険給付は原則として受けられません。

ここで注意したいのが、兼務役員は雇用保険と労災保険で結論が変わらないという点です。従業員としての労働者性が認められる部分については、労災保険もその労働者としての立場で適用されます。実際、兼務役員雇用実態証明書の「加入済みの社会保険」欄には労災保険が選択肢として並んでいます。

問題になるのは、従業員としての身分を持たない役員——代表取締役や、業務執行権を持つ専任の取締役です。この人たちが労災保険に入るための制度が、次の特別加入です。

中小事業主等の特別加入 — 規模と事務組合の2つが要る

労働者を使用する事業であることが前提です。継続雇用でなくても年間100日以上の労働者使用が必要で、労働者を使用しない一人会社の代表者等はこの第一種特別加入の対象外です。そのうえで次の2つの要件があります。どちらも満たさないと加入できません。

要件中身根拠
① 規模 常時300人以下の労働者を使用する事業主。ただし金融業・保険業・不動産業・小売業を主たる事業とする事業主は50人以下、卸売業・サービス業を主たる事業とする事業主は100人以下 労災保険法施行規則46条の16
② 事務組合 労働保険事務組合に労働保険事務の処理を委託していること 労災保険法33条1号(条文の要件そのもの)
事務組合への委託は「あったほうがよい」ではなく、条文上の要件

33条1号は「労働保険事務組合に……労働保険事務の処理を委託するものである者」と書いています。委託していない事業主は、そもそも1号の者に当たりません。申請書にも「労働保険事務組合に、労働保険事務の処理を委託した日」を書く欄があり、その事項については労働保険事務組合の証明を受けなければならないとされています(労災保険法施行規則46条の19第1項4号・2項)。

根拠の条文も見ておきます。労災保険法33条は、特別加入できる者を7つの号に分けて並べています。役員に関係するのは1号と2号です。

一 厚生労働省令で定める数以下の労働者を使用する事業(厚生労働省令で定める事業を除く。第七号において「特定事業」という。)の事業主で徴収法第三十三条第三項の労働保険事務組合(以下「労働保険事務組合」という。)に同条第一項の労働保険事務の処理を委託するものである者(事業主が法人その他の団体であるときは、代表者)
二 前号の事業主が行う事業に従事する者

法人の場合、1号が代表者、2号がそれ以外の役員という切り分けになります。なお33条の柱書は「第二号、第四号及び第五号に掲げる者にあつては、労働者である者を除く」としています。兼務役員のように労働者としての立場を持つ人は、通常の労災保険で保護されているため2号からは外れる、という整理です。

手続は、申請書を所轄労働基準監督署長を経由して所轄都道府県労働局長に提出して行い、政府の承認を受けます(34条1項、施行規則46条の19第1項)。承認・不承認いずれの場合も、都道府県労働局長から文書で通知されます(同条5項)。

業務に従事する対象役員は原則として包括加入

34条1項は「同号及び同条第二号に掲げる者を包括して……保険給付を受けることができる者とすることにつき申請をし」と書いています。業務に従事する対象者は原則として全員を包括して加入します。ただし病気療養・高齢等で実際に業務に従事していない人は、理由書を添えて包括加入の対象から除外できます。

承認されると、33条1号・2号に掲げる者は「当該事業に使用される労働者とみなす」ことになります(34条1項1号)。労働者ではないけれども、保険給付の場面では労働者として扱う、という擬制です。

給付基礎日額は16段階から選ぶ(実際の報酬ではない)

通常の労災保険では、給付の基礎になる額は実際に支払われた賃金から計算します。特別加入者は労働者ではないので賃金がありません。そこで34条1項3号は、給付基礎日額を「当該事業に使用される労働者の賃金の額その他の事情を考慮して厚生労働大臣が定める額」としています。

その額を具体的に決めているのが労災保険法施行規則46条の20第1項です。16段階の中から選びます。

給付基礎日額として選べる額(労災保険法施行規則46条の20第1項)
3,500円4,000円5,000円6,000円7,000円8,000円9,000円10,000円
12,000円14,000円16,000円18,000円20,000円22,000円24,000円25,000円

この日額は保険料と給付の両方に効きます。休業補償給付を例にとると、労災保険法14条1項は「賃金を受けない日の第四日目から支給するものとし、その額は、一日につき給付基礎日額の百分の六十に相当する額とする」と定めています。

選んだ給付基礎日額休業補償給付(1日あたり)30日休業した場合(4日目から27日分)
3,500円(最低)2,100円56,700円
10,000円6,000円162,000円
25,000円(最高)15,000円405,000円

上表は労災保険法14条1項の本文(給付基礎日額の100分の60)だけで計算した目安です。休業特別支給金など特別支給金の制度は本記事の確認範囲外です。また待期期間の3日間は支給対象外として計算しています。

保険料を滞納している期間の事故は、給付されないことがある

34条1項4号は、事故が第一種特別加入保険料が滞納されている期間中に生じたものであるときは、政府は保険給付の全部又は一部を行わないことができるとしています。さらに同号は、業務災害の原因である事故が事業主の故意又は重大な過失によって生じたものであるときも同様だとしています。

特別加入は「入っておけば安心」で終わる制度ではなく、保険料の納付状況と災害の原因の両方が給付の可否に関わります。

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間違えやすい点

よくある理解実際
役員は雇用保険法6条で適用除外されている 6条に役員の号は無い。役員としての地位だけの人が外れるのは4条1項の「雇用される労働者」に当たらないため
兼務役員の雇用保険料は支給総額に料率を掛ける 役員報酬分は賃金に含まれない。従業員賃金だけが算定基礎
役員報酬を下げれば失業給付を受けられる 判断されるのは金額ではなく取締役等の地位を有しているか
社長も労災保険に特別加入すれば単独で入れる 34条1項は33条1号・2号の者を包括して申請すると定めている
特別加入の要件は会社の規模だけ 労働保険事務組合への委託が条文上の要件(33条1号)。委託の日は事務組合の証明が要る
特別加入の給付は実際の役員報酬をもとに計算される 3,500円〜25,000円の16段階から選んだ給付基礎日額で計算する
監査役でも兼務役員として届け出られる 会社法335条2項が監査役と使用人の兼任を禁じている(名目的な就任で常態的に明確な雇用関係がある場合は例外=業務取扱要領)

よくある質問

代表取締役は雇用保険に入れますか?

一般に入れません。厚生労働省の業務取扱要領は、代表取締役は被保険者とならないと明記しています。ハローワークの案内が例外とするのは、部長・支店長等の従業員としての身分を併せ持ち、労働者的性格が強く雇用関係があると認められる取締役等です。代表取締役はこの例外にも当たりません。

役員は雇用保険法6条の適用除外に書かれていますか?

書かれていません。6条の6つの号は、所定労働時間・雇用見込み期間・季節的雇用・学生・漁船の船員・公務員等に関するもので、どの号にも役員という語はありません。役員としての地位だけの人が被保険者にならないのは、4条1項が被保険者を「適用事業に雇用される労働者」に限っているためです。

従業員が取締役に就任しました。何をすればよいですか?

兼務役員として被保険者を続ける場合は、取締役等に就任後すみやかに兼務役員雇用実態証明書を提出することとされています。東京・飯田橋の案内は、あわせて適用事業所台帳、資格取得等確認通知書(事業主通知用)、資格喪失届(様式第4号)を挙げています。登記簿謄本・定款・賃金台帳などの確認資料の一覧と、添付を省略できる場合は、本文の「兼務役員雇用実態証明書は何を聞いているか」をご確認ください。

兼務役員の雇用保険料は、役員報酬を含めた総額で計算しますか?

含めません。北海道労働局は、雇用保険料の算定や失業給付の算定の基礎となる賃金に、取締役等としての地位に基づいて受ける役員報酬分は含まれないとしています。役員報酬40万円と従業員賃金30万円を毎月金銭で支給しているなら、算定基礎は30万円です。現物給与や実費弁償の扱いは、本文の「現物給与・実費弁償などの扱い」をご確認ください。

兼務役員を辞めたら失業給付を受けられますか?

取締役等の地位が残っているかどうかで変わります。北海道労働局は、被保険者となる取締役等が離職した際に、引き続き取締役等の地位を有している場合には失業給付は受けられないとしています。雇用保険法4条2項が、離職を「事業主との雇用関係が終了すること」と定義しているためです。個別の判断は管轄のハローワークにご確認ください。

労災保険の特別加入は、労働保険事務組合に委託しないとできませんか?

中小事業主等の特別加入についてはそのとおりです。労災保険法33条1号が「労働保険事務組合に……労働保険事務の処理を委託するものである者」と、委託していることを要件の一部として書いています。申請書には労働保険事務組合に労働保険事務の処理を委託した日を記載し、その事項について事務組合の証明を受けなければならないとされています(同法施行規則46条の19第1項4号・第2項)。

特別加入できる会社の規模はどれくらいですか?

業種によって3段階に分かれます。常時300人以下の労働者を使用する事業主が対象です。ただし、金融業・保険業・不動産業・小売業を主たる事業とする事業主は50人以下です。卸売業・サービス業を主たる事業とする事業主は100人以下です。根拠は労災保険法施行規則46条の16です。

特別加入の給付基礎日額はどうやって決まりますか?

実際の役員報酬額から自動的に決まるものではありません。厚生労働大臣が定める16段階の額から選びます。労災保険法34条1項3号と同法施行規則46条の20第1項が根拠です。16段階の額は本文の表をご覧ください。

次に読む

出典

e-Gov法令検索で雇用保険法・労働者災害補償保険法・同施行規則・労働基準法・会社法の条文を条単位で確認し、あわせて厚生労働省(都道府県労働局・ハローワーク)の案内と様式を確認して作成。

本記事の確認範囲は、雇用保険法上の被保険者資格と、労災保険法上の中小事業主等の特別加入(33条1号・2号)です。健康保険法・厚生年金保険法上の役員の取扱い、一人親方等の特別加入(33条3号〜5号)の詳細、特別加入保険料率、および兼務役員に該当するかどうかを争った裁判例・裁決例は確認していません。休業補償給付と休業特別支給金の内容(60%と20%の根拠の違い、待期期間3日の扱い、給付基礎日額の出し方)は労災の休業補償の記事で別に扱っています。

この記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の事案に対する助言ではありません。兼務役員として被保険者になれるかどうか、特別加入の対象になるかどうかは、就業の実態や登記の内容といった個別の事情によって結論が変わります。実際の手続については管轄のハローワーク・労働基準監督署・都道府県労働局へ、労働保険事務組合への委託については所在地の労働保険事務組合へご確認ください。

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