税金・経理・補助金ツールズ

役員は雇用保険に入れるか — 適用除外の列挙に役員は無い。兼務役員雇用実態証明書と、労災保険の特別加入

結論から言うと、法人の取締役は、原則として雇用保険の被保険者になりません。ハローワークの案内も「法人の取締役・監査役・理事等は、原則として雇用保険被保険者となりません」と明記しています。

ただし、その理由をたどると意外なことが分かります。雇用保険法6条の「適用除外」には、役員が1つも書かれていません。6条が並べているのは、週20時間未満の人・31日以上の雇用見込みがない人・季節的雇用の人・学生・漁船に乗り組む船員・公務員に準ずる人の6つだけです。役員が外れるのは、除外されているからではなく、4条1項の入口(「適用事業に雇用される労働者」)にそもそも入っていないからです。役員と会社の関係は雇用ではなく委任だからです。この違いは、次の一点で実務に効きます——入口の話なので、雇用の実態があれば入れるのです。

そこで登場するのが兼務役員雇用実態証明書です。取締役でありながら部長や支店長としての身分を併せ持つ人は、就業実態から総合的に判断して被保険者になれます。一方、労災保険は別の入口で、こちらは労働基準法9条の「労働者」に当たらないため原則として対象外となり、入るには中小事業主等の特別加入という制度を使います。この記事では、雇用保険と労災保険それぞれについて、条文と実際の帳票の両面から整理します。

結論 — 役員の労働保険には入口が3つある

「役員は労働保険に入れない」と一括りにされがちですが、雇用保険と労災保険は根拠条文がまったく別で、入り方も別です。先に全体を表にします。

区分原則入る方法根拠
雇用保険(役員のみ) 被保険者にならない 方法なし 雇用保険法4条1項(「雇用される労働者」に当たらない)
雇用保険(兼務役員) 従業員分について被保険者になりうる 資格取得届+兼務役員雇用実態証明書 雇用保険法4条1項/厚生労働省(ハローワーク)の取扱い
労災保険 対象外 中小事業主等の特別加入(規模要件+事務組合への委託) 労働基準法9条/労災保険法33条1号・2号、34条

健康保険と厚生年金保険はこれらとまた別で、役員も被保険者になります(本記事では扱いません。健康保険法3条1項・厚生年金保険法9条が「使用される者」と定めており、雇用契約を要件にしていないためです)。「社会保険」とひとまとめにすると、役員の扱いは正反対のものが混ざります。

役員が外れる理由は「適用除外」ではない

雇用保険法4条1項は、被保険者を次のように定義しています。

この法律において「被保険者」とは、適用事業に雇用される労働者であつて、第六条各号に掲げる者以外のものをいう。

構造は2段になっています。まず「適用事業に雇用される労働者」であること、そのうえで6条各号に当たらないこと。役員は前段で落ちます。会社と役員の関係は委任であって雇用ではないため、6条を見るまでもなく入口に入りません。

実際に6条を読むと、そのことがはっきりします。適用除外として並んでいるのは次の6つだけです。

適用除外となる者
1号一週間の所定労働時間が二十時間未満である者(高年齢被保険者となる申出をした者・日雇労働被保険者に該当することとなる者を除く)
2号同一の事業主の適用事業に継続して三十一日以上雇用されることが見込まれない者(前二月の各月において十八日以上雇用された者等を除く)
3号季節的に雇用される者であつて、38条1項各号のいずれかに該当するもの
4号学校教育法1条・124条・134条1項の学校の学生又は生徒であつて、前三号に掲げる者に準ずるものとして厚生労働省令で定める者
5号船員であつて、漁船(政令で定めるものに限る)に乗り組むため雇用される者(一年を通じて船員として適用事業に雇用される場合を除く)
6号国・都道府県・市町村その他これらに準ずるものの事業に雇用される者のうち、離職した場合の諸給与の内容が求職者給付及び就職促進給付の内容を超えると認められる者で厚生労働省令で定めるもの
「役員は適用除外」と説明されることがあるが、条文にその号は無い

6条の6つの号を最後まで読んでも、役員・取締役・監査役という語は出てきません。役員が被保険者にならないのは4条1項の「雇用される労働者」に入らないからであって、6条で除外されているからではありません。

言葉の綾ではなく、結論が変わります。6条の除外なら、除外された人は何をしても入れません。4条1項の入口の話なら、雇用の実態があればその部分について入れる——これが次の章の兼務役員です。

雇用保険法4条1項は2段構え。役員は「1段目」で落ちている 1段目(4条1項 前段) 適用事業に雇用される労働者か 2段目(6条各号) 適用除外の6つに当たらないか 役員(委任)=ここで落ちる 20時間未満・31日未満・季節・学生・船員・公務員相当 6条の6つの号に「役員」という語は1つも無い =役員が外れるのは「除外」ではなく「入口に入っていない」 だから、雇用の実態があれば入れる 取締役 + 部長・支店長等の従業員としての身分 = 兼務役員 → 就業実態・就業規則の適用状況等から総合的に判断して被保険者になりうる
雇用保険法4条1項・6条の構造。役員は2段目(適用除外)ではなく1段目(入口)で外れているため、雇用の実態があれば兼務役員として入りうる。

兼務役員なら被保険者になれる — 見るのは代表権と業務執行権

厚生労働省(ハローワーク)の案内は、兼務役員の扱いを次のように書いています。

法人の取締役・監査役・理事等は、原則として雇用保険被保険者となりません。ただし、取締役・監査役・理事等であっても、同時に部長・支店長等の従業員としての身分を有している場合に、その者の就業実態・就業規則の適用状況等から総合的に判断して、労働者的性格が強く雇用関係があると認められる場合に限り、被保険者となることがあります。

「労働者的性格が強く雇用関係があると認められる場合に限り」という条件付きです。判断が総合的であるため、どこを見られるのかは様式そのものから読み取るのが確実です。実際の兼務役員雇用実態証明書が最初に聞くのは、次の2つです。

様式の欄選択肢意味
代表権有 ・ 無代表取締役は「有」。会社を代表する立場は労働者的性格と両立しにくい
業務執行権有 ・ 無業務を執行する権限を持つかどうか。定款で確認される

宮城労働局の必要書類一覧は、定款を提出させる目的を「代表権・業務執行権の有無等の確認」と明記しています。定款に記載が無ければ、定款に加えて申立書を作成することになります。つまり、この2つが判定の起点です。

監査役は、そもそも使用人を兼ねられない

ハローワークの案内は「取締役・監査役・理事等」と監査役も並べていますが、会社法335条2項は「監査役は、株式会社若しくはその子会社の取締役若しくは支配人その他の使用人又は当該子会社の会計参与若しくは執行役を兼ねることができない」と定めています。監査役については、部長等を兼ねるという前提自体が会社法上とれません。

兼務役員雇用実態証明書は何を聞いているか

様式は1枚ですが、聞いている項目は役員(委任)関係と従業員(雇用)関係を左右に並べて対比させる作りになっています。経理担当者にとって重要なのは、そこに決算での計上区分まで含まれていることです。

区分様式が聞いていること
就業規則適用状況(1.全部適用/2.適用無し/3.一部適用=適用除外条項を記載)
出勤義務常勤/非常勤(出勤指定日)、出勤日の勤務拘束時間、所定労働時間(週)
服務態様代表権の有無、業務執行権の有無、役員名称/前職名称・現職名称、就任年月日/雇用年月日
担当業務役員としての担当業務内容(具体的に)/従業員としての労務内容(具体的に)と指揮命令権者
給与等役員報酬(月額・年俸)と従業員賃金(月額・年俸)を別々の欄に記入。役員報酬以外の報酬の有無、上記以外の賃金(賞与等)の有無
決算決算の際、役員報酬として計上する/しない。決算の際、賃金・給料として計上する/しない
その他加入済みの社会保険(労災保険・健康保険・厚生年金保険・その他)、諸帳簿等への登録整備状況(労働者名簿・賃金台帳・出勤簿・雇用契約書)
経理処理そのものが判定資料になる

様式は「決算の際、役員報酬として計上するか」「決算の際、賃金・給料として計上するか」をそれぞれ別に聞いています。宮城労働局の書類一覧には、役員報酬額等が確認できない場合の提出書類として総勘定元帳(役員報酬額および従業員賃金額が記載された部分)まで挙がっています。

従業員分を役員報酬に混ぜて1本で計上していると、従業員としての賃金が帳簿上存在しないことになります。兼務役員として届け出るなら、勘定科目の段階で役員報酬と給料手当を分けておくのが自然な形です。

提出時に併せて求められる確認資料は、東京・飯田橋の案内では次のとおりです。いずれもコピーで、賃金台帳と出勤簿は就任前後おおむね2か月分(前1か月・後1か月)とされています。

提出のタイミングは2通りあります。新たに雇い入れた人が最初から兼務役員である場合は、資格取得のときに雇用保険被保険者資格取得届と併せて提出します。すでに被保険者である従業員が取締役等に就任した場合は、就任後すみやかに提出します。

「就任してから提出まで」を放置しない

宮城労働局の一覧は、遡って資格取得も同時に処理する場合には加入時からのすべての期間の賃金台帳・出勤簿が必要になり、6か月以上さかのぼる場合には、さらに「遅延理由書」が要るとしています。就任の届出を後回しにするほど、集める書類が増えます。

保険料も給付も「役員報酬を除いた賃金」で計算する

兼務役員が被保険者になったとき、給与計算でいちばん間違えやすいのがここです。北海道労働局は次のように案内しています。

雇用保険料の算定や失業給付の算定の基礎となる賃金には、取締役等としての地位に基づいて受ける「役員報酬」分は含まれません。

雇用保険法4条4項は「賃金」を「賃金、給料、手当、賞与その他名称のいかんを問わず、労働の対償として事業主が労働者に支払うもの」と定義しています。役員報酬は委任の対価であって労働の対償ではないため、この賃金に入りません。

具体例を置きます。取締役営業部長として、役員報酬40万円と従業員としての賃金30万円、合計70万円を毎月受け取っている人のケースです。

項目金額雇用保険の賃金に含めるか
役員報酬(取締役としての地位に基づくもの)400,000円含めない
従業員賃金(営業部長としての労働の対償)300,000円含める
合計支給額700,000円
雇用保険料の算定基礎300,000円

合計の70万円に料率を掛けると、保険料を2倍以上多く徴収してしまいます。料率そのものは雇用保険料率の記事を参照してください。

合計70万円を払っていても、雇用保険が見るのは30万円だけ 毎月の支給額 役員報酬 400,000円(委任の対価) 従業員賃金 300,000円 雇用保険の賃金 300,000円 だけ ← 労働の対償ではないので入らない(4条4項) 合計70万円で計算すると、保険料も失業給付の基礎も2倍以上ずれる 同じ切り分けが、離職票に書く賃金額にもそのまま効く
兼務役員の雇用保険は、役員報酬を除いた従業員賃金だけを基礎にする。保険料の徴収と給付の算定の両方に同じ切り分けが効く。

役員の地位が残っていると失業給付は出ない

北海道労働局の案内は、もう一つ重要な点を挙げています。

「被保険者となる取締役等」が離職した際に、引き続き、取締役等の地位を有している場合には、失業給付は受けられません。

これは条文の定義とも整合します。雇用保険法4条3項は「失業」を「被保険者が離職し、労働の意思及び能力を有するにもかかわらず、職業に就くことができない状態」と定義し、同条2項は「離職」を「事業主との雇用関係が終了すること」としています。

兼務役員の場合、従業員としての雇用関係が終了しても、取締役としての委任関係は残ります。部長職だけを解いて取締役として残るという形をとると、雇用保険の被保険者ではなくなる一方で、失業給付の対象にもなりません。

退任の順序と時期が結果を分ける

「役員報酬を下げて実質的に引退したから失業給付を」という相談は実務でよくありますが、判断されるのは報酬額ではなく取締役等の地位を有しているかどうかです。地位が残っている限り、金額をいくら下げても結論は変わりません。

個別の事案でどう扱われるかは、就任・退任の登記や議事録といった事実関係によって変わります。実際の手続は管轄のハローワークにご確認ください。

労災保険 — 入口は労働基準法9条

労災保険は雇用保険とは別の入口を持っています。労働基準法9条の定義がそれです。

この法律で「労働者」とは、職業の種類を問わず、事業又は事務所(以下「事業」という。)に使用される者で、賃金を支払われる者をいう。

役員はこの「使用される者」に当たらないため、労災保険の対象になりません。業務中にけがをしても、労災保険の保険給付は原則として受けられません。

ここで注意したいのが、兼務役員は雇用保険と労災保険で結論が変わらないという点です。従業員としての労働者性が認められる部分については、労災保険もその労働者としての立場で適用されます。実際、兼務役員雇用実態証明書の「加入済みの社会保険」欄には労災保険が選択肢として並んでいます。

問題になるのは、従業員としての身分を持たない役員——代表取締役や、業務執行権を持つ専任の取締役です。この人たちが労災保険に入るための制度が、次の特別加入です。

中小事業主等の特別加入 — 規模と事務組合の2つが要る

労災保険法33条は、特別加入できる者を7つの号に分けて並べています。役員に関係するのは1号と2号です。

一 厚生労働省令で定める数以下の労働者を使用する事業(厚生労働省令で定める事業を除く。第七号において「特定事業」という。)の事業主で徴収法第三十三条第三項の労働保険事務組合(以下「労働保険事務組合」という。)に同条第一項の労働保険事務の処理を委託するものである者(事業主が法人その他の団体であるときは、代表者
二 前号の事業主が行う事業に従事する者

法人の場合、1号が代表者、2号がそれ以外の役員という切り分けになります。なお33条の柱書は「第二号、第四号及び第五号に掲げる者にあつては、労働者である者を除く」としています。兼務役員のように労働者としての立場を持つ人は、通常の労災保険で保護されているため2号からは外れる、という整理です。

要件は2つあります。どちらも満たさないと加入できません。

要件中身根拠
① 規模 常時300人以下の労働者を使用する事業主。ただし金融業・保険業・不動産業・小売業を主たる事業とする事業主は50人以下、卸売業・サービス業を主たる事業とする事業主は100人以下 労災保険法施行規則46条の16
② 事務組合 労働保険事務組合に労働保険事務の処理を委託していること 労災保険法33条1号(条文の要件そのもの)
事務組合への委託は「あったほうがよい」ではなく、条文上の要件

33条1号は「労働保険事務組合に……労働保険事務の処理を委託するものである者」と書いています。委託していない事業主は、そもそも1号の者に当たりません。申請書にも「労働保険事務組合に、労働保険事務の処理を委託した日」を書く欄があり、その事項については労働保険事務組合の証明を受けなければならないとされています(労災保険法施行規則46条の19第1項4号・2項)。

手続は、申請書を所轄労働基準監督署長を経由して所轄都道府県労働局長に提出して行い、政府の承認を受けます(34条1項、施行規則46条の19第1項)。承認・不承認いずれの場合も、都道府県労働局長から文書で通知されます(同条5項)。

役員を選んで一部だけ加入することはできない

34条1項は「同号及び同条第二号に掲げる者を包括して……保険給付を受けることができる者とすることにつき申請をし」と書いています。代表者だけ入って他の役員は入らない、という選び方は条文の建て付け上とれません。

承認されると、33条1号・2号に掲げる者は「当該事業に使用される労働者とみなす」ことになります(34条1項1号)。労働者ではないけれども、保険給付の場面では労働者として扱う、という擬制です。

給付基礎日額は16段階から選ぶ(実際の報酬ではない)

通常の労災保険では、給付の基礎になる額は実際に支払われた賃金から計算します。特別加入者は労働者ではないので賃金がありません。そこで34条1項3号は、給付基礎日額を「当該事業に使用される労働者の賃金の額その他の事情を考慮して厚生労働大臣が定める額」としています。

その額を具体的に決めているのが労災保険法施行規則46条の20第1項です。16段階の中から選びます。

給付基礎日額として選べる額(労災保険法施行規則46条の20第1項)
3,500円4,000円5,000円6,000円7,000円8,000円9,000円10,000円
12,000円14,000円16,000円18,000円20,000円22,000円24,000円25,000円

この日額は保険料と給付の両方に効きます。休業補償給付を例にとると、労災保険法14条1項は「賃金を受けない日の第四日目から支給するものとし、その額は、一日につき給付基礎日額の百分の六十に相当する額とする」と定めています。

選んだ給付基礎日額休業補償給付(1日あたり)30日休業した場合(4日目から27日分)
3,500円(最低)2,100円56,700円
10,000円6,000円162,000円
25,000円(最高)15,000円405,000円

上表は労災保険法14条1項の本文(給付基礎日額の100分の60)だけで計算した目安です。休業特別支給金など特別支給金の制度は本記事の確認範囲外です。また待期期間の3日間は支給対象外として計算しています。

保険料を滞納している期間の事故は、給付されないことがある

34条1項4号は、事故が第一種特別加入保険料が滞納されている期間中に生じたものであるときは、政府は保険給付の全部又は一部を行わないことができるとしています。さらに同号は、業務災害の原因である事故が事業主の故意又は重大な過失によって生じたものであるときも同様だとしています。

特別加入は「入っておけば安心」で終わる制度ではなく、保険料の納付状況と災害の原因の両方が給付の可否に関わります。

社会保険料 計算機で、健康保険・厚生年金・雇用保険の控除額を確認する

間違えやすい点

よくある理解実際
役員は雇用保険法6条で適用除外されている 6条に役員の号は無い。外れるのは4条1項の「雇用される労働者」に当たらないため
兼務役員の雇用保険料は支給総額に料率を掛ける 役員報酬分は賃金に含まれない。従業員賃金だけが算定基礎
役員報酬を下げれば失業給付を受けられる 判断されるのは金額ではなく取締役等の地位を有しているか
社長も労災保険に特別加入すれば単独で入れる 34条1項は33条1号・2号の者を包括して申請すると定めている
特別加入の要件は会社の規模だけ 労働保険事務組合への委託が条文上の要件(33条1号)。委託の日は事務組合の証明が要る
特別加入の給付は実際の役員報酬をもとに計算される 3,500円〜25,000円の16段階から選んだ給付基礎日額で計算する
監査役でも兼務役員として届け出られる 会社法335条2項が監査役と使用人の兼任を禁じている

よくある質問

Q. 代表取締役は雇用保険に入れますか?

A. 一般に入れません。ハローワークの案内は法人の取締役等を原則として被保険者としないうえで、例外として認めるのは部長・支店長等の従業員としての身分を併せ持ち、就業実態等から労働者的性格が強く雇用関係があると認められる場合に限るとしています。兼務役員雇用実態証明書は最初に代表権の有無を確認する作りになっており、代表権を持つ立場はこの判断と両立しにくいものと整理されています。

Q. 雇用保険法6条のどこに役員が書いてありますか?

A. 書かれていません。6条各号は、週の所定労働時間が20時間未満である者、同一の事業主の適用事業に継続して31日以上雇用されることが見込まれない者、季節的に雇用される者で38条1項各号に該当するもの、学校教育法1条・124条・134条1項の学校の学生または生徒で厚生労働省令で定める者、漁船に乗り組むため雇用される船員、国・都道府県・市町村等の事業に雇用される者で諸給与が求職者給付等を超えると認められるもの、の6つです。役員が被保険者にならないのは、4条1項が被保険者を「適用事業に雇用される労働者」に限っているためです。

Q. 従業員が取締役に就任しました。何をすればよいですか?

A. 兼務役員として被保険者を続ける場合は、取締役等に就任後すみやかに兼務役員雇用実態証明書を提出することとされています。東京・飯田橋の案内では、既に資格取得済みの従業員が役員に就任した場合の提示・提出書類として、適用事業所台帳、兼務役員雇用実態証明書のほか、資格取得等確認通知書(事業主通知用)と資格喪失届(様式第4号)が挙げられています。併せて登記簿謄本、定款、役員報酬規程、就業規則・給与規定、雇用契約書等、賃金台帳・出勤簿(就任前後おおむね2か月分)、労働者名簿、人事組織図、議事録のコピーを提出します。

Q. 兼務役員の雇用保険料は、役員報酬を含めた総額で計算しますか?

A. 含めません。北海道労働局は、雇用保険料の算定や失業給付の算定の基礎となる賃金に、取締役等としての地位に基づいて受ける役員報酬分は含まれないとしています。雇用保険法4条4項も賃金を「労働の対償として事業主が労働者に支払うもの」と定義しています。役員報酬40万円と従業員賃金30万円を支給しているなら、算定基礎は30万円です。

Q. 兼務役員を辞めたら失業給付を受けられますか?

A. 取締役等の地位が残っているかどうかで変わります。北海道労働局は、被保険者となる取締役等が離職した際に、引き続き取締役等の地位を有している場合には失業給付は受けられないとしています。雇用保険法4条2項が離職を「事業主との雇用関係が終了すること」、同条3項が失業を「被保険者が離職し、労働の意思及び能力を有するにもかかわらず、職業に就くことができない状態」と定義しているためです。個別の判断は管轄のハローワークにご確認ください。

Q. 労災保険の特別加入は、労働保険事務組合に委託しないとできませんか?

A. 中小事業主等の特別加入についてはそのとおりです。労災保険法33条1号が「労働保険事務組合に……労働保険事務の処理を委託するものである者」と、委託していることを要件の一部として書いています。申請書には労働保険事務組合に労働保険事務の処理を委託した日を記載し、その事項について事務組合の証明を受けなければならないとされています(同法施行規則46条の19第1項4号・第2項)。

Q. 特別加入できる会社の規模はどれくらいですか?

A. 労災保険法施行規則46条の16は、常時300人以下の労働者を使用する事業主とし、金融業もしくは保険業、不動産業または小売業を主たる事業とする事業主については50人、卸売業またはサービス業を主たる事業とする事業主については100人としています。業種によって3段階に分かれる点に注意が必要です。

Q. 特別加入の給付基礎日額はどうやって決まりますか?

A. 労災保険法34条1項3号が厚生労働大臣が定める額とし、同法施行規則46条の20第1項が3,500円、4,000円、5,000円、6,000円、7,000円、8,000円、9,000円、1万円、1万2,000円、1万4,000円、1万6,000円、1万8,000円、2万円、2万2,000円、2万4,000円、2万5,000円の16段階を定めています。実際の役員報酬額から自動的に決まるものではありません。

出典

本記事の確認範囲は、雇用保険法上の被保険者資格と、労災保険法上の中小事業主等の特別加入(33条1号・2号)です。健康保険法・厚生年金保険法上の役員の取扱い、一人親方等の特別加入(33条3号〜5号)の詳細、特別加入保険料率、および兼務役員に該当するかどうかを争った裁判例・裁決例は確認していません。休業補償給付と休業特別支給金の内容(60%と20%の根拠の違い、待期期間3日の扱い、給付基礎日額の出し方)は労災の休業補償の記事で別に扱っています。

この記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の事案に対する助言ではありません。兼務役員として被保険者になれるかどうか、特別加入の対象になるかどうかは、就業の実態や登記の内容といった個別の事情によって結論が変わります。実際の手続については管轄のハローワーク・労働基準監督署・都道府県労働局へ、労働保険事務組合への委託については所在地の労働保険事務組合へご確認ください。

この内容をXで共有