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有価証券報告書とは?提出義務・期限と記載項目

有価証券報告書は、提出義務のある会社が、事業・経理の状況などを開示する法定書類です。財務諸表だけでなく、事業のリスク、経営者の分析、ガバナンスなども確認できます。

経理担当者は、まず自社の提出義務と適用様式を確認し、提出日から逆算して各部門の原稿・財務諸表・添付書類をそろえます。取引先の資料を読む場合は、対象年度と訂正報告書の有無を合わせて確認します。

この記事は国内会社の通常の年次開示を中心に、提出対象・期限・主要な記載項目・訂正への対応を参照表にまとめます。外国会社や投資信託などの特定有価証券については、個別の提出制度を確認してください。

有価証券報告書で確認できること

有価証券報告書は、決算の数値と、その背景にある事業の状況をまとめて確認する資料です。略して「有報」と呼ばれます。根拠は金融商品取引法第24条です。

売上高や利益を読むときも、財務諸表の表だけで完結しません。事業の内容、関係会社、経営者の分析、注記を合わせて読むと、どの範囲の会社の実績か、比較条件が変わっていないかを確かめられます。

調べたいこと有報で開く主な箇所読み方の注意
会社・グループの事業企業の概況、事業の内容、関係会社の状況提出会社単独と企業集団の範囲を分ける
業績が変わった理由経営者による財政状態・経営成績・キャッシュ・フローの分析財務諸表や注記との対応を確認する
事業継続に影響する要因事業等のリスク、重要な契約等、財務諸表の注記記載されたリスクと、既に発生した事実を分ける
経営管理の仕組みコーポレート・ガバナンスの状況等機関構成や監査の体制を確認する

決算短信は取引所ルールによる決算の速報で、有報とは根拠・役割が異なります。短信のサマリーや業績予想の読み方は決算短信の解説に分けています。有報を提出したことで、短信の訂正も済んだとは扱いません。

提出義務者の確認表

上場会社だけが提出する書類ではありません。非上場でも、募集・売出しの経緯や有価証券の所有者数などによって提出義務が生じます。「非上場だから不要」と決めず、発行している有価証券と過去の開示を確認します。

次は金融商品取引法第24条第1項の提出対象を確認する入口です。通常の会社の有価証券を想定した要約で、これだけで提出義務を判定する表ではありません。各区分の対象範囲・除外と、下の主な例外を確認します。

確認する区分最初に調べること社内で確認する資料の例
上場されている有価証券特定上場有価証券の除外に当たらないか上場状況、有価証券の種類
上場に準ずる流通状況の有価証券政令で定める対象に該当するか。除外も確認流通・登録状況、過去の提出書類
届出等の対象となった募集・売出し募集・売出しに適用された法の規定と、その後の免除の有無有価証券届出書、募集・売出しの履歴、承認通知
所有者数による対象対象の有価証券、判定する事業年度、政令の人数要件と除外所有者の記録、資本金、過年度の判定資料

主な例外は、法のただし書による資本金・所有者数等の要件と、提出不要の承認を受けた場合です。特定有価証券には別の読み替えがあります。上場廃止や所有者数の減少があっても、提出義務が消えたと自己判断せず、適用条項と承認の要否を確認します。

提出義務の検討では、当期の状態だけでなく、対象となる過年度の状況も使います。社内で確認した結果には、結論に加えて「発行する有価証券の種類」「募集・売出しの履歴」「対象となる期間」「免除や承認の根拠」を残しておくと、翌期に確認し直せます。

初回提出では、通常の年次提出と扱いが異なる場合があります。初めて提出する会社は、提出時期と適用様式を管轄財務局等に確認します。

提出期限と延長承認

提出義務のある内国会社の通常の有報の期限は、事業年度経過後3か月以内で、やむを得ない理由について事前承認を受けた場合は承認された期間内です。内国会社の通常の年次有報の提出期限が土日・祝日・年末年始の行政機関の休日に当たる場合は、次の開庁日になります。

期限の根拠は金融商品取引法第24条、休日の扱いは行政機関の休日に関する法律第2条です。休日特例に別段の定めがある場合はその定めに従います。外国会社や特定有価証券の期限には、この国内会社の説明をそのまま使いません。

社内の締切は、法定の最終日とは別に置きます。財務諸表が完成しても、非財務情報、監査報告書、添付書類、提出データの確認が残るためです。決算担当だけで日程を決めず、原稿を持つ部門と監査人との確認日も並べます。

間に合わない場合は、申請と承認を分ける

延長申請を出しただけで、提出期限が延びたとは扱いません。やむを得ない理由がある場合の事前承認が必要です。遅延のおそれを把握した段階で、管轄財務局等に手続を確認します。

企業内容等の開示に関する内閣府令第15条の2では、承認申請書に次の事項を記載し、定款等と理由を証する書面を添付する扱いです。

承認の理由が消滅・変更した場合には、承認期間の変更や将来に向けた取消しがあり得ます。過去に承認されたことだけで当期の期限を決めず、承認内容と現在の事情を確認します。

主要な記載項目の参照表

国内会社の通常の有報は、開示府令の第三号様式を起点に確認します。適用根拠は企業内容等の開示に関する内閣府令第15条です。少額募集等に係る簡易な記載や提出開始時の区分などには別様式があるため、前年のファイルを流用する前に適用様式を確かめます。

次は開示府令・第三号様式の主要な記載箇所です。全項目の一覧ではありません。実際の記載には様式の「記載上の注意」や準用先を確認し、業種・機関設計・会計基準等に応じた扱いに従います。右欄の確認作業は社内運用の例です。

様式の主な区画主な内容経理が合わせて確認すること
表紙提出先・提出日・事業年度・会社名など提出する会社と対象期間が合っているか
企業の概況経営指標等の推移、沿革、事業の内容、関係会社の状況比較する期間・連結範囲・表示単位
事業の状況経営方針、サステナビリティ、リスク、経営者の分析、重要な契約等財務数値と説明の対応、部門の原稿との整合
設備の状況設備投資、主要な設備、新設・除却等の計画固定資産の記録・設備担当部門との対応
提出会社の状況株式、配当政策、ガバナンス、従業員の状況等株式・役員・人事の基準日と対象範囲
経理の状況連結財務諸表、財務諸表等連結と単体の区別、会計基準、注記
株式事務・参考情報等株式事務の概要、提出会社の参考情報、保証会社等の情報自社に該当する記載・添付の確認漏れ

たとえば従業員に関する情報を探すときは、過年度の有報と同じ場所にあると思い込まず、その年度の目次と様式を確認します。表題が同じ有報でも、様式や記載事項の改正を受けて配置や内容が変わることがあります。

経営者の分析やリスクの説明も、経理とは無関係な文章ではありません。財務数値を参照している箇所や、契約・設備投資が財務情報に関係する箇所を、担当部門と照合する作業が必要になります。

経理担当者の準備と部門間の照合

提出用原稿の管理表は、記載箇所ごとに担当・根拠資料・確認者を置くと使いやすくなります。次は社内で分担するための例です。法令上の部門配置を示すものではありません。

確認対象根拠資料の例差異があったときの確認
財務数値・注記確定した決算資料、連結の集計、注記の基礎資料表示単位・丸め方・連結範囲の違いか、転記誤りかを分ける
設備・契約固定資産の記録、設備計画、重要な契約の管理資料期末現在の実績と、その後の計画を混ぜていないか
役員・株式・人事機関決定の記録、株式の管理資料、人事部門の集計基準日・対象者・対象会社の範囲を合わせる
事業・リスクの説明各部門の原稿、経営会議資料、契約等の裏付け本文の説明と、数値・注記が食い違っていないか

添付書類も本文とは別に確認します。開示府令第17条では、国内会社について定款や会社法上の計算書類等のほか、有価証券の種類などに応じた書類を定めています。適用区分と添付要件を条文で確認し、必要な書類を本文と別の一覧で管理します。

対象・様式・期限提出義務と適用する書類を確認 原稿と数値を照合部門ごとの根拠・基準日をそろえる 提出・保存提出書類と結果の控えを残す 訂正の確認対象年度と修正箇所を追えるように
社内作業の流れの例。提出前の確認と、提出後の訂正の管理をつなげます。

訂正報告書の扱いと確認手順

提出した有報に訂正が必要な場合は、訂正報告書の制度で対応します。会社サイトのPDFを差し替えるだけで、法定開示の訂正が済むとは扱いません。

金融商品取引法第24条の2は、有報と添付書類について、自発的な訂正提出や訂正の提出命令に関する規定を準用しています。形式の不備、重要事項の記載不足、虚偽記載など、訂正の原因と適用規定を区別して確認します。

重要な記載事項について、同条で準用する自発的提出または虚偽記載等の提出命令の規定により訂正報告書を提出した場合は、その旨の公告も必要です。訂正の内容に応じ、公告等の手続を管轄財務局等に確認します。

社内の転記資料も更新する例

たとえば、取引先の有報から設備投資の説明を社内資料へ転記したあと、その説明を直す訂正報告書が見つかったとします。会社名が一致するだけで更新せず、次の順で確認します。これは資料管理の架空例です。

  1. 訂正報告書が指す当初の有報と事業年度を特定する。
  2. 訂正の理由と訂正前後を読み、設備投資の説明のどこが変わったか確認する。
  3. その説明を使った社内資料の該当箇所を更新し、訂正資料へのリンクを残す。
  4. 数値や関連する注記も訂正対象なら、そこから計算した社内の比率等を確認し直す。

訂正があったからといって、訂正対象でない数値まで変わったとは扱いません。社内管理では、当初資料、訂正資料、修正した転記先を対応させて残します。

EDINETで探して社内資料に残す

有報を探す入口は、金融庁のEDINETです。金融庁「EDINETについて」から閲覧先と操作案内を辿れます。会社サイトのIR資料と合わせて確認するときも、有報・短信・事業報告を区別します。

  1. 提出した会社を特定し、対象の事業年度の有価証券報告書を探す。同名・類似名の別会社と混同しない。
  2. 表紙の会社名・事業年度・提出日を確認する。提出した年と対象の事業年度を取り違えない。
  3. 同じ有報に関する訂正報告書がないか調べ、あれば当初資料と合わせて読む。
  4. 社内へ転記する数字には、連結か単体か、対象期間、単位、参照箇所を添える。
  5. 引用元のリンクと取得した資料を残し、後で訂正の有無を再確認できるようにする。

比率を計算する場合は、同じ期間・同じ範囲の数字を使います。連結の利益を単体の売上高で割ると、意図した指標になりません。財務数値の読み方は損益計算書の解説、利益と売上高から比率を確かめるときは次のツールを使えます。

読み取った売上高と利益から利益率を計算する
提出・閲覧で残す確認記録

会社と事業年度、適用様式、提出期限、原稿の根拠と確認者を残します。閲覧や転記では、当初の有報と訂正報告書を対応させ、連結・単体と表示単位をそろえて使います。

よくある質問

非上場会社にも提出義務がありますか?

あります。募集・売出しの経緯や有価証券の所有者数などによって対象になります。上場の有無だけで決めず、対象条項と免除・承認の有無を確認します。

有価証券報告書と決算短信は同じですか?

別の書類です。有報は金融商品取引法による法定開示、決算短信は取引所ルールによる決算の速報です。内容が重なる場合も、提出・公表や訂正の手続は分けて確認します。

有価証券報告書はどこで見られますか?

金融庁のEDINETで閲覧できます。会社と事業年度を確認し、同じ有報を対象とする訂正報告書があれば合わせて読みます。

提出が間に合わないときは申請だけで延長されますか?

申請だけでは延長されたと扱いません。国内会社の通常の年次提出では、やむを得ない理由について事前承認を受ける制度です。承認内容と対象の事業年度を確認します。

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出典

部門間の管理表・作業順・転記の例は、社内で資料を整理するための例です。特定企業の開示や投資判断を示すものではありません。

本記事は一般的な情報提供を目的としたものです。個別の判断は管轄財務局等や専門家にご確認ください。個別の税務・労務相談には応じられません。

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