青色申告のやり方|承認申請・記帳から決算書と確定申告まで
青色申告は、承認申請を確認し、日々の取引を記帳して決算書を作り、確定申告書と一緒に提出する順で進めます。開業届を出しただけでは、青色申告の承認申請は済みません。
この記事は、令和8年分の所得税について、国内の個人事業主が事業所得を申告する手順を扱います。記帳から申告までのつながりを中心に、申請書の詳しい記入方法は青色申告承認申請書、控除額の詳しい判定は青色申告特別控除で説明します。
青色申告の手順と完了の目印
申請書・帳簿・決算書・申告書は、それぞれ役割が違います。まず下の表で、今どこまで終わっているかを確かめてください。
| 作業 | 用意するもの | 完了の目印 |
|---|---|---|
| 申請状況 | 申請書の控え・受付記録 | 希望する年分の申請状況が分かる |
| 記帳 | 売上・仕入・経費の証憑、通帳等 | 取引が帳簿に記録されている |
| 決算整理 | 元帳、棚卸表、固定資産台帳等 | 売上・経費と期末残高を照合できる |
| 決算書 | 整理後の帳簿・明細 | 決算書の各欄を帳簿へたどれる |
| 確定申告 | 決算書、ほかの所得・控除の資料 | 提出した書類と受付結果を保存できる |
| 申告後 | 納付・還付の情報、提出データ | 納付等の状況を確認し資料を保管する |
まず承認申請と対象年分を確認する
居住者の場合、税務署長の承認を受けた不動産所得・事業所得・山林所得が青色申告の対象です。給与所得や雑所得を青色申告に変える制度ではありません。会社員の副業でも、開業届の有無だけで事業所得かどうかは決まりません。
開業時は、事業の開始を知らせる開業届と、青色申告の承認を求める申請書を区別します。すでに申請した人は控えを開き、青色申告を始める年分、提出日、受付記録を確かめてください。申請書の提出後に届く通知や、みなし承認の扱いは承認申請の記事で確認できます。
新規開業・相続承継の別期限を除き、令和8年分の通常の承認申請期限は、休日延長後の令和8年3月16日でした。新規開業・相続承継には別期限があるため、通常期限が過ぎたことだけで判断せず、自分の区分の申請期限を確認します。
申請期限は、翌年に確定申告書を出す期限とは別です。通常期限に間に合わなかった年の扱いと、翌年分からの切替えを分けて整理してください。
控除の要件から記帳方法を決める
複式簿記で記帳するか、簡易な記帳をするかで、青色申告特別控除の区分が変わります。青色申告には簡易な記帳も認められています。
次の表は、事業所得について青色申告の承認がある人の控除要件です。令和8年分の控除額は、不動産・山林所得がなく、社会保険診療報酬の所得計算の特例を使わない人の場合、損益通算前の黒字の事業所得が上限です。
| 上限額 | 記帳・決算の要件 | 申告等の要件 |
|---|---|---|
| 最高55万円 | 複式簿記で記帳。現金主義の特例適用者を除く | 貸借対照表・損益計算書等を添付し、控除額を記載して期限内申告 |
| 最高65万円 | 上の要件に加え、右の電子申告か優良電子帳簿の要件を満たす | 申告書・決算書等を期限内にe-Tax送信、又は下の優良電子帳簿の要件 |
| 最高10万円 | 上の控除の要件に該当しない青色申告者。簡易な記帳も対象 | 損益計算書等で所得を申告。現金主義の特例適用者もこの区分 |
優良電子帳簿の方法では、その年の仕訳帳・総勘定元帳を、優良な電子帳簿の要件で備付け・保存します。この方法の所定の届出は確定申告期限までですが、既に電子帳簿保存による控除を受け、令和4年分以後も要件を継続して満たす人は不要です。還付申告でも上の上位控除には期限内申告が必要で、e-Taxの申告書・決算書等は画像データでは送信できません。
ここでいう控除額は、戻ってくる税金の額ではなく、所得から差し引く額です。複数の対象所得がある人の控除順序や、記帳方式ごとの詳しい条件は青色申告特別控除の記事を確認してください。
令和8年分には従前の制度を使います。翌年分からの改正は、租税特別措置法の改正附則で適用年分が分かれています。申告書を提出する年だけで、改正後の制度に切り替えないでください。
証憑を集め、帳簿と残高を照合する
まず取引の証拠を集め、帳簿の記録と結び付けます。領収書に加え、掛売り・掛仕入れや預金からの支払いも記帳します。以下は、現金主義の所得計算の特例を使わず、通常の複式簿記で記帳する場合の作業例です。
| 資料・帳簿 | 確認すること | 誤りの例 |
|---|---|---|
| 売上の請求書・売掛帳 | 売上と回収の記録を対応させる | 入金時にも売上を立てて二重計上 |
| 仕入・経費の証憑 | 取引日・内容・金額と記帳を照合する | 支払待ちの取引の記帳漏れ |
| 通帳・カード明細 | 記帳済みの取引と突き合わせる | 領収書と引落しを別の経費にする |
| 現金出納帳・預金元帳 | 手元現金・銀行残高との差を調べる | 不明な差額を経費で埋める |
| 固定資産台帳・棚卸表 | 事業用資産と期末在庫を確認する | 在庫・資産の処理の確認漏れ |
通常の複式簿記では、日付順に取引を記録する仕訳帳と、勘定科目別に整理する総勘定元帳を用います。会計ソフトを使う場合も、取り込んだ明細に正しい取引内容が付いているかを見てください。銀行からの入金が、そのまま売上とは限りません。
売掛金の回収を売上に重ねない例
国税庁の「帳簿の記帳のしかた」にある、掛売り代金130,000円を現金で回収する例を、複式簿記の形で示します。すでに売上・売掛金を記帳済みで、手数料や値引きはないものとします。
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 現金 | 130,000円 | 売掛金 | 130,000円 |
回収時は売掛金を減らします。現金が増えたことだけを見て売上をもう一度計上すると、所得が実際より大きくなります。請求書と回収記録を対応させ、未回収の残高が売掛帳に残っているかを確かめます。
私用と事業用が混在する支出は、家事分を必要経費から除いて整理します。そのつど区分し難いものは、年末にまとめて区分整理できる扱いもあります。生活費の引出しや個人資金からの立替えは、事業主貸・事業主借を使って家計と事業を区別します。
帳簿から青色申告決算書を作る
決算書は、帳簿で集計した損益と期末残高を申告するための書類です。数字を先に決算書へ埋めるのではなく、未記帳の取引や在庫・資産の処理を確認し、整理後の帳簿から転記します。
以下は、事業所得の通常の複式簿記と一般用決算書の確認表です。農業所得・不動産所得がなく、それらの貸借対照表を合算していない場合を扱います。現金主義用は別の様式です。申告には、対象年分に対応する様式と手引きを使ってください。
| 決算書の欄 | 照合する資料 | 転記前の確認 |
|---|---|---|
| 売上・収入 | 売上の元帳、月別・取引先別の明細 | 集計期間が合い、回収を重ねていないか |
| 売上原価 | 仕入の元帳、期首・期末の棚卸表 | 在庫の数・評価と帳簿がつながるか |
| 必要経費 | 経費の元帳、証憑、家事分の区分資料 | 私用分や重複入力を除いたか |
| 減価償却費 | 固定資産台帳・償却明細 | 取得・事業供用・売却等を反映したか |
| 貸借対照表 | 預金・現金・債権債務・資産の元帳 | 期末残高と内訳を説明できるか |
| 所得照合 | 損益計算書と貸借対照表 | 同じ控除前所得になっているか |
貸借対照表の左右だけでなく、個々の残高も確認します。売掛金は取引先別の未回収明細、買掛金は未払の仕入明細へ戻り、計上漏れや二重記帳を調べます。決算書に出た差額を、根拠のない売上・経費の仕訳で合わせないでください。
損益計算書と貸借対照表は、対応する所得の範囲をそろえて、控除前所得を照合します。国税庁の令和7年分の一般用決算書の書き方でも、控除前所得の確認方法が説明されています。この資料は欄のつながりを見る参考であり、申告時には当年分に対応した案内を確認します。
確定申告書を作り、送信・納付を確認する
決算書ができたら、その所得を確定申告書へ引き継ぎます。事業以外の所得や所得控除の入力もあるため、決算書だけでは所得税の申告は終わりません。
国税庁の決算書の作成に関する案内では、確定申告書等作成コーナーの「決算書・収支内訳書(+所得税)」から決算書を作り、続けて所得税の申告書を作成できます。日々の記帳は先に用意し、集計した数字を入力します。画面名は利用する年分の案内に従ってください。
| 確認の段階 | 見るところ |
|---|---|
| 作成前 | 申告対象の年分、本人情報、該当する所得の資料 |
| 所得の入力 | 決算書の控除後所得を、申告書の対応する事業所得欄へ正しく引き継いだか |
| 控除等の入力 | 該当する保険料・寄附等の資料と入力額が合うか |
| 提出前 | 申告書と決算書等がそろい、必要な添付・送信方法を確認したか |
| 提出後 | 受付結果と提出データを保存し、未送信の書類がないか |
| 納付等 | 納付額と手続・引落し等の状況、還付があるときの受取先 |
e-Taxで提出する場合は、申告書だけでなく決算書等も送信対象になっているかを確認します。電子申告で上位の青色申告特別控除を受けるには、表に示した要件を満たす必要があります。準備や受付確認の具体的な操作はe-Taxで確定申告する手順を参照してください。
送信結果の保存と、納付の確認は別の作業です。申告後も、帳簿・決算書・取引書類を、記帳内容へ戻れる形で保管します。紙か電子か、書類の種類や消費税上の扱いで保存方法・期間が異なるため、電子帳簿保存法の解説と国税庁の記帳・保存の案内を併せて確認してください。
まとめ
青色申告は、承認申請の確認と日々の記帳から始めます。帳簿の損益・残高を整えて決算書を作り、確定申告書へ引き継いだ後、受付・納付等の確認と資料保存まで進めてください。
よくある質問
初めてでも自分で青色申告できますか?
自分で記帳し、決算書と確定申告書を作成・提出できます。先に承認申請の状況を確認し、取引の証憑と帳簿をそろえて進めてください。会計ソフトを使う場合も、残高や取引内容の確認は必要です。
開業届を出せば青色申告になりますか?
開業届だけでは青色申告の承認申請にはなりません。別の青色申告承認申請書で、希望する年分の申請を行います。提出済みの場合は、申請書の控えと受付記録を確かめてください。
会計ソフトや作成コーナーを使えば記帳は不要ですか?
記帳は必要です。会計ソフトへ取引を入力して帳簿を作る場合も、証憑と帳簿の対応を確認します。確定申告書等作成コーナーで決算書を作る場合は、先に用意した帳簿の集計値を入力します。
e-Taxで申告すれば上位の控除になりますか?
事業所得を申告する青色申告者でも、電子申告だけでは足りません。通常の複式簿記による記帳、貸借対照表・損益計算書等の作成、申告書への控除額の記載が必要で、申告書と決算書等を期限内に送信する要件もあります。現金主義の特例適用者は上位控除の対象外です。申告書・決算書等を画像データで送っても、この電子申告の要件は満たしません。
出典
- 国税庁「No.2070 青色申告制度」
- 国税庁「No.2072 青色申告特別控除」
- 国税庁「帳簿の記帳のしかた(事業所得者用)」
- 国税庁「令和7年分 青色申告決算書(一般用)の書き方」
- 国税庁「申告書等の控えへの収受日付印について」
- 国税庁「確定申告書等作成コーナー パソコンご利用ガイド」
- e-Tax「作成コーナーで決算書・収支内訳書を作成したい」
- e-Gov法令検索「租税特別措置法・令和8年改正附則の青色申告特別控除に関する経過措置」
この記事は一般的な情報提供です。個別の税務相談には応じられません。所得区分・経費・申告方法の個別判断は、税務署または税理士へご確認ください。