税金・経理・補助金ツールズ

ベースアップとは|定期昇給との違い・賃金表と給与事務の確認表

ベースアップは、賃金表を改定して賃金水準を引き上げることです。定期昇給は、労働協約・就業規則等で定められた制度に従い、一定の時期に毎年増額する昇給です。

給与事務では、同じ等級・号俸の金額が変わった分と、本人が次の号俸へ進んだ分を分けると、増額の内訳を確認しやすくなります。新旧の賃金表の比較例と、給与へ反映するときの確認表を掲載します。

ベースアップと定期昇給の違い

違いは、賃金表を改定して水準を引き上げるか、労働協約・就業規則等で定めた制度に従い、一定の時期に毎年増額するかです。厚生労働省の「毎月勤労統計調査における賃金の伸び率について」は、ベースアップを賃金表の改定による賃金水準の引上げと説明しています。

確認する点ベースアップ定期昇給
仕組み賃金表を改定して水準を引き上げる労働協約・就業規則等で定めた制度に従い、一定の時期に毎年増額する
賃金表がある場合の見方同じ等級・号俸の新旧の金額を比べる制度に従って本人がどの等級・号俸へ移るかを確認する
給与担当が参照する資料の例新旧の賃金表、改定の決定資料昇給規定、本人の昇給決定資料

ここでの号俸の移動は、賃金表を使う会社での確認例です。給与制度によって決め方は異なるため、本人の支給額が増えたという事実だけで、増額分をベースアップと定期昇給に分けることはできません。

賃金表の水準を引き上げる 旧賃金表 → 新賃金表 ベースアップ 一定の時期に毎年増額 労働協約・就業規則等の制度に従う 定期昇給
表の改定と本人の昇給を分けて確認します。

賃金表で増額の内訳を分ける

同時に実施する場合は、改定前の賃金表で定期昇給分を確認し、その後に賃金表の引上げ分を確認すると、内訳を追えます。以下は計算の仕組みを示す架空の設例です。

定額で引き上げる設例

架空の設例として、月額基本給の同じ号俸に5,000円を加算する賃金表を置きます。本人の定期昇給は、改定前のA号俸からB号俸への移動と仮定します。手当・賞与・税・社会保険料は含めません。

設例の号俸改定前の月額基本給ベースアップ後の月額基本給
A号俸250,000円255,000円
B号俸260,000円265,000円

この設例で本人がA号俸からB号俸へ進む場合、定期昇給分は260,000円−250,000円=10,000円、B号俸のベースアップ分は265,000円−260,000円=5,000円です。

この設例の月額基本給の増額は、265,000円−250,000円=15,000円です。増額の全体をベースアップ額とすると、定期昇給分まで含めてしまいます。

定率で引き上げる設例

架空の設例として、改定前基本給250,000円を基礎に2%引き上げる場合、加算額は250,000円×2%=5,000円です。この設例は円未満の端数が出ない条件です。

定率の計算では、改定前の金額に率を掛けるのか、定期昇給後の金額に掛けるのかを決定資料で確かめます。適用順序と端数処理を決めずに、給与マスターへ率だけを入力しないようにします。

給与へ反映する前の確認表

新旧の賃金表と本人別の決定資料を並べ、給与マスターと支給結果までつなげて確認します。次の表は当サイトの給与事務の作業例で、法定様式ではありません。

作業参照する資料の例確認する内容
対象と金額を確定改定の決定資料、新旧の賃金表対象となる賃金表・雇用区分・等級と、定額・定率の別
本人の増額を分解本人別の昇給決定資料号俸移動による増額と、賃金表改定による増額の内訳
反映する時期を確認適用日、締日・支払日が分かる資料どの勤務期間から新単価を使い、どの給与で支払うか
給与設定を更新給与マスター、賃金規程基本給・連動する手当・割増賃金の単価、適用開始日の設定
計算結果を照合給与計算結果、給与明細決定額と支給額の一致、遡及差額の有無、更新漏れの有無
確認記録を残す更新前後のデータ、確認記録使用した賃金表の版、更新担当と確認担当、確認日

適用日と支払日は分けて記録します。翌月払いの会社などでは、賃金を引き上げた勤務期間と、新しい金額を初めて支払う給与の月が異なるためです。

昇給の時期・条件は、自社の労働協約や就業規則等を確認します。厚生労働省の「モデル就業規則」にも昇給の規定例がありますが、その例がそのまま自社の昇給条件になるわけではありません。

残業代・賞与・社会保険への影響

基本給の変更は、基本給を算定基礎に使う給与項目にも影響します。給与明細の基本給欄を変えるだけで終えず、関連する設定を確認します。

残業代は算定基礎と単価を確認

月給制では、割増賃金の算定基礎に含まれる基本給の変更を、給与システムの単価にも反映します。基本給と手当をどこまで算定基礎に含めるか、所定労働時間数でどう割るかは、残業代の計算方法で確認できます。

手当を算定基礎から除外できるかは、名称だけでは決まりません。厚生労働省「モデル就業規則」の割増賃金の解説は、手当の実質で判断するよう説明しています。

賞与・退職金は自社規程の算定基礎を確認

賞与・退職金が増えるかは、自社規程の算定基礎や支給条件によります。基本給を計算に使う制度なら改定の影響を確認し、定額や別の基礎額で決める制度なら、その定めに沿って確認します。

賞与については、算定に使う基本給の時点、算定期間、支給対象者、業績・評価の扱いを確認します。基本給を引き上げた率と同じ率で、賞与も増えるとは限りません。

社会保険は随時改定の確認へ

ベースアップは、健康保険・厚生年金の随時改定でいう固定的賃金の変動の例に当たります。ただし、ベースアップをした事実だけでは随時改定の対象とは決まらず、他の要件も合わせて確認します。

日本年金機構「随時改定(月額変更届)」には、要件・例外・遡及昇給の取扱いが掲載されています。判定の手順と改定の時期は、随時改定の記事へ進んで確認できます。

手取り計算機で、改定後の額面から手取りを試算する

手取りの試算と、実際の給与で使う標準報酬月額の改定判定は分けて確認します。

平均の賃上げ率と比べるとき

公表されている賃上げ率は、ベースアップ分だけか、定期昇給を含むかを確かめてから比べます。対象企業や労働者、集計期間が異なる率を、そのまま自社のベースアップ率と比べないようにします。

厚生労働省の賃金の伸び率の説明資料でも、統計によって調査対象や集計方法が異なることに注意を促しています。統計の対象と期間、物価との比較は、実質賃金の記事にまとめています。

まとめ

ベースアップは賃金表の水準の引上げ、定期昇給は労働協約・就業規則等で定められた制度に従い、一定の時期に毎年増額する昇給です。給与へ反映するときは、賃金表改定分と本人の昇給分を分け、適用日・支払日・給与マスター・計算結果を対応させて確認します。

よくある質問

ベースアップと定期昇給は同じですか?

異なります。ベースアップは賃金表を改定して賃金水準を引き上げること、定期昇給は労働協約・就業規則等で定められた制度に従い、一定の時期に毎年増額することです。

給与の増額分をベースアップ額としてよいですか?

定期昇給などが同時に含まれていれば、増額全体をベースアップ額として扱うと内訳を誤ります。賃金表改定分と本人の昇給分を、決定資料に沿って分けます。

ベースアップをすると賞与も増えますか?

自社の賞与規程によります。基本給を算定基礎に使うか、その基本給をどの時点の額とするか、支給条件や業績・評価をどう反映するかを確認します。

ベースアップをすると社会保険料もすぐ変わりますか?

ベースアップの実施だけでは決まりません。固定的賃金の変動に加え、随時改定の他の要件と改定時期を確認します。

次に読む

出典

本記事は一般的な情報提供を目的としたものです。個別の判断は社会保険労務士などの専門家にご確認ください。

この内容をXで共有