簿価とは?取得原価・時価との違いと、償却から売却までの残高照合
簿価(ぼか)は帳簿価額の略で、会計処理を反映した後に帳簿に残っている金額です。買ったときの取得原価とも、今の市場での時価とも区別します。
会社の備品を確認するときは、取得原価・減価償却累計額・差引残高を並べると、どこまで費用に振り替えたかが分かります。この記事は、事業用備品の通常の償却と売却を例に、台帳と帳簿の残高を照合します。
簿価・取得原価・時価の違い
決算書の残高を確認するなら簿価、取得時の支出をたどるなら取得原価、売却を検討するなら時価や見積額を使います。同じ資産でも、何を確かめるかによって見る金額が変わります。
| 用語 | 表すもの | 確認するもの |
|---|---|---|
| 簿価・帳簿価額 | 償却や評価処理を反映した帳簿上の残高 | 固定資産台帳、元帳、貸借対照表 |
| 取得原価・取得価額 | 資産の取得時に計上する金額 | 購入契約、請求書、付随費用の明細 |
| 時価 | その時点の公正な評価額 | 市場価格。市場価格がない場合は合理的に算定された価額 |
簿価が示すのは会計上の記録です。その額で売れるという意味ではありません。市場の値動きと、取得原価を費用へ配分する償却は別の話です。
購入代金だけを取得価額にしていないかも確認します。法人税上、購入した減価償却資産の取得価額には、購入のための運送費などが含まれます。使用するために直接要した据付費なども含まれます。取得価額に算入しないことができる付随費用もあるため、税務上の範囲は国税庁No.5400で分けて確認します。
簿価の計算で引くのは当期費用ではなく累計額
減損・圧縮記帳・追加取得などがない事業用備品では、簿価=取得原価−減価償却累計額です。引くのは、その備品について過年度からその時点までに計上した償却費の合計です。
当期の減価償却費は、その期間の費用です。累計額は同一備品について計上した償却費の積み上げなので、過年度分も含みます。過年度から使っている資産で、取得原価から当期分だけを引くと、前期までの償却を反映できません。
間接法では、備品勘定と減価償却累計額を別々の勘定に記録します。
一方、直接法では備品勘定から償却額を直接減らします。すでに控除済みの残高から、さらに累計額を引くと二重控除です。表示方法の詳しい違いは減価償却累計額で確認できます。
備品の残高照合例
以下の架空の設例では、会社の事業用備品を間接法で記録し、償却と売却に伴う残高を照合します。各期の償却費は計上済みの仮定額として与え、耐用年数や税務上の限度額からは計算しません。
設例の取得原価は900,000円、各期償却費は180,000円です。減損・圧縮記帳・追加取得はなく、消費税は考慮しません。当期の償却を反映した直後に売却します。端数は生じません。
| 設例の時点 | 備品勘定 | 減価償却累計額 | 差引簿価 |
|---|---|---|---|
| 取得直後 | 900,000円 | 0円 | 900,000円 |
| 前期末・償却後 | 900,000円 | 180,000円 | 720,000円 |
| 当期・売却直前の償却後 | 900,000円 | 360,000円 | 540,000円 |
| 売却仕訳後 | 0円 | 0円 | 0円 |
間接法の設例では、償却で備品勘定を動かさず累計額を増やします。売却時には、その備品の取得原価と対応する累計額をそれぞれ取り消します。
売却後に残高がなくなることと、償却を終えても資産を保有していることは別です。償却終了時の残高については、減価償却の解説に譲ります。
減価償却費の計算機で、償却スケジュールを確認する売却損益は売却時点の簿価と比べる
通常の備品売却では、売却代金と売却時点の簿価の差から売却損益を確認します。取得原価より安く売ったというだけで、会計上の売却損になるとは限りません。すでに償却費として計上した部分を、売却時に再び損失へ含めないためです。
上の備品を通常の第三者取引で売る設例です。減損・圧縮記帳・追加取得はなく、売却直前の簿価は540,000円、代金は600,000円です。売却費用はなく、消費税は考慮しません。
| 設例の確認項目 | 計算・金額 |
|---|---|
| 売却損益 | 600,000円−540,000円=60,000円の売却益 |
| 比較する簿価 | 当期の償却を反映した売却直前の残高 |
| 比較しない金額 | 当初の取得原価や、償却前の前期末残高 |
売却代金より簿価が大きければ売却損です。実際の処理では売却に伴う費用、消費税、取引条件も分けて確認します。本稿の設例から税額や個別の取引の適否は判断できません。
台帳と帳簿が合わないときの確認順
まず、同じ資産について同じ日付・同じ会計区分の残高を並べます。決算整理前の元帳と償却後の台帳を比べると、記録の段階が違うだけでも不一致になります。
| 確認する順序 | 見るもの | 不一致の手がかり |
|---|---|---|
| 資産を特定する | 資産番号、品名、取得資料 | 似た品名の別資産が混ざっていないか |
| 時点をそろえる | 台帳の基準日、元帳の締日、償却仕訳日 | 未転記の当期償却がないか |
| 記録方法を確認する | 資産勘定と累計額の別掲・直接控除 | 取得原価を簿価と読んだり、累計額を二重に引いていないか |
| 増減をたどる | 取得、償却、追加支出、減損、売却の記録 | 売却した資産やその累計額が残っていないか |
| 差額を分ける | 会計上の残高と税務計算資料 | 会計と税務の額を混ぜていないか |
これは残高を突き合わせるための作業順の一例です。台帳の記載項目や保存の扱いは固定資産台帳、当期償却額の求め方は減価償却を参照してください。
単純な償却式では足りない場合
簿価は資産の種類と適用する会計処理によって変わります。上の通常償却の式を、資産全般へそのまま広げないことが大切です。
| 場面 | 別に確認すること |
|---|---|
| 減損・評価替えがある | 償却以外の減額や評価処理。減損損失の解説へ |
| 圧縮記帳をしている | 会計の処理方式と税務上の取得価額。圧縮記帳の方式比較へ |
| 追加工事などがある | 費用にする支出と資産に計上する支出。修繕費と資本的支出へ |
| 税務申告用の額を確認する | 会計残高とは別に、申告調整を含めた税務上の額を確認 |
会社計算規則の資産評価の規定にも、償却に加えて時価や減損などの扱いがあります。時価が下がったら、その下落分をそのまま償却費にするという意味ではありません。
貸借対照表を読むときは、減損損失の累計額がどこに表示されているかにも注意します。会社計算規則の減損損失累計額の表示では、減価償却を行う有形固定資産で両累計額をともに控除項目として表示する場合、減損損失累計額を減価償却累計額に合算して表示できます。
よくある質問
簿価と帳簿価額は違いますか?
同じ意味で、簿価は帳簿価額の略です。会計処理を反映した後の帳簿上の金額を指します。
簿価は購入金額と同じですか?
取得後に償却や評価処理があれば、購入時の金額とは違います。
購入時より安く売ったら売却損ですか?
購入時より安くても、売却時点の簿価を上回る代金なら、通常の備品売却では差額が売却益になります。売却費用や消費税を分け、売却時点までの会計処理を反映した簿価と比較します。
出典
- 関東信越税理士会「税務会計用語集:簿価」、「時価」
- e-Gov法令検索「会社計算規則」の資産評価、減価償却累計額・減損損失累計額の表示
- e-Gov法令検索「法人税法」の減価償却資産の償却費、国庫補助金等による固定資産の圧縮記帳
- 国税庁「減価償却資産の取得価額に含めないことができる付随費用(No.5400)」
- 実教出版「基本簿記演習 改訂版 解説」の備品の帳簿価額・固定資産売却の設例
本稿の金額は残高のつながりを示す架空の設例です。会計上の減価償却費を与えた例であり、税務上の償却限度額や税額を計算したものではありません。
本記事は一般的な情報提供を目的としたものです。個別の判断は税務署・税理士にご確認ください。