非居住者の源泉徴収 — 支払の種類ごとの税率と、支払の前日までに出す租税条約の届出
非居住者に源泉徴収の対象となる国内源泉所得を支払う会社は、租税条約で免除される場合などを除き、支払の際に所得税と復興特別所得税(令和9年分以後は防衛特別所得税も)を源泉徴収します。国内法の税率は、給与・報酬・配当(上場株式等の配当等を除く)・不動産の賃料などが20.42%、預貯金の利子などが15.315%、土地等の譲渡対価が10.21%です(源泉徴収のあらまし 令和8年版)。
租税条約で税率を下げる・免除するには、支払を受ける非居住者が「租税条約に関する届出書」(必要な添付書類を含む)を、最初の支払の日の前日までに、支払者を経由して支払者の納税地の所轄税務署長へ出します。間に合わなければ国内法の税率で源泉徴収し、後日、届出書(必要な添付書類を含む)と還付請求書を支払者経由で同じ税務署長へ出せば差額の還付を請求できます。
この記事は国税庁の資料の区分で手順をまとめます。相手が居住者か非居住者か、どの条約が使えるかの個別の判定はしません。
居住者か非居住者か — 判定の線
非居住者は、国内に住所も1年以上の居所も有しない個人です(所得税法2条1項5号)。国内に住所を有するか、現在まで引き続いて国内に1年以上居所を有する個人が居住者です(同項3号)。
- 住所は個人の生活の本拠で、客観的事実によって判定します(所得税基本通達2-1)。居所は、生活の本拠ではないが現実に居住している場所です。
- 国籍や在留資格(ビザ)は関係ありません。日本人でも、海外勤務などで国外に継続して1年以上居住する予定で出国した人は、国税庁の資料(あらまし 令和8年版)で非居住者になると説明されています(下の推定の規定)。
- 推定の規定があります。国外に居住することとなった人が、国外に継続して1年以上居住することを通常必要とする職業を有する場合は、国内に住所を有しない人と推定されます(所得税法施行令15条)。反対に、国内に居住することとなった人が、国内に継続して1年以上居住することを通常必要とする職業を有する場合は、国内に住所を有する人と推定されます(同施行令14条)。
船舶・航空機の乗組員は、生計を一にする親族の居住地や勤務外に通常滞在する地で判定します(所得税基本通達3-1)。国外に居住することとなった人で、外国の国籍や永住許可があり、国内に生計を一にする配偶者その他の親族がいないことなどから、再び国内に帰り主として国内に居住すると推測するに足りる事実がない人も、国内に住所を有しない人と推定されます(同施行令15条)。
支払の種類ごとの源泉徴収税率
源泉徴収のあらまし(令和8年版)の図1「源泉徴収の対象となる国内源泉所得と税率等」から、会社がよく払うものを並べます。どれも源泉徴収を要しないもの・非課税のものを除きます。税率は令和8年版の時点の所得税と復興特別所得税を合わせた率(令和9年分以後は防衛特別所得税が加わる)で、租税条約の届出がないときの国内法の率です。号は所得税法161条1項の号です。
| 支払の種類 | 源泉徴収の対象になる範囲 | 税率 |
|---|---|---|
| 給与・報酬(12号) | 国内で行う勤務その他の人的役務の提供に基因するもの。内国法人の役員報酬は国外勤務分も対象(使用人として常時国外勤務する役員などを除く) | 20.42% |
| 人的役務の提供事業の対価(6号) | 国内で行う、芸能人・職業運動家、弁護士などの自由職業者、専門的知識や特別な技能を有する者の役務を、事業者自身でなく雇用する人などに提供させることを主な内容とする事業(国内の契約ごとに判定)の対価 | 20.42% |
| 不動産の賃貸料等(7号) | 国内の不動産等の貸付けの対価。個人が自己又は親族の居住用に借りて払うものは不要 | 20.42% |
| 利子等(8号) | 国債・地方債・内国法人の社債の利子、国内の営業所に預け入れた預貯金の利子など | 15.315% |
| 配当等(9号) | 内国法人から受ける剰余金の配当・利益の配当など(上場株式等の配当等を除く) | 20.42% |
| 上場株式等の配当等 | 非居住者等が支払を受けるべき上場株式等の配当等(源泉徴収税率の特例) | 15.315% |
| 貸付金の利子(10号) | 国内で業務を行う者への貸付金で、その業務に係るものの利子 | 20.42% |
| 使用料等(11号) | 国内業務に係る工業所有権・著作権等の使用料や譲渡対価、機械・装置等の使用料 | 20.42% |
| 土地等の譲渡対価(5号) | 国内の土地・建物等の譲渡対価。個人が自己又は親族の居住用に譲り受け、対価が1億円以下なら不要 | 10.21% |
公的年金等と事業の広告宣伝のための賞金は、支払額から所定の控除額を引いてから20.42%を掛けます。租税特別措置法等で税率が軽減・免除される所得もあります。
計算と納付で押さえる点は次の4つです。
- 消費税:支払額に消費税等が含まれていれば含めた額が対象ですが、請求書等で消費税等の額が明確に区分されていれば、国内源泉所得の額だけでも差し支えありません。
- 端数:算出した税額の1円未満の端数は切り捨てます。
- 外貨建て:円への換算方法は所得税基本通達213-1・213-2 が定めていて、円で払うか外貨で払うか、支払期日の定めがあるかで使う相場が変わります。
- 納期限:原則として徴収した日の属する月の翌月10日(休日などに当たるときは休日明けの日)までに納めます。納付書は「非居住者・外国法人の所得についての所得税徴収高計算書」です(例外は下の段落と注)。
支払を国外で行っても、支払者が国内に住所・居所や事務所等を有するときは国内で支払ったものとみなされ(所得税法212条2項)、このみなされた支払の納期限は翌月末日です。
納期の特例の承認を受けた源泉徴収義務者(給与の支給人員が常時10人未満)は、非居住者に支払う給与等・退職手当等の源泉所得税も、年2回にまとめて納付できます(所得税法216条)。
非居住者の大家に払う事務所の賃料は、地代家賃の記事の源泉徴収の節で扱っています。居住者に払う報酬・料金の区分と税率は源泉徴収とはを見てください。
居住者に払う給与・報酬の源泉徴収税額は、計算ツールで確かめる給与・役員報酬で間違えやすい点
非居住者の給与は、原則として国内で行った勤務に対応する部分が源泉徴収の対象で、国外での勤務に対する給与は、内国法人の役員報酬(下の2つ目)を除き日本では課税されません。
- 国内と国外の両方で勤務した:役員報酬を除き、原則として、給与等の総額に「国内で勤務した期間 ÷ 給与等の計算の基礎となった期間」を掛けた額が対象です(所得税基本通達161-41)。
- 内国法人の役員報酬:役員として国外で勤務しても国内源泉所得になります(所得税法161条1項12号イ)が、海外支店の長など使用人として常時国外で勤務する役員などは除かれます(下の注)。
役員が国外の子会社に常時勤務する場合にも、国内源泉所得とされない要件があります(所得税基本通達161-43)。
租税条約の多くは、短期滞在者の給与を源泉地国で免税とする規定を置いています。多くの条約の要件は次の3つです。
- 滞在期間が課税年度又は継続する12か月を通じて合計183日を超えないこと
- 報酬を支払う雇用者が、勤務が行われた締約国の居住者でないこと
- 給与等が役務提供地にある支店その他の恒久的施設によって負担されないこと
要件は条約ごとに違います。短期滞在者の給与の免税を受けるときは、様式7の届出書を出します。
租税条約に関する届出書の出し方
届出書は、支払を受ける非居住者が支払者ごとに作り、最初に支払を受ける日の前日までに、支払者を経由して支払者の納税地の所轄税務署長に出します(国税庁 タックスアンサー No.2888)。会社の側の流れは次のとおりです。
- 支払の前に様式を渡す:支払の種類に合う様式を相手に渡し、記入を頼みます。
- 前日までに受け取る:最初の支払の日の前日までに受け取り、会社の納税地の所轄税務署へ出します。
- 条約の税率で源泉徴収する:前日までに届出書と必要な添付書類が会社の納税地の所轄税務署長に出ていれば、条約の限度税率(国内法の税率の方が低ければ国内法の税率)で源泉徴収するか、免除なら源泉徴収しません(免税芸能法人等の例外は下の注)。
- 内容が変わったら出し直す:異動を記載した届出書を、異動の後に最初に支払を受ける日の前日までに出します(配当の「元本の数量」の増減など、省略できる場合あり)。
主な様式は次のとおりです(国税庁「源泉所得税(租税条約等)関係」の手続名称から抜粋)。
| 支払の種類 | 様式 |
|---|---|
| 配当(上場株式等の配当等の特例届出は様式1-2) | 様式1 |
| 利子 | 様式2 |
| 使用料 | 様式3 |
| 芸能人・自由職業者等の人的役務提供事業の対価(免除) | 様式6 |
| 自由職業者・芸能人・運動家・短期滞在者の報酬・給与(免除) | 様式7 |
| 教授等・留学生・事業等の修習者・交付金等の受領者の報酬・交付金等(免除) | 様式8 |
| 所得税法161条1項7号から11号まで、13号、15号又は16号の所得(免除) | 様式10 |
| 届出が間に合わなかったときの還付請求(芸能人等の役務提供事業の対価・発行時に源泉徴収する割引債を除く) | 様式11 |
| 特典条項の対象となる所得で軽減・免除を受けるときの付表 | 様式17 |
届出が間に合わなかったときは、支払の際は国内法の税率で源泉徴収します。後日、届出書(必要な添付書類を含む)とともに還付請求書(主に様式11)を支払者を通じて支払者の納税地の所轄税務署長に出せば、差額の還付を請求できます。
租税条約で免税とされる非居住者等が免税芸能法人等に当たるときは、受け取る芸能人等の役務提供事業の対価から、いったん源泉徴収し、その法人等が芸能人等への報酬から源泉徴収して納付した後に、様式12の還付請求書で還付を受けます(実施特例法3条)。
特典条項の対象となる所得で軽減・免除を受けるときは、届出書のほかに様式17と居住者証明書が必要です(日本と相手国で課税上の取扱いが異なる事業体は様式16も添付)。居住者証明書は、原本を添付するか、提示の日前1年以内に作成された原本を支払者に提示します。
居住者証明書の原本の提示を受けた支払者は、確認をした旨・確認者の氏名(所属)・確認日・証明書の作成年月日を届出書の「その他参考となるべき事項」の欄に書き、その証明書の写しを提示を受けた日から5年間、国内の事務所等に保存します。
条約の限度税率が国内法の税率以下になるときは、復興特別所得税を併せて源泉徴収する必要はありません(あらまし 令和8年版)。国税庁 No.2888 は、令和9年分以後に源泉徴収される税を「所得税、防衛特別所得税および復興特別所得税」と書いています。
届出書を電子で受け取る・送るとき
令和3年4月1日以後、届出書は、下の要件を満たせば書面の代わりに記載すべき事項を電磁的方法で提供でき、その提供があれば提出があったものとみなされます。
- 非居住者が会社へ提供する:非居住者が自分の氏名又は名称を明らかにする措置を講じていることが要件です。
- 会社が満たす要件:提供を適正に受ける措置、提供した非居住者を特定する措置、画面への表示と書面への出力をする措置の3つです。
- 会社が税務署へ送る:会社が電子署名をして電子証明書を付け、下の解像度・階調・形式の要件を満たせば、スキャナで読み取ったイメージデータなどを e-Tax で送信できます。
電磁的記録は、解像度200dpi相当以上・256階調以上(カラーも可)・PDF形式が要件で、非居住者から会社へは居住者証明書などの一定の添付書類に、会社から税務署へは全ての記録に求められます。JPEG・JPG形式の電磁的記録は令和10年1月1日から選べます。
年末調整との関係
非居住者は年末調整の対象になりません。一方、年の中途で海外の支店等へ転勤して非居住者となった人は、年末調整の対象となる人(扶養控除等申告書を出している人など)であれば、非居住者となった時に年末調整をします。
このときの扶養親族などの判定は、出国の時の現況で行います(所得税法85条)。対象外の区分は年末調整の対象とならない人にまとめています。
- 非居住者は、国内に住所も1年以上の居所も有しない個人で、国籍やビザでは決まらない
- 国内法の税率は、給与・報酬・配当(上場株式等の配当等を除く)などが20.42%、預貯金の利子などが15.315%、土地等の譲渡対価が10.21%(あらまし 令和8年版)
- 租税条約の届出書は、支払を受ける人が支払者ごとに作り、最初の支払の日の前日までに支払者経由で出す
- 間に合わなければ国内法の税率で源泉徴収し、後日、届出書(必要な添付書類を含む)と還付請求書(主に様式11)を支払者経由で支払者の納税地の所轄税務署長に出せば差額の還付を請求できる
- 非居住者は年末調整の対象外。年の中途で海外転勤により非居住者となった人は、年末調整の対象となる人であればその時に年末調整する
よくある質問
租税条約の届出書が最初の支払に間に合わなかったら、どうなりますか?
支払の際は国内法の税率で源泉徴収します。後日、届出書(必要な添付書類を含む)とともに還付請求書(主に様式11)を支払者を通じて支払者の納税地の所轄税務署長に出せば、条約の軽減・免除を受けた場合の税額との差額の還付を請求できます(国税庁 タックスアンサー No.2888)。
租税条約に関する届出書は、誰が作ってどこに出しますか?
支払を受ける非居住者等が、支払者ごとに作ります。最初に支払を受ける日の前日までに、支払者を経由して、支払者の納税地の所轄税務署長に出します。会社は受け取った届出書を税務署へ出す役です。
日本人の社員でも非居住者になりますか?
なります。居住者か非居住者かは国籍や在留資格に関係なく、国内に住所があるか、国内に継続して1年以上居所があるかなどで判定します。海外勤務などで国外に継続して1年以上居住する予定で出国した人は、通常は非居住者として扱われます(あらまし 令和8年版、所得税法施行令15条の推定)。最終的には生活の本拠がどこかを客観的事実で判定します。
出典
- 国税庁「源泉徴収のあらまし(令和8年版)第10 非居住者又は外国法人に支払う所得の源泉徴収事務」
- 国税庁「源泉徴収のあらまし(令和8年版)第1 源泉徴収制度について」(住所・居所の注)
- 国税庁「源泉徴収のあらまし(令和8年版)第2 給与所得の源泉徴収事務」(年末調整の対象とならない人・年末調整を行う時期)
- 国税庁 タックスアンサー No.2888「租税条約に関する届出書の提出(源泉徴収関係)」
- 国税庁「租税条約に関する届出書等に記載すべき事項等の電磁的提供等について」
- 国税庁「A3 源泉所得税(租税条約等)関係」(様式の一覧)
- 国税庁「租税条約に関する源泉徴収税額の還付請求(様式11)」
この記事は一般的な情報提供であり、個別の事案に対する助言ではありません。相手が非居住者に当たるか、どの租税条約が適用されるかは、個々の事実関係によって判断されます。具体的な対応は、税理士または所轄の税務署にご相談ください。