医療費控除の明細書の書き方|通知・領収書の振分けと記入例
医療費控除の明細書では、支払額欄には補填前の対象医療費を書き、補填額は別欄に記入します。用紙は通知の区画と通知分以外の明細の区画に分かれています。同じ支出は重ねて集計しません。
この記事は通常の医療費控除の紙の明細書について、手元の資料から欄へ転記する手順を扱います。国税庁の明細書PDFと並べて確認できます。控除額・対象費用の判断は医療費控除の計算と対象費用へ進んでください。
どの資料を、どの欄へ写すか
先に資料を通知分とそれ以外に分けると、同じ領収書を重ねて集計するのを防げます。
次の対応表で通知欄を使うのは、必要事項を備えた医療保険者等の紙通知を添付する場合です。申告する本人が、自分又は生計を一にする配偶者その他の親族のために、その年中に支払った対象医療費を整理します。通知欄に計上した支出は明細欄へ重ねません。補填額は給付対象の医療費が上限です。
| 手元の資料 | 明細書の記入先 | 転記する内容 |
|---|---|---|
| 添付する医療費通知 | 「医療費通知に記載された事項」 | 通知の自己負担額、当年の実支払額、対応する補填額 |
| 通知分以外の領収書 | 「医療費(上記1以外)の明細」 | 受診者・支払先・区分・支払額・対応する補填額 |
| 保険金等の給付明細 | 対応する医療費の補填欄 | 医療費の補填分。支払額から引かず、別欄に記入 |
| 対象となる通院費の記録 | 通知分以外の明細の「その他の医療費」 | 受診者・交通機関等の支払先・対象の運賃 |
医療費通知がない場合も、領収書から明細欄を作れます。通知のない人まで通知欄を埋める必要はありません。用紙は国税庁の様式一覧に、明細書と、書き切れない場合の次葉が掲載されています。
通知欄は自己負担額と当年支払額を分ける
通知の合計をそのまま当年の支払額にしないようにします。通知に前年支払分が入っていたり、窓口で実際に支払った金額と異なったりする場合があるためです。
必要事項を備えた紙の通知を添付する場合の対応表です。本人が自分又は同一生計の配偶者その他親族のために支払った対象医療費を整理し、アには当年の実支払分だけを記入します。補填額は給付対象医療費を上限とします。
| 通知欄 | 写す金額 | 確認する資料 |
|---|---|---|
| 自己負担額 | 通知に記載された本人負担分の合計 | 添付する通知。複数あれば合計 |
| その年中の実支払額(ア) | 通知記載分のうち、申告対象の年中に実際に支払った額 | 通知と領収書。前年支払分・未払分を除く |
| 補填される金額(イ) | アに対応する医療費の補填額 | 保険金・高額療養費等の給付明細 |
未払いの医療費は、実際に支払った年の対象です。診療年月だけで年分を決めず、支払いの記録と照らします。
通知を使えるかは記載内容で確認する
紙通知は、被保険者等の氏名・療養年月・受診者・医療機関名・支払額・保険者名を確認します(後期高齢者医療広域連合の発行分は受診者を除く)。根拠は国税庁「医療費を支払ったとき」です。
通知を添付する際、保険者番号と被保険者等記号・番号が書かれている場合は、その番号部分を復元できない程度に塗り潰します。金額・受診者・支払先など、明細の照合に使う部分と区別します。
明細欄は受診者と支払先ごとにまとめる
通知欄に載せた分を除き、対象医療費を受診者と病院・薬局等の組合せでまとめられます。対象は、当年中に本人が自分又は生計を一にする配偶者その他親族のために支払った医療費です。同じ病院でも、受診者が異なれば行を分けます。
次の表は、通知欄との重複を除いた当年支払分の明細欄です。対象は本人が自分又は同一生計の配偶者その他親族のために支払った医療費です。補填額は給付対象医療費が上限です。
| 記入欄 | 書くこと | 間違えやすい点 |
|---|---|---|
| 医療を受けた方 | 受診者の氏名 | 申告者と受診者は別の人の場合がある |
| 支払先 | 病院・診療所・薬局などの名称 | 同じ受診者でも病院・薬局が違えば分ける |
| 医療費の区分 | 診療・治療、介護保険サービス、医薬品購入、その他の医療費から該当項目 | 該当するものは複数チェックできる |
| 支払った医療費 | 補填額を差し引く前の対象医療費 | 差引後の額を入れると補填額を二重に引いてしまう |
| 補填される金額 | その行の医療費に対応する補填額 | 他の受診や別の家族の費用まで減らさない |
通常必要な通院費で控除対象となるものは、「その他の医療費」に区分します。乗継ぎ等で支払先の交通機関が複数ある場合は、まとめて記入できます。作業メモに受診日・受診者・経路・運賃を残すと、集計元をたどれます。
「医薬品購入」にチェックすれば購入額がそのまま対象になる、という意味ではありません。費用自体の対象・対象外は対象医療費の表で確認してから集計します。
補填額は支払額と対応させてから集計する
医療費を補う保険金等は、給付の目的となった医療費を上限に記入します。超過分を他の医療費から引きません。申告書の提出時までに未確定なら給付対象医療費を上限に見込額を記入し、後日受領額と異なった場合は申告内容を訂正します。
同じ病院の領収書をまとめる場合も、給付の対象と対象外を区別した計算メモを残します。先に病院全体の合計から給付金全額を引くと、対応していない医療費まで減らすおそれがあります。
通知と領収書を併用する記入例
通知欄と明細欄を別々に埋め、最後に支払額同士・補填額同士を合計します。以下は転記の仮定例であり、控除額や還付額の例ではありません。
仮定例:同じ対象年分の年中に本人が自分の対象医療費を支払い、必要事項を備えた紙の通知を添付する場合です。通知の自己負担額には前年支払分が含まれ、当年の実支払額とは異なるとします。仮定例の補填額は確定済みで対応する医療費以下とします。領収書分は通知欄に含まれない費用で、同じ受診者・A医院の支払いをまとめます。
| 記入先 | 医療費の記入額 | 対応する補填額 |
|---|---|---|
| 通知の自己負担額 | 90,000円 | この欄には記入しない |
| 通知の当年支払額(ア)・補填額(イ) | 80,000円 | 10,000円 |
| 通知分以外のA医院の明細 | 5,000円+8,000円=13,000円 | 0円 |
| 医療費の合計 A・B | 93,000円 | 10,000円 |
通知の自己負担額の行は、Aへの加算に使いません。Aは支払医療費の合計、Bは補填額の合計です。通知欄からAへ加えるのは、当年に実際に支払った額のアであり、前年分を含むことがある通知の自己負担額全体ではありません。
通知分以外の明細が複数行ある場合は、支払額をウ、補填額をエへ集計します。Aにはアとウ、Bにはイとエを合算します。通知欄に計上した支出を明細欄へ重ねず、支払額と補填額を混ぜないようにします。
ここまでのA・Bを「控除額の計算」へ進めます。所得金額の合計額や足切りの計算は医療費控除の計算の解説で確認してください。最後に求めた医療費控除額を、申告書第一表の医療費控除欄へ転記します。
提出前は証明書と保存記録を確認する
令和2年分以後の紙申告では明細書を確定申告書に添付します。通知欄による簡略記載に使った紙通知は原本を添付します。領収書の扱い・保存期間・例外は領収書の保存期間の注で確認できます。
おむつ代や治療用眼鏡など、証明書が必要な費用もあります。主な例は、医師のおむつ使用証明書と、医師が一定の病気名と治療を必要とする症状を記載した眼鏡の処方箋です。費用に対応する書類の一覧と代替書類は国税庁「医療費控除の明細書の記載要領」で確認します。
記載要領に挙げられた費用の証明書は取得が必要です。記載要領に挙げられた費用は、証明書の証明年月日・証明書名・証明者名を明細書の欄や余白へ記載すれば添付・提示を省略できますが、省略した証明書などは確定申告期限等から5年間保存します。
作業記録には、申告年分、通知欄へ入れた支出、明細欄の集計元、補填額の根拠、手元の保存先を残すと、後日訂正する際に戻れます。通知分を集計済みにした印と、保険金の見込・確定の区別も一緒に残します。
明細書以外を含む申告全体の手順は確定申告のやり方、還付申告の時期は還付申告の提出期間で確認できます。
最後に合計の転記元を見直す
- 通知の自己負担額と当年支払額を取り違えていないか。
- 通知欄と明細欄に同じ支出を重ねていないか。
- 支払額を補填差引後の額にしていないか。
- 給付の対象医療費を超える補填額を、他の費用から引いていないか。
よくある質問
医療費通知がない場合も明細書を作れますか?
作れます。本人がその年中に自分又は生計を一にする配偶者その他親族のために支払った対象医療費を、領収書から受診者・病院等ごとに明細欄へまとめます。通知欄を使わない場合は、通知欄への記入は不要です。
同じ病院なら家族全員をまとめて書けますか?
受診者が違う場合は行を分けます。領収書をまとめられるのは、本人がその年中に自分又は同一生計の配偶者その他親族のために支払った対象医療費について、受診者と病院等の組合せごとです。通知欄に載せた支出は明細欄へ重ねません。
支払額には保険金を引いた後の金額を書きますか?
支払額欄には補填額を引く前の対象医療費を記入し、医療費の補填額は別欄に書きます。補填額は給付対象の医療費が上限で、超過分を他の医療費から引きません。見込額の扱いは補填額の記入手順で確認できます。
出典
本記事は一般的な情報提供を目的としています。個別の税務相談には応じられません。実際の適用や申告内容の判断は、所轄税務署・税理士にご確認ください。