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退職所得の源泉徴収票の書き方|令和8年分から全員分を税務署へ・新様式の欄と記入例

結論から言うと、退職金を払ったときに作る「退職所得の源泉徴収票・特別徴収票」は、令和8年分で3か所変わりました。①税務署への提出範囲が法人の役員だけ→退職手当等を支払った全員に広がった。②いっぽうで市区町村への特別徴収票は、eLTAXによる提出方法が整備されるまでの間、作成・提出を省略できる。③【番号】欄が新設され、あわせて令和8年8月に税務署提出用の書面様式が変わって【無効区分】欄が付いた。

変わっていないのは、いちばん大事な義務です。本人への交付は「提出範囲」と関係なく、退職の日以後1か月以内に全員へ。所得税法226条2項が源泉徴収票を「二通」作らせ、一通を税務署長に、他の一通を本人に、と定めているからです。役員でも従業員でもパートでも、税額が0円でも変わりません。

この記事は、令和8年分の手引と令和8年8月改訂の記載要領を突き合わせて、欄ごとに何を書くかを「退職所得の受給に関する申告書」を受け取った場合・受け取っていない場合の2つの記入例で通します。退職金そのものの税額計算は退職金の税金、受け取る側が出す申告書は退職所得の受給に関する申告書で扱っています。

令和8年分で変わった3つ

国税庁の「令和8年分 給与所得の源泉徴収票等の法定調書の作成と提出の手引」は、令和8年分から適用される改正として、退職所得の源泉徴収票について提出省略範囲の改正と【番号】欄の創設の2点を挙げ、書面様式の変更を国税システムの更改に伴うものとして別に挙げています。

変わったところ令和7年分まで令和8年分から
税務署への提出範囲法人の役員(取締役・執行役・会計参与・監査役・理事・監事・清算人・相談役・顧問等)に支払う退職手当等だけその年中に支払が確定した退職手当等のすべて
市区町村への特別徴収票提出範囲に入るものは提出eLTAXによる提出方法が整備されるまでの間、作成・提出を省略できる
【番号】欄無し新設(手引が挙げる令和8年分の改正事項)
書面の様式従来の様式令和8年8月に変更(国税システムの更改に伴うもの)。【無効区分】欄はこちら側で付いた欄

手引はこの改正を「令和8年分以降、退職所得の源泉徴収票の提出省略範囲を定める規定が廃止され、すべての居住者に対して支払う退職手当等に係る退職所得の源泉徴収票について、税務署に提出しなければならないこととされました」と説明しています。タックスアンサーNo.7421(退職所得の源泉徴収票の提出範囲と提出枚数等。令和8年4月1日現在法令等)も、令和7年12月31日以前に支払うべき退職手当等については税務署と市区町村への提出が法人の役員に限られていたことを注記した上で、いまは「退職手当等を支払ったすべての方について作成し、提出する必要があります」としています。

判定は「退職日」ではなく「支払うべき日」

拡大の対象は令和8年1月1日以後に支払うべき退職手当等です。退職金の支給が退職の2か月後という会社では、令和7年12月に退職した人でも、支払うべき日が令和8年1月以後なら新しい提出範囲に入ります。源泉徴収票の各欄が「その年中に支払の確定した」金額を書く作りになっているのと同じ基準です。

従業員分を「本人に渡して終わり」で処理してきた会社は、ここで作業が1つ増えます。もっとも、税務署へは1件ずつ出さずに、その年中に退職した人の分をまとめて翌年1月31日までに出してよい取り扱いが続いています。法定調書合計表を作る毎年1月の作業に、退職金の支払いがなかったかの確認を足しておくのが現実的です。

交付は「提出範囲」と無関係。退職の日以後1か月以内に全員へ

提出範囲の話と交付の話は、条文の上では別です。所得税法226条2項は次のとおりです。

居住者に対し国内において第三十条第一項(退職所得)に規定する退職手当等(第二百条(源泉徴収を要しない退職手当等の支払者)の規定によりその所得税を徴収して納付することを要しないものとされる退職手当等を除く。以下この章において「退職手当等」という。)の支払をする者は、財務省令で定めるところにより、その年において支払の確定した退職手当等について、その退職手当等の支払を受ける者の各人別に源泉徴収票二通を作成し、その退職の日以後一月以内に、一通を税務署長に提出し、他の一通を退職手当等の支払を受ける者に交付しなければならない。この場合においては、前項ただし書の規定を準用する。

「二通を作成し」「一通を税務署長に提出し、他の一通を……交付しなければならない」と、提出と交付が同じ一文に並んでいます。令和7年分までの「役員だけ提出」は、この条文の下にあった提出省略の扱いでした。交付のほうは省略の対象ではなかったので、令和7年分までも全員に交付する義務があり、令和8年分でも変わっていません。手引の表も、受給者への交付だけは提出範囲にかかわらず全ての受給者へ、退職後1か月以内と書き分けています。

あらかじめ本人の承諾を得るなど一定の要件を満たせば、書面の交付に代えて電磁的方法で提供することもできます(226条4項)。ただし退職者は退職後に会社のシステムへ入れなくなることが多く、紙で郵送するほうが確実です。

退職の日 1か月 翌年1月31日 ① 本人へ交付(全員・期限はここだけ) ② 税務署へ提出(1か月以内。年内の退職者分を翌年1月31日までに一括でも可) ③ 市区町村へ提出(当面は省略できる)
退職の日を起点にした3つの行き先。期限が動かないのは①の交付だけで、②は一括提出が認められ、③は当面いらない。

提出先・提出期限・部数(本人/税務署/市区町村)

行き先どこへ期限部数
本人(受給者交付用)退職した本人退職後1か月以内。提出範囲にかかわらず全員1部
税務署(源泉徴収票)退職手当等の支払事務を取り扱う事務所・事業所などの所在地を所轄する税務署退職後1か月以内。その年中に退職した人の分をまとめて翌年1月31日までに提出しても差し支えない1部
市区町村(特別徴収票)受給者のその年1月1日現在の住所地の市区町村退職後1か月以内。ただしeLTAXによる提出方法が整備されるまでの間、作成・提出を省略できる1部

令和8年分の一括提出の期限は、手引が令和9年2月1日としています。令和9年1月31日が日曜日にあたるためです。市区町村の判定日がその年1月1日であることも忘れやすいところで、退職後に引っ越していても、提出先は退職した年の1月1日に住んでいた市区町村です。

退職金の手取りを計算する(勤続年数・役員在任年数から自動計算)

区分の3段は、申告書の有無で決まる

この票でいちばん迷うのが、支払金額・源泉徴収税額・特別徴収税額の欄が上・中・下の3段になっている点です。どの段を使うかは、本人から「退職所得の受給に関する申告書」を受け取ったかどうかと、その年に他社からも退職金が出ているかどうかで決まります。様式には段ごとに根拠条文が刷ってあります。

段使う場面様式に刷られた根拠
上段申告書あり+その年に他の退職手当等なし(いちばん多い)所得税法201条1項1号/地方税法50条の6第1項1号・328条の6第1項1号適用分
中段申告書あり+その年に他の退職手当等あり所得税法201条1項2号/地方税法50条の6第1項2号・328条の6第1項2号適用分
下段申告書なし(20.42%で源泉徴収した場合)所得税法201条3項/地方税法50条の6第2項・328条の6第2項適用分

ふつうの退職なら上段だけを埋め、中段・下段は空欄で構いません。段が3つある理由は、所得税の税額の決まり方が3通りあることそのものです。

申告書を受け取ったか はい 他社の退職金があるか いいえ 上段(201条1項1号) ある 中段(201条1項2号) いいえ 下段(201条3項・20.42%) 住民税の欄は、下段でも退職所得控除と2分の1をそのまま使って計算する (地方税法50条の6第2項・328条の6第2項。他社分との通算だけが無くなる)
使う段は申告書の有無で決まる。所得税だけが下段で20.42%に跳ね、住民税の計算は段によって変わらない。

欄ごとの記入例(申告書あり/なしの2例)

同じ退職金で、申告書を受け取った場合と受け取っていない場合を並べます。設例は退職金1,200万円・入社 平成20年8月1日・退職 令和8年10月31日・定年退職ではない一般の退職で、他社の退職金と前年以前の退職金はありません。

まず両方に共通する計算です。勤続期間は18年と3か月弱(18年2か月30日)で、1年未満の端数は1年に切り上げるので勤続年数は19年。20年以下なので退職所得控除額は40万円×19年=760万円。課税退職所得金額は(1,200万円−760万円)×2分の1=220万円です。

欄申告書あり(上段)申告書なし(下段)
支払金額12,000,00012,000,000
源泉徴収税額125,0722,450,400
特別徴収税額(市町村民税)132,000132,000
特別徴収税額(道府県民税)88,00088,000
退職所得控除額(万円単位の欄)760760
勤続年数1919
就職年月日/退職年月日平成20年8月1日/令和8年10月31日平成20年8月1日/令和8年10月31日
摘要勤続年数の計算の基礎(平成20年8月1日〜令和8年10月31日)同じ

源泉徴収税額の出し方だけ補足します。申告書ありは、課税退職所得金額220万円に所得税の税率10%を掛けて控除額97,500円を引いた122,500円に、復興特別所得税を含めた102.1%を掛けて1円未満を切り捨てた125,072円。申告書なしは、退職所得控除も2分の1も使わず、支払額そのものに20.42%を掛けた2,450,400円です。差は2,325,328円で、本人は確定申告しなければ取り戻せません。

住民税の欄は、どちらも課税退職所得金額220万円に市町村民税6%・道府県民税4%を掛けた額で同じです。申告書が無いと住民税まで跳ねる、ではありません。地方税法50条の6第2項・328条の6第2項が、申告書が無い場合も通常の計算を指しているからです(他社分との通算だけが無くなります)。出さなかったときに何が起きるかは退職所得の受給に関する申告書で扱っています。

退職所得控除額の欄は「万円」単位

様式の欄見出しが「万円」になっています。760万円なら760と書きます。退職所得控除額は40万円・70万円・障害退職の100万円加算という万円単位の要素だけで組み立てるので、この欄は万円で足ります。7,600,000 と書くと桁が合いません。

勤続年数の欄に書くのは税額計算の基礎にした年数です。退職金規程で休職期間を支給額の計算から除いていても、税務上の勤続期間は実際に在籍した期間で数えるので、「規程上の勤続年数」と票に書く年数はずれることがあります。書くのは後者です。

【番号】欄(令和8年分で新設)の7区分

令和8年8月改訂の様式で、区分の3段の右隣に【番号】欄が付きました。支払った退職手当等が次の区分に当たるときだけ番号を書き、どれにも当たらなければ空欄です。ふつうの退職金は空欄になります。

番号該当する場合記載要領が挙げる根拠
1退職手当等とみなされる一時金(2を除く)所得税法31条
2確定拠出型年金(DC)の老齢給付金として支払われる一時金所得税法施行令72条3項7号
3特定譲渡制限付株式・承継譲渡制限付株式の譲渡制限が解除されたことにより受けた経済的利益所得税法施行令84条1項
4有利な条件で発行された新株予約権等の行使で取得した株式に係る経済的利益所得税法施行令84条3項
5一般的退職手当等と3の経済的利益の合計から成る場合—
6一般的退職手当等と4の経済的利益の合計から成る場合—
7一般的退職手当等と3・4の経済的利益の合計から成る場合—

5から7に当たるときは、その経済的利益の価額を「摘要」欄に書く義務が付いてきます(手引の記載要領④、記載要領の備考2(2))。番号だけ書いて摘要を空けると不足になります。譲渡制限付株式やストックオプションを退職に合わせて清算する会社は、ここが新しい作業です。

新様式の記載ルール — 機械で読み取る前提になった

令和8年8月に税務署提出用の書面様式が変わりました。手引はこれを令和8年9月の国税システムの更改に伴う変更と説明しています。書面で出す会社は、国税庁ホームページの最新様式を使います。新しい記載要領は冒頭に、それまで書かれていなかった種類の指示を並べています。

「同上」を禁じる指示と矢印での訂正の指示は、人が読む前提の帳票では出てこないものです。手書きで出す会社は、書き直しのために様式を1枚多く印刷しておくほうが早いことがあります。合計表についても、記載要領は「合計表をこの様式に準じて作成し、添付すること」としています。

特別徴収票は住民税側で2本立て(地方税法50条の9・328条の14)

「退職所得の源泉徴収票・特別徴収票」という長い名前は、1枚の紙に所得税側と住民税側の2つの帳票が載っているからです。しかも住民税側は、道府県民税と市町村民税で別の条文が別に義務を課しています。道府県民税側が地方税法50条の9です。

分離課税に係る所得割の特別徴収義務者は、総務省令で定めるところにより、その年において支払の確定した退職手当等について、その退職手当等の支払を受ける者の各人別に特別徴収票二通を作成し、その退職の日以後一月以内に、第三百二十八条の十四の特別徴収票とあわせて、一通を市町村長に提出し、他の一通を退職手当等の支払を受ける者に交付しなければならない。ただし、総務省令で定める場合は、この限りでない。

市町村民税側が328条の14です。

第三百二十八条の五第一項に規定する特別徴収義務者は、総務省令で定めるところにより、その年において支払の確定した退職手当等について、その退職手当等の支払を受ける者の各人別に特別徴収票二通を作成し、その退職の日以後一月以内に、一通を市町村長に提出し、他の一通を退職手当等の支払を受ける者に交付しなければならない。ただし、総務省令で定める場合は、この限りでない。

50条の9が「第三百二十八条の十四の特別徴収票とあわせて」と書いているとおり、2つの義務を1枚でまとめて果たす建て方です。特別徴収税額の欄が市町村民税と道府県民税の2列に分かれているのは、この2本立ての反映です。どちらの条文も末尾に「ただし、総務省令で定める場合は、この限りでない」を置いていて、いま市区町村への提出を省略できるのはこのただし書の側の話です。

省略できるのは「市区町村への提出」だけ

天引きした住民税そのものは、従来どおり納入申告書とあわせて納めます。省略できるのは市区町村提出用の作成と提出で、しかもeLTAXによる提出方法が整備されるまでの間という期限付きです。整備されたら戻ってくる作業として覚えておくのが安全です。

落とし穴

よくある質問

令和8年から、従業員の退職金も税務署に出すのですか?

はい。令和8年1月1日以後に支払うべき退職手当等については、法人の役員かどうかに関係なく、支払ったすべての人の分を税務署へ提出します。令和7年分までは提出が法人の役員分に限られていましたが、その省略範囲を定める規定が廃止されました。提出は1件ずつでなくてよく、その年中に退職した人の分をまとめて翌年1月31日までに出して差し支えありません(令和8年分は令和9年2月1日)。いっぽう市区町村への特別徴収票は、eLTAXによる提出方法が整備されるまでの間、作成・提出を省略できます。

退職所得控除額の欄は「760万円」と書くのですか?

いいえ。この欄の見出しは「万円」なので、760万円なら760と書きます。退職所得控除額は40万円・70万円・障害退職の100万円加算という万円単位の要素だけで計算するため、万円単位の欄で足りる作りになっています。7,600,000 や 760万円 と書くと桁が合いません。

申告書を受け取っていないと、住民税も高くなりますか?

なりません。地方税法50条の6第2項(道府県民税)と328条の6第2項(市町村民税)が、申告書の提出がない場合も通常の計算によるとしているので、退職所得控除も2分の1もそのまま入ります。跳ねるのは所得税だけで、支払額に20.42%を掛けた額になります。ただし申告書がある場合の規定には他社の退職金と合算してから既徴収額を差し引く仕組みがあり、申告書が無いとその通算が働きません。その年に他社からも退職金が出ている人に限って住民税が足りなくなり、後から市町村が普通徴収で取りに来ることがあります。他社の退職金が無ければ、住民税は申告書の有無で1円も変わりません。

【番号】欄には何を書きますか?

令和8年分の様式で新設された欄で、支払った退職手当等が特定の区分に当たるときだけ番号を書きます。退職手当等とみなされる一時金は1、確定拠出型年金(DC)の老齢給付金として支払われる一時金は2、譲渡制限付株式の制限解除による経済的利益は3、新株予約権等の行使による経済的利益は4、一般的退職手当等とこれらの経済的利益の合計から成る場合は5から7です。どれにも当たらないふつうの退職金は空欄にします。5から7のときは、その経済的利益の価額を摘要欄に書く必要があります。

本人が源泉徴収票を紛失したら再発行できますか?

できます。会社に残っているデータから作り直して渡します。住宅ローンの審査や転職先から求められて依頼が来ることがあります。本人が確定申告をするときに退職所得の金額を書き写すのに使うので、保管してもらうよう伝えておくと確実です。

区分の3段は、使わない段も埋めるのですか?

空欄で構いません。申告書を受け取っていて他社の退職金が無いという最も多いパターンでは、上段だけを埋めます。中段は申告書があって他社の退職金がある場合、下段は申告書が無い場合の段です。なお新様式の記載要領は「同上」や「〃」の記載を禁じているので、同じ内容を別の段に写して埋めることはしません。

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出典

本記事は一般的な情報提供を目的としたものです。記入例の金額は架空の設例で、実際の記載は国税庁が公表する最新の様式・記載要領でご確認ください。個別の判断は所轄税務署・税理士にご確認ください。

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