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源泉徴収票の再発行を頼まれたら|会社の対応手順・義務の範囲・不交付届出との違い

結論から言うと、源泉徴収票をなくした人から再発行を頼まれたら、応じるかどうかを決めて作り直すのは、その給与を支払った会社(給与等の支払者)です。所得税法226条は源泉徴収票を作って本人に交付する義務を定めていますが、いちど交付した票をなくした人に作り直して渡す「再交付」の定めは、条文にありません。国税庁は「源泉徴収票不交付の届出手続」のページに「既に交付された源泉徴収票の再発行については、この手続の対象外です」と書き、届出書の前に確かめる流れ図でも、一度交付を受けた源泉徴収票の再発行は「ご自身で勤務先に対し、再発行を依頼してください」と案内しています。

ただし、再発行を頼まれたように見えて、実は会社に交付の義務がある場面が2つあります。1つは、会社がそもそも交付していなかった場合(渡し漏れ・宛先不明で返送されたなど)で、これは再発行ではなく最初の交付の話です。もう1つは、PDFやWeb明細などの電子交付で渡した人から紙の源泉徴収票を求められた場合で、所得税法226条4項ただし書により書面で交付しなければならず、正当な理由なく拒むと同法242条の罰則の対象になります。

この記事は会社の経理・人事担当の目線で、依頼を受けてから渡すまでの手順、退職者・中途入社者・倒産のときの扱い、本人が税務署に出す「源泉徴収票不交付の届出書」との違いを、条文と国税庁の資料で確かめて整理します。欄の読み方は源泉徴収票の見方、退職金の票の書き方は退職所得の源泉徴収票の書き方で扱っています。

再発行の義務はあるか — 条文にあること・無いこと

源泉徴収票の交付は、所得税法226条1項が定める給与等の支払者の義務です。条文は、居住者に国内で給与等を支払う者に、支払の確定した給与等について源泉徴収票を2通作り、1通を税務署長に提出し、他の1通を本人に交付するよう求めています。交付の期限は、同項によると「その年の翌年一月三十一日まで(年の中途において退職した居住者については、その退職の日以後一月以内)」です。

令和8年分の給与所得の源泉徴収票なら、国税庁の手引は、提出範囲にかかわらず全ての受給者について作成し、「令和9年2月1日まで(年の中途で退職した方の場合は、退職の日以後1か月以内)に受給者に交付しなければなりません」としています。令和8年分の期限が条文の「翌年一月三十一日」と1日ずれるのは、令和9年1月31日が日曜日に当たるためです。なお、同じ226条1項にはただし書があり、財務省令で定めるところにより税務署長に申請して承認を受けた場合は同項の義務が及びませんが、これは再発行とは関係しない例外です。

依頼の中身条文の手当て会社がすること
会社がそもそも交付していない(渡し漏れ・宛先不明で返送されたなど)所得税法226条1項の交付義務給与所得の源泉徴収票の交付期限(翌年1月31日。令和8年分は国税庁の手引で令和9年2月1日。年の中途の退職者は退職の日以後1か月以内)までに交付する。期限を過ぎていても、交付していないなら交付する
電子交付で受け取った人が、紙の源泉徴収票を求めた所得税法226条4項ただし書書面の源泉徴収票を交付する
書面で受け取った票をなくした・汚した再交付の定めは無い会社の判断で、当初と同じ内容の票を作り直して渡す

罰則の側から見ても、線の引き方は同じです。所得税法242条は、226条1項から3項までの源泉徴収票を「交付の期限までに」本人に交付しなかった者(6号)と、正当な理由がないのに226条4項ただし書の書面交付の請求を拒んだ者(8号)を、1年以下の拘禁刑又は50万円以下の罰金に処すると定めています。242条の各号には、いちど交付した票をなくした人への再交付を断ることを挙げた号はありません。

「条文に定めが無い」は「断ってよい」と同じではない 再交付の定めが無いのは、所得税法には作り直して渡すことを義務づける規定も、その期限や罰則も無いという意味です。本人は転職先の年末調整や確定申告で源泉徴収票の数字を使うので、会社が断ると本人の手続きが止まります。また、本人が「受け取っていない」と言う場合は、交付したかどうかの事実が争点になり、交付していなければ226条1項の義務の話に戻ります。郵送・手渡し・電子交付の記録を確かめてから答えると、行き違いを避けられます。

依頼を受けてから渡すまでの5つの手順

次の手順は、条文や国税庁の資料が定める手続ではなく、会社の実務として依頼を受けてから渡すまでに確かめる点を並べたものです。条文や手引で決まっている点は、その都度根拠を書いています。

再発行の依頼を受けた その票を本人に交付したか(記録を確かめる) 交付していない 電子交付した 書面で交付した 最初の交付 226条1項(退職所得は2項)の 交付義務。期限を過ぎて いてもすぐ交付する 書面を求められた 226条4項ただし書で 書面を交付する (正当な理由なく拒むと242条8号) なくした・汚した 再交付の定めは無い 会社の判断で当初と 同じ内容を作り直す どの場合も、本人に交付する票にはマイナンバーを記載しない ※ 給与所得・退職所得の源泉徴収票の場合。公的年金等の源泉徴収票は年金の支払者が作る
再発行の依頼を受けたときの判断の流れ。分かれ目は「その票を交付したか」と「どの方法で交付したか」です。
  1. どの票の、何年分かを確かめる。給与の源泉徴収票(所得税法226条1項)と退職金の源泉徴収票(同条2項)は別の票です。年の途中で退職して退職金も受け取った人には給与の票と退職金の票の両方があるので、どちらが要るのかを聞きます。公的年金等の源泉徴収票は、同条3項によりその公的年金等の支払者が作るので、会社では作れません(会社が公的年金等の支払者である場合を除きます)。
  2. 本人かどうかと、送り先を確かめる。本人に交付する源泉徴収票には、氏名・住所と給与の支払金額などが載ります。退職者は住所が変わっていることがあるので、在籍時の情報と照らして本人であることと現在の送り先を確かめます。
  3. 当初交付した内容と同じものを作る。源泉徴収簿や給与システムのデータから、当初交付したものと同じ年分・同じ内容で作ります。作り直す途中で当初の票の誤りに気づいたときは、作り直しではなく訂正の扱いになり、本人には正しい内容の票を交付し直します。税務署に提出済みの分は国税庁の手引の第9章(法定調書の訂正・追加)の手順で無効分と訂正分を出し、みなし提出の特例で給与支払報告書だけを出している年分は、提出先の市区町村の訂正の手順を確かめます。照合した所得税法226条・施行規則93条と国税庁の手引には、作り直した票に「再発行」と表示する定めはありません。
  4. マイナンバーは記載しない。国税庁の手引は、記載要領の注で「受給者に交付する源泉徴収票には、マイナンバーは記載しません」とし、支払者欄についても「マイナンバー及び法人番号は記載しません」としています。所得税法施行規則93条1項1号ロ・6号イ(2)も、本人に交付する票の記載事項に、本人・配偶者・扶養親族の個人番号と支払者の個人番号・法人番号を挙げていません。税務署提出用のデータから出力するときは、受給者交付用の様式で出します。
  5. 渡し方を決めて、記録を残す。書面なら手渡しか郵送です。PDFなどの電子データで渡す場合は、当初の交付と同じく、所得税法226条4項の電子交付の要件(本人の承諾など。電子交付の節)に沿った方法にし、電子交付を受けない旨の申出をした人には書面で渡します。いつ・誰に・どの方法で渡したかを記録しておくと、「届いていない」と言われたときに確かめられます。

退職者・中途入社者・倒産のとき

退職者から頼まれたとき

退職した人から頼まれても、作り直せるのは給与を支払った会社であることに変わりはありません。年の途中で退職した人への給与所得の源泉徴収票は、所得税法226条1項かっこ書により退職の日以後1か月以内に交付する決まりなので、退職後に「まだ届いていない」と言われたら、まず交付したかどうかの記録を確かめます。

中途入社者が前職の源泉徴収票を出せないとき(受け入れる会社の側)

年の途中で入社した人のうち、新しい会社で年末調整の対象になる人(その会社に扶養控除等(異動)申告書を出し、年末まで勤めている人など。本年中の主たる給与の収入金額が2,000万円を超える人などは対象外)で、入社前に前の勤務先に扶養控除等(異動)申告書を出して給与を受けていた人は、前職分の給与を含めて年末調整をします。国税庁「令和8年分 年末調整のしかた」は、前職分の給与と徴収税額は前の勤務先から交付を受けた「給与所得の源泉徴収票」などで確認するとし、「その確認ができるまではその人の年末調整は見合わせてください」としています。受け入れた会社としては、前職分を確認できるまでその人の年末調整を見合わせる、というのが手引の示す扱いです。前職の会社に再発行を頼んでも年末調整に間に合わないときの進め方は、会社として所轄税務署に確かめます(本人が確定申告をするかどうかは、本人と税務署の事柄です)。

会社が破産した・連絡がつかないとき

破産手続開始の決定があった場合、破産法78条1項により、破産財団に属する財産の管理及び処分をする権利は裁判所が選任した破産管財人に専属します。条文が定めるのは財産の管理処分権で、源泉徴収票を誰が作るかまでは定めていませんが、会社の財産の管理が破産管財人に移るので、破産手続中の会社への依頼は破産管財人が問い合わせ先の候補になります。交付されていない源泉徴収票については、本人が交付期限の経過後に税務署へ「源泉徴収票不交付の届出書」を出す手続があります(次の節)。いちど受け取った票をなくした場合はこの手続の対象外なので、提出先がほかの書類で代えられるかを提出先に確かめてもらうことになります。

本人が税務署に出す「源泉徴収票不交付の届出書」との違い

「再発行してもらえないなら税務署に届け出る」と言われることがありますが、国税庁の「F5-4 源泉徴収票不交付の届出手続」は、源泉徴収票が支払者から交付されない場合の手続です。同じページに「既に交付された源泉徴収票の再発行については、この手続の対象外です」とあります。国税庁が届出書を出す前に確かめるよう案内している流れ図(F5-4 のページに掲載のPDF)は、次の4つを順に確かめさせます。

国税庁の流れ図の確認事項「いいえ」のときの案内(要旨)
勤務先から支給されたのは、雇用契約に基づく給与か請負契約に基づく報酬など、雇用契約に基づく給与でない場合は、給与所得の源泉徴収票は発行されない
給与所得の源泉徴収票が交付される期限(中途退職は退職後1月、それ以外は翌年1月31日)を経過しているか勤務先で事務手続中の場合があるので、待つか、勤務先に交付時期を問い合わせる
一度交付を受けた源泉徴収票の再発行を求めるものではないか再発行を求める手続ではないので、自分で勤務先に再発行を依頼する
勤務先に交付を求めたか自分で勤務先に交付を求める

4つとも当てはまり、それでも交付を受けられない人は、納税地等を所轄する税務署長に届出書を出します。添付書類は、給与支払明細書が保存されている場合はその写しと、勤務先に交付を求めたことが分かる書類等です。流れ図は、交付を求めた記録として①いつ②どこで③誰に④どのような方法で⑤どのようなやりとりをしたか、の5点をメモ等に残すよう案内しています。

会社の側から見ると、届出書の提出を受けた税務署は、勤務先に源泉徴収票を交付するよう行政指導を行います。流れ図の留意事項は、この行政指導には法律上の拘束力がなく相手方の自主的な協力を前提としていること、届出書を出した後も本人が継続して勤務先に交付を求めることも書いています。交付していなかった票なら、行政指導の有無にかかわらず226条1項の義務があるので、指導を待たずに交付します。

電子交付で渡している会社の注意点

所得税法226条4項は、本人の承諾を得て、源泉徴収票に記載すべき事項を電磁的方法(PDFの送付やWeb明細での閲覧など)で提供することを認め、同条5項は、そうした会社は源泉徴収票を交付したものとみなすと定めています。国税庁の「給与所得の源泉徴収票等の電磁的方法による提供(電子交付)に係るQ&A」は、承諾と表示について次の点を示しています。

電子交付を受けた人が紙の源泉徴収票を求めたときは、226条4項ただし書により書面で交付しなければなりません。正当な理由がないのにこの請求を拒むと、同法242条8号により1年以下の拘禁刑又は50万円以下の罰金の対象です。Q&Aによると、書面交付の請求の方法は決められておらず、電子メールや書面などの適宜の方法で請求して差し支えありません。Web明細の閲覧期間が残っていれば本人が自分で表示・印刷できる場合もありますが、本人が書面を求めたなら書面で渡します。

令和9年1月からのみなし提出の特例でも、本人への交付は残る

令和9年1月1日以後に提出すべき令和8年分以後の給与所得の源泉徴収票は、給与支払報告書(財務省令で定める源泉徴収票の記載事項の記載のあるもの)を市区町村に提出すれば、税務署に提出したものとみなされます(令和9年1月1日から施行される所得税法226条6項による、源泉徴収票のみなし提出の特例)。国税庁の手引は、この特例を受ける場合は税務署提出用の源泉徴収票の作成が不要になる一方、「受給者に対しては、引き続き、給与所得の源泉徴収票を交付する必要があります」としています。特例を受ける場合に作る枚数は、受給者交付用の源泉徴収票1枚と市区町村提出用の給与支払報告書1枚の計2枚です。

再発行の観点では、税務署提出用の票を作らなくなっても、本人に交付した源泉徴収票の内容を会社の給与データから出し直せるようにしておくと、再発行の依頼に応じられます。

本人が源泉徴収票を求められる主な場面

再発行の依頼が来る場面としては、次のようなものがあります。どの書類で代えられるか、いつまでに要るかは、それぞれの提出先が決めることなので、会社から「この書類で足りる」とは答えず、提出先に確かめるよう案内します。

給与の源泉徴収税額を計算する(源泉徴収税額計算機)

よくある質問

会社には源泉徴収票を再発行する義務がありますか?

所得税法226条に、いちど交付した源泉徴収票をなくした人へ作り直して渡す再交付の定めはありません。ただし、本人に交付していなかった票は226条1項の交付義務の対象で、電子交付した人が書面を求めたときは226条4項ただし書により書面で交付しなければなりません。この2つに当たらない紛失・汚損の作り直しは会社の判断になりますが、本人は転職先の年末調整や確定申告で源泉徴収票の数字を使います。

退職した人からも再発行を頼まれたら、対応するのですか?

作り直せるのは給与を支払った会社なので、退職者からの依頼も窓口は同じです。年の途中で退職した人への給与所得の源泉徴収票は、所得税法226条1項かっこ書により退職の日以後1か月以内に交付する決まりなので、「まだ届いていない」と言われたら、まず交付の記録を確かめます。交付していなければ、それは再発行ではなく最初の交付です。

電子交付した人から紙の源泉徴収票がほしいと言われました。

所得税法226条4項ただし書により、書面の源泉徴収票を交付しなければなりません。正当な理由がないのに書面交付の請求を拒むと、同法242条8号により1年以下の拘禁刑又は50万円以下の罰金の対象です。国税庁の電子交付のQ&Aは、請求の方法は決められておらず、電子メールや書面などで請求して差し支えないとしています。

本人が税務署に「源泉徴収票不交付の届出書」を出すと言っています。

国税庁は、この届出手続は源泉徴収票が交付されない場合の手続で、既に交付された源泉徴収票の再発行は対象外だとしています。交付していなかった票なら、届出の有無にかかわらず所得税法226条1項の交付義務があるので、交付します。届出書が出されると、税務署から勤務先に交付を求める行政指導が行われます。

作り直した源泉徴収票にマイナンバーは書きますか?

書きません。国税庁の手引は「受給者に交付する源泉徴収票には、マイナンバーは記載しません」としており、所得税法施行規則93条1項1号ロも本人に交付する票の記載事項に個人番号を挙げていません。税務署提出用のデータから作るときは、受給者交付用の様式で出します。

何年前の分まで再発行しなければなりませんか?

再交付の定めが条文に無いので、何年前の分まで、という法定の期限もありません。作り直せるかどうかは、その年分の給与データや源泉徴収簿が会社に残っているかで決まります。

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出典

所得税法・所得税法施行規則・破産法の条文(e-Gov法令検索)と、国税庁の手引・手続案内・Q&Aで確認して作成。

本記事は一般的な情報提供を目的としたものです。個別の判断は所轄税務署・税理士にご確認ください。

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