委託販売とは|積送品・手数料・入金の仕訳と売上計上時期の確認表
委託販売は、商品の販売を他社に任せ、販売の対価として手数料を支払う取引です。商品を預ける側が委託者、販売を引き受ける側が受託者です。買い取りとは異なり、受託者に商品の支配が移らない委託販売では、預けただけで商品売上を計上するわけではありません。
経理では、商品売上・販売手数料・精算入金・売れ残り在庫を分けて確認します。以下では国内の会社間の商品取引を対象に、仕訳例と、会計・法人税・消費税の計上時期を整理します。
委託販売と買い取りの違い
委託販売と買い取りを区別するには、販売を任せたのか、相手に売ったのかを確認します。受託者の店に商品が移動したという事実だけでは、売上計上を決められません。
| 確認する点 | |
|---|---|
| 委託販売に当たる契約の例 | 買い取りとの区別 |
| 商品への支配 | |
| 顧客に販売するまで委託者が支配する | 買い手に支配が移ったかを確認する |
| 商品の返還・振替 | |
| 委託者が返還や他の販売先への移動を要求できる | 返品が可能という条件だけで判断しない |
| 代金の支払義務 | |
| 受託者に商品代金の無条件の支払義務がない | 預け金を要求される場合もある |
上表は収益認識に関する会計基準の適用指針75項・76項の考え方と指標の例です。収益認識基準を適用する会社では、受託者に支配が移らない委託販売について、受託者への引渡時に収益を認識しません。
消費税でも、契約に「委託」と書いてあるだけで結論は出ません。消費税法基本通達4-1-3は、契約内容、価格の決定経緯、代金の最終的な帰属先などによる総合判断としています。
委託者の仕訳:積送品から入金まで
精算時には入金を記録します。以下は、受託者に支配が移らない委託販売で、収益認識基準を適用する委託者の設例です。積送品を使って委託先の在庫を区分します。科目名は会社の勘定科目体系に合わせます。
収益認識基準を適用する会社の架空の設例です。受託者に商品の支配が移らず、委託者が商品を資産計上し、販売時に原価を振り替える継続記録法を使います。金額は税抜で消費税の仕訳は省略します。期首残・運賃・返品・値引き・損耗・評価損はないものとします。手数料は販売時に確定し、受託者は顧客から代金を即時回収します。
| 取引 | 借方 | 貸方 |
|---|---|---|
| 委託先へ送付 | 積送品 120,000円 | 商品 120,000円 |
| 顧客への販売 | 売掛金 180,000円 | 売上 180,000円 |
| 販売分の原価振替 | 売上原価 72,000円 | 積送品 72,000円 |
| 手数料の相殺 | 支払手数料 18,000円 | 売掛金 18,000円 |
| 精算代金の入金 | 普通預金 162,000円 | 売掛金 162,000円 |
| 期末確認(追加仕訳なし):積送品の借方残高 48,000円 | ||
この設例では、販売した商品の代金を売上にし、手数料は別に費用計上します。そのため、精算入金額と売上額は一致しません。積送品のうち販売した分を売上原価へ振り替え、未販売分は委託先にある自社在庫として残します。
受託者の仕訳:商品代金と手数料を分ける
代理人として販売する受託者の収益は、販売手数料です。預かった商品代金を自社の商品売上として混ぜないよう、次の例では預り金で管理します。
上表と同じ架空の設例で、受託者は顧客への提供前に商品の支配を持たない代理人です。手数料は販売時に確定し、商品代金は顧客から即時回収します。金額は税抜で消費税の仕訳を省略し、運賃・返品・値引きはないものとします。
| 取引 | 借方 | 貸方 |
|---|---|---|
| 委託品の受領 | 仕訳なし(受託品台帳で数量管理) | 商品仕入れとして計上しない |
| 顧客に販売し代金回収 | 普通預金 180,000円 | 預り金 180,000円 |
| 販売手数料の確定 | 預り金 18,000円 | 受取手数料 18,000円 |
| 委託者へ送金 | 預り金 162,000円 | 普通預金 162,000円 |
収益認識基準を適用する場合、適用指針の本人と代理人の区分により、提供前の商品の支配を持たず、他社が提供するよう手配する代理人は、手数料等の純額を収益にします。商品・サービスごとに判定し、価格を決める裁量があることや、法的所有権を瞬時に取得することだけで本人とは決めません。
売上の計上時期:会計・法人税・消費税
収益認識基準による会計では、委託先に支配が移らない商品の収益を、最終顧客への販売時に認識します。法人税と消費税でも、それぞれの計上時期と売上計算書の到達・到着日を使う条件を確認します。
| 区分 | |
|---|---|
| 委託者が確認する時期 | 売上計算書の到達・到着日 |
| 会計:収益認識基準を適用 | |
| 受託者に支配が移らない委託販売では最終顧客への販売時 | 到達日を収益認識日とする取扱いはない |
| 法人税:棚卸資産の委託販売 | |
| 販売日と到達日の使い分けは下の条件を確認 | 収益認識基準を適用しない場合の特例は下記の条件で確認 |
| 消費税:委託者の棚卸資産の譲渡 | |
| 譲渡日と到着日の使い分けは下の通達を確認 | 到着日基準の適用条件・登録取消し時の除外は下の専用節 |
根拠は国税庁の法人税基本通達改正の趣旨説明(委託販売の項)、法人税基本通達2-1-3、消費税法基本通達9-1-3です。
法人税:到達日で計上する条件
売上計算書の到達日での法人税処理は、次の条件を確認してください。公正処理基準以外の別段の定めは除きます。
- 収益認識基準の非適用会社が、売上計算書を都度作成・送付してもらう
- 到達日で継続計上する
- 公正妥当な基準で確定決算に収益経理する
受託者が週・旬・月単位で一括作成している場合も、それが継続していれば都度作成・送付に含まれます。
この取扱いは、法人税法22条の2の近接日の規定によります。別段の定めがある場合の優先関係や、申告記載により経理したものとみなされる適用条件は、収益認識基準と売上計上時期で確認できます。
申告記載によるみなしは、公正妥当な基準で引渡日または近接日の属する事業年度の確定決算に収益経理していない場合に限り、近接日の属する事業年度の確定申告書へ益金算入を記載すると適用されます。
消費税:登録を取りやめるときの除外
売上計算書の到着日を使う条件は、消費税基本通達9-1-3の本文・ただし書・注を確認してください。週・旬・月単位の一括作成も都度作成に含まれます。ただし、登録を取りやめる際の到着日が消費税法57条の2第10項第1号に定める日以後となる譲渡は除きます。
消費税:手数料控除後の入金額と売上額
商品売上と手数料を分けて消費税を集計するのが出発点です。
国内の委託販売等について、消費税法基本通達10-1-12に定める集計の扱いです。以下は消費税の取扱いであり、会計上の本人・代理人の収益表示とは分けて確認します。
| 区分 | |
|---|---|
| 手数料と商品代金の扱い | 条件・注意 |
| 委託者の手数料控除後の集計 | |
| 商品代金から受託者への委託販売手数料を控除した残額を譲渡等の金額にできる | 課税期間中の委託販売等の全てでその処理を行う。軽減税率対象の課税資産の譲渡には適用なし |
| 受託者の商品代金総額での集計 | |
| 商品代金を課税売上、委託者への支払額を課税仕入れにできる | 課税資産の譲渡等だけを委託された場合。軽減税率対象の課税資産の譲渡には適用なし |
| 手数料の適用税率 | |
| 販売代行の役務の対価として標準税率の対象 | 商品が軽減税率対象でも、手数料は、標準税率で、区分する |
軽減税率対象の商品と販売手数料は、同じ精算書でも税率を分けます。精算書の名目だけで売上額や税区分を決めず、商品明細・手数料明細・請求書類を突き合わせてください。仕入明細書・支払通知書の記載事項と相手方確認は別記事で整理しています。
消費税・端数処理の計算機を使う期末の未販売品と精算書の確認表
委託先に預けた自社の未販売品は、自社の期末在庫に含めます。受託者側では自社商品と混ぜず、受託品として区分します。数量と売上計上漏れを確認してから、評価の要否を検討します。
| 照合するもの | |
|---|---|
| 確認する内容 | ずれていたときの確認先 |
| 委託先別の商品台帳 | |
| 送付・販売・返品・未販売の数量がつながるか | 出庫記録と受託者の在庫報告 |
| 販売明細と売上計算書 | |
| 期末までの販売分が未報告になっていないか | 受託者の販売日別明細と採用する計上基準 |
| 手数料と精算入金 | |
| 手数料の算定対象・返品控除・振込差額が、契約と、合うか | 契約書、手数料請求書、預金明細 |
| 期末の積送品残高 | |
| 未販売数量と帳簿上の原価が対応するか | 委託先の、在庫確認。傷み・滞留等は、評価も検討 |
上の仕訳例は評価損を扱っていません。実際の評価は棚卸資産の評価に関する会計基準など、会社が採用する基準に従います。数量確定と評価・実査の手順は棚卸表の作り方と実地棚卸の手順へ分けています。
まとめ
委託販売では、商品を預ける段階、顧客への販売、手数料の精算を分けて記録します。委託者は未販売品を在庫として照合し、代理人である受託者は預かった商品代金と自社の手数料収益を区分します。売上計算書の到達日を使えるかは、会計・法人税・消費税で別に確認してください。
よくある質問
委託販売と受託販売は別の取引ですか?
同じ取引を立場を変えて呼ぶものです。商品販売を依頼する側が委託者、販売を引き受ける側が受託者で、それぞれ委託販売・受託販売と呼びます。商品を買い取って再販売する契約とは、商品の支配が移るかを分けて確認します。
振り込まれた精算額を、そのまま売上にしてよいですか?
商品売上と手数料を分けて確認してください。収益認識基準を適用する委託者が本人に当たる場合、会計の収益は商品代金の総額で、控除された手数料は別の費用です。消費税には条件付きの手数料控除後の集計があるため、会計の売上表示とは分けて確認します。
売れ残った委託品は誰の在庫になりますか?
受託者に支配が移らず、委託者が保有する未販売品は委託者の在庫です。受託者の店に置いていても委託者が期末数量を確認し、受託者は自社の在庫と混ぜずに管理します。評価損などの要否は、数量の照合後に別途検討します。
出典
- 国税庁 税理士試験「簿記論」の問題(積送品の区分管理・原価振替の設例)
- e-Gov法令検索「法人税法」22条の2(収益の額)
- 国税庁「法人税基本通達」2-1-3(委託販売に係る収益の帰属の時期)
- 国税庁「法人税基本通達等の一部改正について」の趣旨説明(委託販売の項)
- 国税庁「消費税法基本通達」4-1-3(委託販売等の場合の納税義務者の判定)
- 国税庁「消費税法基本通達」9-1-3(委託販売による資産の譲渡の時期)
- 国税庁「消費税法基本通達」10-1-12(委託販売等に係る手数料)
- 企業会計基準委員会「収益認識に関する会計基準の適用指針」75項・76項、本人と代理人の区分
- 企業会計基準委員会「棚卸資産の評価に関する会計基準」
この記事は一般的な情報提供であり、個別の事案についての助言ではありません。実際の会計処理・税務申告は契約内容と採用する会計基準によって異なります。個別の税務・労務相談には応じられません。判断に迷う場合は税理士などの専門家にご確認ください。