会計監査とは|株式会社の対象・設置義務と決算準備の確認表
会計監査は、会社が作成した財務諸表が重要な点で適正に表示されているかについて、独立した監査人が意見を表明するものです。株式会社の経理では、まず大会社への該当性と定款の機関構成を確認します。
監査人のために決算書を一式そろえるだけでなく、帳簿の残高と証拠資料を対応させることが準備の中心です。ここでは株式会社の設置義務、監査の種類、監査役との違い、決算準備の順に整理します。
会計監査人が必要な株式会社の確認表
大会社には、公開・非公開を問わず会計監査人が必要です。大会社でなくても、委員会型の機関設計や定款による設置があります。「非上場だから不要」とは判断できません。
次は株式会社の会社法上の設置義務です。公開会社とは、発行する全部又は一部の株式について譲渡取得に会社の承認を要する定款の定めがない会社をいい、上場会社と同じ意味ではありません。
| 会社の区分 | 会計監査人 | 併せて見る機関・資料 |
|---|---|---|
| 公開会社である大会社(下記の委員会型を除く) | 設置が必要 | 監査役会も必要。大会社判定資料と定款を確認 |
| 公開会社でない大会社 | 設置が必要 | 監査役会まで義務とは限らない。定款で機関構成を確認 |
| 監査等委員会設置会社・指名委員会等設置会社 | 大会社かどうかにかかわらず設置が必要 | 監査役を置かず、各委員会が法定の監査を担当 |
| 上記の義務に当たらない株式会社 | 定款の定めによって、設置できる | 定款による任意設置と、契約だけの任意監査を区別 |
会計監査人を置く会社では、監査等委員会設置会社・指名委員会等設置会社を除き、監査役も置きます。会計監査人の設置が、監査役の代わりになるわけではありません。
根拠は会社法の定款による機関設置、取締役会等の設置義務等、大会社の機関設置義務です。
大会社は貸借対照表の資本金・負債で判定
株式会社の大会社判定は、最終事業年度の貸借対照表で資本金が5億円以上、又は負債の部の合計が200億円以上かを見ます(成立直後等の判定資料は下の注)。両方の条件を満たす必要はありません。
資本金は純資産合計に、負債合計は借入金だけに置き換えません。負債には買掛金や未払金なども含まれるため、借入金が少ないことだけでは大会社から外れるとはいえません。
判定資料の注:最終事業年度は、法定の承認を受けた計算書類に係る直近の事業年度です。会社法の報告特則では定時株主総会に報告された貸借対照表、成立後最初の定時株主総会までは成立日の貸借対照表を使います。
次は大会社の規模基準だけを確認する例です。判定用の貸借対照表で資本金と負債合計を照合します。基準に届かなくても、委員会型や定款の設置については前の表で別に確認します。
| 貸借対照表で確認した状況 | 資本金が基準以上、負債合計は基準未満 | 資本金が基準未満、負債合計が基準以上 | 資本金・負債合計とも基準未満 |
|---|---|---|---|
| 大会社の規模基準 | 該当する | 該当する | この規模基準には該当しない |
| 確認を終えるために残す資料 | 資本金の欄と対象事業年度が分かる貸借対照表 | 負債の部の合計額と対象事業年度が分かる貸借対照表 | 貸借対照表と、別途確認した定款の機関構成 |
たとえば借入金の一覧だけを引き継いだ場合は、買掛金等を含めた負債合計が分かりません。貸借対照表へ戻り、どの年度のどの欄で判定したかを記録します。根拠は会社法の大会社・最終事業年度の定義です。
会社法・金商法・任意監査の違い
同じ「会計監査」でも、根拠となる制度や契約が違います。会社法の大会社判定と、金融商品取引法で提出する財務書類の監査証明を、一つの基準にまとめないことが大切です。
次は株式会社の監査を整理するための比較です。法定監査には法令ごとの対象・例外があり、契約による任意監査は契約内容を確認します。
| 種類 | 主な位置付け | 経理で確認するもの |
|---|---|---|
| 会社法に基づく監査 | 会計監査人設置会社の計算書類等を監査 | 定款、機関構成、計算書類等、会計監査報告 |
| 金融商品取引法に基づく監査証明 | 上場有価証券の発行会社等が法により提出する、府令対象の財務計算書類の監査証明 | 自社の法定提出書類、監査証明の適用範囲と例外 |
| 契約による任意監査 | 法定義務とは別に、契約で監査を受ける | 対象期間・書類、適用する基準、報告書の宛先・利用目的 |
金商法の財務書類の監査証明には、公益又は投資者保護に欠けることがないとして、所定の手続で内閣総理大臣の承認を受けた場合などの例外があります。内部統制報告書の監査証明は別の規定で、新規上場時の一定の免除もあります。
監査証明は、提出者と特別の利害関係のない公認会計士・監査法人が行い、公認会計士法上の上場会社等では所定の登録も必要です。
金商法の根拠は金融商品取引法の公認会計士又は監査法人による監査証明です。財務諸表監査と内部統制監査を同じ義務として処理しないよう、依頼・契約の対象を分けて確認します。
定款で会計監査人を任意に置いた場合は、会社法上の機関として監査を行います。契約だけで任意監査を受ける場合と区別し、定款、選任の記録、監査契約を照合します。
社会福祉法人など、株式会社以外の法人には別の設置制度があります。社会福祉法人の会計監査人の設置要件は別の記事で扱っています。
監査役と会計監査人は役割が異なる
会社法の会計監査人は、資格・利害関係等の制限を満たす公認会計士又は監査法人が担います。資格を持っていることだけで就任できるわけではありません。
会計監査人の法定の監査対象は、計算書類とその附属明細書、臨時計算書類、連結計算書類です。事業報告まで会計監査人の監査対象として扱わないよう、依頼する資料の区分をそろえます。
監査役は、会計限定の定款がある場合を除き、取締役の職務執行を監査し、会計参与設置会社では会計参与の職務執行も監査します。会計監査人の会計監査報告とは別に、監査役の監査報告があります。
次は会計監査人設置会社の通常の年次決算における監査の担当です。「監査役等」は、監査役、監査等委員会設置会社の監査等委員会、指名委員会等設置会社の監査委員会を指します。
| 書類 | 計算書類・その附属明細書 | 事業報告・その附属明細書 |
|---|---|---|
| 監査の担当 | 監査役等と会計監査人 | 監査役等 |
| 経理での照合 | 監査対象となった版と、それぞれの監査報告を対応させる | 計算書類の監査と混同せず、対象書類を区別する |
会計に範囲を限定した監査役の制度もあります。公開会社でない株式会社で、監査役会・会計監査人のいずれも置かない場合に、定款で限定できます。非公開会社であることだけでは限定できません。
根拠は会社法の会計監査人の資格等、監査役の権限、定款による監査範囲の限定、会計監査人の権限等、計算書類等の監査等です。
経理が準備する資料と決算までの段取り
準備は、監査人からの依頼資料一覧に、担当者・対象期・提出版を対応させるところから始めます。決算後に証憑を探し始めず、期中の確認と決算時に確定する資料を分けると、依頼の漏れや旧版の再提出を減らせます。
監査は、予備調査、計画の立案、監査手続、意見の形成・審査、報告という流れで進みます。監査手続には実査・立会・確認・勘定分析などがあり、訪問日や提出期限は監査人の計画・依頼に合わせて確認します。固定の訪問回数を前提に日程を組まないようにします。
次は経理が作る準備表の例で、法定の添付書類の全件一覧ではありません。必要な資料、提出時期、外部確認や棚卸立会の方法は監査人と確認します。
| 準備する区分 | 資料の例 | 提出前の確認 |
|---|---|---|
| 会社・機関の情報 | 定款、組織図、株主総会・取締役会の議事録 | 当期の機関構成、重要な取引・決議の資料が追えるか |
| 帳簿から決算書へのつながり | 試算表、仕訳帳、総勘定元帳、科目別内訳、計算書類案 | 対象期・集計範囲・版がそろい、残高が一致するか |
| 売上・仕入と債権債務 | 契約書、発注書、納品書、請求書、入出金記録 | 取引の発生から決済まで、証憑と仕訳をたどれるか |
| 預金・借入金 | 銀行別明細、借入契約、返済予定表、残高証明書 | 帳簿との差額を説明でき、監査人の確認手続と混同していないか |
| 棚卸資産・固定資産 | 棚卸表、実査記録、固定資産台帳、取得・除却の資料 | 現物・台帳・会計残高の差異と処理が追えるか |
| 会計上の見積り | 引当金・評価等の計算資料、使用データ、判断の根拠 | 計算式だけでなく、仮定や前期からの変更理由を説明できるか |
| 決算修正と最終版 | 修正仕訳一覧、修正後の計算書類、監査報告 | 修正前後と最終提出版が識別できるか |
たとえば売掛金の内訳を提出するときは、合計と総勘定元帳の残高を照合し、差額があれば調整項目を残します。後から修正した場合は旧版を上書きするだけでなく、変更箇所と提出済みの版が分かるように管理します。
残高証明書をそろえても、それだけで監査対応が完了するわけではありません。監査人が行う外部確認とは手続が異なるため、会社で取得する資料と監査人の依頼を区別します。取得・照合の実務は残高証明書の確認表を参照してください。
監査の流れは日本公認会計士協会「公認会計士監査とは」で確認できます。計算書類を作る責任と、監査人が監査意見を示す役割を分けて、経理側の作成・説明担当を決めます。
決算に伴う会議の日程は、監査報告の予定日と合わせて調整します。会計監査人を置く取締役会設置会社では、監査を受けた年次の計算書類・事業報告と、それぞれの附属明細書を取締役会で承認します。株主総会での取扱いや公告は、機関構成と適用される特則を別に確認します。
決算準備の日程を整理する:営業日計算まとめ
株式会社の会計監査は、判定用の貸借対照表と定款から設置義務を確認し、監査の根拠・対象書類・担当機関を対応させます。準備表では帳簿と証憑をつなぎ、対象期・提出版・担当者をそろえると、依頼への回答を進めやすくなります。
よくある質問
非上場の株式会社でも会計監査人が必要ですか?
必要な場合があります。大会社には非公開会社も含めて設置義務があり、監査等委員会設置会社・指名委員会等設置会社も設置が必要です。上場の有無だけで判断せず、貸借対照表と定款を確認します。
監査役がいれば会計監査人を置かなくてよいですか?
会計監査人の設置義務がある株式会社では、監査役がいても会計監査人が必要です。会計監査人と監査役等は役割が異なり、会計監査人設置会社の計算書類・附属明細書には双方の監査が必要です。
会計監査では何を準備しますか?
試算表・元帳・科目別内訳と、その残高や取引を説明する証憑・見積根拠などを準備します。これは資料の例であり、実際の提出物と期限は監査人の依頼で確認し、対象期・担当者・提出版を対応させて管理します。
会計監査人を任意に置くことはできますか?
株式会社は定款の定めによって会計監査人を置くことができます。この場合は会社法上の機関となるため、契約だけで任意監査を受ける場合と区別します。監査等委員会設置会社・指名委員会等設置会社を除き、監査役も必要です。
出典
株式会社の設置義務と監査の対象は会社法、財務諸表監査の目的と流れは日本公認会計士協会の解説を参照しています。
- e-Gov法令検索「会社法」:大会社・公開会社・最終事業年度の定義、機関の設置、会計監査人の資格、監査役と会計監査人の権限、計算書類等の監査。
- e-Gov法令検索「金融商品取引法」公認会計士又は監査法人による監査証明。
- 日本公認会計士協会「監査の基礎知識」:財務諸表監査の目的。
- 日本公認会計士協会「公認会計士監査とは」:監査業務の流れと手続。
本記事は一般的な情報提供を目的としたものです。監査の適用と対応は公認会計士・監査法人に、機関設計や登記の手続は弁護士・司法書士にご確認ください。個別の税務・労務相談には応じられません。