税金・経理・補助金ツールズ

確定申告を税理士に依頼する費用|相場の決まり方と源泉徴収10.21%

結論から言うと、確定申告を税理士に依頼する費用に法律や税理士会が定めた料金表はありません。税理士会が定めていた報酬規定は2002年(平成14年)4月1日施行の改正税理士法で廃止され、以後は各税理士・税理士法人が自分の責任で報酬を決めて請求します。「相場」として出回る金額は民間の集計で、集め方も分母もまちまちです。

費用を動かすのは主に4つです。①帳簿が付いているか(記帳代行が要るか)、②取引の件数、③消費税の申告が要るか(課税事業者か)、④所得税だけか、譲渡所得や相続税など別の申告が加わるか。この4つを見積書の項目に当てはめると、金額が高いか安いかを自分で比べられます。

支払う側の実務も条文で決まっています。税理士報酬のうち事業の申告のために払う分は必要経費になり、勘定科目は支払手数料などで処理します。会社員が自分の確定申告のために払う分は、事業に関係がないので、どの所得の必要経費にもなりません。報酬から10.21%の所得税を天引き(源泉徴収)する義務があるのは、法人と、給与を払っていて給与の源泉徴収義務がある個人だけです(所得税法204条2項2号)。この「給与」には配偶者などへの青色事業専従者給与も含まれるので、従業員が1人もいなくても義務が生じる場合があります。年5万円を超えて払えば支払調書の提出対象になります。この記事は2026年9月8日時点の法令に基づく一般的な説明です。

税理士報酬の料金表は2002年に廃止された。相場は法定ではない

「確定申告の税理士費用の相場」を探すと、いくつもの金額表が見つかります。まず押さえておきたいのは、それらのどれも公的な料金表ではないという事実です。日本税理士会連合会は、2002年(平成14年)4月1日施行の改正税理士法で、それまで税理士会が定めていた税理士業務の報酬規定を廃止したと公表しています。その後、税理士と税理士法人は自由な意思のもと、自己責任と説明責任に基づいて報酬を算定し、依頼者に請求する仕組みです。

つまり、同じ内容の確定申告でも、事務所によって金額が違うのは制度上当然です。「相場より高いから不当」「安いから手抜き」とは決められません。日本税理士会連合会は、依頼する際には委嘱の範囲と報酬額について契約書を締結することを勧めています。金額そのものより、その金額にどの作業が含まれているかを先に確認するのが、費用を比べるときの出発点です。

また、税理士会や国税庁が「確定申告1件あたりの平均報酬」のような統計を公表しているわけではありません。ネット上の金額表は、税理士紹介サービスや会計ソフト会社が自社の取扱案件や独自の調査から集計したもので、対象とした事務所の数も、売上規模の区切り方も、記帳代行を含むかどうかも揃っていません。数字を並べて比べる前に、その表が何を数えているかを確認する必要があります。

この記事で金額を断定しない理由

本記事では「売上◯◯万円なら◯万円」という金額は書きません。公的な根拠がなく、書けば将来の嘘になるためです。代わりに、金額が決まる要素と、見積書のどこを見れば比較できるかを条文と国税庁の資料で説明します。

費用を左右するのは記帳・取引数・消費税・申告の種類の4つ

税理士の作業時間は、次の4つでほぼ決まります。見積書の金額が違うときは、この4つのどこが違うのかを見比べると、差の理由が見えてきます。

要素費用が上がる方向費用が下がる方向なぜ変わるか
①記帳の有無領収書と通帳を渡して記帳から頼む会計ソフトで仕訳まで済ませて渡す記帳代行は税理士法2条2項の付随業務。作業時間がそのまま費用になる
②取引の件数年間の仕訳が多い、現金取引が多い取引が少なく、口座とカードに集約されている確認と照合の件数が増える
③消費税の申告課税事業者で消費税申告書も作る免税事業者で所得税の申告だけ申告書が1本増え、インボイスの区分確認が加わる
④申告の種類不動産の譲渡所得、株式、相続税や贈与税が加わる事業所得または不動産所得の申告だけ別の税目・別の計算書類が要る

①が最も大きく効きます。記帳の代行は税理士業務そのものではなく、税理士法2条2項が定める「付随して行うことができる」業務です。この部分は作業量に比例して費用が積み上がるので、仕訳を自分で入れてから渡すだけで見積が変わることがあります。

③は売上の規模とつながっていて、次の節で扱います。課税事業者になった時点で「所得税だけの確定申告」ではなくなり、見積の項目が1つ増えます。

④は見落とされがちです。事業の申告を頼んでいる税理士に、同じ年に自宅を売った譲渡所得や、親から受けた贈与の申告を追加すると、別の計算書類が要るため追加費用になるのが普通です。「確定申告一式」と書かれた見積に何が含まれているか、税目ごとに確認します。

丸投げ・記帳済み・決算のみは、税理士法2条の業務の範囲が違う

依頼の仕方は、大きく「丸投げ」「記帳済みで申告書だけ」「決算書までは自分で作り、申告書の作成と提出だけ」の3つに分かれます。この3つは、税理士法2条が定める業務の組合せが違います。同条1項は、税理士業務を税務代理(1号)、税務書類の作成(2号)、税務相談(3号)の3つと定め、2項で記帳代行などの会計事務を付随業務として認めています。

税理士は、前項に規定する業務(以下「税理士業務」という。)のほか、税理士の名称を用いて、他人の求めに応じ、税理士業務に付随して、財務書類の作成、会計帳簿の記帳の代行その他財務に関する事務を業として行うことができる。ただし、他の法律においてその事務を業として行うことが制限されている事項については、この限りでない。
記帳代行決算書作成申告書作成提出代理税務相談 丸投げ記帳済み決算のみ 税理士税理士税理士税理士税理士 本人税理士税理士税理士税理士 本人本人税理士税理士税理士 2条2項の付随業務+1項の税理士業務 2条2項の一部+1項の税理士業務 1項の税理士業務だけ
枠が長いほど税理士の作業が多く、費用が上がります。左端の記帳代行は税理士業務ではなく付随業務なので、自分で済ませれば枠から外せます。
依頼の形本人がやること税理士がやること費用の傾向
丸投げ領収書・請求書・通帳のコピーを渡す記帳、決算書、申告書の作成、提出、相談最も高い。記帳代行分が作業量に比例して加わる
記帳済み会計ソフトに仕訳を入力し、データを渡す仕訳の確認、決算整理、決算書と申告書の作成、提出中間。仕訳の確認と決算整理が中心
決算のみ記帳と決算書まで自分で作る申告書の作成と提出(税務書類の作成・税務代理)最も低い。ただし決算書の内容の確認は残る

「決算のみ」でも、税理士は自分の名前で申告書に署名するため(税理士法33条)、渡された決算書をそのまま写すわけではありません。数字の根拠を確認する作業は残り、その分の費用も残ります。逆に「丸投げ」で安い見積が出たときは、記帳代行が含まれているか、仕訳の入力を別料金にしていないかを確認します。

年間の顧問契約と、確定申告の時期だけのスポット契約も分けて考えます。顧問契約は月々の顧問料に相談が含まれ、確定申告時に決算料が加わる形が一般的です。スポット契約は申告書の作成に絞られ、年の途中の相談は含まれません。

売上規模で費用が変わるのは、取引数と消費税申告が増えるから

「売上規模別の目安」として金額が並んだ表を見かけますが、売上の額そのものが料金の根拠になるわけではありません。売上が増えると取引の件数が増え、基準期間(個人事業主なら前々年)の課税売上高が1,000万円を超えれば消費税法9条1項により課税事業者になって申告書が1本増え、人に給与を払い始めれば給与計算や年末調整が加わります。売上の額は作業量の代理指標にすぎません。

売上が増えると起きること増える作業根拠
基準期間の課税売上高が1,000万円を超える消費税の申告書、課税区分の確認消費税法9条1項(免税の除外)
インボイス発行事業者に登録する売上1,000万円以下でも消費税申告同項の括弧書き「適格請求書発行事業者を除く」
人を雇う、または青色事業専従者給与を払い始める給与の源泉徴収、年末調整、法定調書。税理士報酬の源泉徴収も本人の義務になる所得税法57条1項、183条1項、204条2項2号
取引先や口座が増える仕訳の件数、残高の照合作業量に比例

見積を比べるときは、記帳代行の有無と件数の上限、消費税申告の有無、年末調整と法定調書の作成、税務調査の立会い、年の途中の相談回数、e-Taxでの電子申告の代行、翌年以降の更新条件が金額に含まれているかを1つずつ確認します。伝えるべきは売上の額より、年間の仕訳の件数、口座とカードの本数、現金取引の割合、給与を払っている人数です。

税理士報酬は必要経費になるが、事業と関係ない申告の分は除く

事業所得や不動産所得の確定申告のために払った税理士報酬は、その事業の必要経費です。所得税法37条1項は、総収入金額を得るため直接に要した費用と、その年の販売費、一般管理費その他業務について生じた費用を必要経費としています。事業の申告書を作るための報酬は、事業について生じた費用に当たります。

一方で、所得税法45条1項1号は「家事上の経費及びこれに関連する経費で政令で定めるもの」を必要経費から外しています。同じ税理士に払った報酬でも、自宅の売却に伴う譲渡所得の申告や、相続税・贈与税の申告のために払った部分は、事業の必要経費にはなりません。1枚の請求書に事業の申告と相続税の申告がまとまっている場合は、内訳を分けて処理します。

相続税の申告を頼んだ報酬は、相続財産から差し引ける債務にも当たりません。相続税法13条1項1号が債務控除の対象としているのは「被相続人の債務で相続開始の際現に存するもの」で、相続が始まった後に相続人が税理士と契約して負う報酬債務は、被相続人の債務ではないからです。国税庁No.4126も、差し引けるのは被相続人が死亡したときに現に存在した債務で確実と認められるものだと説明しています。逆に、被相続人が生前に契約していて死亡時にまだ払っていなかった顧問料は、被相続人自身の債務なので債務控除の対象です。相続開始の前か後かで扱いが分かれます。

勘定科目は「支払手数料」が一般的で、「支払報酬料」「税理士報酬」のような科目を設けて分ける事業者もあります。勘定科目の名前を定めた法律はないので、毎年同じ科目で処理して比較できることが大切です。青色申告決算書では、該当する科目がなければ空欄の科目名に書き足します。

消費税は、税理士報酬は課税仕入れです。課税事業者が受け取る請求書がインボイス(適格請求書)なら仕入税額控除の対象になります。税理士がインボイス発行事業者でない場合は、経過措置により控除できる割合が制限されます。この割合は2026年10月1日に切り替わるので、詳しくはインボイス制度の解説を参照してください。

計上する時期は、原則として役務の提供が完了した日です。所得税法37条1項が必要経費の範囲から「償却費以外の費用でその年において債務の確定しないもの」を括弧書きで除いているためで、まだ役務の提供も請求もない報酬を先に落とすことはできません。確定申告の申告書作成報酬は、申告書を作成して提出した年(翌年)の経費になるのが基本で、前年の決算に前倒しで入れることはありません。ただし顧問料のように月ごとの役務なら、その月の経費です。年末に翌年分の報酬を前払いした場合は前払費用として翌年に繰り越します。

源泉徴収が要るのは法人と、給与を払っている個人だけ

税理士に報酬を払うとき、支払う側が所得税を天引きして国に納める仕組みが源泉徴収です。所得税法204条1項2号は、税理士の業務に関する報酬を源泉徴収の対象として名指ししています。

弁護士(外国法事務弁護士を含む。)、司法書士、土地家屋調査士、公認会計士、税理士、社会保険労務士、弁理士、海事代理士、測量士、建築士、不動産鑑定士、技術士その他これらに類する者で政令で定めるものの業務に関する報酬又は料金

ここで大切なのは、同条2項2号の例外です。1項の対象になる報酬でも、給与について源泉徴収義務のある個人以外の個人が払うものには、1項を適用しません。

前項第一号から第五号まで並びに第七号及び第八号に掲げる報酬若しくは料金、契約金又は賞金のうち、第百八十三条第一項(給与所得に係る源泉徴収義務)の規定により給与等につき所得税を徴収して納付すべき個人以外の個人から支払われるもの

183条1項は、居住者に給与等を支払う者に源泉徴収を義務づける条文です。つまり、個人が税理士報酬を払うときに源泉徴収が要るのは、その個人が誰かに給与を払っていて、給与の源泉徴収義務を負っている場合だけです。給与を誰にも払っていない個人が払う報酬には、源泉徴収は要りません。国税庁No.2502も、給与所得者が確定申告のために税理士に報酬を支払っても源泉徴収をする必要はないと明示しています。

「従業員がいないから不要」は誤り

ここでいう給与には、配偶者や親族に払う青色事業専従者給与が含まれます。所得税法57条1項は、青色事業専従者が「当該事業から……給与の支払を受けた場合」の必要経費算入を定め、その金額をその専従者の給与所得に係る収入金額としています。給与を払っている以上、その事業主は183条1項の源泉徴収義務者であり、204条2項2号がいう「給与等につき所得税を徴収して納付すべき個人以外の個人」には当たりません。従業員が1人もいなくても、配偶者に青色事業専従者給与を払っていれば、税理士報酬から10.21%を引く義務があります。184条の除外は常時2人以下の家事使用人だけに給与を払う場合の話で、専従者給与はここに入りません。なお、白色申告の事業専従者控除(57条3項)は給与の支払ではなく必要経費とみなす制度なので、これだけであれば給与の源泉徴収義務者にはなりません。

なお184条は、常時2人以下の家事使用人だけに給与を払う者を給与の源泉徴収義務から外しています。

常時二人以下の家事使用人のみに対し給与等の支払をする者は、前条の規定にかかわらず、その給与等について所得税を徴収して納付することを要しない。

この人は「給与等につき所得税を徴収して納付すべき個人」ではないため、税理士報酬についても源泉徴収は要りません。反対に、法人はこの例外の対象外です。法人が払う税理士報酬は、従業員の有無にかかわらず常に源泉徴収の対象です。

税理士報酬を支払う 支払先は税理士法人か 支払う側は法人か 支払う側は個人。青色事業専従者給与を含む給与を払っているか 源泉徴収は不要 源泉徴収が要る はい → 要る(204条1項2号) いいえ → 不要(204条2項2号) はい はい いいえ いいえ 税理士法人への支払は国税庁No.2798の質疑応答が根拠
個人が払うときの分かれ目は「給与の源泉徴収義務があるか」です。事業をしているかどうかでも、従業員の人数でもありません。配偶者への青色事業専従者給与だけでも「給与」に当たります。
支払う側支払先源泉徴収根拠
法人個人の税理士要る204条1項2号
従業員または青色事業専従者に給与を払う個人事業主個人の税理士要る204条1項2号、57条1項、183条1項(2項2号の例外に当たらない)
給与を誰にも払っていない個人事業主個人の税理士不要204条2項2号
会社員(給与所得者)個人の税理士不要204条2項2号、国税庁No.2502
法人・個人を問わず税理士法人不要国税庁No.2798の質疑「税理士法人等に報酬を支払った場合」

支払先が税理士法人のときは、支払う側が法人でも源泉徴収は要りません。国税庁は、源泉徴収の対象となる税理士報酬は個人の税理士に支払われるものに限られ、内国法人に該当する税理士法人に支払われるものは源泉徴収を要しないと回答しています。請求書の発行者が「税理士法人」か「税理士事務所(個人)」かで処理が変わるので、初回の請求書で確認します。

間違えやすいのは、源泉徴収が不要なのに税額を差し引いて払ってしまう逆のケースです。給与を誰にも払っていない個人事業主が報酬から10.21%を引いて払うと、税理士は受け取るべき額を受け取れず、引いた分を納める手続もありません。差し引かずに全額を払うのが正しい処理です。

税額は10.21%。100万円を超える部分は20.42%

源泉徴収する税額は、所得税法205条1号により報酬の額の10%で、同一人に1回に支払う額が100万円を超える場合はその超える部分が20%です。これに復興特別所得税(所得税額の2.1%)が上乗せされるので、実際の率は10.21%と20.42%になります。国税庁No.2798は次の表で示しています。

1回の支払金額(A)源泉徴収税額
100万円以下A×10.21%
100万円超(A−100万円)×20.42%+102,100円

1円未満の端数は切り捨てます。100万円超の式の102,100円は、100万円×10.21%です。国税庁の設例では、150万円の報酬なら(150万円−100万円)×20.42%+102,100円=204,200円です。

消費税の扱いに注意します。国税庁No.2798によれば、報酬の額に消費税等の額が含まれている場合は、原則として消費税等を含めた金額が源泉徴収の対象ですが、請求書で報酬の額と消費税等の額が明確に区分されていれば、報酬の額だけを対象にして差し支えありません。インボイス制度の開始後もこの取扱いは変わりません。

請求書の書き方源泉徴収の対象額源泉徴収税額税理士への支払額
報酬300,000円/消費税30,000円と区分300,000円30,630円299,370円
合計330,000円とだけ記載330,000円33,693円296,307円

どちらの場合も、税理士に払う額と国に納める税額の合計は330,000円で変わりません。区分の有無で変わるのは、税理士の手元に先に渡る額と、税理士が確定申告で精算する源泉税の額です。税理士側の請求書は税抜と消費税を分けて書くのが普通なので、多くの場合は上の行になります。

納付の期限は、原則として支払った月の翌月10日です(204条1項)。給与の支払人数が常時10人未満で納期の特例の承認を受けている事業者は、1月から6月分を7月10日、7月から12月分を翌年1月20日にまとめて納められます。所得税法216条は、納期の特例の対象に「第二百四条第一項第二号(源泉徴収をされる報酬又は料金)に掲げる報酬又は料金を含む」と定めているので、税理士報酬の源泉税もこの年2回の納付に含められます。一方、原稿料(1項1号)などの源泉税は特例の対象外で、毎月納付です。同じ「報酬の源泉税」でも号によって納期が違います。

源泉徴収税額 計算機で、報酬・料金の10.21%と100万円超の税額を試算する

仕訳は支払手数料と預り金の2行で書く

源泉徴収をする事業者(法人と、青色事業専従者給与を含む給与を払っている個人事業主)が税理士報酬330,000円(税抜300,000円+消費税30,000円、請求書で区分あり)を振り込む場合の仕訳です。税込経理の例です。

時点借方金額貸方金額
支払時支払手数料330,000円普通預金299,370円
預り金30,630円
納付時(翌月10日まで)預り金30,630円普通預金30,630円

費用は源泉税を引く前の330,000円で計上します。299,370円だけを費用にすると、30,630円分の経費が漏れます。預り金は、税理士の税金を一時的に預かっている負債で、納付した時点で消えます。税抜経理なら借方を支払手数料300,000円と仮払消費税等30,000円に分けます。

源泉徴収が不要な事業者(給与を誰にも払っていない個人事業主)は、預り金の行がなく、支払手数料330,000円/普通預金330,000円の1行です。振込手数料を自分が負担した場合は、別に支払手数料として計上します。

納付は「給与所得・退職所得等の所得税徴収高計算書(納付書)」で行い、税理士報酬の分は「税理士等の報酬」欄に支払年月日・人員・支給額・税額を記入します。国税庁の記載要領は、この欄に弁護士・税理士・公認会計士・社会保険労務士などの業務に関して支払う報酬・料金を記載すると定めています。給与の源泉税と同じ納付書で、欄が違うだけです。納付書の書き方は源泉所得税の納付書の書き方を参照してください。

年5万円を超えたら支払調書を翌年1月31日までに出す

所得税法225条1項3号は、204条1項各号の報酬を支払う者に、支払調書の税務署への提出を義務づけています。税理士報酬は「報酬、料金、契約金及び賞金の支払調書」の対象で、国税庁No.7431によれば、提出範囲は同一人に対するその年中の支払金額の合計額が50,000円を超えるものです。提出期限は支払の確定した日の属する年の翌年1月31日で、法定調書合計表と一緒に出します。

ここで2つの点に注意します。1つは、提出範囲の判定は消費税等を含めて行うのが原則で、消費税等の額が明確に区分されている場合はその額を含めずに判定して差し支えないことです。もう1つは、源泉徴収をしていない報酬でも、提出範囲に入れば支払調書は必要なことです。国税庁No.7431は、法人に支払われる報酬で源泉徴収の対象とならないものや、源泉徴収をしていない報酬についても、提出範囲に該当すれば提出が必要と明記しています。税理士法人に払った報酬も、年5万円を超えれば支払調書の対象です。

提出義務者の範囲にも注意します。所得税法225条1項3号も国税庁No.7400も、報酬の支払調書の提出義務者を「報酬…の支払をする者」と書いていて、法人や源泉徴収義務者に限定していません。同じ225条1項でも、不動産の使用料等の支払調書(9号)が「法人又は不動産業者である個人」に限られているのと対照的です。つまり源泉徴収の要否と支払調書の要否は別の判定で、源泉徴収をしなかった支払でも、年5万円を超えれば支払調書の提出範囲に入ります。各様式の提出範囲と交付義務の有無は支払調書の解説にまとめています。

支払調書を税理士本人に交付する義務はありません。税理士側は自分の帳簿と請求書から売上と源泉税を把握して申告します。支払調書を渡す場合はマイナンバーを記載しないで交付します。

依頼の負担が大きくなる場面と、自分で済ませやすい場面

「税理士に頼むべきか」に一律の答えはありません。ここでは、作業量と誤りの影響という2つの軸で、一般に負担が大きくなりやすい場面と、自分で済ませやすい場面を整理します。個別の判断は税務署の相談窓口や税理士に確認してください。

一般に負担が大きくなりやすい場面理由
消費税の課税事業者になった年消費税法9条1項で免税から外れて申告書が1本増え、インボイスの区分と経過措置の計算が加わる
人を雇い始めた年、青色事業専従者給与を払い始めた年給与の源泉徴収(所得税法183条1項)、年末調整、法定調書、税理士報酬の源泉徴収(204条2項2号)が同時に始まる
不動産の売却、株式の譲渡、相続・贈与が重なった年別の税目・別の計算書類が要り、1つの誤りの金額が大きい
法人成りや事業承継を考えている年申告の前に選択肢を比べる相談が要る
税務調査の連絡があった年税務代理権限証書を出した税理士が立ち会え、国税通則法74条の9第1項の事前通知も税理士に届く
自分で済ませやすい場面理由
取引が少なく、口座とカードに集約された事業所得だけ会計ソフトと確定申告書等作成コーナーで完結しやすい
会社員の副業で、所得の種類が1つ収入と経費の一覧が短く、雑所得または事業所得の1区分
医療費控除やふるさと納税だけの還付申告計算が定型で、作成コーナーが自動計算する

費用と効果の比べ方は、報酬の額と、自分で申告した場合にかかる時間、誤りが起きたときの金額の3つで考えます。自分で申告する場合の手順は確定申告のやり方にまとめています。青色申告特別控除の額と要件は青色申告特別控除シミュレーターで確認できます。

税理士でない者が申告書を作ると、無償でも税理士法52条違反になる

費用を抑えようとして「税理士より安く申告書を作る」と持ちかける人がいます。税理士法52条が禁止しているのは、税理士または税理士法人でない者が税理士業務を行うことです。禁止の名宛人は無資格者の側ですが、依頼した人にも実害が返ってきます。

税理士又は税理士法人でない者は、この法律に別段の定めがある場合を除くほか、税理士業務を行つてはならない。

ここでいう税理士業務は、2条1項の税務代理、税務書類の作成、税務相談です。国税庁の「税理士制度のQ&A」問6-1の注1は、「業とする」とは反復継続して行い、又は反復継続して行う意思をもって行うことをいい、必ずしも有償であることを要しないと説明しています。つまり要件は反復継続(の意思)であって、有償かどうかではありません。「無料で見てあげただけ」だから要件を外れる、とはなりません。罰則は2年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金ですが、これを科されるのは「その違反行為をした者」、つまり資格なく税理士業務を行った側です(59条1項4号)。依頼した人が罰せられるわけではありません。実害は別の形で来ます。申告内容に誤りがあれば本税と加算税・延滞税を負うのは納税者本人で、税務代理権限証書も書面添付も付かないため、税務調査の場に代理人が立てません。

日本税理士会連合会も、税理士業務は有償・無償を問わず税理士または税理士法人以外の者が行うことはできないこと、税理士名簿に登録がないのに税務書類の作成等を行う者は「ニセ税理士」として52条違反になること、そうした者に依頼した結果、申告に不測の損害が生じるおそれがあることを注意喚起しています。

一方で、記帳の代行だけなら税理士業務ではありません。2条2項が記帳代行を税理士業務ではなく付随業務として書き分けているとおり、会計事務そのものは税理士の独占ではなく、記帳代行業者に頼むことは52条の問題になりません。国税庁の同Q&Aは、問6-1の注2で、申告書等を「作成する」とは自己の判断に基づいて作成することをいい、単なる代書は含まれないとも説明しています。線を引くのは、申告書の内容を判断しているか、税額の計算について具体的な質問に答えているかです。記帳代行業者が「この経費は落とせる」と個別に答え始めた時点で、税務相談に入ります。

依頼先が税理士かどうかは、日本税理士会連合会の税理士情報検索サイトで氏名と事務所を検索すれば確認できます。税理士は税理士法18条により税理士名簿への登録を受けなければならず、名簿に載っていない人は税理士ではありません。契約前に名簿で確認し、契約書に委嘱の範囲と報酬額を書くことが、費用と安全の両方を守る手順です。

税理士に依頼しても、申告の責任は本人に残る

税理士に依頼すれば申告の責任も移る、というわけではありません。納税義務を負うのは本人で、申告書も本人の名義で提出されるからです。税理士法33条1項は、税理士が税務代理で申告書を作成して提出するとき、税理士の署名に加えて本人の署名も求めています。

この場合において、当該申告書等が租税の課税標準等に関する申告書又は租税に関する法令の規定による還付金の還付の請求に関する書類であるときは、当該申告書等には、併せて本人(その者が法人又は法人でない社団若しくは財団で代表者若しくは管理人の定めがあるものであるときは、その代表者又は管理人)が署名しなければならない。

ただし同条4項は、この署名の有無は「当該書類の効力に影響を及ぼすものと解してはならない」と定めています。責任の所在は署名欄の埋まり方で決まるのではなく、納税義務者が誰かで決まる、ということです。申告書の内容に誤りがあれば、追加の本税と加算税・延滞税を負うのは納税者本人です。税理士が真正の事実に反して申告書を作ったときは、税理士に対して業務停止などの懲戒処分があります(45条)が、それは税理士の側の責任であり、納税者の納税義務が消えるわけではありません。また、税理士は依頼者が事実を隠したり仮装したりしていることを知ったときは、直ちに是正を助言する義務を負います(41条の3)。売上を一部伝えないまま「税理士に任せてある」という状態は、税理士の助言義務と本人の責任の両方に反します。

依頼した後に確認しておきたい書類が2つあります。1つは税務代理権限証書です。税理士法30条は、税務代理をする税理士に、その権限を証する書面の税務官公署への提出を義務づけています。この書面が出ていると、国税通則法74条の9第1項の括弧書き(「当該納税義務者について税務代理人がある場合には、当該税務代理人を含む。」)により、税務調査の事前通知が税理士にも届きます。もう1つは33条の2の書面添付で、申告書の作成に関して計算し、整理し、相談に応じた事項を記載した書面を税理士が添付できる制度です。義務ではなく「できる」と書かれているので、付けるかどうかは契約で決まり、費用に影響することもあります。2つの書面の違いは税務代理権限証書の解説にまとめています。

よくある質問

Q. 税理士の費用に公式の料金表はありますか?

A. ありません。税理士会が定めていた報酬規定は2002年4月1日施行の改正税理士法で廃止され、以後は各税理士・税理士法人が自分で報酬を決めて請求します。相場として出回る金額は民間の集計で、根拠と分母がまちまちです。

Q. 一人で事業をしている個人事業主が税理士に払う報酬から、10.21%を引く必要はありますか?

A. 給与を誰にも払っていなければ引きません。所得税法204条2項2号により、給与の源泉徴収義務のない個人が払う報酬には源泉徴収の規定が適用されないためです。ただし配偶者などに青色事業専従者給与を払っている場合は、従業員が1人もいなくても57条1項の給与を払う者として183条1項の源泉徴収義務者に当たるので、10.21%を引く義務があります。

Q. 会社が税理士法人に払う報酬にも源泉徴収は要りますか?

A. 要りません。源泉徴収の対象になる税理士報酬は個人の税理士に払うものに限られ、内国法人である税理士法人に払うものは対象外です。ただし年5万円を超えれば支払調書の提出対象にはなります。

Q. 請求書が税込330,000円と一括で書かれている場合、源泉徴収はいくらですか?

A. 報酬と消費税が区分されていない場合は税込額が対象になり、330,000円×10.21%=33,693円です。報酬300,000円と消費税30,000円が区分されていれば300,000円×10.21%=30,630円で差し支えありません。

Q. 税理士報酬の勘定科目は何ですか?

A. 一般に支払手数料で処理し、支払報酬料などの科目を別に設ける事業者もあります。科目名を定めた法律はないので、毎年同じ科目を使うことが大切です。源泉徴収した分は預り金として計上し、納付時に消します。

Q. 相続税の申告を頼んだ税理士報酬は事業の経費になりますか?

A. なりません。事業所得の必要経費になるのは事業の申告に関する部分で、相続税や自宅の譲渡所得の申告のための報酬は所得税法45条1項1号の家事上の経費に当たります。1枚の請求書にまとまっていれば内訳で分けます。

Q. 記帳代行業者に申告書の作成まで頼んでも大丈夫ですか?

A. 記帳の代行だけなら税理士業務ではありませんが、申告書の作成や税額の相談は税理士法2条1項の税理士業務で、税理士でない者が行うと無償でも52条違反です。依頼先が税理士かどうかは日本税理士会連合会の税理士情報検索サイトで確認できます。

出典

本記事は一般的な情報提供を目的としたものです。個別の判断は税務署・税理士にご確認ください。

この内容をXで共有