企業会計原則とは?一般原則と重要性の原則を実務例で確認
企業会計原則は、企業の財政状態と経営成績を正しく伝えるための、会計処理・報告の基本となる基準です。一般原則は、記録を正確に残すこと、資本と利益を混同しないこと、処理をむやみに変えないことなどを求めています。
法律そのものではありませんが、自由に無視できる社内ルールでもありません。実務では一般原則を土台に、会社に適用する個別会計基準と法令を確かめます。この記事では、原則の意味と経理担当の確認作業を対応させて整理します。
一般原則の早見表
企業会計原則の第一「一般原則」は7つです。次の表は内容の要約と実務で確認する場面の例です。具体的な処理・表示は適用法令と個別会計基準を別途確認します。
| 名称 | 何を求めるか | 確認する場面の例 |
|---|---|---|
| 真実性の原則 | 財政状態と経営成績を真実に報告する | 利益をよく見せるために、費用や損失を外していないか |
| 正規の簿記の原則 | 取引を正確に帳簿へ記録する。重要性に乏しい事項の簡便処理は認められる | 請求書・契約書・入出金と仕訳が結びつき、計上漏れがないか |
| 資本取引・損益取引区分の原則 | 資本取引と損益取引を区別し、資本剰余金と利益剰余金を混同しない | 株主の出資を、商品の売上と混同していないか |
| 明瞭性の原則 | 必要な会計事実を明瞭に示し、読み手の判断を誤らせない | 残高の内容が分かる科目表示や、重要な会計方針の注記を確認する |
| 継続性の原則 | 選択適用が認められる会計処理を継続し、正当な理由なく変更しない | 変更の理由と、重要な変更に必要な注記を確認する |
| 保守主義の原則 | 将来の危険に慎重に備える。過度な保守処理で真実な報告をゆがめない | 損失見積りに根拠があり、恣意的に費用を膨らませていないか |
| 単一性の原則 | 目的別の形式でも信頼できる会計記録に基づき、真実な表示をゆがめない | 銀行提出用だけ事実と異なる売上・利益に変えていないか |
名称を暗記するより、「帳簿の記録」「取引の区分」「表示と方針」のどこに関係するかで読むと、確認する資料を選びやすくなります。
企業会計原則の位置づけと構成
企業会計原則は会計実務の慣行をまとめた基準で、法律の条文とは区別されます。一般原則のほかに、損益計算書原則と貸借対照表原則があり、注解も併せて読みます。
会計実務の慣行をまとめた基準
企業会計原則は、会計実務の中で発達した慣行から、公正妥当と認められるものをまとめた基準です。企業会計審議会が公表した文書であり、法律の条文とは区別します。
会社法の会計に関する規定では、株式会社の会計は、一般に公正妥当と認められる企業会計の慣行に従うとされています。「法律ではないから、会社の都合で処理を決めてよい」とは考えません。
税務も別に確認します。法人税法の所得計算に関する規定は、内国法人の収益や原価・費用等の額を、別段の定めを除き公正妥当な会計処理の基準に従って計算するとしています。会計上の費用が、そのまま税務上の損金になるという意味ではありません。
この記事は一般原則の理解に範囲を絞ります。税務の損金要件や、個別の会計基準における認識・測定の要件は、それぞれの規定で確認します。
一般原則だけが文書の全体ではない
企業会計原則には、会計全般に関わる一般原則のほか、損益計算書原則と貸借対照表原則があります。さらに、本文の意味や適用を説明する企業会計原則注解を併せて読みます。
また、個別取引の結論を一般原則だけで決めません。具体的な会計処理に進むときは、自社が採用する会計基準と、その取引についての定めを確認します。
記帳と資本・利益の区分
記帳では取引を正確に記録し、資本の動きと利益の動きを区別します。真実な報告につなげるため、帳簿と証憑を照合し、取引内容や計上時期を確かめます。
真実性と正規の簿記は、報告と記録から考える
真実性が求めるのは、企業の財政状態と経営成績についての真実な報告です。正規の簿記が求めるのは、その報告につながる正確な会計帳簿です。売上を架空に増やすことも、都合の悪い費用を記録から外すことも、正しい報告につながりません。
実務では、仕訳から請求書・領収書や契約書へたどれるかを確認します。入出金だけで取引を判断していないか、未処理の資料が残っていないかも見ます。帳簿と証憑を照合し、金額だけでなく取引内容や計上時期も確かめます。
重要性に乏しい事項には注解に沿った簡便処理が認められます。ただし、記録の根拠をなくしたり、実際にある取引を隠したりすることとは別です。借方・貸方から仕訳を作る手順は、複式簿記の解説で確認できます。
同じ入金でも出資と売上は分ける
資本取引・損益取引区分の原則は、資本の動きと、収益・費用による利益の動きを混同しないための考え方です。株主からの出資による入金を、商品を販売した売上と同じものとして扱いません。
例えば、会社設立時の払込みと、得意先からの商品代金の入金は、どちらも預金を増やします。しかし、入金したという事実だけで同じ科目にすることはできません。契約や払込資料などで、取引の原因を確かめます。
資本剰余金と利益剰余金も区別します。前者は資本取引から生じる剰余金、後者は利益の留保額です。具体的な純資産の表示や振替は適用法令・会計基準で確認し、原則名だけで処理を決めないようにします。
表示・会計方針を確認する
表示は読み手に分かりやすく示し、選択した会計処理は正当な理由なく変えません。将来の危険には慎重に備え、提出目的に応じて事実を変えることも避けます。
明瞭性:合計が合うだけで終わらせない
明瞭性は、財務諸表の読み手が企業の状況を誤解しないよう、必要な会計事実を分かりやすく示すことです。社内の担当者には分かる略称でも、外部の読み手には内容が伝わらないことがあります。
確認例として、仮払金の内訳を放置していないかを見ます。異なる性質の残高をまとめた結果、内容が分かりにくくなっていないかも確認します。科目を増やすこと自体が目的ではなく、取引や残高の性質が伝わる表示を考えます。
企業会計原則注解は重要な会計方針の注記を求めますが、代替的な会計基準が認められていない場合は省略できます。実際の注記内容は、自社に適用する基準と法令を確認します。
継続性:正当な変更と利益操作を区別する
継続性は、選択適用が認められる会計処理を、正当な理由なく変えないという考え方です。利益を増やしたい・減らしたいという都合で方法を変えると、前期との比較が難しくなります。
注解は、選択適用が認められる会計処理で正当な理由による重要な変更をした場合、財務諸表への注記を求めています。
変更を検討する場面では、従来の方法、変更後の方法、理由、影響、適用する基準の定めをまとめて確認します。前年も同じだったことだけを根拠に、誤りと分かった処理を続けることは避けます。
保守主義:根拠のない費用の上乗せはしない
保守主義は将来の危険に慎重に備える考え方ですが、過度に保守的な処理で真実な報告をゆがめることは認められません。
「費用を多く見積もれば安全」とは考えません。損失や引当金を検討するときには、見積りの根拠と、その取引に適用する個別の認識・測定要件を確かめます。税務上の取扱いも別に確認します。
単一性:提出目的で事実を変えない
単一性は、提出目的に応じて形式が異なっても、信頼できる会計記録を基礎とし、真実な表示をゆがめないことです。銀行向けの資料だけ売上を上乗せしたり、費用を外したりすることは認められません。
社内管理のために部門別の集計を作ることや、税務上の規定に従って申告上の調整を行うこととは区別します。元になる会計記録との対応を残し、集計・調整の理由を説明できるようにします。
重要性の原則と簡便処理
重要性の原則は、重要性に乏しい事項について、厳密な処理に代えて簡便な方法を認める考え方です。一般原則の追加項目ではなく、企業会計原則注解の「重要性の原則の適用について」で説明されています。財務諸表の表示にも適用されます。
次は企業会計原則注解に挙がる適用例の要約です。どの例も、該当する項目の重要性が乏しいことを条件とします。具体的な採否は、適用する個別会計基準・法令も確認して判断します。
| 対象 | 注解が示す取扱い | 確認する内容の例 |
|---|---|---|
| 消耗品・消耗工具器具備品などの貯蔵品 | 買入時または払出時に費用処理する方法を採用できる | 未使用残高と、その影響が重要か |
| 前払費用・未収収益・未払費用・前受収益 | 経過勘定項目として処理しないことができる | 期間に分けないことで損益を大きく変えないか |
| 引当金 | 計上しないことができる | 対象となる事項と、影響の重要性を確かめたか |
| 棚卸資産の付随費用 | 引取費用や関税などの付随費用を取得原価に算入しないことができる | 対象の付随費用の範囲と金額 |
| 分割返済の長期債権・債務のうち短期到来部分 | 期限が1年以内に到来する部分を固定資産・固定負債として表示できる | 分割返済の定めがあるか、短期到来部分の重要性が乏しいか |
例えば、事務用品を購入時に費用処理する運用なら、決算時には未使用の在庫が重要になっていないかを確認します。「今まで費用にしていた」という記録だけでは、当期の重要性を確かめたことにはなりません。
この注解に、どの会社でも使える統一の金額基準は示されていません。社内の処理基準を作る場合も、単に少額かどうかだけでなく、財務内容と読み手の判断に与える影響を考えます。
会計上の重要性による簡便処理と、税法に固有の少額資産・前払費用等の取扱いは別です。注解だけを根拠に税務上も同じ処理が認められるとは判断しません。
月次・決算で使う確認メモ
月次・決算では、処理の結論だけでなく、何を確かめてその処理にしたかも残します。翌期や担当交代時に確認しやすくなります。次は社内確認用のメモの項目例です。法定様式ではありません。
| 欄 | 残す内容 |
|---|---|
| 取引・残高 | 契約の内容、証憑、勘定科目、計上時期 |
| 適用する定め | 会社が採用する会計基準、関係法令、社内規程 |
| 処理の理由 | なぜその処理・表示を選んだか、見積りの根拠 |
| 前期からの変更 | 変更の有無、変更理由、影響、注記の確認 |
| 簡便処理 | 対象項目、重要性に乏しいと判断した理由 |
| 税務・提出資料 | 税務の確認事項、会計記録との対応、調整内容 |
例えば「消耗品を購入時に費用処理」とだけ書くのではなく、対象とする用品、期末の未使用残高を確認した資料、重要性を判断した理由を残します。方法を変える場合は、変更前後の処理と理由も追記します。
記帳の方法は複式簿記、科目の選び方は勘定科目一覧、決算書へのつながりは貸借対照表の見方で確認できます。
経理の確認・提出日程を整理するときは営業日計算ツールへよくある質問
企業会計原則は法律ですか?
法律そのものではありません。会計実務の慣行をまとめた基準です。ただし、株式会社には公正妥当と認められる企業会計の慣行に従う会社法の規定があり、法令や適用会計基準を別に確認する必要があります。
重要性の原則は一般原則に含まれますか?
一般原則とは別に、企業会計原則注解で説明されています。重要性に乏しい事項の簡便処理を認め、財務諸表の表示にも適用されます。
継続性の原則があると会計処理を変えられませんか?
正当な理由による変更は認められます。選択適用が認められる処理をむやみに変えないことが継続性の考え方で、注解は正当な理由による重要な変更の注記を求めています。
保守主義なら費用を多めに計上してよいですか?
根拠なく費用を膨らませてよいわけではありません。過度に保守的な処理で真実な報告をゆがめることは禁じられています。具体的な計上額は、取引に適用する個別基準で確認します。
重要性の原則に共通の金額基準はありますか?
企業会計原則注解の重要性の原則には、各社共通の金額基準は示されていません。財務内容や読み手の判断への影響を考え、適用会計基準・法令も確認します。
出典
- 企業会計審議会「企業会計原則・同注解」(財務会計基準機構掲載):一般原則、重要性・継続性・保守主義等の説明。
- e-Gov法令検索「会社法」の会計の原則:株式会社と企業会計の慣行の関係。
- e-Gov法令検索「法人税法」の各事業年度の所得の金額の計算:内国法人の所得計算と会計処理基準の関係。
本記事は一般的な情報提供を目的とし、個別の税務・労務相談への回答ではありません。実際の判断は、適用する法令・会計基準を確認し、必要に応じて税務署・税理士などにご相談ください。