貢献利益とは?限界利益との違い・部門別利益表の作り方と計算例
この記事でいう貢献利益は、限界利益から、その部門に帰属する個別固定費を引いた利益です。本社費などの共通固定費を負担する前に、各部門がどれだけ稼いでいるかを示します。
限界利益と同じ意味で使う資料もあるため、名称だけで比較せず、差し引く費用をそろえます。以下では個別固定費を控除する定義に統一し、部門別利益表の記入例→共通固定費の扱い→月次の作成手順の順に見ていきます。
限界利益との違いと計算式
違いは、個別固定費を引くかどうかです。本記事では、次の式で区別します。
| 利益 | 計算式 |
|---|---|
| 限界利益 | 売上高 − 変動費 |
| 貢献利益 | 限界利益 − 個別固定費 |
| 全社の営業利益 | 全部門の貢献利益の合計 − 共通固定費 |
営業利益への接続は、営業に関する収益・費用をこの表に漏れなく含めた場合です。営業外損益・特別損益・税金は含めません。
たとえば、部門専用の設備にかかる固定的な費用は、限界利益を求めた後で、その部門の費用として引きます。本社の共通固定費は、部門ごとに割り振らず、貢献利益を合計してから引きます。
貢献利益を限界利益と同義にする用法も、文教大学・志村正「ABC貢献利益分析」で説明されています。別の資料と数字が合わないときは、まず個別固定費を控除しているかを確かめます。会社ごとの集計ルールを示さず、法令共通の定義として扱わないことが大切です。
粗利益など決算書上の利益の読み方は損益計算書の見方、変動費・固定費への分け直しは損益分岐点の解説で扱っています。
部門別利益表の記入例
部門欄は貢献利益まで、共通固定費と営業利益は全社欄に置くと、費用をどこで引いたかが分かります。
以下はA・Bだけの会社の単月・税抜の架空例です。金額の単位は万円で、端数はありません。本記事の定義で個別固定費控除後の貢献利益を求め、合計から共通固定費を引いて営業利益にします。営業収益・費用を全件含みます。棚卸増減・内部取引・未配賦差異はなく、営業外損益・特別損益・税金は含めません。
| 項目 | A部門 | B部門 | 全社 |
|---|---|---|---|
| 売上高 | 1,200 | 800 | 2,000 |
| 変動費 | 600 | 480 | 1,080 |
| 限界利益 | 600 | 320 | 920 |
| 個別固定費 | 250 | 220 | 470 |
| 貢献利益 | 350 | 100 | 450 |
| 共通固定費 | 全社で控除 | 全社で控除 | 300 |
| 営業利益 | 全社で算出 | 全社で算出 | 150 |
この表の貢献利益は、部門専用の固定費まで負担した後、共通固定費の回収に回せる額です。全社の営業利益を求めるとき、各部門の利益から共通固定費の配賦額を引いた後で、同じ共通固定費を全社欄でも引くと二重控除です。
貢献利益率は同じ部門の売上高で割る
本記事の貢献利益率は、個別固定費控除後の貢献利益を同期間の当該部門売上高で割り、百分率で表したものです。売上高がゼロの場合は算出できません。
単月・税抜の架空例のB部門では、個別固定費控除後の貢献利益100万円 ÷ 同月の部門売上高800万円 × 100 = 12.5%です。
率は売上高に対する割合、金額は共通固定費の回収に使える規模を表します。売上規模の違う部門を率だけで順位づけせず、金額と併せて読みます。比較期間や個別固定費の集計範囲もそろえます。
個別固定費と共通固定費を分ける
個別固定費は部門に跡づけられる費用、共通固定費は複数部門にまたがる費用として整理します。地代家賃、給与、広告費といった勘定科目だけで決めず、どの部門のための契約・利用かを見ます。
| 費用の状況 | この表での扱い | 確認する資料 |
|---|---|---|
| 専用店舗の固定賃料 | その店舗の個別固定費 | 店舗別の賃貸借契約 |
| 部門専任者の固定給 | その部門の個別固定費 | 所属と勤務実態 |
| 部門専用設備の償却費 | その部門の個別固定費 | 固定資産台帳と 利用部門 |
| 全社を担当する本社の固定費 | 共通固定費 | 担当範囲・契約・明細 |
| 固定額と従量額が混在する契約 | 固定部分と変動部分を分けてから 帰属を整理 | 料金条項と利用実績 |
兼務者の給与や共用設備は、専任者・専用設備と同じ扱いにできるとは限りません。会社の集計範囲と帰属ルールを決め、根拠を添えます。配賦を使う別の管理表を作る場合は、配賦基準と計算方法も参照してください。
なお、部門に帰属することと、部門長が金額を変更できることは別です。本社が決めた設備投資などの個別固定費を含む利益を、そのまま部門長個人の評価に使うと、本人の権限と評価対象がずれます。担当者評価では、費用の帰属に加えて管理権限も別に記録します。
配賦後の赤字と貢献利益を分けて読む
共通固定費の配賦後に赤字でも、貢献利益が赤字とは限りません。共通固定費を各部門に割り振った参考表を作るなら、貢献利益とは別の段で表示します。
同じ単月・税抜の架空例で、共通固定費をA・Bの売上比で配賦した参考表です。売上・費用の総額は変えません。各部門の貢献利益は個別固定費控除後の値です。配賦後利益は、そこから共通固定費の割当額を引いた値です。金額の単位は万円で端数はありません。
| 項目 | A部門 | B部門 | 合計 |
|---|---|---|---|
| 貢献利益 | 350 | 100 | 450 |
| 共通固定費の配賦額 | 180 | 120 | 300 |
| 配賦後利益 | 170 | −20 | 150 |
B部門は配賦後には赤字ですが、貢献利益はプラスです。この表の赤字を解消するために配賦基準だけを変えても、会社が実際に負担する費用は減りません。全社の利益を改善する話と、費用の割当てを変える話は分けます。
また、貢献利益がプラスという理由だけで存続を確定することもできません。撤退時に実際に減る支出や、空いた設備を別の用途に使う効果まで比べる必要があります。
撤退しても残る費用を確かめる
個別固定費でも、撤退すれば全額なくなるとは限りません。部門への帰属と、契約を終了して支出を減らせるかは別の問題です。解約できない賃料などが残る場合は、撤退後の比較にも残します。
次も単月・税抜の架空例で、比較対象月の営業利益を示します。B撤退後はBの売上・変動費が消滅し、Aの売上・費用と共通固定費は不変とします。閉鎖費用・代替用途の利益・他部門への波及はありません。金額は万円単位で端数なしです。B個別固定費が全額なくなる場合と、一部残る場合を比べます。
| 状態 | 計算 | 営業利益 |
|---|---|---|
| 継続 | 350 + 100 − 300 | 150 |
| B個別固定費が全額なくなる | 350 − 300 | 50 |
| B個別固定費が80残る | 350 − 80 − 300 | −30 |
この架空例では、配賦後赤字のB部門をやめても全社の営業利益は改善しません。Bが負担していた共通固定費は残り、Bの稼ぎは失われるためです。
実際の意思決定では、上の営業損益表に加えて継続と撤退で変わる将来の収入・支出を比較します。撤去・解約などの追加支出、設備の売却や別用途への転用、他部門の売上への影響も対象です。
減価償却費や帳簿価額そのものは現金の支出ではありません。これらを含む営業利益の差を、そのまま撤退で増減する現金と読み替えないようにします。判断によって変わる将来キャッシュフローに着目する考え方は、ACCA「Relevant costs」に説明されています。
月次の集計手順と確認表
まず集計範囲を決め、費用を部門へ対応させてから、全社合計を元の会計数値と照合します。次は経理担当が社内集計表を作るための手順例です。法定様式や提出義務を示すものではありません。
次の確認票は、貢献利益を限界利益から個別固定費を引いた額とする、本記事の定義に合わせた社内運用例です。
| 作業 | 記録する内容 | 照合先 |
|---|---|---|
| 期間・対象をそろえる | 対象月、部門、税込・税抜、営業損益の範囲 | 月次の試算表と集計ルール |
| 売上を部門へ対応させる | 部門別売上、共通売上や内部取引の調整 | 売上明細・部門コード |
| 変動費を対応させる | 費用の期間、混在費用の分解、売上との対応 | 原価明細・請求書・契約 |
| 固定費の帰属を調べる | 個別固定費の部門、 共通固定費の明細、判断理由 | 契約・人員配置・資産台帳 |
| 全社額に接続する | 貢献利益合計から 共通固定費を引いた営業利益 | 同期間の試算表・損益計算書 |
| 比較条件を残す | 定義・帰属ルールの変更と 予算・前年との差 | 前回の集計表と変更記録 |
合計が合わないときは、売上や費用の未割当て、二重計上、棚卸調整、内部取引などを調べ、差額を説明できるようにします。差額を理由なしに特定部門へ押し込むと、その部門の貢献利益に別の原因が混ざります。
利益表には「貢献利益=限界利益−個別固定費」と記し、費用の帰属ルールを添えると、翌月の担当者も同じ切り口で作れます。部門編成や帰属ルールが変わった月は、従来の数値との差に変更の影響が含まれることを示します。
まとめ
本記事の貢献利益は、個別固定費を負担した後の部門利益です。共通固定費は全部門の貢献利益を合計してから引き、配賦後の利益とは分けて表示します。部門の存続・撤退を検討する際は、利益表だけでなく、実際に変わる将来の収入・支出も確かめます。
限界利益と固定費から必要売上を求める場合は、次の計算ツールを使えます。ここで作った貢献利益率を、限界利益率の代わりに使うものではありません。
損益分岐点の計算ツールで必要売上を計算するよくある質問
貢献利益と限界利益は同じですか?
同義にする用法もありますが、本記事では区別します。限界利益は売上高から変動費を引いた額、貢献利益はそこから部門に帰属する個別固定費を引いた額です。資料間で比較するときは、名称より控除する費用を確かめます。
共通固定費は貢献利益から引きますか?
本記事の部門別利益表では、各部門には配賦せず、全部門の貢献利益の合計から一括して引きます。部門ごとの配賦後利益を併記する場合は、貢献利益とは別の段で示します。
貢献利益がプラスなら撤退しない方がよいですか?
プラスという理由だけでは決められません。撤退後も残る契約上の支出や、閉鎖費用、代替用途の利益、他部門への影響を含め、継続と撤退で変わる将来の収入・支出を比較します。
貢献利益率は何パーセントならよいですか?
この記事では共通の合格水準を置いていません。貢献利益の定義と集計期間をそろえ、率だけでなく金額と共通固定費の規模も見ます。部門売上高がゼロの場合、売上高で割る貢献利益率は算出できません。
出典
- 文教大学経営学部・志村正「ABC貢献利益分析―最適プロダクト・ミックスを中心として―」の「限界利益と貢献利益」「意思決定への貢献利益分析の展開」。利益の定義と部門別利益表を参照。
- ACCA「Relevant costs」。回避できない契約上の支出、既存固定費の再配賦、減価償却と帳簿価額、撤退判断の考え方を参照。
- ACCA「Divisional performance management」。部門に帰属する費用と責任者が管理できる費用の区別を参照。
- 金額は筆者が設定した単月・税抜の架空例です。実在企業の数値や統計ではありません。費用確認表と月次確認票は社内運用の例です。
この記事は一般的な情報提供を目的としており、個別の事案についての経営判断を示すものではありません。個別の税務・労務相談には応じられません。費用の帰属や管理指標の運用は、顧問の会計専門家にご確認ください。