厚生年金保険料の計算方法|給与・賞与の照合表と上限引上げ
厚生年金保険料は、決定済みの標準報酬月額と標準賞与額に料率を掛け、本人と会社で負担します。今月の給与総額にそのまま料率を掛ける計算ではありません。
給与明細を確かめるときは、対象月、計算のもとになる額、本人負担の端数処理を順に合わせます。この記事では厚生年金だけを取り出し、月額・同月賞与・会社納付の照合方法を示します。
月額保険料と本人・会社の負担
厚生年金基金未加入者の通常の保険料率は18.3%で、単一事業所勤務では本人と会社が半額ずつ負担します。会社は本人負担分と会社負担分を合わせて納付します。
毎月の計算には、決定通知などに記載された適用中の標準報酬月額を使います。残業代などで給与が変動しても、標準報酬月額が毎月その額に置き換わるわけではありません。
2026年10月の厚生年金のみの月額例として、単一事業所勤務の基金未加入者が、免除・保険料調整制度なしで決定済みの標準報酬月額に料率18.3%を掛け、労使折半する場合です(円未満端数なし)。
| 決定済み標準報酬月額 | 保険料全額 | 本人負担 | 会社負担 |
|---|---|---|---|
| 30万円 | 54,900円 | 27,450円 | 27,450円 |
| 65万円(現在の上限) | 118,950円 | 59,475円 | 59,475円 |
報酬月額から等級を確認するときは、標準報酬月額の等級表を使います。健康保険と厚生年金では上限や等級番号が違うため、厚生年金の欄を確認してください。
この記事の通常計算は、厚生年金基金の加入員、保険料免除・保険料調整制度の対象者、複数事業所勤務者を対象外とします。該当する場合は、加入先の料額表や年金事務所の決定通知で負担額を確認します。
社会保険料計算機で厚生年金の欄を確認する同月に支払う賞与の照合手順
決定済みの標準賞与額で計算する支給分には、月額の等級表を当てはめません。労働の対償として年3回以下支給する賞与は、標準賞与額を使って計算します。給与と同じ月に支給しても、月額保険料とは別に計算します。
厚生年金の標準賞与額は、同月の税引き前総支給額を合算して1,000円未満を切り捨て、月150万円を上限とします。
2026年10月の同月賞与の例です。同一勤務先の基金未加入者に、年3回以下の労働の対償である賞与を支給し、免除・保険料調整制度や資格喪失はないものとします。税引き前の同月総支給額を合算し、月150万円上限を適用して通常料率・本人半額、端数処理の特約なしで計算します。
| 確認する段階 | 計算・金額 |
|---|---|
| 同月の税引き前賞与 | 1,000,800円+600,700円 |
| 同月の総支給額合計 | 1,601,500円 |
| 千円未満を切り捨て | 1,601,000円 |
| 月上限を適用した標準賞与額 | 1,500,000円 |
| 厚生年金保険料の全額 | 1,500,000円×18.3%=274,500円 |
| 本人の賞与からの控除額 | 274,500円÷2=137,250円 |
同月に分けて支給しても、支給のたびに上限を適用するわけではありません。先の支給分を既に控除している場合は、同月分の控除合計が合算後の本人負担額と一致するか照合します。
同月に複数回支払う場合の届出は、最後の賞与支払後に同月分を合算して行います。既に届け出た後に追加支給した場合も、同月分を合算して届け出ます。
名称だけでは賞与と決められません。労働の対償でない結婚祝金などは対象外です。定例の支給回数と臨時支給の扱い、育休・産休中や退職月の扱いは、賞与の社会保険料で確認してください。
控除と納付で違う端数処理
本人から引く額を丸める処理と、会社が納める合計額を丸める処理は別です。本人控除額を単純に倍にしても、納入告知額と一致するとは限りません。
特約なしの給与・賞与控除では、本人負担分の円未満端数が50銭以下なら切り捨て、50銭超なら切り上げます。
特約なしで本人が事業主へ現金払いする場合は、本人負担分の円未満端数が50銭未満なら切り捨て、50銭以上なら切り上げます。
特約なしで、2026年10月の基金未加入者の同月の標準賞与額101,000円を通常料率で労使折半すると、端数処理前の本人負担額は9,241.50円です。免除・保険料調整制度は適用しません。賞与控除と本人の現金払いを比べます。
| 本人負担の支払方法 | 端数処理後 |
|---|---|
| 賞与から控除 | 9,241円 |
| 本人が事業主へ現金で支払う | 9,242円 |
事業所の厚生年金保険料は、被保険者ごとの算定額を端数処理せずに合計し、合計額の円未満を切り捨てます。会社負担は、納入告知額から本人負担分の合計を差し引いて求めます。
事業主と被保険者の間に端数処理の特約がある場合は、その取扱いによります。会社負担と本人負担が円単位で違っても、その差だけで誤りとは判断できません。
成立済みの標準報酬月額上限引上げ
今後の変更は、保険料率の引上げではなく、標準報酬月額の上限引上げです。既に成立した改正の施行月と、上限に達する人の本人負担を分けて確認します。
厚生労働省が示す標準報酬月額上限の施行月と、単一事業所勤務の基金未加入者で各上限に達する人の本人月額試算です。通常料率・労使折半を前提とし、免除・保険料調整制度は適用しません。円未満の端数は生じません。
| 上限を引き上げる月分 | 標準報酬月額の上限 | 上限に達する人の本人月額試算 |
|---|---|---|
| 2027年9月から | 68万円 | 62,220円 |
| 2028年9月から | 71万円 | 64,965円 |
| 2029年9月から | 75万円 | 68,625円 |
全従業員の保険料が表の額へ上がるという意味ではありません。各人に適用する標準報酬月額と、上限引上げの対象になるかを、施行月の決定通知・料額表で確認します。賞与の上限と混同しないでください。
施行月と上限額は、厚生労働省「厚生年金等の標準報酬月額の上限の段階的引上げ」に掲載されています。
給与明細と通知書の照合手順
給与明細の支給月と、保険料の対象月を合わせるところから始めます。標準報酬月額が正しくても、照合する月が違うと差が出ます。
- 給与台帳・給与明細で、控除した厚生年金保険料がいつの月分かを確認する。
- 標準報酬月額の決定・改定通知から、その対象月に適用する額を確認する。
- 月額分は厚生年金の料額表と照合する。賞与分は、上の計算例と同じ順で標準賞与額と控除額を照合する。
- 本人控除は支払方法と端数処理の特約を確認する。会社の納付額は、保険料全額の算定値を個人ごとに丸めず合算し、合計の円未満を切り捨てて照合する。
給与・賞与の保険料が発生する月と、給与明細で控除する月は分けて確認します。
控除する月の運用や入退社時の扱いは、社会保険料をいつの給与から引くかで確認できます。差が残る場合は、対象月・決定通知・給与台帳・同月賞与明細をそろえて年金事務所へ確認します。
確認するポイント
月額分・賞与分の決定通知と計算の順序を合わせて確認します。本人控除と会社納付を別々に照合し、上限の改正は適用月を確認します。
よくある質問
給与が変わっていないのに保険料が変わることはありますか?
あります。適用中の標準報酬月額の改定や免除の終了などを確認します。給与明細の支給月だけで判断せず、保険料の対象月と決定・改定通知を合わせて確認してください。
賞与も給与の等級表で計算しますか?
標準賞与額を用いる賞与には、月額の等級表を使いません。労働の対償で年3回以下の賞与は決定済みの標準賞与額を使い、年4回以上の定例支給は標準報酬月額に含めて給与分として扱います。免除や退職時に保険料がかかるかは、計算基礎の区分とは別に確認します。
会社の納付額は本人から引いた額の倍ですか?
円単位では一致しない場合があります。本人控除と事業所合計納付で端数処理が違うため、納入告知額から本人負担分の合計を差し引いて会社負担を確認します。
出典
- e-Gov法令検索 厚生年金保険法20条・24条の4・81条・82条・84条
- 日本年金機構 厚生年金保険料額表
- 全国健康保険協会 令和8年3月分からの健康保険・厚生年金保険の保険料額表(東京支部)の厚生年金欄と注
- 日本年金機構 従業員に賞与を支給したときの手続き
- 日本年金機構 保険料の計算方法について
- 厚生労働省 厚生年金等の標準報酬月額の上限の段階的引上げ
本記事は一般的な情報提供を目的としたものです。個別の税務・労務相談には応じられません。実際の保険料・給与計算は、年金事務所・社会保険労務士にご確認ください。