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熱中症対策の義務化|対象作業と会社の報告体制・対応手順

会社が対象作業を行わせるときは、事前に報告体制を整え、重篤化を防ぐ手順を作業場ごとに定め、その作業に従事する人へ周知する必要があります。飲料や冷却用品を用意するだけでは、報告先や対応手順の整備を代えられません。

担当者が最初に決めるのは、対象となる作業、報告を受ける人、具合が悪くなったときの動きです。

対象作業は温度と時間の両方で判定する

対象は、次の温度条件と時間条件の両方を満たすことが見込まれる作業です。屋内・屋外や業種の名称だけで分けず、出張先・作業場所間の移動・臨時作業も含めて確認します。

判定項目対象となる条件
温度作業場所のWBGT(暑さ指数)が28度以上、または気温が31度以上
時間の見込みその暑熱な場所での作業が継続して1時間以上、または1日当たり4時間を超える見込み

温度は作業場所での実測を基本とします。ただし、通風のよい屋外作業などで判断できる場合は、天気予報や環境省の熱中症予防情報サイトも利用できますが、同サイトのWBGT実況・予測情報は提供期間中に限られます。2026年度の提供は2026年10月21日に終了しているため、期間外は過去データで当日を判定せず、作業場所の実測等で確認します。

時間の条件は、作業実績が確定してからではなく、作業前の見込みで確認します。冷房の効いた事務室と、熱源のある厨房や倉庫を、同じ日の予報気温だけでまとめて判断しないようにします。

この対象条件は、安全に作業できる上限ではありません。対象条件に達しなくても、作業強度や着衣によってリスクが高まる場合は、同様の対応に努めることとされています。

熱中症が疑われたら、温度や作業時間にかかわらず適切に対処します。作成済みの手順どおりに動くことが難しい場合も、重篤化を防ぐための合理的な措置を講じることが望ましいとされています。

義務化で会社が整えるもの

対象作業についての報告体制・措置手順・周知の義務は、2025年6月1日施行の改正で設けられました。根拠は労働安全衛生規則第612条の2です。

以下は、熱中症を生ずるおそれのある対象作業を行う事業者に求められる対応です。対象条件は上の節で確認できます。

整えるもの内容会社側の確認点
報告体制本人の自覚症状や、他の作業従事者が発見した熱中症の疑いを報告できる体制報告先・連絡方法を明示し、対象作業中は随時報告を受けられるか
重篤化を防ぐ手順離脱・身体の冷却・必要に応じた医師の診察や処置等の手順を、作業場ごとに事前に決める現場で実行できる内容か。冷却場所や医療機関への連絡方法を決めたか
作業従事者への周知対象作業に従事する人へ、体制と措置の内容・実施手順を伝える管理者だけが知っている状態になっていないか

ここで扱うのは、熱中症の重篤化を防ぐための具体的な措置です。会社の安全配慮義務の総論は、安全配慮義務の解説で別に扱っています。

報告先は「作業中につながる人」にする

対象作業の報告体制は、報告を受ける人の連絡先と連絡方法を定め、明示するところまで必要です。担当者の氏名が書いてあっても、対象作業中に報告を受けられない状態では足りません。

報告のきっかけは、本人が熱中症の自覚症状を感じた場合と、他の作業従事者が熱中症の疑いに気づいた場合です。診断が確定するのを待つ仕組みにはしません。

準備する欄記入する内容の例
報告先作業場の責任者名、携帯電話番号、内線など
連絡の方法電話・無線など、その現場で作業中に使える手段
不在・交代時の扱い担当者が休みの日や交代した後も、誰が報告を受けるか
早期発見の補助巡視や定期連絡など、現場で実施する方法

表は準備のための記入例です。

不在時の扱いなども含め、報告を随時受けられる体制になるよう具体化します。巡視や定期連絡は早期発見のために推奨される方法で、列挙した方法の全部を導入する義務ではありません。

対象作業の現場ごとに対応手順を決める

対象作業の手順は、作業場ごとにあらかじめ定めます。中心となるのは、作業からの離脱、身体の冷却、必要に応じた医師の診察や処置など、症状の悪化を防ぐ措置です。

熱中症の疑いに備える対応の流れ発見と報告、作業離脱と冷却、必要な医療対応へつなぐ。疑いのある人を一人にせず見守る。 発見・報告自覚症状・他者の気づき作業離脱・冷却現場の手順に沿って対応医療対応へ必要に応じて診察・処置熱中症の疑いがある人を一人にせず、見守る
対象作業の対応手順に入れる骨格。現場で実行できる内容にし、必要な医療対応を遅らせないようにします。

熱中症が疑われる人は、冷却中も一人にせず、他の作業者等が見守ることが重要です。涼しい場所へ移した後の対応まで、手順に含めます。

手順に具体化する項目現場で決める内容の例
作業からの離脱作業を中断した人をどこへ移すか、誰が付き添うか
身体の冷却涼しい休憩場所、冷却に使う設備や物品、その置き場所
医療機関への連絡・搬送必要時の搬送先、所在地・連絡先、救急要請や案内を担う人
回復後の対応体調急変時の連絡先や対応と、帰宅後を含む悪化時に直ちに受診する旨の案内

帰宅後を含め、時間が経って症状が悪化する場合があります。回復後に体調急変などで症状が悪化したときは直ちに医療機関を受診する必要があることを本人に伝え、連絡体制や対応もあらかじめ決めておきます。

手順は、厚生労働省の施行通知にある手順例を参考にできます。例の様式に限定されず、作業場所・作業内容の実態に合った独自の手順を定めても差し支えありません。

体制と手順を作業する人へ伝える

対象作業について、主な準備状況別に、報告体制・作業場ごとの措置手順の整備と作業従事者への周知の時期を整理します。

準備の状況整備・周知の時期
まだ整備や周知が済んでいない場合対象作業が見込まれる作業日の開始前までに未実施分を済ませる
同じ従事者が一定期間連続して作業し、整備と周知が済んでいる場合同じ整備・周知を作業日ごとに重ねる必要はない

暑い時期の屋外作業など、あらかじめ予定が分かる場合は余裕をもって準備します。

報告先と手順が作業する人へ確実に伝わる方法で、掲示・メール・文書・朝礼による周知を行い、口頭で伝わらない場合や朝礼不参加者がいる場合は必要に応じて併用します。

人が入れ替わったときも既に伝わっていると考えて省略せず、新たに作業する人への伝達を確認します。

現場で周知した結果の記録の保存までは、法令で求められていません。ただし、労働基準監督署の確認に際して事業者として適切に対応できるよう、担当者が内容を説明できる状態にしておきます。

請負先の人も働く現場での注意点

同じ作業場で複数の事業者が対象作業を行う混在現場では、元方事業者と関係請負人のそれぞれに措置義務が生じます。元方が連絡先を掲示しているという理由だけで、請負側の義務がなくなるわけではありません。

各事業者が共同で緊急連絡先を定めて、掲示やメール、文書などで伝えることもできます。会社同士で、誰が報告を受け、現場で誰が動くかを合わせておくと、連絡の行き違いを防ぎやすくなります。

周知の対象となる作業者は、自社の正社員だけに限定されません。施行通知では、労働者と同じ場所で対象作業に従事する労働者以外の人も含むとされています。

会社側の準備チェック

対象作業の確認から、報告・対応・周知までつなげて準備します。

  • 温度と作業時間の見込みを、作業場所ごとに確認する。
  • 対象作業中につながる報告先と連絡方法を明示する。
  • 対象作業の現場ごとに、作業離脱・冷却・必要な医療対応の手順を事前に決める。
  • 対象作業に従事する人へ、体制と手順を確実に伝える。

勤務予定を確認する補助として、営業日計算も利用できます。温度や熱中症リスクは判定しないため、対象作業の確認は現場で別に行います。

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よくある質問

屋内の仕事も対象になりますか?

対象になり得ます。屋内・屋外の区別だけで除外されず、作業場所の温度と作業時間の見込みで判定します。厨房や倉庫なども、実際の作業環境を確認します。

飲料や冷却用品を配れば義務を果たせますか?

配布だけでは足りません。対象作業については、報告体制を整え、重篤化を防ぐ措置手順を作業場ごとにあらかじめ定め、作業従事者へ周知する必要があります。

朝礼で口頭で伝える方法でもよいですか?

口頭でも可能ですが、対象作業に従事する人へ報告先や手順が確実に伝わることが前提です。朝礼不参加者がいる場合や口頭では複雑な内容が伝わらない場合は、必要に応じて掲示・メール・文書などを組み合わせます。

基準に届かなければ、具合が悪い人への対応は不要ですか?

不要にはなりません。熱中症が疑われた場合は、温度や作業時間にかかわらず適切に対処します。対象条件に達しない作業でも、作業強度や着衣によるリスクを踏まえ、同様の対応に努めることとされています。

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出典

労働安全衛生規則と厚生労働省の施行通知を参照しています。

本記事は一般的な情報提供であり、個別の相談への回答ではありません。個別の税務・労務相談には応じられません。具体的な適用は所轄の労働基準監督署や専門家にご確認ください。

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