労働時間とは|着替え・朝礼・研修・待機・持ち帰り業務の判断表
労働時間は、使用者の指揮命令下に置かれている時間です。着替えや研修、待機、自宅での作業も、会社の明示・黙示の指示と実態によって労働時間に当たります。
「始業前」「任意参加」「休憩中」という名称だけでは決まりません。このページでは、給与集計で迷いやすい場面ごとに、労働時間に含める条件と確認資料を整理します。
労働時間に含める条件の早見表
以下は、使用者の指揮命令下にあるかを確かめるための代表例です。各行の条件と実際の働き方を照らし、名称だけで判定しません。
| 場面 | 労働時間に含める条件 | まず確認するもの(例) |
|---|---|---|
| 着替え・準備・後始末 | 使用者の指示で、業務に必要な準備・後始末を事業場内で行う。更衣は服装の着用が義務付けられ、自宅からの着用を認めない場合 | 更衣場所・着用の指定、清掃や準備の指示、実施した時刻 |
| 朝礼 | 会社の明示・黙示の指示で参加し、指揮命令下に置かれる | 参加の指示、始まる時刻、出欠確認と不参加時の扱い |
| 研修・学習 | 研修参加が業務上義務付けられる、又は使用者の指示で業務に必要な学習を行う | 受講案内、提出課題、参加しない場合の不利益や業務への影響 |
| 待機・手待ち | 指示があれば即時に業務へ就く必要があり、労働から離れることが保障されない | 対応義務、離席・外出の可否、交代要員の有無 |
| 持ち帰り業務 | 自宅でも、会社の明示・黙示の指示で指揮命令下の業務を行う | 指示・期限、作業内容、開始・終了と私用時間の記録 |
根拠となる厚生労働省の労働時間適正把握ガイドラインは、準備・後始末、手待時間、義務付けられた研修などを挙げています。それ以外も、指揮命令下と評価される時間は労働時間として扱います。
指揮命令下かを確かめる
見るのは、会社から義務付けられたか、又は実際には行わざるを得なかったかです。労働契約や就業規則に「労働時間ではない」と書くだけで、指揮命令下の時間を除外することはできません。
明示の指示は、参加命令や作業指示のように言葉で示されたものです。黙示の指示も判断対象になるため、指示書がないときも、業務内容や実際の義務付けを確認します。
例えば「自由参加の勉強会」と案内していても、不参加で業務に就けないなら、実質的な義務付けが問題になります。反対に、会社に早く着いただけで業務も指示もない時間まで、自動的に労働時間に含めるものではありません。
着替え・朝礼は始業前でも確認する
会社の指示で事業場内において行う業務に必要な準備や後始末は、労働時間です。
更衣では、制服があるかに加え、事業場内で着替える必要があるかを確認します。使用者の指示で事業場内で行う必要な更衣を、打刻前という理由で除外せず、着用・更衣場所の指定と打刻の順を照らします。
一方、厚生労働省等の研修・教育訓練等の取扱いリーフレットでは、制服・作業着の着用が任意、又は自宅からの着用が認められる更衣を、労働時間に該当しない例としています。
朝礼も、会社の指示で参加して指揮命令下にある時間なら、始業前でも労働時間です。就業規則の始業時刻と、参加を求める朝礼の開始時刻がずれていないかを確かめます。
交通混雑を避けるため自発的に早く出社し、始業まで業務に従事せず、業務の指示も受けていない時間は、同リーフレットの非該当例です。入館時刻だけで結論を出さず、早着した理由とその間に行ったことを記録します。
研修は実質的に参加を強制していないか
参加が業務上義務付けられた研修・教育訓練や、使用者の指示による業務に必要な学習は労働時間です。休日開催やオンライン受講という形式だけで除外しません。
形式上は自由参加でも、不参加が減給処分の対象になる、又は受講しないと業務を行えないなど、事実上参加を強制される研修は労働時間に当たります。案内の「任意」という文字に加え、不参加時の扱いを確認します。
本来業務や不可欠な準備・後処理を終えて業務から離れた後、業務上の義務付けなく自由に参加する研修は、労働時間に該当しません。自己研鑽という名で本来業務の続きを除外しないようにします。
同リーフレットは、非該当として扱う研修について、上司の指示がなく、本来業務と不可欠な準備・後処理が終了し、業務から離れてよいことを事前に労使で確認するよう示しています。
社内の確認記録には、受講の目的、指示者、出欠の扱い、本来業務を終えた時点などを残す方法があります。これは記録例であり、研修に「自己研鑽」と記載すれば非該当になるという意味ではありません。
待機・仮眠は業務から離れられるか
指示があれば即時に業務へ就く必要があり、労働から離れることが保障されない待機は、手待時間として労働時間に含まれます。実際に電話が鳴らなかった、注文が入らなかったという結果だけで除外しません。
昼の電話対応を任され、呼ばれたらすぐ対応しなければならず、業務から離れられない時間も、この基準で確認します。必要な休憩の与え方は休憩時間の解説へ譲ります。
反対に、同リーフレットでは、社用携帯を持って帰宅した後、自由に過ごすことが認められる緊急対応当番の待機を、労働時間に該当しない例としています。自宅待機を、すべて該当又は非該当と決めるものではありません。
仮眠も、電話等への対応が不要で、実際の業務も行わない場合が非該当例です。会社が即時の対応を求め、業務から離れることが保障されていない待機なら、「仮眠」という名称でも手待時間として確認します。
当番表や連絡ルールでは、どのような対応が求められるかと、自由に過ごせるかを分けて確認します。待機中の自由な時間と、実際に会社の指示で業務に対応した時間をまとめて除外しないようにします。
持ち帰り業務は指示と実施時間を確かめる
自宅での作業でも、会社の明示・黙示の指示により指揮命令下で行った業務の時間は、労働時間です。「持ち帰ったから対象外」とも、「自宅にいた時間は全部対象」とも扱いません。
例えば、上長が自宅での資料修正を指示した場合には、依頼内容、作業した時間、途中で業務から離れた時間を確認します。直接の持ち帰り命令が見当たらないときも、それだけで除外せず、指示や業務の実態を確認します。
テレワークの自己申告では、使用者が申告と客観的な事実との著しい乖離を把握した場合、必要な労働時間の補正をします。申告外のメール送信や長時間のPC起動記録は、実際の業務を確かめる手掛かりになります。
ただし、メール送信時刻の間やPC起動時間の全体を、そのまま実労働時間と決めるものではありません。作業内容や本人の説明も照らして確認します。
テレワークの自己申告では、申告外メールやPC記録等から申告と実労働の相違を使用者が認識していない場合、申告時間に基づく上限規制の遵守と賃金支払等で足りるとの注があります。根拠は厚生労働省のテレワークガイドラインです。
勤怠へ反映するための確認表
労働時間適正把握ガイドラインの対象者は、原則として使用者の現認、又はタイムカード・ICカード・PC使用時間等の客観的な記録を基礎に、始業・終業を確認して記録する方法で把握します。これらによれず、やむを得ず自己申告制とする場合は、説明や実態調査・補正などの措置が必要です。
次の表は、指揮命令下か迷う時間を労務担当へ確認し、勤怠を確定するための社内記録例です。法定様式ではありません。
| 確認項目 | 残す内容 | 確認先・資料の例 |
|---|---|---|
| 指示・義務付け | 誰の指示か、断れるか、不参加時の扱い | 本人・上長、業務指示、受講案内、服装ルール |
| 業務の実態 | 実施した作業、業務に必要な準備・後始末か | 作業日報、提出物、本人・上長の説明 |
| 待機中の拘束 | 即時対応の必要、業務から離れてよいか | 当番表、交代体制、連絡・離席ルール |
| 時間の記録 | 開始・終了、休憩や私用との区別 | 打刻、入退館、PC記録、本人の申告 |
| 食い違いの確認 | 記録と申告の差、確認した事実、補正の内容 | 本人・上長・労務担当、確認の経過 |
自己申告制で、入退場やPC記録から分かる在場時間と申告の労働時間に著しい乖離があるときは、実態調査と必要な補正を行います。自主研修や休憩と申告されても、実際に指揮命令下にあった時間は労働時間として扱います。
時間外労働の申告に上限を設け、実際に働いた分の申告を認めないなど、適正な自己申告を妨げる運用はできません。時間外削減の通達や定額払いが申告を妨げている場合も、確認・改善が必要です。
労働時間に含める範囲を確定した後、休憩時間を除く実労働を、勤務制度に応じて集計します。労働基準法32条は休憩を除いて労働時間を定めています。法定時間外の区分・割増率は残業代の計算方法で確認できます。
把握ガイドラインは、労働基準法41条に定める者と、みなし労働時間制の適用者(事業場外労働はみなしが適用される時間に限る)を対象から除きます。対象外でも健康確保のため適正な労働時間管理の責務があります。
適用除外の確認は管理監督者、みなし制度の説明は裁量労働制の解説を参照できます。打刻との食い違いを直す具体的な手順は、タイムカードの修正にまとめています。
- 会社の指示と実態から、指揮命令下にある時間かを判断する。
- 研修の「任意参加」は、不参加の不利益や事実上の強制がないかも確認する。
- 即時対応が必要で業務から離れることが保障されない待機は、作業がなくても手待時間として扱う。
よくある質問
制服への着替えは労働時間ですか?
使用者の指示で、着用を義務付けられた服装へ事業場内で行う必要な更衣は、労働時間に含めます。自宅からの着用を認める場合や任意着用の更衣は非該当例です。服装と更衣場所の指定を確認します。
休日の自由参加研修も労働時間ですか?
業務上の義務付けがない自由参加の研修は、労働時間に該当しません。ただし、不参加で減給される、又は業務に就けないなど事実上の強制があれば労働時間です。本来業務や不可欠な準備・後処理が終了しており、業務から離れてよいかも確認します。
何もしていない待機時間は除いてよいですか?
指示があれば即時に業務へ就く必要があり、労働から離れることが保障されない待機は、労働時間です。実作業がなかったという理由だけでは除けません。帰宅後に自由に過ごせる当番の待機は、行政資料の非該当例です。
自宅で行った持ち帰り業務は対象外ですか?
自宅でも、会社の明示・黙示の指示で指揮命令下の業務を行った時間は、労働時間です。作業内容と開始・終了、途中の私用時間を確認します。自宅にいた時間全体を労働時間とするものではありません。
出典
- 厚生労働省「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」:適用範囲、労働時間の考え方、始業・終業の確認、自己申告制の措置。
- 厚生労働省・都道府県労働局・労働基準監督署「労働時間の考え方:『研修・教育訓練』等の取扱い」:研修、仮眠・待機、更衣・早着の該当・非該当例と確認事項。
- 厚生労働省「テレワークの適切な導入及び実施の推進のためのガイドライン」:テレワークにおける労働時間の把握。
- e-Gov法令検索「労働基準法」32条:休憩を除く労働時間。
本記事は一般的な情報提供を目的としており、個別の労務相談への回答ではありません。実際の判断は労働基準監督署・社会保険労務士等にご確認ください。個別の税務・労務相談には応じられません。