宿直とは?夜勤との違い・宿日直許可の条件と手当の確認表
宿直は夜間の当直を指し、通常業務を夜に行う夜勤とは区別します。「宿直」という名称だけで、労働時間の扱いが決まるわけではありません。断続的な宿日直として扱うには、勤務実態に合う労働基準監督署長の許可を確認します。
給与を締めるときは、許可書の範囲と実際の業務記録を照合します。許可中に通常業務が発生した時間を、宿直手当だけで処理しないことが大切です。
宿直・日直・夜勤の違い
夜間の当直が宿直、日中の当直が日直です。どちらも通常の勤務時間外に、通常業務と異なる業務を行う形を想定しています。夜勤は、夜間に通常勤務と同様の業務を行う勤務です。
| 区分 | 勤務の内容 | 給与担当者が確認すること |
|---|---|---|
| 宿直 | 夜間の当直。巡視や非常時への待機など | 断続的な業務としての許可と、その対象範囲 |
| 日直 | 日中の当直。巡視や緊急の文書・電話の収受など | 断続的な業務としての許可と、その対象範囲 |
| 夜勤 | 夜間に通常勤務と同様の業務を行う勤務 | 実際の労働時間と、時間外・休日・深夜の賃金処理 |
たとえば、夜間も受付・会計を通常勤務と同じように続けるなら、呼び名が宿直でも、その勤務を断続的な宿日直として許可する扱いにはなりません。
夜勤の割増賃金は深夜手当の計算方法、勤務後の休日は夜勤明けと休日の違いで確認できます。
宿日直許可の条件と手当
常態としてほとんど労働する必要がないことが、一般の許可基準の出発点です。労働基準法施行規則23条は、断続的な宿日直業務について、使用者が所轄労働基準監督署長の許可を受ける制度を定めています。
許可を受けた範囲の断続的な宿日直は、労働時間や休憩に関する規定の適用対象から外れ、36協定の限度時間に算入しません。ただし、通常勤務と同態様の業務に従事した時間は除きます。その時間は、別に手続と賃金処理を確認します。
次の表は一般の宿日直許可基準です。通常の労働の継続延長は許可対象とせず、勤務の内容・手当・回数と、宿直の場合の睡眠設備を確認します。回数の例外は表の直後に記載します。
| 確認項目 | 基準 |
|---|---|
| 勤務の内容 | 常態としてほとんど労働がなく、定期的巡視、緊急の文書・電話の収受、非常事態への待機等を目的とするもの |
| 宿日直手当 | 宿日直1回当たり、当該事業場で宿日直に就く予定の同種労働者の賃金の一人一日平均額の3分の1以上 |
| 勤務回数 | 通常の回数基準と、人員・労働密度による例外を確認(次の段落) |
| 宿直の睡眠設備 | 相当の睡眠設備を設けること |
一般の許可基準は宿直が週1回、日直が月1回までです。ただし、事業場の18歳以上で法律上宿日直を行える全員を充てても不足し、かつ労働密度が薄い場合は、実態に応じて回数を超える許可があります。
始業・終業時刻に密着した時間帯に、顧客からの電話を受けたり、盗難・火災の防止を行ったりする勤務は、許可しないとされています。
手当の基礎は「本人の日給」と決めつけず、同種労働者の範囲と平均額の資料をそろえます。非常勤医師のみで宿日直に対応する場合は、医師の公的賃金統計を参考に手当を評価した事例もあります。具体的な算定資料は監督署に確認します。
手当の許可基準と、給与への課税は別の確認です。税務上の取扱いは宿日直料の課税・非課税の区分、食事の支給は残業・宿日直の食事にまとめています。
医師・看護師等に追加される条件
医師・看護師等には、一般の許可基準に加えて、勤務からの解放、業務の軽さ、宿直時の睡眠を確認する細目があります。厚生労働省「医師、看護師等の宿日直許可基準について」で示されています。
医師等の許可には、以下の条件に加えて、手当・回数など一般の宿日直許可条件も満たす必要があります。
| 確認する点 | 内容 |
|---|---|
| 通常勤務との切れ目 | 通常の勤務時間の拘束から完全に解放された後であること。通常の勤務態様が続く時間は許可対象外 |
| 従事する業務 | 一般の宿日直業務以外は、通常勤務と同態様の業務を除き、特殊の措置を必要としない軽度の、または短時間の業務に限る |
| 宿直中の睡眠 | 夜間に十分な睡眠がとり得ること |
医師等の通常業務の発生が稀で、常態としてほとんど労働がなく、宿直では夜間に十分な睡眠がとれる限り、許可を取り消す必要はないとされています。ただし、当該通常業務の時間は労働時間として本来の賃金を支払います。法定時間外・法定休日労働となる場合は必要な手続を取り、深夜労働を含め割増賃金の要件に該当する場合は割増分も支払います。
病院全体を同じ扱いにするとは限りません。診療科・職種・時間帯・業務の種類等を限った許可も可能です。医師の深夜帯だけ、病棟業務だけといった許可を、ほかの勤務に広げないようにします。
許可中に通常業務が発生したら
許可があっても、通常の勤務と同態様の業務に従事した時間は、労働時間として宿日直手当とは別に本来の賃金を支払う必要があります。法定時間外・法定休日労働となる場合の手続と、時間外・休日・深夜の割増賃金の要否を確認します。許可中の宿直手当と分けて、実際に対応した時間・内容を記録します。
通常勤務と同態様の業務への対応が常態になっている医師等の勤務は、宿日直として許可できない扱いです。
医師等が通常勤務と同態様の業務に従事した当該時間も、法定労働時間の延長や法定休日労働が必要な場合は、労働基準法33条または36条1項による時間外・休日労働の手続を取ります。法定時間外・法定休日・深夜労働など、同法37条の要件に該当する場合は割増賃金も支払います。
たとえば、医師が突発的な応急患者の診療に対応した場合は、対応の開始・終了、業務内容、指示・報告先を記録します。そうすると、給与担当者が勤務表と照合しやすくなります。これは記録欄の例であり、決められた法定様式ではありません。
小規模な病院・診療所等に住み込む医師等は宿日直として扱う必要はないとされています。ただし、通常勤務と同態様の業務に従事する時間は、労働時間として本来の賃金を支払います。法定時間外・法定休日労働となる場合は必要な手続を取り、深夜労働を含め割増賃金の要件に該当する場合は割増分も支払います。
残業代・割増賃金計算機へ計算機は通常業務の割増賃金の確認用です。宿日直許可の可否や手当の最低額は判定しません。
許可申請と給与締めでそろえる資料
許可書と業務日報を、勤務表・給与資料にひも付けておくと照合しやすくなります。申請は労働基準法施行規則23条の様式第10号による許可申請です。
以下は東京労働局が示す申請資料の標準例を整理したものです。申請事業場の資料でよく、兼業・副業先の賃金台帳等は不要です。実際の提出資料は、監督官が調査に必要な範囲で依頼します。
| 資料の例 | 確認する内容 |
|---|---|
| 労働条件通知書・雇用契約書の写し | 対象者の勤務条件 |
| 当番表・シフト表 | 労働者ごとの一定期間の宿直・日直の勤務回数 |
| 業務日報等 | 業務の頻度、内容、従事時間の一定期間の実績または見込み |
| 給与一覧表・宿日直手当額計算書 | 対象者全員の割増賃金計算の基礎となる賃金と手当の計算 |
| 賃金台帳の写し等 | 給与一覧表の金額の裏付け |
| 巡回業務がある場合の図面 | 巡回場所全体と順路 |
| 宿直の場合の宿泊設備の資料 | 睡眠設備の概要 |
給与締めでは、許可の対象時間・職種・業務の範囲に実際の勤務が収まっているかを先に見ます。通常業務の記録があれば、本来の賃金と時間外・休日労働の手続、割増賃金の要否を勤怠担当者へ確認してから締めます。
まとめ
宿直という勤務名より、許可の範囲と実際の業務を確認します。手当・回数・睡眠設備の条件をそろえ、許可中に通常業務が発生した時間は、記録と賃金処理を分けて確認してください。
よくある質問
宿直と夜勤は同じですか?
同じではありません。宿直は通常業務と異なる夜間の当直、夜勤は夜間に通常勤務と同様の業務を行う勤務です。断続的な宿日直の扱いは、名称ではなく勤務実態と監督署長の許可を確認します。
仮眠室があれば宿直として許可されますか?
仮眠室だけでは決まりません。一般の許可基準では、ほとんど労働のない巡視・緊急の収受・非常時待機等の勤務であることに加え、手当・回数・宿直の睡眠設備を確認します。医師等には、通常勤務からの完全な解放、通常勤務と同態様の業務を除く特殊の措置を必要としない軽度または短時間の業務、宿直時の十分な睡眠という条件もあります。
許可中に通常業務をした時間も宿直手当だけでよいですか?
宿直手当だけで処理は終わりません。許可中でも通常勤務と同態様の業務に従事した時間は、労働時間として宿直手当とは別に本来の賃金を支払います。法定時間外・法定休日労働となる場合は必要な手続を取り、深夜労働を含め割増賃金の要件に該当する場合は割増分も支払います。業務の開始・終了と内容を記録し、給与計算に反映します。
出典
- e-Gov法令検索「労働基準法施行規則」23条:断続的な宿日直勤務の許可。
- 東京労働局「医療機関における宿日直の許可基準について」:一般的許可基準、申請資料例、許可中の通常業務。
- 厚生労働省「医師、看護師等の宿日直許可基準について」:医師等の条件、通常業務が生じた時間の扱い、範囲を限った許可。
- 厚生労働省「医療機関の宿日直許可に関するFAQ」:許可中の通常業務に対する本来の賃金と必要な割増賃金。
- e-Gov法令検索「労働基準法」33条・36条・37条:時間外・休日労働の手続と割増賃金の要件。
この記事は一般的な情報提供であり、個別の事案に対する助言ではありません。実際の運用は所轄の労働基準監督署または社会保険労務士にご確認ください。個別の税務・労務相談には応じられません。