源泉徴収の対象とならない給与 — 課税されない手当・現物給与の一覧と、条件を外れたときの扱い
結論から言うと、会社が役員や従業員に払うお金や物のうち、所得税法やその通達で「課税されない」とされている部分が、源泉徴収の対象とならない給与です。国税庁の「源泉徴収のあらまし(令和8年版)」は、通勤手当、旅費、宿日直料、結婚祝金や見舞金などの手当と、食事、制服、記念品、社宅などの現物給与について、課税されない条件を1つずつ示しています。
気をつけたいのは、どの項目も条件つきだという点です。名前が「通勤手当」「食事補助」でも、金額・対象者・支給のしかたの条件を外れると給与として課税されます。しかも、条件を外れたときに超えた部分だけが課税になる項目と、全額が課税になる項目があります。
この記事は、会社の経理・給与担当者が「この支給は給与計算で源泉徴収の対象に入れるか」を項目ごとに確かめられるように、国税庁の資料の区分のまま一覧にします。金額の表や計算のしかたは項目ごとの記事に譲り、ここでは条件の骨組みと、条件を外れたときの扱いを並べます。個々の支給が課税されるかどうかの判断はしません。
源泉徴収の対象とならない給与とは
源泉徴収のあらまし(令和8年版)は、給与所得を、俸給や給料、賃金、歳費、賞与のほか、これらの性質を有するものと説明しています(所得税法28条1項)。会社は給与を支払う際に、支払額に応じた所得税と復興特別所得税を給与から差し引いて国に納めます。この差し引く計算に入れなくてよいのが、同じ資料が「課税されません」としている支給です。
課税されない支給は、大きく2つに分かれます。
- 金銭で払う手当・金品 — 通勤手当、旅費、宿日直料、深夜勤務者の夜食代、結婚祝金、見舞金などのうち、それぞれに定められた条件を満たす部分。同じ資料の「特殊な給与の取扱い」の項目です。
- 現物給与 — 食事の支給、制服の支給、記念品、商品の値引販売、社宅の貸与など、物や権利その他の経済的利益で渡すもののうち、課税されない取扱いが定められていて、その条件を満たす部分。同じ資料の「現物給与の取扱い」の項目です。
現物給与について、源泉徴収のあらまし(令和8年版)は、経済的利益は原則として給与所得の収入金額とされるとしたうえで、特定の現物給与には金銭による給与と異なる特別の取扱いが定められていると説明しています。その理由として挙げているのは、職務の性質上欠くことのできないもので主として使用者側の業務遂行上の必要から支給されるもの、換金性に欠けるもの、評価が困難なもの、受給者側に物品などの選択の余地がないもの、政策上特別の配慮を要するもの、の5つです。つまり現物で渡したものは給与になるのが原則で、課税されないのは、下の一覧のように取扱いが定められているものです。
金銭で払う手当・金品の一覧
源泉徴収のあらまし(令和8年版)の「特殊な給与の取扱い」から、課税されない取扱いがある項目を並べます。根拠の欄は同じ資料が示している条文・通達です(所法=所得税法、所令=所得税法施行令、所基通=所得税基本通達)。
| 項目 | 課税されない条件 | 根拠 |
|---|---|---|
| 通勤手当・通勤用定期乗車券 | 通常の給与に加算して支給される通勤手当や通勤用定期乗車券は、通勤手段や通勤距離の区分に応じた一定の金額まで課税されない。通勤用定期乗車券を支給する場合は、原則として、1か月当たりの合理的な運賃等の額で最高150,000円までの部分が課税されない。区分ごとの限度額は通勤手当の非課税限度額を参照。 | 所法9条1項5号、所令20条の2 |
| 旅費 | 勤務する場所を離れて職務を遂行するための旅行、転任に伴う転居のための旅行、就職や退職をした人の転居(死亡により退職した人の遺族の転居を含む)のための旅行に必要な支出に充てるため支給される金品で、その旅行について通常必要と認められるもの。課税されないのは、その旅行の目的、目的地、行路若しくは期間の長短、宿泊の要否、旅行者の職務内容及び地位等からみて、その旅行に通常必要とされる費用の支出に充てられると認められる範囲内のものに限られる。その範囲内かどうかは、支給額が役員及び使用人の全てを通じて適正なバランスが保たれている基準によって計算されたものか、同業種、同規模の他の使用者等が一般的に支給している金額に照らして相当と認められるものかを勘案して判定する。職務を遂行するための旅行の費用に充てるものでも、年額又は月額により支給される旅費は給与所得として課税の対象とされ、支給を受けた役員又は使用人の職務を遂行するための旅行の実情に照らして、明らかにここでいう課税されない旅費に相当すると認められるものだけが課税されない(所基通28-3)。単身赴任者が職務遂行上必要な旅行に付随して帰宅のための旅行を行った場合に支給される旅費は、これらの旅行の目的、行路等からみて主として職務遂行上必要な旅行と認められ、かつ、旅費の額が課税されない旅費の範囲を著しく逸脱しない限り、課税されない(昭和60年直法6-7)。通常の赴任旅費のほかに、例えば家族の同伴が不可能である転勤者に、家族と同居するまでの間その日数などに応じて着後滞在費などの名目で支給するものは、旅費規程に基づく支給でも給与所得とされる。日当や規程の作り方は出張旅費規程と日当を参照。 | 所法9条1項4号、所基通9-3 |
| 非常勤役員等の出勤のための費用 | 常には出勤することを要しない会社その他の団体の役員、顧問、相談役又は参与などに、出勤のための旅行や宿泊の費用に充てるものとして支給する金品で、支給について社会通念上合理的な理由があると認められる場合に、その出勤のために直接必要であると認められる部分。 | 所基通9-5 |
| 宿日直料 | 1回の宿日直について支給される金額のうち4,000円(宿直又は日直の勤務をすることにより支給される食事がある場合は、4,000円からその食事の価額を控除した残額)までの部分。ただし、次の3種類の宿日直料は全額が課税の対象とされる。休日又は夜間の留守番だけを行うために雇用された人や、勤務する場所に居住し休日又は夜間の留守番をも含めた勤務を行うものとして雇用された人に、留守番に相当する勤務について支給するもの。宿日直の勤務を通常の勤務時間内の勤務として行った人や、宿日直をしたことにより代日休暇が与えられる人に支給するもの。通常の給与の額に比例した金額又はそれに近似するように定められた金額により支給するもの(比例した金額とその他の金額との合計額で支給する場合は、その比例した部分の金額)。 | 所基通28-1 |
| 深夜勤務者の夜食代 | 正規の勤務時間の一部又は全部が深夜(午後10時から翌日午前5時)に及ぶ深夜勤務者に、夜食の提供ができないため、これに代えて通常の給与に加算して支給する夜食代で、支給額が勤務1回につき300円以下のもの。300円を超えるかどうかは、消費税及び地方消費税相当額を除いた金額で判定する。 | 昭和59年直法6-5、平成元年直法6-1 |
| 交際費等 | 交際費や接待費等として役員又は使用人に支給する金品は給与所得とされるが、使用者の業務のために使用すべきものとして支給され、そのために使用したことの事績が明らかなものは課税されない。 | 所基通28-4 |
| 結婚・出産等の祝金品 | 雇用契約等に基づいて支給される結婚、出産等の祝金品で、その金額が支給を受ける役員又は使用人の地位などに照らして社会通念上相当と認められるもの。 | 所基通28-5 |
| 葬祭料・香典・見舞金 | 葬祭料や香典、災害等の見舞金で、その金額が社会通念上相当と認められるもの。 | 所基通9-23 |
| 労働基準法等による補償金 | 労働基準法第8章(災害補償)の規定により受ける療養の給付や費用、休業補償、障害補償、打切補償、分割補償(障害補償の部分に限る)、遺族補償及び葬祭料と、船員法第10章(災害補償)の規定により受ける療養の給付や費用、傷病手当、予後手当、障害手当。 | 所法9条1項3号イ、所令20条1項2号・3号 |
| 学資金 | 給与所得者が使用者から受ける学資金のうち、通常の給与に加算して給付されるもの。ただし、次の4つの場合は給与等として課税される。法人である使用者が役員の学資に充てるため給付する場合。法人である使用者が使用人(役員を含む)と特別の関係がある者の学資に充てるため給付する場合。個人である使用者が、その事業に従事する親族(その個人と生計を一にする者を除く)の学資に充てるため給付する場合。個人である使用者が、使用人(その事業に従事する親族を含む)と特別の関係がある者(その個人と生計を一にする親族を除く)の学資に充てるため給付する場合。特別の関係がある者は、使用人の親族、使用人と事実上婚姻関係と同様の事情にある者とその直系血族、使用人から受ける金銭その他の財産によって生計を維持している者など、同じ資料の注が定める者をいう。学資金を受ける人が使用者の使用人(法人の役員及び個人の営む事業に従事するその個人の親族を除く)としての地位も併せて有している場合は、給付が特別の関係がある者のみを対象として行われるなどでない限り、特別の関係がある者に対する学資金に当たらないものとして取り扱うことができる。本来受けるべき給与を減額してその相当額を学資金として給付するものは非課税とされない。 | 所法9条1項15号、所基通9-14、9-15、9-16 |
| 在勤手当(在外手当) | 国外で勤務する居住者である役員又は使用人に通常の給与に加算して支給する在勤手当で、勤務地の物価、生活水準、生活環境、為替相場等の状況からみて、加算して支給を受けることにより国内で勤務した場合に比べて利益を受けると認められない部分の金額。 | 所法9条1項7号、所令22条 |
| 死亡した人の給与 | 死亡後に支給期の到来する給与のうち、相続税法の規定により相続税の課税価格計算の基礎に算入されるものには、所得税は課されない。 | 所基通9-17 |
| 企業年金等の掛金 | 使用者が、独立行政法人勤労者退職金共済機構又は特定退職金共済団体が行う退職金共済、確定給付企業年金、企業型確定拠出年金などの各制度に基づき使用人のために支出した掛金や事業主掛金等(確定給付企業年金の掛金は加入者が負担した金額以外の部分、適格退職年金契約の掛金又は保険料は受益者等が負担した金額以外の部分)。同じ資料は対象の制度を7つ挙げている。 | 所令64条、82条の4 |
発明や改善提案などの報償金は、課税されない給与というより所得の区分が分かれる項目です。同じ資料は、事務や作業の合理化、製品の品質の改善や経費の節約等に寄与する工夫、考案等(特許や実用新案登録、意匠登録を受けるに至らないものに限る)をした人への支給を、その工夫、考案等が通常の職務の範囲内の行為である場合には給与所得、その他の場合には一時所得(実施後の成績などに応じ継続的に支給する場合には雑所得)としています(所基通23〜35共-1)。
現物給与の一覧
源泉徴収のあらまし(令和8年版)の「個々の現物給与に対する課税上の取扱い」から、主な項目を並べます。同じ資料はこのほか、生命保険料や損害保険料の負担、会社役員賠償責任保険の保険料、損害賠償金等の負担、ゴルフクラブ・レジャークラブ・社交団体の入会金等の負担についても、契約の形や費用の性質ごとの取扱いを示しています。
| 項目 | 課税されない条件 | 根拠 |
|---|---|---|
| 食事の支給 | 使用者が支給する食事(宿日直又は残業をした場合に支給される食事を除く)は、支給を受ける人がその食事の価額の半額以上を負担し、食事の価額から本人の負担額を控除した残額(使用者の負担額)が月額3,500円以下であれば課税されない。3,500円を超えるかどうかは、消費税及び地方消費税の額を除いた金額で判定する。評価のしかたは食事補助の非課税を参照。 | 所基通36-38の2 |
| 乗船中の船員の食事 | 乗船中の船員に船員法第80条第1項の規定により支給する食事。同項の規定の適用がない漁船の乗組員に乗船中に支給する食事は、その乗組員の勤務が、その漁船の操業区域において操業する他の同項の規定の適用がある漁船の乗組員の勤務に類すると認められる場合に支給するものに限り課税されない。 | 所法9条1項6号、所令21条1号、所基通9-7 |
| 宿日直・残業の食事 | 通常の勤務時間外に宿日直又は残業をした役員又は使用人に、これらの勤務をすることにより支給する食事。 | 所基通36-24 |
| 制服等の支給 | 職務の性質上制服を着用しなければならない役員又は使用人に支給又は貸与する制服その他の身の回り品と、専ら勤務場所のみで着用するために支給又は貸与する事務服、作業服等。ただし、これらの制服等の支給又は貸与に代えて金銭を支給する場合は、その金額の多少にかかわらず給与所得とされる。 | 所法9条1項6号、所令21条2号・3号、所基通9-8 |
| 永年勤続記念品等 | 永年勤続した役員又は使用人の表彰に当たり、記念として旅行、観劇等に招待し、又は記念品を支給することによる経済的利益で、利益の額が勤続期間等に照らして社会通念上相当と認められ、かつ、表彰がおおむね10年以上勤務した人を対象とし、2回以上表彰を受ける人についてはおおむね5年以上の間隔をおいて行われるもの。詳しくは永年勤続表彰の課税関係を参照。 | 所基通36-21 |
| 創業記念品等 | 創業記念、増資記念、工事完成記念又は合併記念等に際し、役員又は使用人に記念として支給する記念品で、社会通念上記念品としてふさわしく、処分見込価額により評価した価額が10,000円以下(消費税及び地方消費税の額を除いた金額で判定)であり、創業記念のように一定期間ごとに到来する記念ではおおむね5年以上の期間ごとに支給するもの。建築業者、造船業者等が請負工事又は造船の完成等に際して支給するものは除かれる。 | 所基通36-22 |
| 商品・製品等の値引販売 | 使用者の取り扱う商品、製品等(有価証券及び食事を除く)の値引販売で、値引販売の価額が使用者の取得価額以上で通常他に販売する価額のおおむね70%以上であり、値引率が役員や使用人の全部について一律か、地位、勤続年数等に応じて全体として合理的なバランスが保たれる範囲内の格差で定められ、数量が一般の消費者が家事のために通常消費すると認められる程度であるもの。不動産は、一般の消費者が家事のために通常消費するものではないとされている。 | 所基通36-23 |
| 寄宿舎の電気料等 | 使用者が寄宿舎の電気、ガス、水道等の料金を負担する場合で、料金の額がその寄宿舎に居住するために通常必要であると認められる範囲内であり、各人ごとの使用部分に相当する金額が明らかでないもの。 | 所基通36-26 |
| 金銭の無利息貸付け等 | 災害、疾病等により臨時的に多額な生活資金を要することとなった役員又は使用人に、その資金に充てるために貸し付けた金額について合理的と認められる返済期間内に受ける利益、使用者の借入金の平均調達金利など合理的と認められる貸付利率を定めて利息を徴している場合の利益、これら以外の貸付金についてその年又は事業年度における利益の合計額が5,000円以下(事業年度が1年に満たない場合は5,000円にその事業年度の月数を乗じて12で除した金額以下)のもの、のいずれか。 | 所基通36-28 |
| 用役の提供等 | 使用者が福利厚生施設の運営費等を負担することで施設を利用した役員又は使用人が受ける利益や、運送業、興行業などの使用者が用役を無償又は低い価額の対価で提供することによる利益。ただし、その額が著しく多額であると認められる場合と、役員だけを対象として供与される場合は除かれる。 | 所基通36-29 |
| 技術の習得等の費用 | 使用者が自己の業務遂行上の必要に基づき、役員又は使用人に、職務に直接必要な技術若しくは知識を習得させ、又は免許若しくは資格を取得させるための研修会、講習会等の出席費用や大学等の聴講費用に充てるものとして支給する金品で、これらの費用として適正なもの。 | 所基通36-29の2 |
| レクリエーションの費用 | 社会通念上一般的に行われていると認められる会食、旅行、演芸会、運動会等の簡易なレクリエーション行事の費用を使用者が負担することで、参加した役員又は使用人が受ける利益。ただし、自己の都合で参加しなかった人に参加に代えて金銭を支給する場合と、役員だけを対象として費用を負担する場合は除かれる。従業員等のレクリエーション旅行は、旅行期間が4泊5日(目的地が海外の場合は、目的地における滞在日数)以内であるなど一定の要件を満たしている場合に、経済的利益の額が少額不追求の趣旨を逸脱しない限り、原則として課税しなくて差し支えないとされている。旅行の要件の詳細は社員旅行の課税関係を参照。 | 所基通36-30、昭和63年直法6-9 |
| 少額な保険料の負担 | 役員又は使用人が被保険者として負担すべき健康保険、雇用保険、厚生年金保険又は船員保険の保険料や、生命保険契約等(個人年金保険契約等を含み、確定給付企業年金規約等を除く)又は損害保険契約等の保険料や掛金(別の取扱いにより課税されない保険料や掛金を除く)を使用者が負担する場合で、その役員又は使用人につきその月中に負担する金額の合計額が300円以下であるもの。ただし、役員又は特定の使用人(これらの人の親族を含む)のみを対象として負担する場合は給与所得とされる。 | 所基通36-32 |
| 使用人への社宅・寮の貸与 | 使用人から徴収している賃貸料が、家屋と敷地の固定資産税の課税標準額などから算式で計算した賃貸料相当額の50%以上である場合は、賃貸料相当額と徴収している賃貸料との差額が課税されない。算式は社宅の賃貸料相当額を参照。固定資産税の課税標準額が改訂されても、改訂後の課税標準額が、使用人の社宅や寮等の賃貸料相当額の計算の基礎となっている課税標準額に比べて20%以内の増減にとどまるときは、強いて賃貸料相当額の改訂を要しないこととされている(所基通36-46)。使用者の業務に関する使用部分がある社宅等や、単身赴任者のような人が一部を使用しているにすぎない社宅等は、賃貸料相当額をその使用状況を考慮して定める(所基通36-43)。使用者が役員等に、これらの人の居住の用に供する家屋の敷地を貸与した場合で、法人税基本通達13-1-7の規定によりその敷地を将来無償で返還することとしているときは、その土地の賃貸料相当額は算式によらず、法人税基本通達13-1-2に定める相当の地代の額となる(所基通36-45の2)。職務の遂行上やむを得ない必要に基づき使用者がその使用人の居住する場所として指定した社宅や寮等は、無償で提供していても課税されない(次の行)。使用者が社宅等を貸与した全ての使用人から、社宅等の状況に応じてバランスのとれた賃貸料を徴収していて、その徴収している賃貸料の合計額が、使用人に貸与した全ての社宅等の賃貸料相当額の合計額の50%相当額以上であるときも、これらの使用人が社宅等の貸与により受ける経済的利益はないものとされ、課税されない。使用人に貸与した全ての社宅等について一括して賃貸料相当額の合計額を計算することが困難なときは、1か所又は数か所の事業所等ごとに計算して差し支えないこととされている(所基通36-48)。この50%以上の徴収で差額を課税しない扱いは使用人についてのもので、役員に貸与する社宅等は、住宅の規模などの区分ごとに定められた方法で計算した賃貸料相当額と、役員から徴収している賃貸料との差額が給与所得とされる。ただし、使用者が社宅等を貸与した全ての役員から、貸与した社宅等の状況に応じてバランスのとれた賃貸料を徴収していて、その徴収している賃貸料の合計額が、役員に貸与した全ての社宅等の賃貸料相当額の合計額以上であるときは、これらの役員が社宅等の貸与により受ける経済的利益はないものとされ、課税されない(所基通36-44、36-48)。役員社宅の中にいわゆる豪華役員社宅に該当するものがある場合は、その社宅を含めてこの合計による判定をすることはできず、役員に貸与した社宅と使用人に貸与した社宅を合わせて判定することもできない。役員の計算は役員社宅の賃貸料相当額の計算ツールで扱っている。 | 所令84条の2、所基通36-41、36-45、36-47 |
| 職務上の必要に基づく社宅等 | 使用人に無償で提供している社宅や寮等が、職務の遂行上やむを得ない必要に基づき使用者がその使用人の居住する場所として指定したものであるとき。同じ資料は、船舶乗組員に提供する船室、常時交替制により昼夜作業を継続する事業場で、その作業に従事するため常時早朝又は深夜に出退勤をする使用人に、その作業に従事させる必要上提供する家屋又は部屋、通常の勤務時間外にも勤務することを常例とする看護師、守衛等その職務の遂行上勤務場所を離れて居住することが困難な使用人に、その職務に従事させる必要上提供する家屋又は部屋などを挙げている。 | 所法9条1項6号、所令21条4号、所基通9-9 |
逆に、金額の大小にかかわらず課税される現物給与もあります。源泉徴収のあらまし(令和8年版)は、有価証券を支給する場合は、その支給する有価証券の価額の多少にかかわらず、全て給与所得とされるとしています。福利厚生費として処理できるかどうかの考え方は福利厚生費とはで整理しています。
条件を外れたとき — 超えた部分だけ課税か、全額課税か
条件を外れたときの扱いは、項目ごとに決まっています。源泉徴収のあらまし(令和8年版)の書き方から、「〜までの部分は課税されない」という形の項目は超えた部分や差額が課税され、「〜を超えるときは全額が給与所得」と書かれている項目は全額が課税されると読めます。
| 項目 | 条件を外れたときの扱い |
|---|---|
| 通勤用定期乗車券 | 課税されないのは、原則として、1か月当たりの合理的な運賃等の額で最高150,000円までの部分。 |
| 宿日直料 | 課税されないのは、1回の宿日直について支給される金額のうち4,000円(宿日直の勤務で支給される食事がある場合は、4,000円からその食事の価額を控除した残額)までの部分。ただし、休日又は夜間の留守番だけを行うために雇用された人などに留守番に相当する勤務について支給する宿日直料、宿日直の勤務を通常の勤務時間内の勤務として行った人や代日休暇が与えられる人に支給する宿日直料、通常の給与の額に比例した金額又はそれに近似するように定められた金額により支給する宿日直料(比例した金額とその他の金額との合計額で支給する場合は、その比例した部分の金額)は、全額が課税の対象とされる。 |
| 食事の支給 | 通常の勤務時間外に宿日直又は残業をした役員又は使用人にその勤務をすることにより支給する食事と、乗船中の船員などに支給する食事のうち、課税されないものを除き、使用者が支給する食事は、使用者の負担額(食事の価額から本人の負担額を控除した残額)が月額3,500円(消費税及び地方消費税の額を除いた金額で判定)を超えるときは、その使用者の負担額の全額が給与所得とされる。 |
| 制服等 | 制服等の支給又は貸与に代えて金銭を支給する場合は、その金額の多少にかかわらず給与所得とされる。 |
| レクリエーション | 自己の都合により参加しなかった人に参加に代えて金銭を支給する場合は、参加者及び不参加者の全員に、不参加者に支給する金銭の額に相当する額の給与所得があったものとされる。 |
| 使用人への社宅・寮の貸与 | 使用人から徴収している賃貸料が賃貸料相当額の50%に満たない場合は、算式による賃貸料相当額と徴収している賃貸料との差額が給与所得とされる。固定資産税の課税標準額が改訂されても、改訂後の課税標準額が、使用人の社宅や寮等の賃貸料相当額の計算の基礎となっている課税標準額に比べて20%以内の増減にとどまるときは、強いて賃貸料相当額の改訂を要しないこととされている(所基通36-46)。使用者の業務に関する使用部分がある社宅等や、単身赴任者のような人が一部を使用しているにすぎない社宅等は、賃貸料相当額をその使用状況を考慮して定める(所基通36-43)。使用者が役員等に、これらの人の居住の用に供する家屋の敷地を貸与した場合で、法人税基本通達13-1-7の規定によりその敷地を将来無償で返還することとしているときは、その土地の賃貸料相当額は算式によらず、法人税基本通達13-1-2に定める相当の地代の額となる(所基通36-45の2)。ただし、職務の遂行上やむを得ない必要に基づき使用者が居住する場所として指定した社宅や寮等は課税されない。使用者が社宅等を貸与した全ての使用人から、社宅等の状況に応じてバランスのとれた賃貸料を徴収していて、その合計額が、使用人に貸与した全ての社宅等の賃貸料相当額の合計額の50%相当額以上であるときも、社宅等の貸与による経済的利益はないものとされ課税されない。使用人に貸与した全ての社宅等について一括して賃貸料相当額の合計額を計算することが困難なときは、1か所又は数か所の事業所等ごとに計算して差し支えないこととされている(所基通36-48)。 |
「通勤手当」「食事補助」「見舞金」といった名前が付いていても、課税されない取扱いの条件を満たさない部分は給与として源泉徴収の対象になります(この記事の一覧は主な項目で、同じ資料にはほかの項目の取扱いもあります)。反対に、条件を満たす部分は名前がどうであれ課税されません。在宅勤務の通信費のように、実費の精算か渡切りの支給かで扱いが分かれる項目は通信費とはで扱っています。
年末調整・源泉徴収票との関係
課税されない部分があると、毎月の源泉徴収の計算だけでなく、年末調整と源泉徴収票に書く金額も変わります。国税庁が資料ではっきり書いているのは通勤手当です。国税庁「通勤手当の非課税限度額の引上げについて」(令和7年11月)は、給与所得の源泉徴収票の「支払金額」欄には、非課税とされる部分の通勤手当の金額を除いた金額を記入するとしています。
同じ資料は、改正後の非課税限度額によって新たに非課税となった部分の金額が本年の給与総額から一括して差し引かれ、その差引後の給与の総額を基にして年末調整を行うと説明しています(令和7年分の年末調整での対応として示されたもの)。通勤手当の非課税の部分は、年末調整で集計する給与の総額にも入らないということです。
給与計算の実務では、次の2点を確かめます。
- 支給項目ごとの課税・非課税の設定 — 給与計算ソフトの支給項目を、課税される項目と課税されない項目に分けて登録します。課税されない金額に限度や条件がある項目は、限度を超えたときや条件を外れたときの扱いが項目ごとに定められているので、設定が項目ごとの条件と扱いに合っているかを、金銭で払う手当・金品の一覧、現物給与の一覧、条件を外れたときの表で確かめます。
- 現物給与の計上 — 食事や社宅のように金銭で払っていないものは、給与明細に載っていなくても、条件を外れた部分が課税される給与になります。源泉徴収のあらまし(令和8年版)は、年末調整の対象となる給与を、その年1月1日から12月31日までの間に支給日が到来して支払うことが確定した給与としています。課税される現物給与を集計に入れ忘れていないかを、年末調整の前に確かめます。
源泉徴収票の各欄の読み方は源泉徴収票の見方、源泉徴収の仕組みそのものは源泉徴収とは、年末調整をしない人の区分は年末調整の対象とならない人で整理しています。
社会保険の報酬とは範囲が違う
所得税で課税されない支給が、社会保険料の計算でも対象外になるとは限りません。所得税と社会保険では、給与(報酬)に入れる範囲が別々に決められているためです。
代表的なのが通勤手当です。日本年金機構は、被保険者資格取得届等の届出の際の「報酬月額」には、臨時に支払われる賃金以外の時間外手当、精皆勤手当、通勤手当等も含めると説明しています。所得税では、通常の給与に加算して支給される通勤手当が限度額まで課税されませんが、社会保険では通勤手当も報酬に入ります。
現物で渡すものも同じです。日本年金機構は、厚生年金保険及び健康保険の被保険者が、勤務する事業所より労働の対償として現物で支給されるものがある場合は、その現物を通貨に換算し報酬に合算のうえ、保険料額算定の基礎となる標準報酬月額を求めると説明しています。所得税の条件を満たして課税されない食事や住宅でも、社会保険では別の基準で報酬に入ることがあり、両者はずれます。標準報酬月額の等級は標準報酬月額表、社宅と食事の現物給与価額は社宅の賃貸料相当額と食事補助の非課税で扱っています。
- 源泉徴収の対象とならない給与は、所得税法や通達で「課税されない」とされている部分で、国税庁「源泉徴収のあらまし(令和8年版)」は金銭で払う手当・金品と現物給与に分けて条件を示している
- 現物で渡したものは給与になるのが原則で、課税されないのは取扱いが定められている項目の、条件を満たす部分
- 条件を外れたときの扱いは項目ごとに決まっていて、「〜までの部分は課税されない」と定められた項目は超えた部分や差額が課税され、「超えるときは全額が給与所得」と定められた項目は全額が課税される
- 通勤手当の非課税とされる部分は、源泉徴収票の支払金額から除き、年末調整もその部分を差し引いた後の給与の総額を基にして行う(国税庁の令和7年11月の資料)
- 社会保険の報酬は別の基準で決まり、所得税では通常の給与に加算して支給され限度額まで課税されない通勤手当も、報酬月額に含める
よくある質問
通勤手当は源泉徴収の対象になりますか?
国税庁の源泉徴収のあらまし(令和8年版)によると、通常の給与に加算して支給される通勤手当や通勤用定期乗車券は、通勤手段や通勤距離の区分に応じた一定の金額までは課税されません(所得税法9条1項5号、所得税法施行令20条の2)。国税庁のタックスアンサー No.2582 は、1か月当たりの非課税となる限度額を超えて通勤手当や通勤定期券などを支給する場合には、超える部分の金額が給与として課税されるとしています。
食事の補助は、いくらまでなら課税されませんか?
源泉徴収のあらまし(令和8年版)によると、使用者が支給する食事(宿日直又は残業をした場合に支給される食事を除く)は、支給を受ける人が食事の価額の半額以上を負担し、食事の価額から本人の負担額を控除した使用者の負担額が月額3,500円以下(消費税及び地方消費税の額を除いた金額で判定)であれば課税されません。宿日直又は残業をした場合の食事や乗船中の船員などの食事で課税されないものを除き、使用者が支給する食事について使用者の負担額が月額3,500円(消費税及び地方消費税の額を除いた金額で判定)を超えるときは、超えた部分ではなく使用者の負担額の全額が給与所得とされます(所得税基本通達36-38の2)。
課税されない手当は、源泉徴収票の支払金額に含めますか?
通勤手当については、国税庁「通勤手当の非課税限度額の引上げについて」(令和7年11月)が、給与所得の源泉徴収票の「支払金額」欄には非課税とされる部分の通勤手当の金額を除いた金額を記入するとしています。同じ資料は、新たに非課税となった部分を差し引いた後の給与の総額を基にして年末調整を行うとも説明しています。
所得税で課税されない手当は、社会保険料の計算からも外れますか?
外れるとは限りません。所得税と社会保険では給与(報酬)に入れる範囲が別々に決められています。日本年金機構は、資格取得届等の届出の際の報酬月額に、臨時に支払われる賃金以外の時間外手当、精皆勤手当、通勤手当等も含めると説明しており、所得税では通常の給与に加算して支給され限度額まで課税されない通勤手当も、社会保険では報酬に入ります。
出典
国税庁「源泉徴収のあらまし(令和8年版)」と「通勤手当の非課税限度額の引上げについて」、日本年金機構の説明ページの原文を読んで確認。
- 国税庁「源泉徴収のあらまし(令和8年版)」 第2 給与所得の源泉徴収事務(Ⅱ 給与所得の範囲 1 特殊な給与の取扱い・2 現物給与の取扱い、年末調整の対象となる給与)
- 国税庁「通勤手当の非課税限度額の引上げについて」(令和7年11月) 3 課税済みの通勤手当についての精算、4 給与所得の源泉徴収票の記入
- 国税庁タックスアンサー No.2582「電車・バス通勤者の通勤手当」
- 日本年金機構「短時間労働者に対する健康保険・厚生年金保険の適用の拡大」(報酬月額に含める手当)、「全国現物給与価額一覧表(厚生労働大臣が定める現物給与の価額)」(現物給与について)
この記事は一般的な情報提供であり、個別の事案に対する助言ではありません。特定の支給が課税されるかどうかは、支給の目的、金額、対象者、規程の内容などの実態ごとに判断されます。具体的な対応は、税理士または所轄の税務署にご相談ください。