懲戒解雇とは|普通解雇・諭旨解雇との違いと手続き・退職金・離職票
懲戒解雇とは、会社が懲戒処分として行う解雇です。東京労働局のリーフレットは、従業員が極めて悪質な規律違反や非行を行ったときに行う解雇と説明しています。
懲戒解雇をしたときの次の4つは、それぞれ別の制度で決まり、会社が「懲戒解雇」と名付けただけでは決まりません。
- 解雇が有効かどうかは、労働契約法15条と16条で判断されます(有効になる条件)。
- 解雇予告と解雇予告手当を省けるかどうかは、労働基準法21条の適用除外の労働者を除き、労働基準監督署長の認定で決まります(除外認定)。
- 退職金を支給しない・減らすことができるかどうかは、就業規則等にあらかじめ規定があることが前提で、規定があっても個別に判断されます(退職金)。
- 失業給付の給付制限がかかるかどうかは、公共職業安定所長が認定します(離職票と失業給付)。
この記事は、会社の担当者が確かめる順に、条文と厚生労働省・労働局の資料をまとめます。個別の事案の解雇が有効かどうかは扱いません。
懲戒解雇で確かめる4つのこと
懲戒解雇をしたときに問題になる4つの事項と、それぞれを決める根拠・判断する人です。4つは別々に判断されますが、雇用保険の重責解雇の基準の一部は、解雇予告除外認定を受けたことを要件にしています(重責解雇の認定基準)。
| 事項 | 決める根拠 | 判断する人 |
|---|---|---|
| 解雇が有効か | 労働契約法15条(懲戒)と16条(解雇) | 最終的には裁判所 |
| 解雇予告・解雇予告手当を省けるか | 労働基準法20条1項ただし書と3項(21条の適用除外の労働者は別) | 所轄の労働基準監督署長(認定) |
| 退職金を支給しない・減らすことができるか | 就業規則等にあらかじめ置いた規定(規定があっても個別に判断) | 規定があるうえで個別に判断 |
| 失業給付の給付制限がかかるか | 雇用保険法33条と厚生労働大臣の定める基準 | 公共職業安定所長(認定) |
東京労働局のリーフレットは、懲戒解雇が有効か否かは最終的には裁判所での判断によるとしています。
処分の種類の全体と減給の上限は懲戒処分の種類と減給の上限にまとめています。
普通解雇・諭旨解雇との違い
「懲戒解雇」「普通解雇」「諭旨解雇」は、どれも法律の条文に定義がある語ではありません。自社での意味は自社の就業規則の定義で確かめます。
東京労働局のリーフレットによる解雇の種類の説明は、次のとおりです。諭旨解雇の行は、同じリーフレットが挙げる一般的な例です。
| 種類 | 説明 | 補足 |
|---|---|---|
| 普通解雇 | 整理解雇、懲戒解雇以外の解雇 | 労働契約の継続が困難な事情があるときに限られる |
| 整理解雇 | 会社の経営悪化により、人員整理を行うための解雇 | 客観的な必要があること、解雇回避の最大限の努力、人選の基準と運用の合理性、労使間の十分な協議の4点をいずれも満たすことが必要 |
| 懲戒解雇 | 極めて悪質な規律違反や非行を行ったときに、懲戒処分として行う解雇 | 就業規則や労働契約書に要件を具体的に明示しておくことが必要 |
| 諭旨解雇 | 法律用語ではなく、会社により様々に取り扱われている | 下の2つの例がある |
東京労働局のリーフレットは、諭旨解雇の一般的な例として次の2つを挙げています。
- 就業規則と労働契約書に懲戒処分の一つ(通常、懲戒解雇に次ぐ重い処分)としてあらかじめ規定し、解雇予告手当や退職金を全額または一部支払ったうえで解雇する例。リーフレットは、これを懲戒解雇の一種といえるとしています。
- 不祥事や非行があったときにその行為を諭したうえで、従業員の意思により辞表を提出させる例。リーフレットは、これを手続き上は退職勧奨による退職であり解雇ではないとしています。
1つ目の例でも、諭旨解雇にする理由が明示されているとともに、客観的に合理的な理由があり社会通念上相当であると認められることが必要です。2つ目の例で、脅迫や精神的に追い込むなど従業員の真意に反して辞表を提出させた場合は、辞表そのものが無効となることがあります。退職勧奨の扱いは退職勧奨とはにまとめています。
懲戒解雇の事由に当たる事実があっても、処分が懲戒解雇に決まるわけではありません。厚生労働省のモデル就業規則53条は、普通解雇の事由の1つに「懲戒解雇事由に該当する事実が認められたとき」を挙げています。
懲戒解雇が有効になる条件の一般論
懲戒解雇には、労働契約法15条(懲戒)と16条(解雇)の両方の規制が適用されます。厚生労働省の中央労働委員会が公表しているあっせん事例の解説が、そう整理しています。
使用者が労働者を懲戒することができる場合において、当該懲戒が、当該懲戒に係る労働者の行為の性質及び態様その他の事情に照らして、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、当該懲戒は、無効とする。
上は労働契約法15条の条文です。16条は、解雇について「客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする」と定めています。
同じ解説は、懲戒解雇の有効性を次の3つの順で見るとしています。
- 懲戒権の根拠があるか: 具体的な懲戒事由と懲戒の種類を定めた就業規則の規定が、懲戒権の前提として必要とされます。
- 行為が懲戒事由に当たるか: 懲戒の理由とされた労働者の行為が、就業規則の懲戒事由に該当するかが問われます(勤務懈怠の事案は、企業秩序に違反した場合に初めて該当すると判定されます)。
- 処分が社会通念上相当か: 罪と罰の相当性、従業員間の平等取扱い、就業規則上の手続の遵守と弁明の機会の保障などの観点から判定されます。
解説は、懲戒解雇は退職金の不払いや再就職の妨げなど労働者に与える不利益が大きいため、相当性が厳しく判定される傾向にあると述べています。これらの立証責任は使用者にあると解される、とも書いています。
これとは別に、労働基準法19条1項は、業務上の傷病の療養で休業する期間と、産前産後の女性が65条で休業する期間、それぞれその後30日間の解雇を禁じています(打切補償の支払時と、天災等で事業継続不能となり認定を受けた時を除く)。
就業規則の定めと周知
労働基準法89条は、常時10人以上の労働者を使用する使用者に、事業場単位で、就業規則の作成と届出を義務づけています(記載事項を変更したときも届け出ます)。記載事項のうち懲戒解雇に関わるのは、次の3つです。
- 退職に関する事項(解雇の事由を含む): 3号
- 退職手当の定めをする場合の、決定、計算及び支払の方法などの事項: 3号の2
- 表彰及び制裁の定めをする場合の、その種類及び程度に関する事項: 9号
労働基準法106条1項は、就業規則を、常時各作業場の見やすい場所への掲示・備え付け、書面の交付その他の厚生労働省令で定める方法で労働者に周知させることも使用者に義務づけています。就業規則の作り方は就業規則とはにまとめています。
モデル就業規則の解説は、懲戒処分について次の点を挙げています。
- 就業規則に定めのない事由による懲戒処分はできない。
- 就業規則に懲戒規定を設ける前の行為に、さかのぼって懲戒処分をすることはできない。
- 1回の懲戒事由に該当する行為に対し、複数回の懲戒処分を行うことはできない。
- 規律違反の程度に応じ、過去の同種事例における処分内容等を考慮して公正な処分を行う必要がある。
有期労働契約で働く労働者は、やむを得ない事由がある場合でなければ、契約期間の途中で解雇できません。モデル就業規則の解説は、労働契約法17条1項によるこの扱いを挙げ、期間途中の解雇は無期労働契約の解雇より無効と判断される可能性が高いと考えられるとしています。
この節は判断の枠組みの紹介です。ある行為が懲戒解雇に相当するかは事案ごとに結論が変わるため、この記事では判定しません。
懲戒解雇の事由の例(モデル就業規則)
厚生労働省のモデル就業規則(令和7年12月版)68条2項は、懲戒解雇とする事由を次の14の号で例示しています。各社の就業規則そのものではなく、自社の就業規則を点検するときの見本です。
| 号 | 懲戒解雇の事由(規程例) |
|---|---|
| 1号 | 重要な経歴を詐称して雇用されたとき |
| 2号 | 正当な理由なく無断欠勤が一定の日数以上に及び、出勤の督促に応じなかったとき(日数は各社が定める) |
| 3号 | 正当な理由なく無断でしばしば遅刻、早退又は欠勤を繰り返し、各社が定める回数にわたって注意を受けても改めなかったとき |
| 4号 | 正当な理由なく、しばしば業務上の指示・命令に従わなかったとき |
| 5号 | 故意又は重大な過失により会社に重大な損害を与えたとき |
| 6号 | 会社内において刑法その他刑罰法規の各規定に違反する行為を行い、その犯罪事実が明らかとなったとき(軽微な違反である場合を除く) |
| 7号 | 素行不良で著しく社内の秩序又は風紀を乱したとき |
| 8号 | 数回にわたり懲戒を受けたにもかかわらず、なお、勤務態度等に関し、改善の見込みがないとき |
| 9号 | モデル就業規則12条から15条までの規定に違反し、その情状が悪質と認められるとき |
| 10号 | 許可なく職務以外の目的で会社の施設、物品等を使用したとき |
| 11号 | 職務上の地位を利用して私利を図り、又は取引先等より不当な金品を受け、若しくは求め若しくは供応を受けたとき |
| 12号 | 私生活上の非違行為や会社に対する正当な理由のない誹謗中傷等であって、会社の名誉信用を損ない、業務に重大な悪影響を及ぼす行為をしたとき |
| 13号 | 正当な理由なく会社の業務上重要な秘密を外部に漏洩して会社に損害を与え、又は業務の正常な運営を阻害したとき |
| 14号 | その他前各号に準ずる不適切な行為があったとき |
事由に当たれば懲戒解雇に決まる、という作りではありません。同項ただし書により、平素の服務態度その他情状によっては、普通解雇、減給又は出勤停止とすることがあります。
モデル就業規則67条は、懲戒の種類をけん責・減給・出勤停止・懲戒解雇の4つの区分で例示しています。解説は、処分の種類はこの規程例に限定されず、公序良俗に反しない範囲内で事業場ごとに決めることも可能としています(減給を定める場合は労働基準法91条の上限がある)。
解雇予告と除外認定
懲戒解雇でも、所轄の労働基準監督署長の認定(解雇予告除外認定)を受けた場合と、労働基準法21条の適用除外の労働者(試の使用期間中で14日を超えて引き続き使用されていない者など)を除き、解雇予告か解雇予告手当が要ります。
労働基準法20条の定めは次のとおりです。
- 1項・2項: 除外認定を受けた場合と21条の適用除外者を除き、解雇は少なくとも30日前に予告し、予告が30日に足りない日数分(即時解雇なら30日分以上)の平均賃金を払います。
- 1項ただし書と3項: 労働者の責に帰すべき事由に基いて解雇する場合などを除いていますが、ただし書を使うには、その事由について行政官庁の認定を受けなければなりません(3項による19条2項の準用)。
東京労働局のリーフレットは、解雇予告は口頭でも有効だが、解雇する日と具体的理由を明記した「解雇通知書」を作成することが望ましく、従業員から求められたら解雇理由を書いた書面を渡さなければならないとしています。
条文の準用の読み方は懲戒処分の記事の解雇予告の節、予告手当の計算と労働基準法21条の適用除外は解雇予告手当にまとめています。ここでは認定の申請と基準を扱います。
申請先と時期
労働者の責に帰すべき事由による認定は、様式第3号により所轄労働基準監督署長から受けます(労働基準法施行規則7条)。福井労働局の案内は、次の点を挙げています。
- 申請先は、本社ではなく、事由が発生した日に対象の労働者が所属していた事業場の所在地を管轄する労働基準監督署です。
- 認定を受ける場合は、原則として解雇を行う日までに受ける必要があります。既に解雇の意思表示や解雇をした場合は、解雇の意思表示日と解雇日が分かる解雇通知書を添えて申請します。
- 標準処理期間は原則として2週間で、対象労働者と連絡が取れないなどの状況により延びる可能性があります。
- 労働基準法20条の予告をするか解雇予告手当を支払って懲戒解雇する場合は、認定を受ける必要はありません。
同じ案内は、申請書に添える資料の例として、労働者名簿、労働条件通知書、就業規則・労働協約、事由の内容が分かる資料、担当者の名刺を挙げ、郵送の場合は切手を貼って返送先を書いた返送用の封筒と送付状も添えるとしています。事由の内容が分かる資料の例は、経緯を時系列にまとめた社内調査報告書、本人の署名がある始末書、懲罰委員会の議事録、新聞記事です。部数や追加資料は、所轄の労働基準監督署で確かめます。
認定基準の6つの例示
認定基準は、労働者の責めに帰すべき事由が法20条の保護を与える必要のない程度に重大又は悪質で、30日前に予告をさせることが事由と比べて均衡を失するものに限って認定すべきとしています。この認定基準は、昭和23年11月11日基発第1637号と昭和31年3月1日基発第111号です。判定では、労働者の地位、職責、継続勤務年限、勤務状況等を考慮して総合的に判断します。
監督署は、使用者と労働者の双方から直接事情を聞いて判断します。
認定基準が「労働者の責めに帰すべき事由」として認定すべき事例に挙げる6つです。例示であり、該当しても認定されるとは限りません。
| 例示 | 認定すべき事例(認定基準の文言) | 極めて軽微でも含む場合 | 事業場外でも含む場合 |
|---|---|---|---|
| (1) | 原則として極めて軽微なものを除き、事業場内における盗取、横領、傷害等刑法犯に当たる行為のあった場合 | 使用者の防止策が客観的に認められ、なお刑法犯やこれに類する行為を継続・断続して行った場合 | 事業場外の盗取・横領・傷害等の刑法犯で、名誉・信用の著しい失墜、取引への悪影響、労使の信頼喪失のいずれかに当たる場合 |
| (2) | 賭博、風紀紊乱等により職場規律を乱し、他の労働者に悪影響を及ぼす場合 | — | 事業場外の賭博・風紀紊乱等で、名誉・信用の著しい失墜、取引への悪影響、労使の信頼喪失のいずれかに当たる場合 |
| (3) | 雇入れの際の採用条件の要素となるような経歴を詐称した場合、及び雇入れの際に使用者の行う調査に対し、不採用の原因となるような経歴を詐称した場合 | — | — |
| (4) | 他の事業場へ転職した場合 | — | — |
| (5) | 原則として2週間以上正当な理由なく無断欠勤し、出勤の督促に応じない場合 | — | — |
| (6) | 出勤不良又は出欠常ならず、数回に亘って注意をうけても改めない場合 | — | — |
厚生労働省の「確かめよう労働条件」は、認定にあたっては個々の例示に拘泥せず総合的かつ実質的に判断するとしています。就業規則等に規定されている懲戒解雇事由にも拘束されない、とも説明しています。自社の就業規則の懲戒解雇事由に当たることと、除外認定を受けられることは別の判断です。
退職金の不支給・減額には事前の規定が要る
懲戒解雇というだけで、退職金を支給しなくてよいことにはなりません。東京労働局のリーフレットは、少なくとも就業規則等に「懲戒解雇の場合には退職金を減額し、または支給しない」といった規定があらかじめ設けられていることが必要としています。
- 同じリーフレットは、採用時に退職金の支払いを約束した場合や退職金を支払う慣行がある場合は、退職金の支払い義務があるとしています(懲戒解雇の場合の減額・不支給には、事前の規定が要る)。
- 同じリーフレットは、懲戒解雇で退職金を減額または支給しないことができるか否かは個別に判断する必要があるとしています。
- モデル就業規則54条1項ただし書は「第68条第2項により懲戒解雇された者には、退職金の全部又は一部を支給しないことがある」という規程例です。
- モデル就業規則の解説は、不支給事由又は減額事由を設ける場合は就業規則に明記する必要があるとしています。労働基準法89条3号の2の、退職手当の決定及び計算の方法に関する事項に当たるためです。
中小企業退職金共済(中退共)の退職金は、事業主の判断だけでは減額できません。手続は中退共の記事の懲戒解雇の節にまとめています。支給する退職金の税金は退職金の税金で確かめられます。
離職票の離職理由と失業給付
懲戒解雇と、雇用保険の「重責解雇」は同じではありません。離職証明書の離職理由欄では、事業主による解雇は次のどちらかに該当します。
- 4(1) 解雇(重責解雇を除く)
- 4(2) 重責解雇(労働者の責めに帰すべき重大な理由による解雇)
神奈川労働局・ハローワークの記入例は、重責解雇を、刑法の規定違反、故意又は重過失による設備や器具の破壊又は事業所の信用失墜、重大な就業規則違反等により解雇された場合と説明しています。確認資料の例は、解雇予告通知書、退職証明書、就業規則などです。
重責解雇の7つの認定基準
雇用保険法33条は、自己の責めに帰すべき重大な理由によって解雇された場合の給付制限を定めています。該当するかどうかは、公共職業安定所長が厚生労働大臣の定める基準に従って認定します。
雇用保険法33条1項の「自己の責めに帰すべき重大な理由による解雇」として給付制限を行う場合の認定基準として、厚生労働省の雇用保険の業務取扱要領(52202)は次の7つを挙げています。
| 基準 | 認定基準の文言 | 主な条件 |
|---|---|---|
| イ | 刑法各本条の規定に違反し、又は職務に関連する法令に違反して処罰を受けたことによって解雇された場合 | 単に訴追・取調べを受けている場合、控訴・上告中で刑が確定しない場合は含まれない |
| ロ | 故意又は重過失により事業所の設備又は器具を破壊したことによって解雇された場合 | 故意又は重過失によるもの |
| ハ | 故意又は重過失によって事業所の信用を失墜せしめ、又は損害を与えたことによって解雇された場合 | 金銭などの物質的損害のほか、信用の失墜や顧客の減少などの無形の損害を含む |
| ニ | 労働協約又は労働基準法に基づく就業規則に違反したことによって解雇された場合 | 違反の程度が軽微な場合は該当せず、下に書く4つの行為で解雇し、事業主が解雇予告除外認定を受けたときに限る |
| ホ | 事業所の機密を漏らしたことによって解雇された場合 | 機械器具・製品・原料・技術や、経営状態・資産などの経営上の機密を含む |
| ヘ | 事業所の名をかたり、利益を得又は得ようとしたことによって解雇された場合 | 事業所の名を悪用し、自己の利益を得又は得ようとした場合で、事業主に損害を与えない場合でも該当し得る |
| ト | 他人の名を詐称し、又は虚偽の陳述をして就職をしたために解雇された場合 | 就職条件を有利にするための虚偽で、採用後に発覚した場合 |
公共職業安定所長は、画一的、機械的に行わず、個別具体的事情等を十分に考慮して認定します。船員についての読替えは、この記事では扱いません。
会社の担当者が読み違えやすいのは、イとニです。社内で懲戒解雇にしても、イは刑が確定していなければ、ニは解雇予告除外認定を受けていなければ、その基準には当たりません。
ニに当たるのは、労働協約又は労働基準法に基づく就業規則に違反する次の4つの行為で解雇し、違反の程度が軽微でなく、事業主が解雇予告除外認定を受けたときです。
| 行為 | 内容 |
|---|---|
| 1 | 事業所内での窃盗、横領、傷害等刑事犯に該当する行為(極めて軽微なものを除く) |
| 2 | 賭博や風紀紊乱等により職場規律を乱し他の労働者に悪影響を及ぼす行為 |
| 3 | 長期間の正当な理由のない無断欠勤で出勤の督促に応じないこと |
| 4 | 出勤不良等で数回の注意を受けても改めないこと |
給付制限と特定受給資格者
雇用保険法33条1項により、受給資格に係る離職が自己の責めに帰すべき重大な理由による解雇なら、待期満了後1か月以上3か月以内で公共職業安定所長が定める期間、基本手当は支給されません(所長が指示した公共職業訓練等の受講中と修了後を除く)。
雇用保険法23条2項2号は、特定受給資格者となる解雇から「自己の責めに帰すべき重大な理由によるもの」を除いています。基本手当の額と日数は失業保険の計算方法にまとめています。
注: 受給資格を得たあと新たな受給資格を得ずに再離職し、前の受給資格で受給する場合は、再離職の理由による給付制限は行いません(業務取扱要領)。
雇用保険の基本手当(失業給付)を試算する退職時の届出と書類
懲戒解雇でも、退職時の届出と書類の扱いは他の退職と同じです。下の表の各条文に、解雇の理由が懲戒かどうかで届出や交付を不要とする定めはありません。
懲戒解雇した従業員が雇用保険・健康保険・厚生年金保険の被保険者である場合の、資格喪失の届出と根拠の条文です。期限と例外は右の列の記事にあります。
| 届出・書類 | 根拠の条文 | 期限と書き方 |
|---|---|---|
| 雇用保険の資格喪失届(離職票の交付を希望しない人は離職証明書を添えないことができるが、離職の日に59歳以上の人は除く) | 雇用保険法施行規則7条 | 離職票とは |
| 健康保険・厚生年金保険の資格喪失届 | 健康保険法施行規則29条・厚生年金保険法施行規則22条 | 健康保険資格喪失証明書の出し方 |
給与の源泉徴収票の交付(所得税法226条1項)にも、解雇の理由が懲戒かどうかで交付を省く定めはありません。交付の時期は給与の源泉徴収票はいつもらえるにまとめています。労働基準法22条・23条の主な定めは次のとおりです。
- 証明書: 労働者が退職の事由(解雇の場合はその理由を含む)などの証明書を請求したときは、遅滞なく交付し、労働者の請求しない事項は記入しません(22条1項・3項、秘密の記号の禁止などは退職証明書とは)。
- 解雇理由の証明書: 解雇の予告がされた日から退職の日までの間に、労働者が解雇の理由について証明書を請求したときも、遅滞なく交付します(22条2項、予告の日以後に労働者がその解雇以外の事由で退職した場合は、退職の日以後は交付を要しない)。
- 賃金と金品: 退職の場合に権利者の請求があったときは、7日以内に賃金を支払い、労働者の権利に属する金品を返還します(23条1項、争いがある場合は、異議のない部分を7日以内に支払い又は返還する=同条2項)。
懲戒権の行使が濫用として無効となる場合について、中央労働委員会のあっせん事例の解説は、使用者の故意・過失や労働者の不利益の程度によっては不法行為を構成すると判定されるとしています。処分の前に、所轄の労働基準監督署や社会保険労務士・弁護士に確かめる場面です。
まとめ
- 懲戒解雇は、会社が懲戒処分として行う解雇です。労働契約法15条と16条の両方の規制が適用されます。
- 有効性は、就業規則の根拠、懲戒事由への該当、処分の相当性と手続の順に見られます。
- 解雇予告と解雇予告手当を省けるのは、所轄の労働基準監督署長の認定を受けた場合です(労働基準法21条の適用除外の労働者を除く)。
- 懲戒解雇を理由とする退職金の不支給・減額には、少なくとも就業規則等の規定があらかじめ必要です。
- 事業主による解雇の離職理由は、解雇(重責解雇を除く)と重責解雇に分かれます。重責解雇かどうかは公共職業安定所長が認定します。
よくある質問
懲戒解雇なら、解雇予告手当を払わずに即日解雇できますか?
できるのは、所轄の労働基準監督署長の認定を受けた場合と、労働基準法21条の適用除外の労働者(試の使用期間中で14日を超えて引き続き使用されていない者など)の場合です。それ以外で即時に解雇するときは、解雇予告手当を支払います。福井労働局の案内では、認定は原則として解雇を行う日までに受けます。
懲戒解雇なら、退職金は支給しなくてよいですか?
懲戒解雇というだけでは決まりません。東京労働局のリーフレットは、少なくとも就業規則等に、懲戒解雇の場合には退職金を減額し又は支給しないといった規定があらかじめ設けられていることが必要としています。規定がある場合も、減額または不支給にできるか否かは個別に判断する必要があるとしています。
懲戒解雇した従業員の離職理由は「重責解雇」になりますか?
懲戒解雇なら重責解雇になる、という関係ではありません。重責解雇に当たるかどうかは、公共職業安定所長が厚生労働大臣の定める基準に従って認定します。業務取扱要領は、就業規則違反による解雇について、違反の程度が軽微な場合は該当せず、一定の行為を理由に解雇して事業主が解雇予告除外認定を受けたときに該当するとしています。
諭旨解雇と懲戒解雇は何が違いますか?
諭旨解雇は法律用語ではなく、会社により様々に取り扱われています。東京労働局のリーフレットは、2つの例を挙げています。1つは、懲戒解雇の一種で、就業規則と労働契約書に懲戒処分の一つとしてあらかじめ規定し、解雇予告手当や退職金を全額または一部支払ったうえで解雇する例です(諭旨解雇にする理由の明示と、合理的な理由・社会通念上の相当性が必要)。もう1つは、行為を諭したうえで従業員の意思により辞表を提出させる例(退職勧奨による退職)です。自社での意味は、自社の就業規則の定義で確かめます。
就業規則に懲戒の定めが無くても、懲戒解雇できますか?
モデル就業規則の解説は、就業規則に定めのない事由による懲戒処分はできないとしています。中央労働委員会のあっせん事例の解説も、具体的な懲戒事由と懲戒の種類を定めた就業規則の規定が、懲戒権の前提として必要とされるとしています。
出典
労働基準法・労働契約法・雇用保険法などの条文(e-Gov法令検索)と、厚生労働省・労働局が公表している資料で確認して作成。確認日:2026年10月13日。
- e-Gov法令検索『労働契約法』15条・16条
- e-Gov法令検索『労働基準法』20条・22条・23条・89条・106条
- e-Gov法令検索『労働基準法施行規則』7条
- e-Gov法令検索『雇用保険法』23条・33条、『雇用保険法施行規則』7条
- e-Gov法令検索『健康保険法施行規則』29条、『厚生年金保険法施行規則』22条、『所得税法』226条
- 厚生労働省 中央労働委員会「個別労働紛争のあっせん事例 懲戒解雇の有効性」
- 厚生労働省労働基準局監督課「モデル就業規則」53条・54条・67条・68条と各条の解説
- 厚生労働省 福井労働局「解雇予告除外認定の申請について」
- 厚生労働省「確かめよう労働条件」Q&A(解雇予告や解雇予告手当が不要な場合)
- 厚生労働省 東京労働局「労働基準法 解雇編『解雇のルール』を確認しましょう」
- 厚生労働省職業安定局雇用保険課「雇用保険に関する業務取扱要領」52202
- 厚生労働省 神奈川労働局・ハローワーク「雇用保険離職証明書(用紙右側部分)の記入例」
- ハローワークインターネットサービス「特定受給資格者及び特定理由離職者の範囲の概要」
本記事は一般的な情報提供を目的としたものです。個別の判断は所轄の労働基準監督署・公共職業安定所、社会保険労務士・弁護士にご確認ください。