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健康保険資格喪失証明書の出し方|資格喪失届との違い・書く項目・会社が出せないとき

結論から言うと、退職した人から頼まれる「健康保険資格喪失証明書」は、会社の健康保険をいつ抜けたかを、本人が国民健康保険の加入手続きなどで示すための書類です。事業主が日本年金機構や健康保険組合に出す資格喪失届とは別の書類で、健康保険法48条と同法施行規則29条が事業主に求めているのは資格喪失届の提出のほうです。

資格喪失届は、健康保険法施行規則29条1項により、被保険者(任意継続被保険者を除く)の資格喪失の事実があった日から5日以内に、協会けんぽの会社は日本年金機構へ、健康保険組合の会社はその健康保険組合へ出します(様式第八号の二で出すときは日本年金機構へ。特定減額特例対象者の任意喪失は、申出書とあわせて速やかに出し、健康保険組合に加入している場合は日本年金機構と組合へ同時に出します)。一方の証明書は、この2つの条文に様式の定めがありません。神戸市は、市の様式の項目がすべて記載されていれば任意の様式でも構わないと案内しています。協会けんぽ岩手支部は、会社を退職した方の資格喪失証明書は協会けんぽから発行できないとしています。協会けんぽに加入する会社の退職者が証明を得る道は、会社に作ってもらうか、日本年金機構に確認を請求するかです。

この記事は会社の経理・人事担当の目線で、2つの書類の違い、証明書に書く資格喪失年月日と項目、会社が証明書を出せないときに本人が使える確認の請求をまとめます。退職後に国民健康保険・任意継続・家族の扶養のどれを選ぶかは本人の判断なので、ここでは扱いません。

資格喪失届と資格喪失証明書は別の書類

退職の手続きで名前が似た書類が2つ出てきます。届は会社から保険者側へ出し、証明書は会社が作る場合は会社から本人へ渡します(会社が作れないときに日本年金機構や健康保険組合に確認を請求する経路は後で説明します)。

項目資格喪失届資格喪失証明書
作る人事業主(健康保険法48条)事業所または保険者(調布市の書式例の注記)
渡す先協会けんぽの会社は日本年金機構(事務センターまたは管轄の年金事務所。電子申請・郵送・窓口持参)、健康保険組合の会社はその健康保険組合(様式第八号の二は日本年金機構。特定減額特例対象者の任意喪失で健康保険組合に加入している場合は、日本年金機構と組合へ同時に提出)退職した本人。本人が市区町村の国民健康保険の窓口などに出す
様式健康保険法施行規則29条1項の様式第八号または様式第八号の二健康保険法48条・同法施行規則29条に定めなし。市区町村の書式例か、提出先の市区町村の様式の項目をすべて記載した任意の様式(神戸市の場合)
期限健康保険法施行規則29条1項により、被保険者(任意継続被保険者を除く)の資格喪失の事実があった日から5日以内(特定減額特例対象者の任意喪失は、申出書とあわせて速やかに)健康保険法48条・同法施行規則29条には定めなし

協会けんぽに加入している会社は、従業員が健康保険と厚生年金保険の資格を同時に失い、厚生年金保険の届出も要る場合(船員と、厚生年金保険法施行規則22条1項ただし書の区分を除く)、日本年金機構の「健康保険・厚生年金保険 被保険者資格喪失届/厚生年金保険 70歳以上被用者不該当届」1枚で両方の喪失を届け出ます(厚生年金保険法施行規則22条3項の、様式第十一号による届出の場合。75歳到達による健康保険だけの喪失のように、片方だけを失う場合もあります)。健康保険法施行規則29条1項は、協会けんぽの被保険者が同時に厚生年金保険の資格も失うときは、届に個人番号または基礎年金番号を付記するよう定めています。健康保険組合に加入している会社は、健康保険の届出先が健康保険組合(同項。様式第八号の二によるときは日本年金機構)で、厚生年金保険の届出が要る場合の届出先は日本年金機構(厚生年金保険法施行規則22条1項。同項ただし書の区分などは届出が要りません)です。

日本年金機構の手続きページ(2026年10月1日更新)は、協会けんぽの被保険者の喪失届に添える書類として、資格確認書・高齢受給者証・特定疾病療養受療証・限度額適用認定証・限度額適用・標準負担額減額認定証を、交付されている場合に限って挙げています。協会けんぽの場合、資格確認書を紛失などで回収できないときは「資格確認書回収不能届」を添付します。同じページは、組合管掌健康保険の被保険者の添付書類を「特になし」としています(60歳以上の人が退職後に間を空けず再雇用された場合と、特定減額特例対象者が任意喪失する場合は、協会けんぽ・健康保険組合を問わず別の添付書類などがあります)。マイナ保険証・資格確認書・資格情報のお知らせの関係はマイナ保険証の記事にまとめています。

喪失届の期限の例外 厚生年金保険の船員被保険者の喪失の届出は、届出が要る場合、厚生年金保険法施行規則22条4項により事実があった日から10日以内です(同項ただし書の区分は届出が要りません)。任意加入した特定減額特例対象者が任意喪失するときは、日本年金機構の案内では、喪失届を「特定減額特例対象者 被保険者資格喪失申出書」とあわせて速やかに出します。厚生年金保険の届出が要らない区分を含めた細かな扱いは、月途中の入社・退職の記事の資格喪失届の節に整理しています。

資格喪失年月日は喪失の原因で決まる

証明書でいちばん大事な欄は資格喪失年月日で、喪失届と同じく、法令と次の表で決まる日を書きます。健康保険法36条は、被保険者(任意継続被保険者を除く。同法35条)は死亡したときや事業所に使用されなくなったときなどに該当した日の翌日(その日に更に別の事業所などで資格取得に該当したときはその日)から資格を失うと定めています。

日本年金機構は、喪失の原因ごとの資格喪失年月日を次のように案内しています(2026年10月1日更新の手続きページ)。

喪失の原因資格喪失年月日
退職等による資格喪失退職日の翌日(健康保険法36条かっこ書に当たるときはその日)、転勤の当日、雇用契約変更の当日
死亡による資格喪失死亡日の翌日(健康保険法36条かっこ書に当たるときはその日)
75歳到達による健康保険の資格喪失誕生日の当日
障害認定による健康保険の資格喪失認定日の当日
社会保障協定による健康保険の資格喪失社会保障協定発効の当日、相手国法令の適用となった日の翌日
特定減額特例対象者(健康保険・厚生年金保険に任意加入した人)の任意喪失日本年金機構が申し出を受理した日の翌日

同じページの例のとおり、3月31日付けで退職した人(健康保険法36条かっこ書に当たる人を除く)の資格喪失日は4月1日です。退職年月日の欄がある様式では、退職日と喪失日を別々の欄に書きます。調布市の書式例も「資格喪失年月日は退職日の翌日になります」と注記しています。

退職から国民健康保険の届出までの流れ

会社の喪失届と、退職後に国民健康保険に入る人の届出は、次のように並んで進みます。会社の資格喪失届の5日以内は資格喪失の事実があった日から、国民健康保険の14日以内は国民健康保険法施行規則3条の届出として、それぞれ別に数えます。

退職日 例: 3月31日 資格喪失日 退職日の翌日(4月1日) 会社 本人 資格喪失届 事実があった日から5日以内に機構・健保組合へ 国民健康保険の届出 世帯主が14日以内に住所地の市区町村へ 頼まれたら資格喪失証明書を本人へ 様式は提出先の市区町村の案内で 本人が窓口に出す
会社側は喪失届と、頼まれたときの証明書。国民健康保険に入る本人側は国民健康保険の届出。証明書は本人の届出で使われる(5日以内は健康保険法施行規則29条1項、14日以内は国民健康保険法施行規則3条)

国民健康保険法6条の各号(健康保険の被保険者や被扶養者など)のいずれにも当たらなくなった人は、届け出た日ではなく、当たらなくなった日から国民健康保険の資格を取得します(同法7条)。届出のほうは、国民健康保険法施行規則3条が、そうして資格を取得した人の世帯の世帯主に、14日以内に住所地の市町村へ届書を出すよう求めています。神戸市は、国民健康保険の加入・脱退の届出について、当面の間は証明書の提出を必須としており、証明書は異動のあった日から14日以内に区役所・支所の国保の窓口へ届け出るよう案内しています。

国民健康保険の届出の期限が短いので、会社は喪失届を出したら証明書もあまり間を空けずに渡すのが実務的です。退職の面談のときに、証明書が要るか、どの市区町村に出すかを聞いておくと、その市区町村の様式で一度に作れます。

証明書に書く項目と様式の入手先

様式は、退職した人が届け出る市区町村のホームページに置かれていることがあり、名前も市区町村ごとに違います(調布市は「健康保険資格喪失証明書」、神戸市は「健康保険資格取得(喪失)証明書」)。2つの市の様式に並んでいる欄を比べると、次のとおりです。

欄調布市の書式例神戸市の様式
保険者名・保険者番号ありあり(全国健康保険協会・健康保険組合・国保組合などの名称)
記号・番号ありあり(被保険者証の記号・番号の欄)
被保険者の住所・氏名ありあり
本人・被扶養者の氏名・生年月日・続柄あり(性別の欄もある)あり
資格取得年月日あり取得か喪失かを選んで年月日を書く(被扶養者の異動だけの場合は、被保険者の取得・喪失年月日は書かない)
資格喪失年月日ありあり
基礎年金番号欄なし被保険者・配偶者のみ(健康保険組合が証明する場合は不要)
喪失理由・退職年月日退職・後期高齢者医療制度・被扶養者の収入・死亡・その他から選ぶ退職・後期高齢者医療制度へ加入・その他(被扶養者は被保険者喪失・収入要件・その他)
証明者証明日・所在地・名称・代表者・電話、押印欄(㊞)証明日・所在地・名称・代表者・電話・担当者

2つの市とも、被扶養者の欄を設けています。神戸市の様式は、被保険者と、国民健康保険の資格を取得または喪失する被扶養者全員の項目を必ず記入するよう注記しているので、国民健康保険の資格が変わる家族がいるときは、その家族の分も書きます。同じ注記は、被扶養者の異動だけの場合も被保険者欄(資格取得・喪失年月日を除く)を記入するよう求めています。押印について、調布市は社判等の押印を求め、神戸市は名称・代表者名を「可能であればゴム印等にて押印」としています。

自社の様式で作るときは提出先の項目に合わせる 神戸市は、市の様式に記載されている項目がすべて記載されていれば任意の様式でも構わないとしています。調布市は、保険者等において必要事項の記載された所定の書式がない場合に参考にする書式例として載せています。上の表は主な欄の比較で、実際の様式には保険の種類の選択や、退職年月日・被扶養者の収入額の記入欄などもあるので、自社で様式を作るときは、提出先の市区町村の様式の項目と1つずつ突き合わせます。最終的に受け付けるかは提出先の市区町村が決めるので、本人に提出先を聞いて、その市区町村の案内を見てから作るのが確実です。

会社が証明書を出せないとき — 資格喪失の確認の請求

会社が廃業していて連絡がつかない、退職した人が会社に頼みにくい、という場合でも、本人には法律上の手段があります。健康保険法51条1項は、被保険者または被保険者であった者は、いつでも、39条1項の資格の得喪の確認を請求できると定めています(同項ただし書により、任意継続被保険者の資格の取得・喪失と、36条4号による喪失は確認の対象外です)。確認をするのは、協会けんぽの被保険者なら厚生労働大臣(窓口は日本年金機構)、健康保険組合の被保険者ならその健康保険組合です(同法39条1項かっこ書)。厚生年金保険にも同じ請求の定めがあります(厚生年金保険法31条1項)。

協会けんぽの場合の様式は、日本年金機構の「健康保険・厚生年金保険 資格取得・資格喪失等確認請求書(通知書)」です。同機構の案内(2025年12月25日更新)は、次のように説明しています。

項目日本年金機構の案内
使う場面協会けんぽの被保険者または被保険者であった方が、国民健康保険に加入するため、資格の喪失日または被扶養者でなくなった日等を証する書類が必要になったとき
提出先事務センターまたはお近くの年金事務所
提出方法窓口持参、郵送
添付書類原則不要。マイナンバーを記載する場合は、窓口ではマイナンバーカード(ない場合はマイナンバーが確認できる書類と身元確認書類の両方)を提示し、郵送ではマイナンバーカードの表裏両面か、その2つの書類のコピーを添付。被保険者から委任欄の記入を受けることが難しく、被扶養者が他の被扶養者の分を請求する場合は、身分関係を確認できる戸籍謄本等
書き方片面印刷し、請求書と通知書の両方に記入して、両方とも提出する。被扶養者が請求する場合は、被扶養者本人に関する事項についてだけ証明できる(被保険者から委任欄の記入を受けることが難しく、被扶養者が他の被扶養者の分を請求するときは、添付書類の行のとおり戸籍謄本等が要る)。窓口で交付を希望する場合は、請求者の身分を証明するもの(運転免許証等)を持参

健康保険組合の被保険者だった人は、日本年金機構ではなくその健康保険組合に確認を請求します。様式や受付の方法は組合ごとに違うので、組合の案内で確かめます。会社としては、証明書を作れない事情があるなら、退職者にこの確認の請求の経路を案内しておくと、本人が証明を得る手段を知ることができます(請求に係る事実がないと認められるときは却下されます。健康保険法51条2項)。

国民健康保険に入らない人は、国保の届出に使わない

国民健康保険法6条は、健康保険法の被保険者や被扶養者(日雇特例被保険者とその被扶養者は、同条1号・5号・7号で扱いが分かれます)、後期高齢者医療の被保険者、国民健康保険組合の被保険者などを、都道府県等が行う国民健康保険の被保険者としないと定めています。退職の翌日に次の会社の健康保険に入る人、任意継続被保険者になる人、家族の健康保険の被扶養者になる人は(日雇特例被保険者とその被扶養者を除く)、6条1号・5号に当たって国民健康保険に入らないので、証明書を国保の届出に使う場面はありません。

ただし、転職先や家族の勤め先の健康保険組合が、加入や被扶養者の認定のときに前の保険の喪失日がわかる書類を求めることはあります。何を出すかは受け入れ側の案内で決まるので、本人から頼まれたら用途を聞いて作ります。家族を扶養に入れる側の手続きは被扶養者(異動)届の記事、任意継続は任意継続の記事で扱っています。

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よくある質問

会社には資格喪失証明書を出す義務がありますか?

健康保険法48条と同法施行規則29条が事業主に求めているのは資格喪失届の提出で、退職者に証明書を交付することはこの2つの条文に書かれていません。ただ、神戸市は国民健康保険の加入・脱退の届出に当面の間は証明書を必須としており、協会けんぽ岩手支部は退職者の資格喪失証明書を協会けんぽから発行できないとしているので、会社が作らないと、本人は協会けんぽの被保険者だったなら日本年金機構に、健康保険組合の被保険者だったならその組合に、確認を請求することになります。

退職日に証明書を渡してもよいですか?

証明書に書く資格喪失年月日は、退職による喪失なら退職日の翌日、死亡による喪失は死亡日の翌日(どちらも健康保険法36条かっこ書に当たるときはその日)、75歳到達による健康保険の喪失は誕生日の当日など、原因によって変わります。退職日より前に作ると喪失年月日が確定していないので、その日が確定してから渡すほうが、本人が窓口で説明に困りません。

協会けんぽに頼めば資格喪失証明書を出してもらえますか?

協会けんぽ岩手支部は、会社を退職した方の資格喪失証明書は協会けんぽから発行できないと案内しています。協会けんぽの被保険者だった人は、日本年金機構の「健康保険・厚生年金保険 資格取得・資格喪失等確認請求書(通知書)」を片面印刷して請求書と通知書の両方に記入し、事務センターか年金事務所に出して、喪失日の確認を求めることができます(マイナンバーを書くときの本人確認書類や、窓口で交付を希望するときの身分証は、日本年金機構の案内に従います)。

証明書の様式は会社で作ってもよいですか?

神戸市は、市の様式の項目がすべて記載されていれば任意の様式でも構わないとしています。受け付けるかは提出先の市区町村が決めるので、本人の届出先の市区町村の様式や記載項目を確かめてから作ります。

退職者から資格確認書を回収できないときはどうしますか?

日本年金機構の手続きページ(2026年10月1日更新)は、協会けんぽの被保険者の喪失届で資格確認書を紛失などで回収できないときは、「資格確認書回収不能届」を添付するよう案内しています。健康保険組合に加入している場合は、組合の案内に従います。

次に読む

出典

健康保険法・同法施行規則・厚生年金保険法・同法施行規則・国民健康保険法・同法施行規則の条文(e-Gov法令検索)と、日本年金機構・協会けんぽ・調布市・神戸市の案内と様式で確認して作成。

本記事は一般的な情報提供を目的としたものです。個別の判断は年金事務所・加入している健康保険組合・社会保険労務士にご確認ください。

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