定年とは|年齢のルールと再雇用契約の確認表
船員を除く民間企業が定年を65歳未満に定める場合、65歳までの雇用確保措置が義務です。定年を引き上げる方法のほか、定年後に再雇用する方法や、定年を廃止する方法があります。
ここでは民間企業の総務・給与担当者向けに、年齢のルールと契約の確認項目を整理します。船員と国家・地方公務員の制度は対象外です。給付金の計算や退職時の届出は、末尾の関連記事に分けています。
定年年齢と会社の義務の早見表
定年年齢の下限と、定年後も働くための措置は別のルールです。まず、自社の就業規則の定年条項と継続雇用規程を並べて確認します。
次は、船員・国家公務員・地方公務員を除く民間企業について、高年齢者雇用安定法のルールを整理した表です。雇用確保と就業確保の継続雇用制度は、本人が希望する場合の制度です。
| 区分・対象 | 年齢と義務の内容 | 確認すること |
|---|---|---|
| 定年を定める会社 | 定年は60歳を下回れない。ただし鉱業法の事業の坑内作業従事者は例外 | 定年の年齢と退職日を規程で確認する |
| 定年を65歳未満に定める会社 | 65歳までの雇用確保措置が義務 | 定年の引上げ、継続雇用制度の導入、定年の廃止から選ぶ |
| 定年が65歳以上70歳未満の会社、又は継続雇用制度を導入する会社(70歳以上まで続く制度を除く) | 65歳から70歳までの就業確保措置が努力義務 | 雇用による措置と雇用以外の措置の要件を分けて確認する |
法9条2項の契約に基づき特殊関係事業主に現に雇用される人は、就業確保措置では受入先の対象から除かれ、送り出し側の対象に含まれます。
根拠:高年齢者雇用安定法7条・8条・9条・10条の2、同法施行規則4条の2・4条の4。
2025年4月1日以降、旧労使協定で継続雇用の対象者を限定する経過措置は使えません。定年の引上げだけが義務になったのではなく、雇用確保措置の選択は残っています。古い規程に対象者の選別基準が残っていないかを確認します。
経過措置の終了と就業規則の確認箇所は、厚生労働省の雇用確保措置の案内に掲載されています。
引上げ・継続雇用・廃止をどう選ぶか
制度の名前より、定年時に雇用関係をどう扱い、その後どの仕事を任せるかを先に決めます。退職金規程や賃金規程も一緒に照合すると、定年条項だけを直して他の規程を置き去りにするのを防げます。
次は、船員を除く民間企業が定年を65歳未満に定める場合の、雇用確保措置の選択表です。継続雇用には、年齢以外の就業規則上の解雇・退職事由に該当し、客観的合理性と社会通念上の相当性がある場合の例外があります。
| 選択 | 仕組み | 規程・契約で照合する項目の例 |
|---|---|---|
| 定年の引上げ | 定年年齢を65歳以上へ引き上げる | 定年条項、役割・賃金の区分、退職金の支給時期 |
| 継続雇用制度 | 本人の希望に応じ、定年後も引き続き雇用する(65歳まで) | 対象者、申出・面談の流れ、契約条件、更新の扱い |
| 定年の廃止 | 定年による退職の定めをなくす | 定年を前提にした賃金・退職金規程との整合 |
継続雇用には、定年退職後に改めて雇用する再雇用制度や、勤務延長制度があります。再雇用後の労働条件は、関係法令を守って話し合います。
他社を継続雇用先にする雇用確保措置では、高年齢者雇用安定法9条2項の特殊関係事業主との雇用確保の契約を確認します。一般の転職先を紹介するだけの対応とは分けてください。
創業支援等措置の具体的な要件は、厚生労働省「高年齢者の雇用」と高年齢者雇用安定法10条の2で確認してください。
継続雇用の対象者と例外
雇用確保措置としての継続雇用は、現に雇用する高年齢者の希望を確認して対象を決めます。定年時に会社が独自の選考をして、希望者の一部だけを残す制度にしないよう注意が必要です。
以下は、雇用確保措置として継続雇用する場合の確認表です。本人の希望、会社が適法に提示した条件、就業規則上の事由を分けて記録します。
| 確認する場面 | 取扱い・判断の条件 |
|---|---|
| 本人が継続雇用を希望する | 希望者を対象とする。次の行の例外を別に確認する |
| 年齢以外の解雇事由・退職事由に該当する | 就業規則に定める事由に該当し、客観的に合理的な理由と社会通念上の相当性がある場合に継続雇用しない判断があり得る |
| 条件を話し合っても本人が継続雇用を拒否する | 法令を守り合理的な裁量の範囲で条件を提示し、十分に話し合った結果の本人の拒否なら、それだけで法違反とはならない |
解雇事由・退職事由の例には、心身の故障で業務に堪えられない場合や、勤務状況が著しく不良で職責を果たせない場合があります。該当する名称を規程に置くだけで結論が決まるわけではありません。
雇用確保措置で継続雇用しない事由を設ける際は、就業規則の解雇・退職事由とは別の選別基準を作れません。同じ内容を別に規定することは可能とされています。試用期間中の解雇のように、継続雇用になじまない事由を除くことも可能とされています。
根拠:厚生労働省「高年齢者雇用安定法Q&A」Q1-1・Q1-7・Q2-1。継続雇用を断る個別判断は、社会保険労務士や弁護士に確認してください。
再雇用契約で確認する項目
再雇用後の仕事内容と働き方を具体化してから、賃金と契約条件を決めます。以下は会社の準備用の確認表です。契約書の完成ひな形ではありません。
| 項目 | 面談と書面でそろえる内容の例 |
|---|---|
| 契約の始期・終期 | 定年退職日、再雇用の開始日、有期か無期か、契約満了日 |
| 更新の扱い | 更新の有無・判断基準、更新上限と雇用確保の規程との整合 |
| 仕事・責任・勤務地 | 担当業務、責任の範囲、配置や職務・勤務地が変わる範囲 |
| 勤務日・時間 | 勤務日数、始業・終業、休憩、休日、時間外労働の扱い |
| 賃金・手当・賞与 | 基本給と各手当の根拠、賞与の取扱い、計算・支払方法 |
| 退職金・社内手続き | 退職金規程との整合、契約更新の確認担当、本人への連絡方法 |
再雇用後の労働時間や賃金・待遇は、関係法令を守ったうえで十分に話し合って決めます。賃金は就業の実態と生活の安定等を考慮し、適切なものとなるよう努めます。定年再雇用という事情だけでは、通常の労働者との待遇差を正当化できません。
たとえば、担当業務を引き継ぎ支援へ変える場合です。本人が引き続き担う作業、後任者が判断する事項、勤務時間の変更を具体的に整理します。単に肩書を変えただけで賃金を決めず、職務の内容や責任、職務・配置の変更範囲、その他の事情と待遇を照らし合わせます。
根拠:厚生労働省Q&AのQ1-4。待遇差の確認は同一労働同一賃金の比較方法、書面の明示事項は労働条件通知書と雇用契約書へ進んでください。
有期契約の更新上限と終了の判断
契約を短く区切ることと、雇用確保を途中で終わらせることは別です。雇用確保措置としての有期再雇用を1年ごとの契約にする場合も、必要な年齢まで継続する制度として設計します。
次は、定年を65歳未満に定める会社が、雇用確保措置として有期再雇用を選ぶ場合です。厚生労働省Q&AのQ1-4をもとに、更新条件の確認箇所を整理しています。
| 確認箇所 | 設計・運用の条件 |
|---|---|
| 雇用の上限年齢 | 65歳を下回る上限年齢を設定しない |
| 契約の更新 | 65歳までは更新を基本とする。ただし次の行の不更新の条件を確認する |
| 更新しない場合 | 年齢以外の就業規則上の解雇・退職事由に該当する場合等で、客観的合理性・社会通念上の相当性が必要。個別に判断する |
たとえば、雇用確保のための再雇用契約を確認する場合です。会社の規程は継続を予定しているのに、個別契約だけにそれより低い年齢での更新打切りを入れていないかを確認します。契約期間だけを見て更新の可否を決めないための照合です。
無期転換の扱いは、契約更新の判断とは別に確認します。定年後の再雇用に関する特例の要件は、無期転換ルールと定年後再雇用の特例にまとめています。
規程から個別契約へ落とす手順
制度を見直すときは、規程を確認し、本人と面談したうえで、書面を照合します。この順で資料をそろえると、規程上の約束と本人へ示す条件を突き合わせやすくなります。
- 就業規則と継続雇用規程を開き、対象者・退職日・申出方法・更新条件を書き出します。
- 本人の継続希望を確認し、担当業務と労働条件の案を示して話し合います。
- 規程の変更が必要かを確認し、本人へ示す書面と規程の対象範囲をそろえます。
- 契約開始日と社内の処理担当を確認し、面談内容と本人へ提示した条件の記録を残します。
再雇用までの空白は、できるだけ生じないように組みます。雇用管理の事務手続上等の必要で、定年退職の翌日から再雇用しないことが直ちに違法とはいえません。ただし、相当期間を空けると継続雇用制度と認められず、法違反となる可能性があります。
根拠:厚生労働省Q&AのQ1-5。保険の資格や給付金は、再雇用という名称だけで処理を決めず、加入先やハローワークに条件を確認してください。
まとめ
定年制度の確認は、年齢のルール、雇用確保措置の選択、再雇用契約の条件の順で進めます。規程と個別契約をそろえ、契約更新と待遇の決定を別々に点検することが実務の要点です。
よくある質問
定年を引き上げる以外の方法はありますか?
あります。雇用確保措置の選択肢には、継続雇用制度の導入と、定年の定めの廃止もあります。
再雇用後は以前と同じ賃金でなければいけませんか?
同額に固定されるわけではありません。法令を守り、就業実態と生活の安定等も考慮して、適切な賃金となるよう努めます。職務内容・責任、職務・配置の変更範囲などの事情を踏まえて十分に話し合い、定年再雇用という理由だけで通常の労働者との待遇差を正当化しないようにします。
雇用確保措置が未整備なら、雇用契約は当然に続きますか?
雇用確保措置を講じる制度整備義務それ自体から、個別の雇用契約が当然に成立するものではありません。ただし未整備は法違反であり、指導・助言後も違反が認められる場合の勧告、従わない場合の公表の対象となり得ます。個別の契約や就業規則に基づく雇用継続の争いとは分けて判断します。
出典
- e-Gov法令検索「高年齢者等の雇用の安定等に関する法律」7条・8条・9条・10条・10条の2
- e-Gov法令検索「高年齢者等の雇用の安定等に関する法律施行規則」4条の2・4条の4
- 厚生労働省「高年齢者の雇用」
- 厚生労働省「高年齢者雇用安定法の改正」雇用確保措置の経過措置の終了
- 厚生労働省「高年齢者雇用安定法Q&A(高年齢者雇用確保措置関係)」
この記事は一般的な情報提供であり、個別の税務・労務相談への回答ではありません。実際の制度設計や手続きは、ハローワーク、年金事務所、社会保険労務士または弁護士に確認してください。個別の税務・労務相談には応じられません。