役員賞与は損金になる?届出との不一致・複数回支給・未払の判断表
役員賞与は、事前確定届出給与などの要件を満たし、過大な部分や隠蔽・仮装経理による給与を除けば損金に算入できます。届出が必要な現金賞与では、提出しただけで終わりではなく、定めた支給時期と確定額に従って支給することが重要です。
この記事は、国内法人が国内居住者の役員へ支給する現金賞与について、支給前の照合と、届出との不一致・複数回支給・未払の判断を整理します。株式報酬と退職給与の詳細は扱いません。
報酬額の設計と届出期限は役員報酬の決め方へ。ここでは、届出控え・議事録・振込記録を並べ、賞与支給時に何を確認するかに絞ります。
支給前に照合するもの
支給対象の役員、支給日、額面金額を、届出と支給データで照合します。以下は経理担当者が使う確認表です。
| 確認欄 | 照合する資料 | 食い違ったときの確認先 |
|---|---|---|
| 誰の賞与か | 議事録・届出の対象者・賞与台帳 | 役員職務分か、使用人職務分かを区別する |
| いつ支給するか | 届出の支給日・振込指定日・入出金記録 | 社内の締日と、届け出た支給日を混同していないか |
| いくら支給するか | 届出の確定額・賞与台帳の額面 | 控除後の振込額ではなく、控除前の賞与額を比較する |
| 変更があるか | 変更決議・変更届出の控え | 変更事由・期限・変更後の定めが要件を満たすか |
| ほかの支給があるか | 同一職務執行期間の支給予定・実績 | 今回だけでなく、その期間の支給を合わせて確認する |
| 支給後の処理 | 源泉徴収・社会保険の担当資料 | 法人税の損金判定と、本人の控除計算を分ける |
届出の額面と銀行振込額は、源泉所得税などの控除があれば一致しません。まず賞与台帳の額面を照合し、控除額と振込額の内訳を別に確認すると、手取りの差を支給額の変更と取り違えずに済みます。
賞与の名称だけで損金を決めない
役員給与は、支給の実態を法定の給与類型に当てはめて判断します。役員職務に対する臨時の現金賞与は、事前確定届出給与の要件を確認する場面が中心です。
| 給与の区分 | 賞与支給時の見方 |
|---|---|
| 事前確定届出給与 | 支給時期と確定額を定め、必要な届出をし、定めどおりに支給したか |
| 定期同額給与 | 定期給与の類型。臨時賞与をこの名前に変えるだけでは該当しない |
| 業績連動給与 | 対象法人・算定方法・決定手続・開示等の法定要件を個別に確認する |
| 使用人兼務役員の使用人職務分 | 役員職務分と分ける。他の使用人と異なる時期の賞与は別の損金不算入規定がある |
主な例外:非同族法人が、定期給与を支給しない役員へ支給する所定の金銭給与には届出不要の区分があります。使用人職務分は給与類型の判定対象から外れますが、過大給与などの確認は残ります。
業績が良かったから追加で払う賞与が、そのまま税法上の「業績連動給与」になるわけではありません。特に同族会社は対象法人の制限があるため、名称ではなく要件を確認します。給与類型の詳細は国税庁「役員に対する給与」を参照してください。
使用人兼務役員かどうかは役職名だけで決まりません。代表者等の除外や使用人分賞与の支給時期については、使用人兼務役員の判定と給与で確認できます。
届出と支給日・支給額が違った場合
届け出た現金賞与は、支給時期・支給額を届出控えと照合します。適法な変更後の定めがないまま支給額を増減した場合は、差額だけを損金不算入にする扱いではありません。
次は、届出が必要な役員職務分の現金賞与について、有効な変更届出による定めの変更がない場合の整理です。複数回支給・未払の個別判断は後の節で扱います。
| 支給の状況 | 法人税上の確認 | 保存する記録 |
|---|---|---|
| 時期・額とも定めどおり | 事前確定届出給与の要件を確認。過大給与等の判定も残る | 届出控え・議事録・支給実績 |
| 額を増やした | 増額分だけでなく、実際の支給額が損金不算入となる | 変更理由・実際の額・支給記録 |
| 額を減らした | 実際に支給した額が損金不算入となる | 減額理由・債務が残っているか |
| 支給日が違う | 定めた時期に支給する要件との不一致を確認する | 届出の日付・振込指定・入出金記録 |
支給日が金融機関の休業日に当たる場合も、税務署への届出期限の休日延長と同じものとは考えません。振込操作日・振込指定日・実際の入金日を分け、事前の定めと実行方法を支給前に確認するための記録にします。
不一致が見つかったときに、議事録の日付をさかのぼらせたり、実際と異なる額で給与台帳を合わせたりしてはいけません。事実を隠蔽・仮装して経理することにより支給する役員給与には、別途、損金不算入の規定があります。
複数回支給は職務執行期間で見る
同一職務執行期間に係る事前確定届出給与は、複数回の支給を一つの期間として判定します。ただし、前事業年度は届出どおりで、翌事業年度だけ定めと異なる場合には、前事業年度分を損金算入できる取扱いがあります。
国税庁の「定めどおりに支給されたかどうかの判定」は、同じ職務執行期間でも、不一致が前期に起きた場合と翌期だけに起きた場合を分けています。
以下は国税庁の公表例です。いずれも、3月決算法人が、役員のX年6月26日からX+1年6月25日までの同一職務執行期間について、12月と翌6月の賞与を適時に届け出た場合で、有効な変更はないものとします。
| 支給の組合せ | 届出と実際の支給 | 取扱い |
|---|---|---|
| 当期を減額、翌期は満額 | 各200万円の届出に対し、12月は100万円、翌6月は200万円を支給 | 実際の支給額の合計300万円が損金不算入 |
| 当期は満額、翌期のみ減額 | 各300万円の届出に対し、12月は300万円、翌6月は50万円を支給 | 前期の12月分は損金算入して差し支えなく、翌期の減額支給分は損金不算入 |
職務執行期間と事業年度は、同じ区切りとは限りません。年内に支給した賞与だけで判断せず、その役員の職務に係る次の支給予定も並べることが、確認漏れを防ぐ手順になります。
未払・不支給は事実関係を分ける
事前確定届出給与を未払計上したときは、帳簿に載せたという事実だけで損金算入の可否を決められません。給与としての実態、債務の確定、事前に確定額を支給する定めがあったかを確認します。
| 状況 | 確認すること |
|---|---|
| 債務は確定し、支払が残っている | 未払の理由、給与の実態、当初の支給の定めを確認する |
| 当初から未払を見込んでいた | 確定額を支給する定めが実際にあったのかを確認する |
| 支給を取りやめた・役員が辞退した | 決議・辞退の時期と内容、債務が残るか、ほかの支給への影響を分ける |
| 一部だけ支払った | 残額を債務として残したのか、給与自体を減額したのかを区別する |
国税庁の法人税基本通達の解説「事前確定届出給与の意義」は、未払でも債務が確定していれば支給額に含まれるとの考え方に触れたうえで、給与の実態や定めの有無を個別に判断するとしています。「未払なら算入できる」「未払なら算入できない」という一律の説明にはできません。
この解説には旧法に基づく箇所があります。変更届出については現行の国税庁の案内も合わせて確認してください。
不支給の場合も、その回に支払がなかったことと、同一職務執行期間の別の賞与が届出どおりかは別の論点です。前事業年度は定めどおり・翌事業年度だけ不一致という例外を含めて、支給履歴を確認します。
変更・過大給与は別に確認する
届出済みの事前確定届出給与には、臨時改定事由や業績悪化改定事由による変更届出の制度があります。ただし、金銭賞与の業績悪化による変更は減額に限られ、単なる一時的な資金繰りの都合や目標未達だけでは業績悪化改定事由に当たりません。
変更が必要なときは、事由が起きた日と決議日を分け、変更前の支給日も確認します。事由によって届出期限の起算点が異なるため、支給後に書類を直せば済むとは考えず、役員報酬の決め方と国税庁の変更届出の案内で要件を確認してください。
届出と支給実績が一致していても、不相当に高額な部分は損金不算入です。退職給与以外の役員給与では、職務内容・会社の収益・使用人給与・類似法人の役員給与などで見る実質基準と、定款や総会決議の限度額等で見る形式基準を確認します。
賞与だけを切り出して「この額までなら安全」と判断するのではなく、その事業年度の役員給与を資料とともに確認します。要件を満たす給与類型かという確認と、過大な部分がないかという確認は、分けて記録します。
損金不算入でも本人の給与課税は別
法人側で損金不算入となっても、国内居住者の役員が国内で受け取る給与賞与の課税が消えるわけではありません。法人税の申告調整と、給与計算の源泉徴収を分けて処理します。
居住者へ国内で支払う給与賞与の源泉徴収は、実際の支払時と、未払役員賞与のみなし支払の時期を確認します。未払の役員賞与には支払確定後の期間経過により支払があったとみなす規定もあるため、長期の未払は源泉徴収の時期とみなし支払も確認してください。
賞与の源泉税は、扶養控除等申告書の提出状況・扶養親族等の数・前月給与・賞与額などに応じた方法で計算します。前月給与がない場合や高額賞与を含む計算条件と手順は、賞与の源泉所得税で詳しく扱っています。
源泉徴収税額を計算する — 賞与の条件を入力して確認健康保険・厚生年金の対象となる役員の賞与は、法人税の損金判定とは別に保険料・届出を確認します。対象者や支給頻度を含む取扱いは、賞与の社会保険料と役員の社会保険へ進んでください。
よくある質問
役員賞与は届出を出せば損金にできますか?
届出だけでは決まりません。届出が必要な現金の事前確定届出給与は、定めた支給時期・確定額での支給を確認し、不相当に高額な部分や隠蔽・仮装による給与の損金不算入も別に判定します。
届出より少なく払えば、払った分は損金になりますか?
有効な定めの変更がないまま現金の事前確定届出給与を減額支給した場合は、実際に支給した額が損金不算入となります。同一職務執行期間に別の支給がある場合の影響は、事業年度をまたぐ例外も含めて確認します。
複数回支給のうち翌期だけ減額すると、前期分も不算入ですか?
前期分を損金算入できる場合があります。国税庁は、同一職務執行期間の事前確定届出給与について、前事業年度は届出どおりに支給し、翌事業年度だけ定めと異なる事例では、前事業年度分は損金算入して差し支えないとしています。
賞与を未払金に計上すれば損金になりますか?
未払計上だけでは決められません。事前確定届出給与としての給与の実態、債務の確定、当初から未払を見込んでいなかったか、確定額を支給する定めがあったかを個別に確認します。
損金不算入なら、源泉徴収しなくてよいですか?
いいえ。国内居住者の役員に国内で支払う給与賞与の源泉徴収は、法人側の損金算入とは別です。支払時の徴収に加え、長期未払の役員賞与のみなし支払にも注意します。
出典
- e-Gov法令検索「法人税法」第34条 — 給与類型、過大給与、隠蔽・仮装、使用人兼務役員
- e-Gov法令検索「法人税法施行令」第69条・第70条 — 届出と変更、過大な役員給与
- e-Gov法令検索「所得税法」第28条・第183条・第186条 — 給与所得と源泉徴収
- 国税庁「役員に対する給与」
- 国税庁「定めどおりに支給されたかどうかの判定(事前確定届出給与)」
- 国税庁「役員給与等」事前確定届出給与の意義と解説
法人税法上の給与類型と、国税庁の支給事例・未払に関する解説を参照しています。個別の辞退・債務免除の課税関係や、株式報酬・退職給与の判定は扱っていません。
この記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の税務相談ではありません。実際の判定や申告については、国税庁の案内を確認するか、顧問税理士等の専門家にご相談ください。