在庫管理のやり方|入出庫台帳・理論在庫・実在庫の照合表
在庫管理は、商品の入出庫を記録し、台帳上の数量と実物を照合して、必要な入出庫や発注を判断する仕事です。まず商品・保管場所・数量の単位をそろえ、いつの在庫を比べるか決めます。残高が合わないときは、元の入出庫記録へ戻って原因を調べます。
この記事は、会社の経理担当が現場の記録を受け取り、数量から会計残高へつなぐための運用例です。原価の計算方法は商品有高帳、決算時の記録と数え方は棚卸表・実地棚卸で確認できます。
在庫管理の流れと確認する記録
入庫・出庫の記録を更新してから、同じ時点の実物と比べます。中小機構 J-Net21「仕入品を管理するには」も、数量と金額による管理を区別しています。また、帳簿と現品の数量を合わせることを棚卸しの目的に挙げています。
| 作業 | 残すもの | 次の確認先 |
|---|---|---|
| 入庫 | 検品した商品・数量・場所、元の納品記録 | 入庫台帳と仕入明細 |
| 保管・移動 | 移動元・移動先、商品状態、移動記録 | 場所別の残高 |
| 出庫 | 実際に出した商品・数量、出庫記録 | 出荷指示と出荷実績 |
| 数量照合 | 比較時点の台帳、実物の計数結果 | 差異の調査記録 |
| 金額照合 | 確定数量と原価明細、調整内容 | 会計側の対応する在庫残高 |
入出庫台帳に用意する管理欄
入出庫台帳には、商品コード、単位、場所を組み合わせて記録します。商品名だけで管理すると、似た品名や違う荷姿を取り違えやすくなるためです。次の表は筆者が整理した管理欄の例です。法定記載事項の一覧や、行政が定めた様式を示したものではありません。
| 管理欄 | 書く内容 照合で見る点 |
|---|---|
| 商品コード・品名 | 型・規格を識別できる名称 別の商品を同じ残高へ集計していないか |
| 数量の単位 | 個、箱、重量など 入庫と出庫で単位が変わっていないか |
| 保管場所 | 倉庫・棚などの所在 現物を探す場所と集計範囲が一致するか |
| 取引日・記録時刻 | 実際に動いた日と入力した時刻 締め後に入力した取引を追えるか |
| 入出庫番号・区分 | 元資料の番号と、入庫・出庫・移動等 記録漏れ・重複・符号の逆転がないか |
| 入庫数・出庫数・残高 | 増減と、反映後の数量 直前残高からのつながりが合うか |
| 担当・確認欄 | 入力者、確認者、訂正理由 不明な記録を誰に確認できるか |
ロットや期限が管理に必要な商品は、その識別欄も加えます。中小機構「在庫管理システム」では、商品・場所・数量の把握や、バーコードを使った入出庫更新が紹介されています。読み取り機器を使う場合も、商品コードと数量単位の対応を先に確かめます。
入力担当と更新のタイミングも決めます。現場が記録して経理が再入力する運用では、元資料の番号で突き合わせます。同じ取引を双方で入力しないためです。訂正は元の内容を追える形で残し、現在残高を直接上書きするだけの修正を避けます。
理論在庫と実在庫を同じ条件で比べる
理論在庫と実在庫は、商品・場所・単位・時点をそろえて比べます。理論在庫は入出庫記録から計算した数量、実在庫は現物を数えた数量です。数えている間に商品が動く場合は、その間の入出庫を別に記録して比較時点へ戻します。
架空例の商品Aを同一月・単一倉庫・個単位で照合します。返品・移動・廃棄はありません。差異の符号は実物−理論とします。
| 項目 | 数量・計算 | 照合先 |
|---|---|---|
| 月初数量 | 80個 | 前月締め後の残高 |
| 当月入庫 | 30個 | 検品・入庫記録 |
| 記帳済みの当月出庫 | 25個 | 出庫台帳 |
| 理論在庫 | 80個+30個−25個=85個 | 記帳済みの入出庫から計算 |
| 実在庫 | 83個 | 同じ時点の計数結果 |
| 数量差異 | 83個−85個=−2個 | 不足の原因を調査 |
この段階では不足の原因は未確定です。出庫の記帳漏れなのか、数え間違いなのか、別の棚への移動なのかを調べます。差異を直ちに廃棄や紛失として処理すると、元の取引の記帳漏れが残ることがあります。
差異が出たときの調査順
差異のある商品と場所を絞り、再計数、比較時点、元資料の順に確認する運用例です。調査が終わった記録と、まだ確認中の記録を分けて管理します。
| 確認すること | 見る記録 | 残す結果 |
|---|---|---|
| 商品・単位・場所 | コード、荷姿、棚の表示 | 再計数した数量と範囲 |
| 比較時点の一致 | 計数開始・終了時刻、その間の移動 | 基準時点への増減調整 |
| 記帳漏れ | 入出庫実績と台帳の番号 | 未入力の元資料と追加記録 |
| 二重記録・区分違い | 同じ番号の重複、移動・返品の区分 | 取消と再登録の対応 |
| 破損等の現物の変化 | 状態の記録、処分や返品の承認 | 原因、数量、確認者 |
現物がある場所と、自社の在庫として集計する範囲も区別します。預り品や外部保管品を扱う場合は、所有関係と会計上の計上基準を別に確認します。倉庫にある数量だけで、決算に載せる在庫の範囲まで決めることはできません。
原因が判明したら、訂正前の残高、元資料、訂正内容、確認者をまとめます。原因不明の差異は調査中として引き継ぎます。会計処理や税務上の扱いは顧問の会計専門家等に確認します。実地棚卸の詳しい進め方は実地棚卸の手順で扱っています。
数量を確かめてから会計残高へつなぐ
数量が合っても金額が合うとは限りません。単価、原価計算方法、計上時期、評価調整などを確認します。原価の記入例は商品有高帳、税務上の評価方法は棚卸資産の評価方法へ分けています。
架空例の商品Aを同一月・単一倉庫で照合します。返品・移動・廃棄はなく、差異は実物−理論です。出庫の未記帳を確認した後、全品を同じ税抜原価で計算します。評価損・諸掛・税調整はなく、端数も生じません。
| 項目 | 原価金額 | 確認内容 |
|---|---|---|
| 修正前の管理台帳 | 85個×200円=17,000円 | 記帳済み取引からの残高 |
| 出庫未記帳を反映した後 | 83個×200円=16,600円 | 元の出庫記録を反映 |
| 管理台帳の減少額 | 17,000円−16,600円=400円 | 会計側の出庫反映状況も確認 |
会計側にその出庫が既に反映されているなら、管理台帳の訂正を理由に同じ取引を会計へ重ねて登録しません。双方とも未反映なら、自社の記帳方法と計上基準に従って対応します。この表は原価の照合例であり、仕訳や損金算入の可否を決める表ではありません。
管理台帳から会計へ渡す明細には、対象期間、商品範囲、原価計算方法、差異修正と評価調整の内訳を付けます。合計が違うときは、どの調整まで反映した残高かをそろえてから照合します。三分法の決算整理は三分法の記事を参照してください。
確認した原価と売価から粗利率を計算する表計算とシステムで確認すること
道具を選ぶときは、入出庫の履歴を追えるか、担当者間で同じ残高を共有できるかを確認します。締め時点のデータを出せるかも確認します。導入しただけで入力漏れや差異が解消するとは限りません。
| 方法 | 運用前に確認すること |
|---|---|
| 紙の台帳 | 記録の集約先、転記の担当、訂正前の記録の残し方 |
| 表計算 | 入力欄と計算欄の区別、同時更新時のルール、変更履歴とバックアップ |
| 在庫管理システム | 単位変換、移動・返品の登録、権限、訂正履歴、会計用明細の出力 |
表計算では、入力データと集計結果を分け、商品・場所・期間ごとに元データへ戻れるようにします。締め後の入力は差分として把握し、現場と経理が別々の版を正本として使う状態を避けます。
数量の記録が安定してから、販売実績や調達期間を使って発注を見直します。発注量や回転率の分析は日常の残高照合とは分け、棚卸資産回転率の解説へ進めます。
まとめ
在庫管理では、商品・場所・単位・比較時点をそろえて入出庫を記録し、台帳と実物の数量を照合します。差異は元資料へ戻って調査し、修正理由を残します。
経理への引継ぎでは、数量と原価金額を分けて確認します。会計側の反映状況を確かめ、記帳漏れの修正を重複させないようにします。
よくある質問
在庫管理表と商品有高帳はどう違いますか?
この記事の在庫管理表は、場所や入出庫の履歴を追うための運用例です。商品有高帳は商品の受入・払出・残高を数量と原価金額で追います。実務のシステムでは機能が重なることもあるため、名称よりも、どの数量・原価・履歴を記録しているかを確認します。
在庫差異は台帳の残高を上書きして直せますか?
原因と訂正内容を追える形で直します。上書きするだけでは、未入力の入出庫や重複記録が残ることがあります。再計数と比較時点の確認を行い、元資料と修正記録を対応させます。
数量が合えば会計残高も合いますか?
数量が一致しても、原価単価、計上時期、評価調整の差で金額が合わないことがあります。数量の照合後に原価明細と調整内容を確認し、会計側がどの取引まで反映した残高かをそろえます。
出典
管理欄と照合表は筆者の運用例です。数量例・原価例は架空の取引を用いており、決算評価や税務上の判断は含みません。
- 中小機構 J-Net21「仕入品を管理するには」(数量・金額による管理、帳簿と現品の照合)
- 中小機構 IT戦略ナビwith「在庫管理システム」(商品・場所・数量の把握、入出庫情報の更新)
この記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の事案に対する助言ではありません。実際の会計処理は顧問の会計専門家へ、税務判断は税務署や税理士へご確認ください。個別の税務・労務相談には応じられません。