株主名簿の作り方|記載例・名義書換と閲覧対応
株式会社の株主名簿には、株主の氏名・名称と住所、株式数、取得日を記録します。種類株式があれば種類と種類ごとの数も記録します。株券発行会社で株券が発行済みなら、株券番号も記録します。
非上場の小さな会社でも作成が必要です。まず法定項目をそろえ、譲渡・相続などの変更を根拠資料とともに反映します。閲覧請求にも応じられる状態にします。
この記事は非上場株式会社の担当者向けです。通常の記載例は株券不発行会社を対象にし、株券発行会社の相違は該当箇所で示します。
株主名簿に書く事項
株主名簿には、氏名・名称と住所、株式数、取得日などを記録します。必要な項目は会社法121条で定められています。会社名と対象時点を表題に添えると、別の会社の名簿や過去の控えとの取り違えを防ぎやすくなります。
| 項目 | 記載・記録する内容 |
|---|---|
| 株主の氏名・名称と住所 | 個人は氏名、法人は名称。それぞれの株主の住所も記録する |
| 株式の数 | 株主が持つ株式数。種類株式発行会社は、種類と種類ごとの数を記録する |
| 株式を取得した日 | その株主が株式を取得した日。名簿へ入力した日とは分けて確認する |
| 株券の番号 | 株券発行会社で、実際に株券が発行されている株式について記録する |
株主名簿の書式や列の並びは同条で指定されていません。表計算ソフトで作る場合も、必要項目を満たし、備置きと閲覧・謄写への対応ができるようにします。
持株比率、連絡用メール、更新担当者、確認資料の保存先は、社内管理のために追加する欄の例です。法定項目と任意項目を分けておくと、必要事項の記入漏れを確認しやすくなります。
質権、信託財産、株券不所持の申出があるときは追加の手続も確認します。根拠は会社法148条、同154条の2、同217条です。下の通常例には含めていません。
作成例と更新履歴の残し方
次は、普通株式だけを発行する株券不発行会社「青葉株式会社」の架空の記載例です。設立時の記録を想定し、質権・信託の記録はありません。住所は説明用の架空表記です。取得日欄には、根拠資料で確認した株式の取得年月日を記入します。
| 氏名・名称 | 住所 | 種類・株式数 | 取得日 |
|---|---|---|---|
| 青葉 花子 | 東京都青葉区若葉町 | 普通株式60株 | 2026年4月1日 |
| 青葉 太郎 | 神奈川県青葉市緑町 | 普通株式40株 | 2026年4月1日 |
実際の名簿では、氏名・名称、住所、取得日を正式な表記で入力します。取得日欄は、実際の根拠資料で確認した年月日に置き換えてください。
追加で株式を取得し、同じ株主に異なる取得日の持分があるときは、取得日別の明細を残す管理方法が考えられます。現在の合計株式数だけを上書きすると、過去の取得日が追えなくなるためです。
最新の名簿と変更の根拠を分ける
日々使う名簿には現在の状態を反映し、別の変更履歴に「何を確認して書き換えたか」を残す運用例です。次の欄は法定様式ではなく、引継ぎのための管理提案です。
| 欄 | 残す内容 |
|---|---|
| 受付・処理 | 請求の受付日、名簿の処理日、担当者 |
| 変更内容 | 変更前後の氏名・住所・株式数、対象の取得日 |
| 根拠 | 名義書換請求、承認の記録、承継資料などの保存先 |
| 完了確認 | 名簿への反映、通知先の更新、確認者 |
取得日と処理日は役割が違います。譲渡契約、効力発生条件、承継関係などを確認し、株式を取得した日を、担当者が入力した日で置き換えないようにします。
株式譲渡・相続時の名義書換
譲渡承認と名義書換は別の手続です。承認の記録だけを保存して、株主名簿の変更を忘れないようにします。
株券不発行会社では、譲受人の氏名・名称と住所を株主名簿に記載・記録しなければ、株式の譲渡を会社その他の第三者に対抗できません。株券発行会社では、この名簿記載は会社への対抗要件です(会社法130条)。
通常の譲渡では共同請求を確認する
譲渡制限株式を除き、発行会社以外の者から株式を取得した者は、発行会社自身を除いて名義書換を請求できます。請求は名簿上の株主又はその相続人その他の一般承継人と共同で行います。法務省令所定の場合は単独請求が認められます(会社法133条)。
譲渡制限株式では、承認済み、指定買取人による取得、相続その他の一般承継など、会社法134条に定める場合に名義書換請求の規定が適用されます。通常の譲渡では、定款と承認の有無を先に確認します。
譲渡承認を決める機関は、定款に別段の定めがなければ株主総会、取締役会設置会社では取締役会です。決定後は請求者への通知も必要です(会社法139条)。
相続では承継を証する資料を確認する
相続その他の一般承継による取得は、譲渡制限株式でも名義書換請求の対象です。通常の譲渡と同じ譲渡承認を前提にせず、承継関係を確認します。
株券不発行会社では、相続などの一般承継を証する書面その他の資料を提供すれば、取得者が単独で名義書換を請求できます(会社法施行規則22条1項4号)。戸籍、遺産分割に関する書類など、何を確認するかは承継の経緯に合わせて整理してください。
相続以外の単独請求や株券発行会社については、取得原因に合う要件を会社法施行規則22条で確認してください。共有が残る相続、権利関係に争いがある請求は、この通常例で名義を決めず、法務担当者や専門家に確認します。
新株発行・自己株式の変動は会社側で反映する
株式の発行、会社による自己株式の取得・処分、株式の併合・分割では、会社が該当株式の株主名簿記載事項を記載・記録します(会社法132条)。他人間の譲渡に伴う請求と区別して、社内の株式管理の工程に更新を組み込みます。
基準日と通知先の管理
基準日とは、その日に株主名簿へ記載・記録されている株主を、特定の権利を行使できる者とするために定める日です。現在の名簿と、過去の基準日の確定版を分けて残すと、後日の照合に使えます。
基準日を定める株式会社は、基準日から3か月以内に行使する権利の内容を定めます(会社法124条)。
| 確認点 | 扱い |
|---|---|
| 対象となる権利 | 基準日株主が行使できる権利の内容を決める |
| 公告 | 定款に基準日と権利の内容の定めがない場合、基準日の2週間前までに両者を公告する |
| 公告が不要な場合 | 定款にその基準日と権利の内容の定めがある場合 |
総会での議決権については、該当株式の基準日株主の権利を害しない範囲で、基準日後の取得者を権利行使者に加えることもできます。基準日・権利内容の決定・公告の規定は登録株式質権者にも準用されますが、基準日後の取得者に関する規定は準用されません。
株式が共有でない場合、通知・催告は、株主が別途通知した受領場所・連絡先があればそこへ発送すれば足ります。それ以外は名簿上の株主の住所へ発送すれば足ります(会社法126条)。ここでは共有株式の通知先の特則は扱いません。
住所変更の届出を受けたら、名簿と発送用一覧をまとめて確認する運用にします。基準日の控えを、その後の住所変更のたびに上書きしないことも確認してください。
株主総会の日程管理に使う場合も、法令・定款の期間が暦日か営業日かを確認して入力してください。
備置きと電子管理
株主名簿は本店に備え置きますが、株主名簿管理人がある場合はその営業所に備え置きます。根拠は会社法125条1項です。
株主名簿管理人を置く旨を定款で定め、名簿の作成・備置きなどの事務を委託できます(会社法123条)。社内で入力担当者を決めることと、この法定の管理人を置くことは区別します。
紙でも電子でも、所在と閲覧方法を担当者以外にも分かるようにします。電子の名簿は、記録内容を紙面又は画面に表示して閲覧・謄写に応じます(会社法施行規則226条)。
表計算ソフトで管理するときの運用例は、編集者を限定し、変更前の控えと根拠資料を保存する方法です。閲覧対応用の表示に、不要な社内メモまで混在させないようにします。
株主名簿の備置きは、株主総会議事録の保存年限と同じ扱いではありません。名簿を古いという理由だけで廃棄せず、継続して整備します。
閲覧・謄写請求への対応
株主と債権者から、理由を明らかにした営業時間内の株主名簿の閲覧・謄写請求があれば、会社は下表の法定事由に当たる場合を除いて拒めません(会社法125条2項・3項)。
受付時は、請求者の立場、請求理由、希望する閲覧・謄写の内容を確認します。対応日時と判断の記録を残すと、引継ぎがしやすくなります。「個人情報だから」「競合会社だから」という説明だけで拒否を決めないようにします。
| 事由 | 内容の要約 |
|---|---|
| 権利調査以外の目的 | 請求者が、その権利の確保又は行使に関する調査以外の目的で請求する場合 |
| 妨害・加害の目的 | 会社の業務遂行を妨げ、又は株主の共同の利益を害する目的で請求する場合 |
| 利益を得て通報する目的 | 名簿の閲覧・謄写で知った事実を、利益を得て第三者に通報するための請求 |
| 利益を得て通報した実績 | 過去2年以内に、名簿の閲覧・謄写で知った事実を利益を得て第三者に通報した場合 |
親会社社員は、その権利行使のため必要なときに裁判所の許可を得て、理由を明らかにして株主名簿の閲覧・謄写を請求できます。上表の事由に当たれば裁判所は許可できません(会社法125条4項・5項)。ここでの「社員」は従業員という意味ではなく、法人の構成員を指します。
記載事項証明書・株主リストとの違い
株主名簿は継続して管理する帳簿です。株主本人への記載事項の証明や、登記に使う株主リストとは、目的と作成場面を分けます。
株券不発行会社の株主は、自分について名簿に記載・記録された事項を記載した書面の交付、又は電磁的記録の提供を請求できます(会社法122条)。他の株主の情報を含む名簿全体の閲覧・謄写請求とは別です。
同条の書面には、代表取締役又は指名委員会等設置会社の代表執行役が署名又は記名押印します。電磁的記録では、署名・記名押印に代わる法務省令所定の措置が必要です。
登記用の株主リストの作り方は、株主総会議事録の記事で確認できます。名簿をそのまま提出する前提にせず、登記の内容に応じた対象者や必要項目を確認します。
担当者の確認リスト
- 株主ごとの氏名・名称、住所、株式数、取得日をそろえる。種類株式と発行済み株券の条件も確認する
- 譲渡承認と名義書換を分け、請求者・取得原因に合う根拠資料を残す
- 最新の名簿、基準日の控え、変更履歴を区別して管理する
- 株主名簿管理人があればその営業所、なければ本店で備え置き、閲覧・謄写への対応を用意する
よくある質問
株主が代表者だけでも株主名簿は必要ですか?
必要です。株式会社の作成義務に、株主が代表者だけであることによる免除はありません。氏名・住所・株式数・取得日を記録し、種類株式や発行済み株券があれば該当項目も記録します。
株主名簿はExcelで作ってもよいですか?
表計算ソフトを使って作成できます。法定項目を満たす電磁的記録として管理し、株主名簿管理人があればその営業所、なければ本店で備え置き、内容を紙面又は画面に表示して閲覧・謄写に応じられるようにしてください。
株主名簿に代表印は必要ですか?
株主名簿そのものの記載事項には、代表印は挙げられていません。ただし、株券不発行会社の株主が請求する本人の記載事項の交付書面には、代表取締役又は指名委員会等設置会社の代表執行役の署名・記名押印のいずれかが必要です。
相続でも譲渡承認が必要ですか?
相続その他の一般承継では、通常の譲渡で必要となる譲渡承認は前提となりません。株券不発行会社では、一般承継を証する書面その他の資料を提供すれば、取得者が単独で請求できます。共有や権利関係の争いがある場合は、この通常例だけで名義を決めないでください。
出典
e-Gov法令検索「会社法」と「会社法施行規則」の株主名簿に関する規定を参照しています。
- e-Gov法令検索「会社法」:株主名簿の記載事項、交付請求、管理人、基準日、備置き・閲覧、通知、対抗要件、名義書換、譲渡承認。追加記録に関する規定も参照
- e-Gov法令検索「会社法施行規則」:名義書換の単独請求と、電磁的記録の表示方法
この記事は一般的な情報提供であり、個別の税務・労務相談には応じられません。権利帰属に争いがある場合や個別の法的判断が必要な場合は、弁護士などの専門家に確認してください。