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借地権の相続【令和8年】地主の承諾は不要・評価は自用地×借地権割合

結論から言うと、借地権は相続財産です。そして相続に地主の承諾は要らず、相続そのものを理由に承諾料や名義書換料を払う義務が法律上当然に生じることもありません(契約書に相続時の定めが置かれている場合は、その条項を別途確認してください)。理由は条文の1行にあります。民法896条が「相続人は、相続開始の時から、被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継する」と定めているからで、承諾が要る場面を定めた民法612条1項が対象にしているのは譲渡と転貸であって、相続はそのどちらでもありません。生前に借地権を売ったり子に贈与したりすれば承諾(または借地借家法19条1項の裁判所の許可)が要りますが、亡くなって承継する場面には出てきません。

相続税の評価も、原則の形は1行です。財産評価基本通達27が「自用地としての価額×借地権割合」と定めており、借地権割合は路線価図にA〜Gの記号で書いてあります。A=90%、B=80%、C=70%、D=60%、E=50%、F=40%、G=30%です。ただしこの式がそのまま使えるのは、借地借家法22条から25条までに当たらない借地権(旧法借地権と普通借地権)だけで、定期借地権等は通達27-2の別の算式になります。原則の外には、借地権の取引慣行がない地域(通達27ただし書で借地権を評価しない)と、使用貸借(昭和48年11月1日付直資2-189で使用権の価額を零とする)の2つがあります。

この記事は、承諾が要らない理由を条文で押さえたうえで、路線価図の記号から評価額を出すまでを国税庁自身の計算例の実数で追い、借地権の3系統(旧法・普通・定期)で式がどう分かれるか、貸宅地・貸家建付借地権はどう引くか、使用貸借を評価しない理由、遺産分割中の地代、そして相続後に走り出す4つの期限(3か月・4か月・10か月・3年)まで整理します。金額はすべて令和8年分の財産評価基準を前提にしています。

借地権の相続で迷う5つの問い — 答えを先に

借地権の相続で検索される問いは、だいたい次の5つに収まります。先に答えを並べます。根拠はすべて本文の各節で条文と通達に当てて確かめます。

問い答え根拠
借地権は相続財産か相続財産に入る。相続税の課税対象になる民法896条、相続税法2条1項・22条
地主の承諾は要るか要らない。相続を理由とする承諾料・名義書換料の支払義務も法律上当然には生じない(契約条項がある場合は別途確認)民法896条(包括承継)/民法612条1項は譲渡・転貸だけを対象にする
いくらで評価するか自用地としての価額×借地権割合。割合は路線価図のA〜G(90%〜30%)財産評価基本通達27、国税庁「路線価図の説明」
定期借地権も同じ式か違う。借地借家法22条〜25条の定期借地権等は通達27-2の算式財産評価基本通達9(5)(6)・27-2
地代を払っていない場合は使用貸借なら借地権は評価しない(零)。土地は自用地として評価する昭和48年11月1日付直資2-189の1・3

5つのうち、実務でいちばん誤解が多いのが2番目です。地主から「相続なので名義書換料をいただきます」と言われた、という相談は珍しくありませんが、相続を理由に金銭を請求する法律上の根拠は条文にありません。逆に、相続人が借地権を第三者に売る、あるいは建物を売って敷地の賃借権も移す場面になった瞬間に、民法612条1項と借地借家法19条1項の世界へ入ります。この線引きが、この記事のいちばん大事な一段です。なお、契約書に相続時の名義書換料などの定めが置かれていることがあり、その条項の効力は個別の判断になります。請求を受けたら、まず契約書にその定めがあるかどうかを確かめてください。

① 地代の授受があるか 無償、または固定資産税相当額以下の 授受しかない場合は使用貸借 借地権は評価しない 昭48直資2-189の1(零) ② 借地権の取引慣行がある地域か 権利金その他の一時金を支払う 慣行があるかで分かれる 借地権は評価しない 通達27ただし書 ③ 借地借家法22条〜25条か 22条 一般定期/23条 事業用定期 24条 建物譲渡特約付/25条 一時使用 =まとめて「定期借地権等」 定期借地権等として 通達27-2の算式で評価 (一時使用は雑種地に準じる) 貸家なら④へ(通達28) 自用地としての価額×借地権割合 旧法借地権・普通借地権はここ。 割合は路線価図のA〜G(通達27) ④ その建物は貸家か 被相続人が自分で使っていたなら ここで終わり 貸家建付借地権等 通達28で借家権割合分を引く 課税価格に算入する借地権の価額が決まる 相続税がかかるかは基礎控除と比べて決まる(相続税法15条1項) ある ある 当たらない いいえ ない ない 当たる はい
判定は上から順に1つずつ。①と②で外れると借地権の価額は出ませんが、②で外れた場合も地主側の貸宅地は自用地としての価額から20%を引いて評価します(通達25(1)括弧書き)。①で外れた場合は地主側も引けません。

相続は譲渡ではないから、地主の承諾は要らず、名義書換料も当然には生じない

借地権は、借地借家法2条1号が「建物の所有を目的とする地上権又は土地の賃借権」と定義しています。同条は5つの号で用語を定義していて、借地権を持つ人を借地権者(2号)、貸している人を借地権設定者(3号)と呼び分けます。実務でいう「地主」が借地権設定者です。

相続で承諾が要らない理由は、承継の仕組みそのものにあります。民法896条の本文は次のとおりです。

相続人は、相続開始の時から、被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継する。ただし、被相続人の一身に専属したものは、この限りでない。

ここでいう「一切の権利義務」に、土地の賃借権も地上権も入ります。借地権は被相続人の一身に専属する権利ではないので、ただし書にも当たりません。相続人が新たに借地権を取得する(=地主から取得する)のではなく、被相続人の地位をそのまま引き継ぐという構造なので、地主が関与する場面が生じないのです。

これに対して、承諾が要る場面を定めているのが民法612条1項です。

賃借人は、賃貸人の承諾を得なければ、その賃借権を譲り渡し、又は賃借物を転貸することができない。

条文が名指ししているのは「譲り渡し」と「転貸」の2つだけです。相続はどちらでもありません。もし地主が承諾しない場面が起きるとすれば、それは相続人が建物を第三者に売るときで、その場合は借地借家法19条1項が、地主に不利となるおそれがないのに承諾しないときは裁判所が承諾に代わる許可を与えることができると定めています(借地非訟)。同条3項では、地主の側から建物と賃借権を自ら買い取る旨の申立てができることも定められています。相続と譲渡を並べると次のようになります。

場面地主の承諾承諾料・名義書換料根拠
相続人が借地権を承継する不要法律上当然には生じない民法896条
遺産分割で相続人の1人が借地権を取得する不要法律上当然には生じない民法896条・909条(相続開始時にさかのぼる)
相続人が第三者へ建物ごと売る必要(不承諾なら裁判所の許可を申し立てる)裁判所が財産上の給付を命じることがある民法612条1項、借地借家法19条1項
相続人でない人への特定遺贈必要とされる(包括承継ではない)個別の合意による民法612条1項。包括遺贈は民法990条で相続人と同一の権利義務

表の最後の行が境界ケースです。相続人以外の人に「この借地権を遺贈する」という特定遺贈をした場合は、包括承継ではなく個別の権利の移転なので、譲渡と同じ扱いになるとされています(包括遺贈なら民法990条により包括受遺者は相続人と同一の権利義務を有します)。同じ「亡くなったことをきっかけとする移転」でも、受け取る人が相続人かどうかで結論が反転します。遺言で借地権を動かすときは、ここを外すと相続開始後に地主との交渉が必要になります。

この表の「法律上当然には生じない」は、条文が相続を理由とする金銭の支払を定めていないという意味です。契約書に相続時の名義書換料などの特約が置かれている場合、その条項が有効かどうかは契約の内容ごとの個別判断になるので、請求を受けたら契約書の該当条項を確認してください。

なお、承諾が要らないことと、地主に何も言わなくてよいことは別です。地代の請求先・振込先が変わるので、相続人が決まった段階で地主へ連絡し、契約書の控えと地代の支払方法を確認するのが実務の入口になります。地代の消費税の扱い(土地の貸付けは原則非課税で、駐車場など例外がある)は地代家賃とはで扱っています。

評価は自用地としての価額×借地権割合。記号A〜Gは路線価図に載っている

相続税の評価の出発点は相続税法22条です。

この章で特別の定めのあるものを除くほか、相続、遺贈又は贈与により取得した財産の価額は、当該財産の取得の時における時価により、当該財産の価額から控除すべき債務の金額は、その時の現況による。

この「時価」を土地の権利についてどう出すかを定めているのが財産評価基本通達で、借地権の本体は通達27です。

借地権の価額は、その借地権の目的となっている宅地の自用地としての価額に、当該価額に対する借地権の売買実例価額、精通者意見価格、地代の額等を基として評定した借地権の価額の割合(以下「借地権割合」という。)がおおむね同一と認められる地域ごとに国税局長の定める割合を乗じて計算した金額によって評価する。ただし、借地権の設定に際しその設定の対価として通常権利金その他の一時金を支払うなど借地権の取引慣行があると認められる地域以外の地域にある借地権の価額は評価しない。

この「国税局長の定める割合」が、路線価図に印刷されているA〜Gの記号です。国税庁「路線価図の説明」は、記号と割合の対応をこう説明しています。

記号ABCDEFG
借地権割合90%80%70%60%50%40%30%

路線価図の道路に「215D」と書いてあれば、1平方メートル当たりの路線価が215,000円(路線価は千円単位で表示)、借地権割合が60%という意味です。路線価が定められていない倍率地域では、評価倍率表の「借地権割合」欄を見ます。2つ以上の路線に面する場合や、路線価地域と倍率地域が接続する地域では、原則として正面路線価に表示された借地権割合によります。

実数で追います。国税庁「路線価図の説明」自身が載せている計算例は、普通商業・併用住宅地区で表記が「300C」、奥行距離35メートル、地積700平方メートルの土地です。

手順計算結果
1平方メートル当たりの価額路線価300,000円×奥行価格補正率0.97291,000円
自用地としての価額291,000円×700平方メートル203,700,000円
借地権の価額203,700,000円×借地権割合70%142,590,000円
地主側の貸宅地の価額203,700,000円−142,590,000円61,110,000円

もう1つ、住宅地の小さめの例を同じ手順で置きます。普通住宅地区・表記「200D」・奥行10メートル・地積150平方メートルとすると、国税庁の調整率表で普通住宅地区の奥行10メートル以上12メートル未満の奥行価格補正率は1.00なので、自用地としての価額は200,000円×1.00×150=3,000万円、借地権はその60%で1,800万円、地主側の貸宅地は1,200万円です。借地人側の相続では1,800万円が課税価格に入り、地主側の相続では1,200万円が入ります。同じ1つの土地を、借地人と地主で分け合って課税するのがこの制度の形です。

「評価額が出る」ことと「相続税がかかる」ことは別

借地権に1,800万円の評価がついても、それだけで相続税が出るわけではありません。相続税は課税価格の合計額が遺産に係る基礎控除額(3,000万円+600万円×法定相続人の数。相続税法15条1項)を超えた部分に対してかかります。相続人が2人なら基礎控除は4,200万円で、他に財産がなければ相続税は0円です。さらに各人の課税価格は1,000円未満、確定金額は100円未満を切り捨てます(国税通則法118条1項・119条1項)ので、境目ちょうどの帯では税額が残りません。基礎控除の全体像は相続税はいくらからで扱っています。

相続税 計算機で、借地権の評価額を財産に足したときに相続税が出るかを法定相続人の数から試算する

借地権の種類で式が変わる — 旧法・普通・定期の3系統

財産評価基本通達9は、土地の上に存する権利を10種類に分けて、それぞれ別に評価すると定めています。地上権・区分地上権・永小作権・区分地上権に準ずる地役権・借地権・定期借地権等・耕作権・温泉権・賃借権・占用権の10です。このうち5番目の「借地権」の定義には、はっきり除外が書かれています。借地借家法22条・23条・24条・25条に規定する借地権(=定期借地権等)は、5番目の借地権から外され、6番目の別項目になっています。通達27の「自用地としての価額×借地権割合」が使えるのは、この5番目に入る借地権だけです。国税庁タックスアンサーNo.4611も、借地権を5種類に分けたうえで、(1)を「借地権」、(2)から(5)を「定期借地権等」として評価すると整理しています。

種類根拠存続期間更新相続税評価
旧法借地権旧借地法(借地借家法附則2条2号で廃止・附則6条で更新は従前の例)旧法の定めによるあり自用地としての価額×借地権割合(通達27)
普通借地権借地借家法3条・4条30年。契約で長くできるあり。最初の更新は20年、以後10年自用地としての価額×借地権割合(通達27)
一般定期借地権借地借家法22条50年以上なし(特約は書面または電磁的記録)通達27-2の算式
事業用定期借地権等借地借家法23条1項・2項30年以上50年未満/10年以上30年未満なし(契約は公正証書)通達27-2の算式
建物譲渡特約付借地権借地借家法24条設定後30年以上を経過した日に建物を譲渡なし通達27-2の算式
一時使用目的の借地権借地借家法25条臨時設備の設置など一時使用が明らかな場合3条〜8条等が適用されない雑種地の賃借権に準じて評価(No.4611)

普通借地権の存続期間は、借地借家法3条が短く定めています。

借地権の存続期間は、三十年とする。ただし、契約でこれより長い期間を定めたときは、その期間とする。

更新後の期間は4条で、最初の更新は20年、以後は10年です。定期借地権との決定的な違いはここで、普通借地権は5条1項により、期間満了時に建物があって借地権者が更新を請求すれば、地主が遅滞なく異議を述べない限り同一条件で更新したものとみなされます。しかもその異議は6条により、正当の事由があると認められる場合でなければ述べられません。相続人にとっては「更新できる権利ごと引き継ぐ」ことになるので、残存期間が短くても価値が消えない——これが借地権に高い評価割合が付いている理由です。

定期借地権等の評価が別の算式になるのは、この「更新がない」という一点から来ています。通達27-2は、原則として課税時期において借地権者に帰属する経済的利益とその存続期間を基に評定すると定めたうえで、課税上弊害がない限り、自用地としての価額に次の数値を乗じてよいとしています。数値は2つの分数の積です。

分数1が「借主が最初にいくら得をしたか」、分数2が「その得の残りがどれだけあるか」です。定期借地権は期間が来れば必ず消えるので、残存期間が短くなるほど分数2が小さくなり、評価額が自動的に減っていきます。更新のある普通借地権が期間の経過で目減りしない(割合が一定)のと、まさに逆の作りです。経済的利益の総額は通達27-3が3つに分けて計算します——返還を要しない権利金・礼金等、基準年利率未満の利息しか付かない保証金等、実質的に贈与を受けたと認められる差額地代の3つです。

旧法借地権が今も残るのは、借地借家法附則6条があるから

現在の借地借家法は平成3年10月4日に公布され、翌平成4年8月に施行されました(国土交通省「定期借地権の解説」)。同法の附則2条は、廃止する法律として建物保護に関する法律・借地法・借家法の3つを挙げています。ところが、実務では今でも「旧法借地権」という言葉が生きています。廃止されたはずの旧借地法が効き続けるのは、附則の作りがそうなっているからです。

まず附則4条が経過措置の原則を置きます。

この法律の規定は、この附則に特別の定めがある場合を除き、この法律の施行前に生じた事項にも適用する。ただし、附則第二条の規定による廃止前の建物保護に関する法律、借地法及び借家法の規定により生じた効力を妨げない。

読み方は「新法を過去にも及ぼす。ただし附則に特別の定めがあるところは別」です。その「特別の定め」の中心が附則6条です。

この法律の施行前に設定された借地権に係る契約の更新に関しては、なお従前の例による。

更新は借地権の値打ちそのものです。存続期間・更新後の期間・更新拒絶の要件が旧法のままなら、その借地権は事実上ずっと旧法で動きます。だから平成4年8月より前に設定された借地権は、今も「旧法借地権」と呼ばれます。同じ趣旨の経過措置は他にもあり、附則5条は建物の朽廃による消滅、附則7条は建物の滅失後の再築による期間の延長、附則9条は建物買取請求権について、それぞれ従前の例によるか新法を適用しないと定めています。

「旧法か新法か」は相続税評価には響かない

紛らわしいのですが、旧法借地権と普通借地権はどちらも財産評価基本通達27の同じ式で評価します。通達9(5)が除外しているのは借地借家法22条〜25条の定期借地権等だけで、旧法か新法かは区別していません。旧法か新法かが効いてくるのは、更新できるか・更新後の期間が何年か・地主が更新を拒めるかという権利の中身の側です。相続税の申告書の数字は同じでも、その借地権をこれから何年使えるかが違います。

契約書が見つからない場合、建物の登記事項証明書の新築年月日が手がかりになります。建物が平成4年より前に建っていれば旧法借地権である可能性が高く、平成4年から5年ごろの新築は施行日をまたぐので契約日の確認が要ります。なお定期借地権は借地借家法が創設した制度なので、平成4年8月より前に設定された借地権に定期借地権はありません。

貸している側・貸家を建てた側は、借地権割合から先へもう1段引く

借地権をめぐる相続は、借地人側だけの話ではありません。地主が亡くなれば、その土地は貸宅地として相続財産になります。財産評価基本通達25(1)は、借地権の目的となっている宅地の価額を、自用地としての価額から通達27で評価した借地権の価額を控除した金額によって評価すると定めています。前の節の例なら、自用地2億370万円−借地権1億4,259万円=6,111万円が貸宅地の価額です。

ここに1つ、非対称があります。借地権の取引慣行がない地域では、通達27ただし書により借地人側の借地権は評価しません(0円)。ところが地主側は0円を引くのではなく、通達25(1)の括弧書きが「借地権割合を100分の20として計算した価額」を控除すると定めています。国税庁タックスアンサーNo.4613も同じことを書いています。つまり借地人は0、地主は20%減という食い違った扱いになり、1つの土地の合計が100%に届きません。慣行のない地域では借地権に取引価格が付かない一方、地主の側は現に自由に使えないという実態を、それぞれ別に写した結果です。

相続人が借地上にアパートを建てて貸していた場合は、借地権の価額からもう1段引きます。通達28(貸家建付借地権等の評価)の算式は、借地権の価額をAとして「A−(A×借家権割合×賃貸割合)」です。借家権割合は財産評価基準書で定められており、東京都の令和8年分は100分の30です(国税庁の確定申告書等作成コーナーの説明によれば、令和5年分は全ての都道府県で100分の30でした)。賃貸割合は貸家の各独立部分の床面積で測ります。

立場と使い方算式300Cの例(自用地2億370万円)根拠
借地人:自分で住む・自分の店自用地としての価額×借地権割合142,590,000円通達27
借地人:借地上に貸家(満室)借地権の価額×(1−30%×100%)99,813,000円通達28
借地人:借地上に貸家(賃貸割合60%)借地権の価額×(1−30%×60%)116,923,800円通達28
地主:貸宅地自用地としての価額−借地権の価額61,110,000円通達25(1)
地主:借地権の慣行がない地域(同じ自用地価額で置いた場合)自用地としての価額×(1−20%)162,960,000円通達25(1)括弧書き

地主側にはもう2つ、押さえておく形があります。1つは相当の地代です。昭和60年6月5日付直資2-58は、権利金の支払に代えて自用地としての価額のおおむね年6%程度の地代を支払っている場合、借地権者に借地権の設定による利益はないものとして取り扱い、この場合の借地権の価額を零、貸宅地の価額を自用地としての価額の100分の80とすると定めています。もう1つは「土地の無償返還に関する届出書」で、これが提出されている場合も借地権は零、貸宅地は自用地としての価額の100分の80です。同族会社に土地を貸している経営者の相続では、この届出書が出ているかどうかで評価額が大きく動くので、法人側の申告書と一緒に確認します。事業譲渡で事業用の借地権を動かすときも、この届出の有無が前提になります。

定期借地権等の目的となっている宅地(底地)には、下限の定めがあります。通達25(2)は、通達27-2で評価した定期借地権等の価額が、その宅地の自用地としての価額に残存期間に応じた次の割合を乗じた金額を下回る場合には、自用地としての価額からその割合を乗じた金額を控除した金額で評価すると定めています。残存期間5年以下は100分の5、5年超10年以下は100分の10、10年超15年以下は100分の15、15年超は100分の20です。さらに一般定期借地権(借地借家法22条)については、平成10年課評2-8により当分の間の特別な扱いがあり、設定時の底地割合を借地権割合の地域区分に応じてC地域55%・D地域60%・E地域65%・F地域70%・G地域75%と定めています。A地域・B地域と借地権の取引慣行のない地域はこの扱いによらず通達25(2)で評価します。

使用貸借の借地は評価しない。だから地主側の評価も下がらない

親名義の土地に子が家を建てて、地代を払っていない——この形は借地権ではありません。民法593条の使用貸借だからです。相続税・贈与税の扱いは、昭和48年11月1日付直資2-189(令和8年8月31日課資2-14による一部改正後)が定めています。同通達の1は次のとおりです。

建物又は構築物(以下「建物等」という。)の所有を目的として使用貸借による土地の借受けがあった場合においては、借地権(建物等の所有を目的とする地上権又は賃借権をいう。以下同じ。)の設定に際し、その設定の対価として通常権利金その他の一時金(以下「権利金」という。)を支払う取引上の慣行がある地域(以下「借地権の慣行のある地域」という。)においても、当該土地の使用貸借に係る使用権の価額は、零として取り扱う。

読みどころは「借地権の慣行のある地域においても」です。都心のように権利金の慣行がしっかりある地域でも、使用貸借なら使用権の価額は零です。同じ通達は、使用貸借かどうかの線も引いています。土地の公租公課に相当する金額以下の金額の授受があるにすぎないものは使用貸借に該当し、地代の授受がないものであっても権利金その他地代に代わるべき経済的利益の授受があるものは使用貸借に該当しない、という線引きです。固定資産税の実額だけを子が負担している形は使用貸借の側、というのが判定の目安になります。

そして重要なのは、この扱いが地主側の相続にも跳ね返ることです。同通達の3は、使用貸借に係る土地を相続により取得した場合の課税価格に算入すべき価額は、その土地の上に存する建物等の自用・貸付けの区分にかかわらず、すべてその土地が自用のものであるとした場合の価額とすると定めています。つまり親の相続では、子が家を建てて住んでいても、その土地は貸宅地として2割・3割減額されず、自用地としての価額そのままで課税価格に入ります。

「地代を取らない方が節税になる」は逆

子から地代を取らなければ贈与にならなくて安心、という発想は、地主側の相続税では不利に働きます。使用貸借の土地は自用地評価だからです。一方で、権利金の慣行のある地域で権利金なし・通常の地代を取ると、借地権相当額の贈与として扱われる場合があります(昭60直資2-58の2の注)。この間を通す実務上の道具が相当の地代(年6%程度)と「土地の無償返還に関する届出書」で、どちらも借地権を零に、貸宅地を80%にします。個人間か法人が絡むかで結論が変わる領域なので、実際の設定は税理士に確認してください。

借地権を持つ人(借地権者)から、その借地の全部または一部を使用貸借で借りて建物を建てた場合も同じで、通達の2が借地権の使用貸借に係る使用権の価額を零として取り扱うと定めています。この場合は、使用貸借であることについて借受者・借地権者・土地の所有者に事実を確認することとされ、「借地権の使用貸借に関する確認書」という様式が用意されています。確認の結果、使用貸借でないと判断されれば借地権または転借権の贈与として贈与税の課税関係が生じ得る、とも書かれています。

小規模宅地等の特例は「土地の上に存する権利」にも使える

借地権を相続したときに見落とされやすいのが、小規模宅地等の特例です。租税特別措置法69条の4第1項は、対象を「宅地等」と書いたうえで、括弧の中でその意味を「土地又は土地の上に存する権利をいう」と定義しています。借地権は財産評価基本通達9が数える「土地の上に存する権利」の1つなので、要件を満たせば特例の対象になります。所有権の土地でなければ使えない、というものではありません。なお、借地の上に建てた建物で事業を続ける同族会社の株式を承継する場面では、株式の側で事業承継税制の特例措置を使えることがあります。土地の評価を下げる小規模宅地等の特例とは別の制度で、特例承継計画の提出期限が決まっています。

区分限度面積課税価格に算入する割合借地権での典型例
特定居住用宅地等330平方メートル20%(80%減)借地上の自宅を配偶者や同居の子が取得する
特定事業用宅地等400平方メートル20%(80%減)借地上の店舗で子が事業を引き継ぐ
貸付事業用宅地等200平方メートル50%(50%減)借地上のアパート(貸家建付借地権)を引き継ぐ

先ほどの住宅地の例(借地権1,800万円・150平方メートル)で、同居の子が自宅の借地権を取得し特定居住用宅地等の要件を満たすなら、330平方メートルの枠に収まるので課税価格に入るのは1,800万円×20%=360万円です。1,440万円が落ちる計算になります。ただしこの特例には期限の壁があります。措置法69条の4第4項は、申告期限までに分割されていない特例対象宅地等には適用しないと定めており、第7項は申告書に適用を受けようとする旨を記載し明細書等を添付した場合に限り適用すると定めています。相続税が0円になる場合でも、この特例を使うなら申告書の提出が要る——ここを落とすと特例そのものが使えません。未分割のまま申告期限を迎えるときは、申告期限から3年以内に分割された場合の救済(同項ただし書)があるので、期限内に所定の書類を出しておきます。

小規模宅地等の特例 計算機で、借地権の評価額と面積から減額後の課税価格と併用の限度面積を確かめる

遺産分割が終わるまで、地代は相続人全員の負担になる

借地権は、亡くなった瞬間に誰か1人のものになるわけではありません。民法898条1項は、相続人が数人あるときは相続財産はその共有に属すると定めています。分割が終わるまで、借地権も地代を払う義務も相続人全員に係っているという状態です。そして民法909条本文は、遺産の分割は相続開始の時にさかのぼってその効力を生ずると定めています。分割が決まれば、借地権は最初からその相続人のものだったことになります。

この2つの条文の間に、実務上の空白があります。分割が決まるまでの数か月から数年、地代の支払は止められないという点です。地代を滞納すれば債務不履行になり、借地契約そのものを解除される危険があります。せっかく評価額の付いた借地権を、分割の話し合いをしている間に失うのが最悪の結末です。実務では相続人の代表者がいったん立て替えて払い、分割の際に精算する形をとることが多く、遺産分割協議書にその精算方法を書いておくと後で揉めません。遺産分割協議書に期限はあるかで、10か月・3年・10年という3つの時計を整理しています。

分割の話し合いを始める前に必要なのが、相続人の確定です。借地権のように地主という相手方がいる財産は、誰が承継したかを示す書類を求められる場面が出てきます。法務局が発行する法定相続情報一覧図は戸籍の束の代わりに使えて便利ですが、続柄の書き方で相続税申告に使えなくなる落とし穴があります。

もう1つ、借地権を相続すると地代という定期的な支出も引き継ぐことを見落とさないでください。建物が古く借地権の価値より地代負担の方が重いなら、相続放棄も選択肢になります。民法915条1項は、自己のために相続の開始があったことを知った時から3か月以内に、承認または放棄をしなければならないと定めています。放棄は借地権だけを選んで捨てることはできず、プラスの財産も含めて全部を放棄する点に注意が必要です。判断材料は相続放棄にまとめています。

相続後に走り出す4つの時計 — 3か月・4か月・10か月・3年

借地権を相続したときに動き出す期限は4つです。起算点がそれぞれ違うので、条文どおりに並べます。

相続開始 3か月 4か月 10か月 3年 相続の承認・放棄(民法915条1項) 起算点は「自己のために相続の開始があったことを知った時」 準確定申告(所得税法125条1項) 知った日の翌日から4か月を経過した日の前日まで 相続税の申告と納付(相続税法27条1項) 知った日の翌日から10か月以内。小規模宅地等の特例もここまで 建物の相続登記(不動産登記法76条の2第1項・3年以内)
4つとも起算点が「相続の開始があったことを知った」時点で、亡くなった日ではありません。3か月だけが「知った時から」、4か月と10か月は「知った日の翌日から」と条文の書き方が違います。相続登記の3年は所有権の取得を知った日からです。

3か月(民法915条1項)は相続の承認または放棄です。「自己のために相続の開始があったことを知った時から」が起算点で、亡くなった日ではありません。同項ただし書により、利害関係人または検察官の請求で家庭裁判所が伸長することができます。

4か月(所得税法125条1項)は準確定申告です。条文は「その相続の開始があつたことを知つた日の翌日から四月を経過した日の前日」までと書いています(前日の後ろに、出国する場合の括弧書きが続きます)。被相続人が借地上のアパートで不動産所得を得ていた場合など、確定申告が必要だった人の分を相続人が申告します。

10か月(相続税法27条1項)は相続税の申告と納付です。こちらも「その相続の開始があつたことを知つた日の翌日から十月以内」で、課税価格の合計額が遺産に係る基礎控除額を超える場合は原則として申告が必要です。ここで基礎控除と比べる金額は、国税庁タックスアンサーNo.4205の注2により、小規模宅地等の特例(租税特別措置法69条の4)などを適用しない場合の課税価格の合計額です。そして27条1項が税額の計算根拠として列挙しているのは「第十五条から第十九条まで、第十九条の三から第二十条の二まで及び第二十一条の十四から第二十一条の十八まで」で、配偶者に対する相続税額の軽減(19条の2)はこの列挙に入っていません。小規模宅地等の特例や配偶者の税額軽減を使った結果として納付額が0円になる場合でも、この期限までに申告書を出す必要があります。「納める税金が0円だから申告も要らない」と読むと、特例そのものを落とします。

3年(不動産登記法76条の2第1項)は建物の相続登記です。借地権そのものではなく、借地の上に建っている建物の話です。

所有権の登記名義人について相続の開始があったときは、当該相続により所有権を取得した者は、自己のために相続の開始があったことを知り、かつ、当該所有権を取得したことを知った日から三年以内に、所有権の移転の登記を申請しなければならない。遺贈(相続人に対する遺贈に限る。)により所有権を取得した者も、同様とする。

正当な理由がないのに怠ると、同法164条1項により10万円以下の過料の対象になります。分割がまとまらないときは、76条の3第1項の「相続人である旨の申出」(相続人申告登記)をしておけば、同条2項により3年以内の登記義務を履行したものとみなされます。ただし同条4項により、その後の遺産分割で所有権を取得したときは分割の日から3年以内に登記が必要です。

ここで、借地権の実務上いちばん大事な一段です。この登記義務が課されているのは「所有権の登記名義人」についてであって、賃借権としての借地権には及びません。それでも建物の登記を放置してはいけない理由が別にあります。借地借家法10条1項が「借地権は、その登記がなくても、土地の上に借地権者が登記されている建物を所有するときは、これをもって第三者に対抗することができる」と定めているからです。借地権の対抗要件は、土地の借地権登記ではなく、借地上の建物の登記です。相続で建物の名義が亡くなった人のままだと、地主が土地を第三者に売ったときに、借地権を主張する足場が弱くなります。相続登記の費用感(固定資産税評価額×0.4%の登録免許税)は相続登記の登録免許税 計算機で試算できます。

なお、借地権が賃借権ではなく地上権として登記されている場合、その地上権の移転登記は76条の2の義務の対象ではありません。同条が名指ししているのは所有権の登記名義人だからです。ただし地上権は登記が対抗要件なので、義務がないことと、しなくてよいことは違います。建物の相続登記と一緒に申請するのが実務です。

よくある質問

Q. 借地権を相続するのに地主の承諾は要りますか?

A. 要りません。相続は民法896条の包括承継で、借地権はそのまま相続人に移ります。地主の承諾が要るのは民法612条1項の譲渡・転貸で、相続はこれに当たりません。承諾料や名義書換料も、相続そのものを理由に法律上当然に支払義務が生じるものではありません。ただし契約書に相続時の定めがある場合は、その条項を別途確認してください。地代の振込先を確かめる意味でも、地主への連絡は実務の入口になります。

Q. 借地権の相続税評価はどう計算しますか?

A. 財産評価基本通達27により、自用地としての価額に借地権割合を掛けます。借地権割合は路線価地域なら路線価図のA〜Gの記号で、Aが90パーセント、Gが30パーセントです。倍率地域では評価倍率表の借地権割合欄を見ます。定期借地権等は通達27-2の別の算式で計算します。

Q. 借地権があると必ず相続税がかかりますか?

A. かかるとは限りません。相続税は課税価格の合計額が遺産に係る基礎控除額(3,000万円+600万円×法定相続人の数、相続税法15条1項)を超えたときに出ます。この判定に使う金額は、国税庁タックスアンサーNo.4205の注2により小規模宅地等の特例などを適用しない場合の課税価格の合計額です。借地権の評価額を含めてもこれが基礎控除以下なら、相続税は0円で申告も要りません。逆に基礎控除を超えるなら、小規模宅地等の特例や配偶者の税額軽減で納付額が0円になる場合でも申告が必要です。

Q. 親の土地に子が家を建てて地代を払っていない場合はどう評価しますか?

A. 使用貸借なので借地権は評価しません。昭和48年11月1日付直資2-189は、使用貸借に係る使用権の価額を零として取り扱うと定めています。この場合の土地は貸宅地ではなく自用地としての価額で評価するので、地主側の相続では評価額が下がりません。固定資産税相当額以下の授受は使用貸借に含まれます。

Q. 旧法借地権と普通借地権はどちらで評価しますか?

A. どちらも財産評価基本通達27の「自用地としての価額×借地権割合」で評価します。式が変わるのは借地借家法22条から25条までの定期借地権等で、こちらは通達27-2の算式によります。旧法か普通かの違いは評価額ではなく、更新や存続期間といった権利の中身に出ます。

Q. 借地の上の建物を相続したら登記は必要ですか?

A. 建物は所有権なので、不動産登記法76条の2第1項により、相続の開始と所有権の取得を知った日から3年以内の相続登記が義務です。正当な理由なく怠ると同法164条1項で10万円以下の過料の対象になります。借地権が賃借権で登記されていない場合、その賃借権自体にはこの義務はありませんが、建物の登記が借地権の対抗要件になります(借地借家法10条1項)。

Q. 遺産分割が終わるまで地代は誰が払いますか?

A. 分割が終わるまで借地権は相続人全員の共有です(民法898条1項)。地代の支払が止まると債務不履行で契約を解除される危険があるので、実務では代表者がいったん払い、分割の際に精算する形をとることが多いです。遺産の分割は相続開始の時にさかのぼって効力を生じます(民法909条本文)。

出典

本記事は一般的な情報提供を目的としたものです。個別の判断は税務署・税理士にご確認ください。

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