転職したら確定申告は必要?源泉徴収票の合算例と判定表
前職分を含めて年末調整が済み、別に申告が必要な事情がなければ、転職だけを理由とする確定申告は不要です。まず転職先に、前職の給与まで含めて精算したかを確認します。
前職の源泉徴収票を出せず年末調整ができなかった人は、確定申告で税額を精算します。年内に再就職しなかった人も、年末調整未済で給与の源泉徴収税額に納め過ぎがあれば、還付申告で取り戻せます。
この記事は国内で転職した居住者の給与を中心に、本人が申告する際の確認順を示します。年末調整を受けていないことと、納税の申告義務があることは別です。
転職した年の申告・還付の確認表
給与所得のある居住者の納税申告の要否は、所得・控除・源泉徴収税額と申告不要制度で決まります。下表の「還付を確認」は、申告義務がない人でも納め過ぎを取り戻せる場合を示します。
| 状況 | 確認すること | 申告との関係 |
|---|---|---|
| 前職分を含む年末調整が済み、別の申告事由がない | 転職先の源泉徴収票で前職の通算を確認 | 転職だけなら申告不要 |
| 前職の源泉徴収票を出せず、年末調整ができなかった | 前職・現職の給与票を用意 | 確定申告で精算。納税義務と還付は別に判定 |
| 年内に再就職せず、年末調整も未済 | 給与の源泉徴収税額が年税額を上回るか確認 | 納め過ぎがあれば還付を確認 |
| 退職と再就職の間に無職期間があった | 年末調整の実施と、保険料の控除漏れを確認 | 無職期間だけでは要否・還付は決まらない |
| 給与以外の所得や、年末調整に含まれない給与がある | 所得の種類・金額と申告不要制度の条件を確認 | 年末調整済みでも別に申告が必要な場合がある |
根拠は国税庁の中途就職者の年末調整、中途退職で年末調整を受けていないときです。
年末調整済みでも別の申告事由は残る
給与の年間収入が申告不要制度の上限を超える場合、申告要件を別に確認します。年末調整されなかった給与や副業の所得がある場合なども同様です。副業や別の給与があるだけで、一律に申告義務が生じるわけではありません。
主な確認先は国税庁「給与所得者で確定申告が必要な人」です。給与以外の所得の範囲や、少額・低収入の場合の申告不要の条件、還付となる人を除く扱いも載っています。
金額による判定は確定申告はいくらから必要かで確認できます。医療費控除などを追加して給与の源泉税の還付を受ける場合は、年末調整済みでも申告できます。
前職分を年末調整に含めたか確かめる
転職先へ書類を渡したかだけでなく、前職分を含む年末調整が完了したかを確かめます。給与担当者には「前職分の給与・税額・社会保険料を含めた年末調整が済んでいますか」と聞くと、確認する範囲が明確になります。
転職先で年末調整の対象となる人は、前職に扶養控除等申告書を出して受けたその年の給与を、源泉徴収票などで確かめて年末調整に含めます。年末調整の対象とならない区分は除きます。
その前職給与・税額等を確認できないときは、会社で年末調整を行えず、本人が確定申告で精算する扱いです。「前職の票がないから現職分だけを精算すればよい」とは扱いません。
根拠は国税庁の中途就職者の案内と、「年末調整のしかた」の中途再就職者の取扱いです。会社側の集計や対象区分の詳説は中途入社者の年末調整で確認できます。
手元の票は、枚数より「通算済みか」を見る
前職分を通算して年末調整した転職先の源泉徴収票では、「支払金額」に前職の給与も含まれます。摘要にある前職の会社名・給与・徴収税額・社会保険料の記載と照らし、不明なら転職先に確認してください。
給与所得の源泉徴収票を申告に使う前の確認表です。同じ給与を重ねて入力しないために、前職分の通算の有無を先に確かめます。
| 手元の票の状態 | 入力前の扱い |
|---|---|
| 前職分を通算した年末調整済みの転職先の票 | 通算済みの票を使い、その前職票の金額を重ねて足さない |
| 前職・現職とも年末調整未済で、現職票に前職分を含まない | 票ごとに入力し、項目別合計を照合 |
| 前職を含むか分からない、または記載が食い違う | 給与担当者に通算範囲を確認 |
この見方は国税庁「給与所得の源泉徴収票」の支払金額・摘要の記載要領によります。退職金の「退職所得の源泉徴収票」は給与の票と分けて扱います。
票を紛失した人や前職から受け取っていない人は、まず前職へ交付・再交付を確認します。進め方は源泉徴収票の再発行・不交付時の対応で整理しています。
源泉徴収票を合算する具体例
合算するのは、同じ年分の給与票の同じ項目です。銀行口座に振り込まれた手取りではなく、「支払金額」を給与収入として確認します。
令和8年分の同一人の架空例です。両社とも年末調整未済で、現職票に前職分を含まない仮定とします。未払給与・現物給与・小規模企業共済等掛金の内書はなく、保険料欄は給与から差し引かれた社会保険料だけです。
| 仮定の項目 | 前職の票 | 現職の票 | 合計 |
|---|---|---|---|
| 支払金額 | 1,200,000円 | 1,800,000円 | 3,000,000円 |
| 社会保険料等の金額 | 180,000円 | 270,000円 | 450,000円 |
| 源泉徴収税額 | 24,000円 | 36,000円 | 60,000円 |
この設例は項目別の集計です。給与所得控除や基礎控除を適用した年税額、還付額を計算した表ではありません。税額は申告する年分の所得・控除を入力して求めます。
申告画面では、この表の合計を架空の勤務先の票として入力せず、前職・現職それぞれの源泉徴収票を入力します。入力後に表示される給与収入などと、手元の項目別集計を突き合わせます。
前職を通算済みの転職先の票を使う人には、この足し算は当てはまりません。前職の票をさらに加えると、給与や徴収税額を重ねて数えてしまいます。
申告書へ入力する順序
前職と現職を分けて資料をそろえ、給与の入力後に控除を確認します。国税庁給与所得の入力案内では、マイナポータル連携をしない手入力で、年末調整未済の票が複数ある場合は「もう1件入力する」で追加します。
- 申告する年分の給与所得の源泉徴収票を集め、支払者と前職分の通算の有無を確認する。
- 対象年分の作成画面で、年末調整済み・未済の区分に沿って給与票を入力する。連携で取得済みの票を重ねて手入力しない。
- 給与収入・源泉徴収税額などを、手元の票の集計と照合する。退職金の票は給与として足さない。
- 給与以外の所得と、社会保険料などの控除の資料を確認して入力する。
- 表示された還付・納付の内容を確認して提出する。納付がある場合は、納付手続も行う。
画面の配置や名称は対象年分の案内に従ってください。本人確認から提出・受付確認までの全体は確定申告のやり方、給与票の各欄は源泉徴収票の見方に分けています。
離職中に払った保険料を確認する
離職中に本人がその年中に実際に支払った、本人負担の国民年金・国民健康保険料も、社会保険料控除の対象です。ただし、年末調整に反映済みの額を申告で重ねて追加しません。
給与票に載っている分と、本人が別に払った未反映分を分けて整理します。未払い・免除された分や、家族が払った保険料を本人の支払額として加えないようにします。
前納分は控除する年分の配分も確認が必要です。対象と証明書類の扱いは国税庁「社会保険料控除」、年末調整での反映や前納の説明は社会保険料控除の解説で確認できます。
年内に再就職しなかった場合の所得・還付・住民税の確認は無職の人の確定申告へ、転職時の加入区分や事業所変更の手続はiDeCoの転職時の届出へ進んでください。
還付される条件と申告時期
給与から引かれた源泉徴収税額などの既納税額が、申告で求めた年税額を上回れば、その納め過ぎが還付されます。所得控除の額や、支払った保険料そのものが返るわけではありません。
源泉徴収も予定納税もない人には、所得税の還付はありません。
申告義務のない人の未申告年分の還付申告は、対象年の翌年1月1日から5年間提出できます(期限内提出が要件の特例を除く)。
根拠は国税庁「還付申告」です。既に申告した年分を直す場合は別の手続となります。納税の申告義務がある人の提出・納付期限と、土日祝などの扱いは確定申告の期限を確認してください。
提出前の確認
- 前職分を含む年末調整が済んだか確認し、別の申告事由がなければ転職だけで申告は不要と判断する。
- 本人が申告する場合は、給与票の通算範囲を確かめ、同じ給与・税額・保険料を重ねて入力しない。
- 年末調整未済で給与の源泉税に納め過ぎがある人は、還付申告を確認する。
計算機の対応年分・対象範囲を確認して使います。申告書の作成・提出は国税庁の作成画面で行います。
よくある質問
転職先で年末調整をしたら、確定申告は不要ですか?
前職分を含めて年末調整が済み、ほかに申告が必要な事情がなければ、転職だけで申告は不要です。現職の給与だけを精算したと思われる場合は、前職分の扱いを給与担当者に確認してください。
前職の源泉徴収票を提出できませんでした。どうなりますか?
年末調整に含めるべき前職の給与・税額等を確認できないときは、会社で年末調整を行えず、本人が確定申告で精算します。前職・現職の票をそろえ、納税申告が必要か、納め過ぎを取り戻す還付申告かを確認します。
転職までに無職期間があると、税金は戻りますか?
無職期間があるだけでは決まりません。前職分を含む年末調整が済んでいれば、その給与の過不足は精算されています。年末調整未済で給与の源泉税が年税額を上回る人は、確定申告で納め過ぎの還付を受けられます。
源泉徴収票が複数あれば、全部の金額を足しますか?
前職分を通算した年末調整済みの転職先の票には、前職給与も含まれるため、その前職票をさらに足しません。前職分を含まない別々の票なら、同じ年分の給与票をそれぞれ入力して項目別の合計を確認します。
出典
給与の年末調整と申告は、国税庁の案内および所得税法の申告不要制度、還付申告の規定を参照しています。
- 国税庁「中途就職者の年末調整」
- 国税庁「中途退職で年末調整を受けていないとき」
- 国税庁「給与所得者で確定申告が必要な人」
- 国税庁「確定申告」
- 国税庁「還付申告」
- 国税庁「社会保険料控除」
- 国税庁「令和8年分 年末調整のしかた」
- 国税庁「令和8年分 給与所得の源泉徴収票等の法定調書の作成と提出の手引」給与所得の源泉徴収票
- 国税庁 e-Tax「給与所得の入力(マイナポータル連携をしない方)」
- e-Gov法令検索「所得税法」年末調整の規定
本記事は一般的な情報提供を目的としたものです。個別の税務・労務相談には応じられません。個別の判断は税務署・税理士にご確認ください。