当座預金とは?普通預金との違い・当座借越の仕訳と残高調整
当座預金は、小切手・手形などの事業決済に使う、利息の付かない預金です。会計では資産の「当座預金」で記帳します。契約に基づく当座借越があれば、その借入部分を負債として区別します。
経理で迷いやすいのは、口座の名前よりも残高の扱いです。小切手を渡して帳簿を減らしても、銀行での引落しが済むまでは残高がずれます。以下では、預金の比較表、借越の仕訳、銀行勘定調整表の順に確認できます。
当座預金と普通預金の違い
当座預金は事業の支払い、普通預金は日々の入出金に使われます。ただし、利息が付かず全額保護される預金は、当座預金だけではありません。無利息型の普通預金も、決済用預金に該当する商品があります。
預金保険の支払対象となる円預金の比較です。無利息型普通預金は、要求払いで決済サービスを提供する商品を指します。個別の取扱いは各行の商品説明書・預金規定で確認してください。
| 比較項目 | 当座預金 | 利息付き普通預金 | 無利息型普通預金 |
|---|---|---|---|
| 主な用途 | 事業決済。小切手・手形の取扱いは各行に確認 | 日常の入出金・振込・口座振替 | 日常の入出金・振込・口座振替 |
| 預金の利息 | 付かない | 商品所定の利息が付く | 付かない |
| 預金保険の区分 | 決済用預金として全額保護 | 一般預金等として限度のある保護 | 決済用預金として全額保護 |
| 残高管理で見るもの | 銀行の明細と帳簿、未決済の小切手等 | 銀行の明細と帳簿 | 銀行の明細と帳簿 |
通帳・照合表・キャッシュカード・ATMの対応は、口座の商品性や銀行によって異なります。「当座預金なら現金を出せない」と決めつけず、使う口座の払戻方法と残高の確認方法を確かめます。
口座開設と当座借越契約も別です。口座があるだけで、残高不足の支払いを銀行が立て替えるわけではありません。新規開設、小切手・手形用紙の発行、既存用紙の取扱いは、申込み前に取引銀行へ確認してください。
全額保護される条件
預金保険の支払対象となる決済用預金は、金融機関の破綻時も全額保護されます。決済用預金は、無利息・要求払い・決済サービスを提供できることの全要件を満たす預金です(外貨預金その他政令で定める預金を除く)。要求払いとは、預金者がいつでも払戻しを請求できることです。
この要件は預金保険法の決済用預金の規定、支払対象と保険金額は同法の保険金額の規定で確認できます。単に利息が付かないだけで、どの預金も全額保護になるわけではありません。
一般預金等の保護は、支払対象の預金を預金者1人当たり1金融機関ごとに合算し、元本1,000万円までと、その元本に対応する破綻日までの利息等が対象です(合併等の特例を除く)。
保護の対象外となる外貨預金や他人名義の預金等に、上の説明は当てはまりません。無利息型普通預金を含め、利用中の商品が決済用預金に該当するかは金融機関に確認します。制度の説明は金融庁「預金保険制度」にあります。
当座預金の基本仕訳
当座預金の入金は借方、出金は貸方に記録します。小切手での支払いを交付時に記帳する方法では、銀行からの引落日を待たずに当座預金を減らします。
以下は一般的な簿記の科目の対応です。小切手は取引先への交付時に出金記帳する方法を用い、入金は銀行で入金処理されたものとします。
| 取引 | 借方 | 貸方 |
|---|---|---|
| 自社の普通預金から当座へ資金を移す | 当座預金 | 普通預金 |
| 売掛金が当座へ振り込まれた | 当座預金 | 売掛金 |
| 買掛金の支払用小切手を取引先へ渡した | 買掛金 | 当座預金 |
| 銀行の手数料が当座から引き落とされた | 支払手数料 | 当座預金 |
自社口座間の移動を売上として入力すると、実際には発生していない収益が計上されます。また、小切手の交付時に記帳した支払いを、銀行明細の取込み時にも記帳すると二重になります。明細と既存仕訳を結び付け、未決済分を管理します。
小切手の書き方・線引・呈示期間は小切手の記事、手形と電子記録債権の違いは手形の記事で確認できます。
当座借越の仕訳と期末振替
当座借越は預金ではなく、銀行からの借入れです。銀行が、あらかじめ契約した利用枠の範囲で不足資金を融資します。借入利息や返済条件は契約に従います。
期中に借越も当座預金で記帳する方法では、決算で残高差異を調べます。実際の借越に当たる期末貸方残高は、当座借越や借入金の勘定へ振り替えます。
架空の設例です。預金残高200,000円の口座で、契約済みの当座借越枠を使い、銀行が買掛金500,000円を決済済みとします。利息・手数料は省略します。設例の期末貸方残高300,000円は全額が当座借越です。期中は借越も当座預金勘定で処理し、翌期も同じ記帳方法を続けます。
| 時点 | 借方 | 貸方 |
|---|---|---|
| 買掛金を決済した期中 | 買掛金 500,000円 | 当座預金 500,000円 |
| 期末に借越を負債へ振替 | 当座預金 300,000円 | 当座借越 300,000円 |
| 翌期首に再振替 | 当座借越 300,000円 | 当座預金 300,000円 |
期首の再振替は、返済や新たな借入れではありません。期中に当座預金勘定で記帳する方法へ戻す仕訳です。期中から借越を別の負債勘定で管理する方法もあるため、自社の記帳方法と合わせます。
期末の貸借対照表では、預金資産と他行の借越負債を相殺せずに表示します。短期借入金等への区分は、契約上の返済期限などを確認して行います。当座預金という科目を使っていても、借入れを資産のマイナスに埋めないことが要点です。
期末振替と期首再振替は日本商工会議所「商工会議所簿記検定試験出題区分表の改定等について」の仕訳例にあります。資産・負債の総額表示は企業会計原則の貸借対照表原則を参照してください。
銀行勘定調整表の作り方
銀行勘定調整表は、帳簿と銀行の残高の差を、理由ごとに説明する表です。差額をそのまま雑損失にせず、会社の記帳漏れなのか、銀行で未反映の取引なのかを分けます。
未取付と未渡で修正の要否が変わる
小切手は取引先へ渡した時点で会社が出金記帳する方法です。銀行側の調整は調整表上の計算であり、銀行の元帳を会社が書き換えるという意味ではありません。
| 差異の原因 | 状態 | 調整と会社の仕訳 |
|---|---|---|
| 未取付小切手 | 交付・出金記帳済みだが、銀行では未決済 | 銀行残高から控除。会社の修正仕訳は不要 |
| 時間外預入 | 会社で入金記帳済み、銀行では未反映 | 銀行残高へ加算。会社の記帳が正しければ修正不要 |
| 入金・引落しの未通知 | 銀行で処理済み、会社では未記帳 | 会社の入出金を記帳する |
| 未渡小切手 | 出金記帳したが、相手に渡さず手元にある | 会社の出金を戻す。買掛金支払用なら当座預金/買掛金 |
| 会社の誤記 | 金額・口座・借方貸方等を誤って記帳 | 誤りの内容に応じ会社側で訂正 |
| 銀行の誤記が疑われる取引 | 会社の証憑と銀行の記録が合わない | 銀行に照会し、処理結果を確かめる |
未渡小切手でも、費用を直接計上した支払いなら、費用を消さず未払金を計上します。時間外預入や未取付小切手は、後日の入金反映・決済も確認します。調整表に載せただけで、銀行で使える資金が増えるわけではありません。
同じ残高にそろえる数値例
同一期末・同一口座を照合する架空の設例です。金額は円、手数料は税込経理で、消費税区分を省略します。未渡は買掛金支払用で出金記帳済み・未交付です。未取付と時間外預入は会社記帳済み・銀行未反映、回収と手数料は会社未記帳です。
| 区分 | 調整内容 | 金額 |
|---|---|---|
| 会社側・開始 | 修正前の帳簿残高 | 800,000円 |
| 会社側・加算 | 銀行入金済みの売掛金回収を記帳 | +100,000円 |
| 会社側・減算 | 銀行引落済みの手数料を記帳 | −2,000円 |
| 会社側・加算 | 買掛金支払用の未渡小切手を戻す | +50,000円 |
| 会社側・調整後 | 修正後の帳簿残高 | 948,000円 |
| 銀行側・開始 | 残高証明書の残高 | 1,068,000円 |
| 銀行側・減算 | 未取付小切手を控除 | −150,000円 |
| 銀行側・加算 | 時間外預入を加算 | +30,000円 |
| 銀行側・調整後 | 会社側と一致 | 948,000円 |
この設例で会社が記帳するのは、売掛金回収、手数料、未渡小切手の戻しです。未取付小切手と時間外預入を会社側にも加減すると、記帳済みの取引を二重に直してしまいます。
上の架空設例に対応する会社の修正仕訳です。未渡は買掛金の支払用、手数料は税込経理で、消費税区分を省略しています。
| 内容 | 借方 | 貸方 |
|---|---|---|
| 未通知の回収 | 当座預金 100,000円 | 売掛金 100,000円 |
| 未記帳の手数料 | 支払手数料 2,000円 | 当座預金 2,000円 |
| 買掛金支払用の未渡小切手 | 当座預金 50,000円 | 買掛金 50,000円 |
未取付と未渡の区別、会社の修正仕訳、調整表の作表方法は、千葉商科大学・増岡研究室「現金預金取引」にも整理されています。
月末に残す確認記録
残高が一致したら、調整項目の根拠と後日の処理をたどれるようにします。社内の確認用には、調整表の明細に次の項目を残す形が使えます。
- 照合の基準:口座名、銀行の残高証明日、帳簿の対象日、照合に用いた明細。
- 差異の明細:取引日、小切手番号、相手先、内容、金額、会社と銀行のどちらが未反映か。
- 処理の結末:修正仕訳の番号、銀行への照会結果、後日の入金・決済確認日、確認者。
翌月も残る項目は、前月の調整表から引き継いで追います。単に残高を合わせるのではなく、未決済の理由を説明できる状態にしておくためです。取引の根拠となる書類の整理は証憑の記事、預金や借入金の表示は貸借対照表の見方も参照してください。
口座の種類と契約を確認し、銀行明細と帳簿を照合します。期中に当座預金で記帳した借越は、記帳漏れ等を直した後、期末に残る実際の借入部分を負債へ振り替えます。未取付小切手を未渡小切手と取り違えないことが、残高調整の要点です。
よくある質問
当座預金と普通預金は何が違いますか?
当座預金は小切手・手形などの事業決済に使う無利息の預金です。普通預金は日常の入出金に使われ、利息付きと無利息型があります。無利息型普通預金でも、預金保険の支払対象となる決済用預金なら全額保護されます。
当座預金がマイナスなら借入金へ振り替えますか?
期中に借越も当座預金で記帳する方法では、期末に残る実際の当座借越を、当座借越や借入金などの負債勘定へ振り替えます。先に記帳誤りや未決済項目を調べ、帳簿の貸方残高だけで借入実行済みと判断しないようにします。
未取付小切手は、決算で当座預金へ戻しますか?
取引先に渡して出金記帳済みで、銀行では未決済の未取付小切手は、その理由だけでは戻しません。出金記帳したのに相手へ渡さず手元に残っている未渡小切手とは、修正の要否が異なります。
出典
- 全国銀行協会「当座預金」:預金の用途と商品性。
- 金融庁「預金保険制度」:決済用預金と一般預金等の保護範囲。
- e-Gov法令検索「預金保険法」決済用預金に係る保険料の規定、同法・決済用預金に係る保険金の規定:対象となる預金の要件と支払対象。
- 企業会計基準委員会・会計基準検索システム「企業会計原則」:貸借対照表の総額表示と負債の区分。
- 日本商工会議所「商工会議所簿記検定試験出題区分表の改定等について」:当座借越の期中処理・決算整理・期首再振替の説明と仕訳例。
- 千葉商科大学・増岡研究室「現金預金取引」:当座預金、当座借越、銀行勘定調整表の一般的な簿記処理。
数値表は説明のための架空設例です。銀行勘定調整表は法定の統一様式を示すものではありません。
本記事は一般的な情報提供を目的としたものです。個別の税務・労務相談には応じられません。実際の会計処理は税理士等に、口座や借越契約の取扱いは取引銀行にご確認ください。