税金・経理・補助金ツールズ

有限会社とは|特例有限会社の役員任期・決算・株式会社への移行手順

有限会社は現在、新しく設立できませんが、既存の会社は特例有限会社として事業を続けられます。特例有限会社は会社法上の株式会社であり、役員任期や決算公告などに特例があります。

経理担当者が確認したいのは、特例で省ける作業と、毎期続ける決算作業の違いです。登記事項証明書と現在の定款を手元に置き、下の表から確認してください。通常の株式会社への移行は、商号を変える定款変更と登記で進めます。

特例有限会社の実務確認表

特例有限会社を継続運営する際は、役員任期や決算公告などの特例を、定款と登記事項に照らして確認します。以下は、清算中ではない会社の確認表です。会社の規模による印象で判断しないようにしましょう。

継続運営で確認する制度と資料
確認すること特例の扱い担当者の作業
取締役・監査役の任期会社法の任期規定は適用されない定款に任期の定めがないか確認する
機関の構成取締役会は設置できない。監査役は定款で任意に設置できる取締役・監査役の登記と定款を照合する
決算公告義務はない公告以外の決算作業を毎期進める
計算書類等の備置き支店への備置き義務は適用されない。本店への備置きは必要本店で書類を確認できる状態にする
商号移行前は「有限会社」の文字を用いる契約書・請求書の商号を登記事項証明書と合わせる

根拠は、会社法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律(以下、整備法)の3条・17条・18条・28条です。

有限会社が今も残っている理由

整備法2条により、整備法の施行時に存在した旧有限会社は、会社法の株式会社として存続しています。有限会社という名前が残っていても、廃止された法律だけで運営している会社ではありません。

旧有限会社の定款・社員・持分は、それぞれ株式会社の定款・株主・株式とみなされます。ここでいう「社員」は出資者の意味であり、雇用されている従業員のことではありません。

一方、整備法1条で有限会社法は廃止されているため、新しい有限会社を設立する制度はありません。新設する会社の形態を調べている場合は、合同会社の仕組みと株式会社との違いを確認してください。

役員任期・機関と変更登記

特例有限会社の取締役・監査役には、会社法の任期規定が適用されません。ただし、定款で任期を定めている場合は、その内容を確認します。根拠は整備法18条です。

たとえば、定款に任期の定めがなく、役員も登記事項も変わらない特例有限会社であれば、会社法の任期が来たという理由だけで重任登記を繰り返す必要はありません。

一方、役員の辞任・死亡、新しい役員の就任、登記された住所の変更などがあれば、変更登記の確認が必要です。任期の特例と登記事項の変更は別の問題です(整備法43条・会社法915条)。

取締役が複数いても、特例有限会社に取締役会を設置することはできません。整備法17条は、任意に置ける機関を監査役に限定しています。取締役を置く義務は会社法326条によります。

定款で監査役を置く特例有限会社では、その監査の範囲は会計に関するものに限定されます(整備法24条・会社法389条)。「役員が多いから取締役会の議事録を作る」と決めず、まず自社の機関を確かめてください。

決算公告は不要でも決算作業は残る

特例有限会社には決算公告の義務がありませんが、計算書類の作成や承認は必要です。整備法28条が除外しているのは、決算公告と支店への計算書類等の備置きの規定です。

以下は、清算中ではない特例有限会社の通常の年度決算です。監査役の有無と定款を確認して進めます。成立時や清算中の書類は、この表の対象に含めません。

決算公告の免除と区別する作業
作業確認する内容根拠
作成計算書類・事業報告と附属明細書を準備する。附属明細書の経過措置は下の注も確認する会社法435条・整備法26条
監査役を置く場合の監査計算書類とその附属明細書について会計に関する監査を受ける会社法436条・整備法24条
株主総会計算書類は承認を受け、事業報告は内容を報告する会社法438条
保存・本店での備置き計算書類等を保存し、本店での備置きも行う。支店備置きの免除と混同しない会社法435条・会社法442条

整備法施行時に旧有限会社法44条ノ2第2項の定款の定めがあった特例有限会社は、附属明細書の作成について従前の扱いが続きます(整備法26条2項)。

決算書を作り終えたら、承認した計算書類と議事録を同じ決算期の資料として整理すると、後から確認しやすくなります。書類の読み方は貸借対照表の見方と損益計算書の見方、議事録は株主総会議事録で確認できます。

決算公告が不要でも、合併などの別の公告まで免除されるという意味ではありません。通常の株式会社の公告方法や掲載内容は、決算公告の解説にまとめています。

定款と商号の確認

特例有限会社の商号には「有限会社」の文字を用います。会社法上は株式会社だからといって、契約書や請求書だけを「株式会社」に変えることはできません(整備法3条)。

古い定款だけでは現在の状態が分からない場合は、定款変更の議事録と登記事項証明書を併せて確認します。出資者を示す旧定款の「社員」と、従業員名簿の社員を取り違えないことも大切です。

特例有限会社が定款を変更する際は、通常の株式会社の特別決議の要件をそのまま使わず、整備法14条の読替えと自社定款の要件を確認してください。議決権の割合だけでなく、株主の人数に関する要件も確認する必要があります。

株式会社への移行手順

通常の株式会社への移行は、商号を変える定款変更を株主総会で決議し、本店所在地で移行の登記をして進めます。定款変更の効力が生じるのは本店所在地の登記によるため、決議だけで完了した扱いにしません(整備法45条)。

特例有限会社から通常の株式会社へ移行する流れ定款・株主・移行後の機関を確認登記の準備と日程を整える株主総会で定款変更を決議商号を「株式会社」に変更本店所在地で移行の登記特例有限会社の解散登記株式会社の設立登記
本店所在地での移行登記により、商号を変える定款変更の効力が生じます。

決議前に揃えるもの

移行後に取締役会を置くかどうかでも、確認する役員構成や書類が変わります。決議してから書類を集めるより、登記所または司法書士に必要書類を確認してから日程を決めると準備を進めやすくなります。

決議後に行う登記

特例有限会社が移行の定款変更を決議した場合、本店所在地での登記期限は決議から2週間以内です(休日の扱いは下の注)。整備法46条により、特例有限会社の解散登記と、商号変更後の株式会社の設立登記を行います。

登記申請の期限末日が土日・祝日・年末年始の行政機関の休日に当たる場合は、次の開庁日が期限になります(行政機関の休日に関する法律2条)。

移行のための「解散登記」は、事業をやめて清算する手続と混同しないでください。提出する書類も、単なる社名の表記変更として準備せず、特例有限会社からの移行として確認します。

移行後の管理を切り替える

移行登記後は、特例有限会社の任期・決算公告の特例を前提にせず、変更後の定款と通常の株式会社の規定で管理します。決算公告については、有価証券報告書の提出義務がある会社などの適用除外も確認します(会社法440条)。

社内の確認表には、役員任期、決算公告の担当、契約書・請求書の商号を反映します。銀行口座や許認可、税務・社会保険の届出についても、手続先ごとの変更案内を確認して漏れを防いでください。

確認の順番は、定款と登記、毎期の決算作業、移行時の登記です。特例有限会社のまま運営する場合も、公告不要を理由に計算書類の作成・承認を省かないようにしてください。

登記準備の日程を整理する:営業日カウンター

営業日カウンターは日程整理用です。登記申請の法定期限を判定するものではありません。

よくある質問

有限会社を新しく設立できますか?

現在は新しく設立できません。有限会社法は廃止され、整備法施行時に存在した有限会社が、特例有限会社として会社法上の株式会社に引き継がれています。

特例有限会社の役員は重任登記が必要ですか?

会社法の取締役・監査役の任期規定は適用されないため、法律上の任期満了だけを理由とする重任登記は不要です。ただし定款に任期の定めがあれば確認が必要で、辞任・就任・住所変更など登記事項が変わる場合の変更登記まで免除されるわけではありません。

決算公告が不要なら、決算書も作らなくてよいですか?

いいえ。清算中ではない特例有限会社の通常の年度決算では、計算書類を作成して株主総会の承認を受け、事業報告の内容を報告します。決算公告と支店への備置きの免除を、決算作業や本店での備置きの免除と混同しないでください。

定款を変更すれば株式会社への移行は完了しますか?

決議だけでは完了しません。特例有限会社が商号を変える定款変更を決議し、本店所在地で特例有限会社の解散登記と株式会社の設立登記を行うことで、移行の定款変更の効力が生じます。

次に読む

出典

この記事は一般的な情報提供であり、個別の事案に対する法律相談ではありません。定款変更・登記の具体的な手続きは司法書士または弁護士に、税務上の処理は税理士にご確認ください。個別の税務・労務相談には応じられません。

この内容をXで共有