雑所得の税率と税金の計算|課税方式と増加税額の早見表
雑所得に共通の税率はありません。総合課税の雑所得は給与などと合算し、所得控除後の課税所得で所得税を計算します。一定の先物取引や金融類似商品の対象収益は、別の課税方式です。
「副業の利益に何%を掛けるか」を調べるときは、まず下の表で課税方式を選びます。総合課税なら、雑所得を加える前と後の税額の差が、追加による負担の目安です。この記事は国内居住者を対象に、税率区分をまたぐ設例まで確認します。
雑所得の課税方式を選ぶ
給与と合算するもの、別枠で申告するもの、支払時に納税が完結するものを分けます。根拠は国税庁「雑所得」です。
次は国内居住者の雑所得についての課税方式の早見表です。先物取引と金融類似商品は、法定の対象取引・対象収益に限ります。商品名や「副業」という呼び方だけでは区分できません。
| 対象の例・区分 | 課税方式 | 計算・精算 |
|---|---|---|
| 他の所得区分に当たらない副業の原稿料など | 総合課税 | 給与所得等と合算し、所得控除後に累進税率で計算 |
| 一定の先物取引の差金等決済 | 申告分離課税 | 給与等とは別枠で計算して申告 |
| 金融類似商品の対象収益(例:定期積金の給付補てん金) | 源泉分離課税 | 支払時の源泉徴収で納税が完結し、確定申告で精算できない |
対象先物の範囲は国税庁「先物取引に係る雑所得等の課税の特例」で確認します。現物受渡しを伴う取引などは除外され、店頭取引には相手方の登録区分などの条件もあります。FXの取引別の確認はFXの税金と計算にまとめています。
公的年金等も、課税対象の年金から公的年金等控除を反映した雑所得を求めて、総合課税の計算に進みます。原稿料などと同じ経費計算にしません。所得区分・所得金額の計算・書類保存は雑所得の種類と計算方法で確認できます。
総合課税の所得税率の早見表
税率表に当てるのは、雑所得だけの金額ではありません。総合課税の給与所得・雑所得などを合算し、所得控除を引いた課税所得です。給与は額面年収から給与所得控除を反映した「給与所得」を使います。
令和8年分の国内居住者の総合課税について、所得控除後の課税所得は1,000円未満切捨てです。下表は通常の所得税の速算表で、所得税額=課税所得×税率−速算控除額。税額控除・付加税・住民税は含みません。特定の基準所得金額に対する追加課税は対象外です。
| 所得控除後の課税所得 | 税率 | 速算控除額 |
|---|---|---|
| 1,000円〜1,949,000円 | 5% | 0円 |
| 1,950,000円〜3,299,000円 | 10% | 97,500円 |
| 3,300,000円〜6,949,000円 | 20% | 427,500円 |
| 6,950,000円〜8,999,000円 | 23% | 636,000円 |
| 9,000,000円〜17,999,000円 | 33% | 1,536,000円 |
| 18,000,000円〜39,999,000円 | 40% | 2,796,000円 |
| 40,000,000円以上 | 45% | 4,796,000円 |
速算控除額は、税率の低い区分を飛ばして高い率を全額に掛けた分を調整する数字です。生命保険料控除などの「所得控除」や、住宅ローン控除などの「税額控除」とは別です。表の出典は国税庁「所得税の税率」で、速算控除額の仕組みは所得税率と速算表の読み方にあります。
追加前後の税額を比べる計算例
所得控除等を固定して追加分が税率区分をまたぐと、追加後の税率を雑所得全額に掛けた額にはなりません。次の架空例では、給与所得と所得控除を固定して、雑所得を加える前後を比べます。
令和8年分の国内居住者の総合課税の設例で、給与所得500万円、所得控除200万円を固定し、必要経費控除後の雑所得50万円を追加します。ほかの所得・損失、税額控除、高額所得への追加課税、源泉徴収・予定納税はありません。令和8年分の本設例では復興特別所得税は基準所得税額×2.1%で1円未満切捨て、納付額(第3期分)は100円未満切捨てです。
| 項目 | 追加前 | 追加後 | 増加額 |
|---|---|---|---|
| 所得控除後の課税所得 | 3,000,000円 | 3,500,000円 | 500,000円 |
| 所得税(税額控除なし) | 202,500円 | 272,500円 | 70,000円 |
| 復興特別所得税 | 4,252円 | 5,722円 | 1,470円 |
| 国税の合計(百円未満切捨て前) | 206,752円 | 278,222円 | 71,470円 |
| 納付額(第3期分)(源泉徴収・予定納税なし) | 206,700円 | 278,200円 | 71,500円 |
表の所得税は、課税所得に対応する速算表の税率を掛け、速算控除額を引いた額です。復興特別所得税を加えた後、源泉徴収等のないこの例では国税の合計から納付額(第3期分)を求めています。
限界税率と増加額の違い
限界税率は、所得控除等が変わらないとき、課税所得をさらに増やす部分に当たる税率です。上の例では追加分の一部が低い税率の区分に残るので、追加後の税率だけで増加税額を求めると多くなります。
同じ令和8年分の国内居住者の設例で、総合課税の所得控除は固定し、追加した雑所得500,000円を課税所得3,300,000円までの部分と、それを超える部分に分けます。下表は所得税本体だけで、付加税・住民税・納税額の端数処理は含みません。
| 追加分の位置 | 所得税の計算 | 増加額 |
|---|---|---|
| 課税所得3,000,000円から3,300,000円まで | 300,000円×10% | 30,000円 |
| 課税所得3,300,000円を超え3,500,000円まで | 200,000円×20% | 40,000円 |
| 所得税本体の増加合計 | 上の区分の合計 | 70,000円 |
居住者の総合課税で、所得控除と税額控除が変わらず、高額所得への追加課税もない場合、同じ税率区分内で増える課税所得×その区分の税率で所得税本体の増加を見積もれます。控除が減る境界や非課税の境界では、この見積りを使わず前後を再計算します。
翌年度の住民税も別に計算する
住民税は、所得税と同じ所得控除額で計算しません。前年の所得に住民税用の所得控除を反映します。所得割の税率は自治体の条例によるため、標準税率と実際の適用税率も分けて確認します。
令和8年の所得に対する令和9年度住民税の設例で、国内居住者の給与所得500万円・追加雑所得50万円、住民税の所得控除176万円を固定します。令和9年度の本設例は所得割の標準税率の合計10%を使い、追加前後の税額控除額は同額とします。超過課税、非課税判定による変動、均等割・森林環境税は含みません。
| 項目 | 追加前 | 追加後 | 増加額 |
|---|---|---|---|
| 住民税用の所得控除後の課税所得 | 3,240,000円 | 3,740,000円 | 500,000円 |
| 税額控除前の所得割(標準税率合計) | 324,000円 | 374,000円 | 50,000円 |
税額控除額の差がないという設例の条件では、上の所得割の増加額が控除後にも残ります。国税の増加と合算して準備する場合も、所得税の年分と住民税の年度を区別して管理します。
所得割の標準税率の内訳は地方税法第35条と第314条の3に定められています。指定都市かどうかで県・市の内訳が変わります。実際の税額は住所地の税率・控除・納税通知書でも確認します。
住民税計算機で給与と給与以外の所得を試算する計算機の「給与以外の所得」には、総合課税の所得金額を入力します。分離課税の先物取引の税額はこの欄で計算しません。対応する控除・対象外の条件は計算機の説明をご確認ください。
付加税は年分で内訳を分ける
付加税は雑所得の金額に直接掛ける税ではなく、基準所得税額に対する税です。上の国税例は税額控除等がないため、所得税本体を基準として計算しました。
国内居住者の基準所得税額に対する付加税の内訳です。改正後の欄は、現行法上の両税が課される令和9年分から令和29年分までを示しています。外国税額控除などがある場合は基準所得税額・控除の計算を別途確認します。
| 適用年分 | 復興特別所得税 | 防衛特別所得税 |
|---|---|---|
| 令和8年分 | 基準所得税額×2.1% | 適用なし |
| 令和9年分〜令和29年分 | 基準所得税額×1.1% | 基準所得税額×1% |
この内訳変更だけでは、基準所得税額に対する付加税の合計率は変わりません。年分をまたいだ比較では、基礎控除などほかの改正による課税所得の変化も分けて確認します。根拠は国税庁の付加税に関する注記です。
次は令和8年分の国内居住者の対象先物取引の差金等決済と、同年に生ずる金融類似商品の対象収益の税率です。対象先物は現物受渡し等を除く法定範囲に限ります。表は税率の内訳で、先物の収入金額にそのまま掛ける表ではありません。
| 課税方式・課税対象 | 所得税本体 | 復興特別所得税 | 地方税 |
|---|---|---|---|
| 申告分離:対象先物の控除反映後の課税所得 | 課税所得×15% | 基準所得税額×2.1% | 課税所得×5% |
| 源泉分離:金融類似商品の対象収益 | 対象収益×15% | 所得税本体×2.1% | 対象収益×5% |
令和8年分の対象先物の課税所得と、同年に生ずる金融類似商品の対象収益に対する税率の単純合計は、それぞれ20.315%です。
対象先物は使える繰越損失や所得控除の残額を確認して課税所得を求めます。一方、金融類似商品の対象収益は支払時に納税が完結します。源泉分離の対象と申告できない範囲は、国税庁「源泉分離課税制度」と源泉分離課税の解説で確認できます。
源泉徴収額と年税額は違う
原稿料から税金が引かれていても、それだけで年税額が確定するわけではありません。総合課税の雑所得なら、ほかの所得・控除を含む年税額と、給与・報酬から既に引かれた源泉徴収税額を分けて、確定申告で精算します。申告の要否は別に判定します。
令和8年に源泉徴収義務者が国内居住者へ支払う通常の原稿料の設例で、源泉徴収対象額1回100,000円×10.21%で計算し、税額の1円未満を切り捨てます。消費税等の別記はなく、旅費等の精算・投稿謝金などの例外には当たりません。受取額はほかの控除がない場合を示します。
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| 源泉徴収対象の原稿料 | 100,000円 |
| 源泉徴収税額 | 10,210円 |
| 支払時の受取額 | 89,790円 |
必要経費を引く前の原稿料と、経費を引いた雑所得を混同しません。上の支払例の源泉徴収額は、年間の税負担の増加を示すものではありません。源泉徴収の対象と計算方法は国税庁「原稿料や講演料等を支払ったとき」にあります。
この設例を使えない場合と確認資料
所得控除を固定できない場合は、単純な税率の掛け算では足りません。合計所得金額で控除額・適用可否が変わる基礎控除などを、追加前後で確認します。税額控除の増減がある場合も、最終の税額を両方計算します。
主な例外:非課税の境界、控除の所得制限、分離課税との所得控除の配分、外国税額控除、特定の基準所得金額に対する追加課税は上の固定条件の設例に含めていません。高額所得の特例は国税庁「所得税の税率」の注記をご確認ください。
申告前は、源泉徴収票、報酬の支払明細、収入と必要経費の集計、控除証明書をそろえます。分離課税の取引がある場合は年間取引報告書や繰越損失の資料も分けて準備します。
少額所得の申告不要制度は、雑所得を非課税にする仕組みではありません。給与の受け方などによって条件が変わるため、判定は副業の確定申告と住民税、所得区分や保存義務は雑所得の種類・計算・書類保存を確認してください。
よくある質問
雑所得だけで税率は決まりますか?
総合課税の雑所得だけでは決まりません。給与所得などとの合算額から所得控除を引いた課税所得で所得税率を選びます。一定の先物取引や金融類似商品の対象収益は、給与と合算する計算から分けます。
雑所得が増えると、給与の全額にも高い税率が掛かりますか?
総合課税の通常の累進税率では、上の区分に入った課税所得の部分だけに高い税率が掛かります。ただし、所得の増加で所得控除が減る場合などは、税率区分の変化だけでは増加税額を計算できません。
原稿料から源泉徴収されていれば、申告は不要ですか?
源泉徴収済みという理由だけでは申告不要になりません。総合課税の原稿料は、他の所得・控除を含む年税額と源泉徴収税額を分けて精算するためです。申告不要制度の要件に当たるかは別に確認します。金融類似商品の源泉分離課税とは異なります。
出典
- 国税庁「雑所得」:所得の計算と課税方式。
- 国税庁「所得税の税率」:速算表と高額所得の特例。
- 国税庁「先物取引に係る雑所得等の課税の特例」:対象取引・税率・付加税。
- 国税庁「源泉分離課税制度」:金融類似商品等の対象収益。
- 国税庁「原稿料や講演料等を支払ったとき」:原稿料の源泉徴収。
- 国税庁「確定申告の手引き・復興特別所得税額」:基準所得税額と端数処理。
- 国税庁「源泉所得税の改正のあらまし」:付加税の改正と課税期間。
- 国税庁「確定申告の手引き・第3期分の税額」:納付額の端数処理。
- e-Gov法令検索「所得税法」第35条・第89条:雑所得と税率。
- e-Gov法令検索「租税特別措置法」第41条の14:先物取引の課税の特例。
- e-Gov法令検索「地方税法」第35条・第314条の3:所得割の税率と前年の所得。
- e-Gov法令検索「国税通則法」第119条:確定税額の端数処理。
本記事は一般的な情報提供を目的としたものです。個別の判断は税務署・税理士にご確認ください。