電子領収書とは?発行・訂正・再発行と紙を渡すときの確認表
電子領収書は、紙に代えてPDFなどの電子データで相手に渡す領収書です。発行するときは支払いと記載内容を確かめ、渡したデータと送付記録を結び付けて管理します。
このページは発行する側の確認表です。記載ミスの訂正、同じ内容の再送、紙でも渡す場合を分けて扱います。受け取った領収書の経費精算はレシートと領収書の違い、保存の具体的な要件は電子帳簿保存法の解説にまとめています。
発行前後の確認表
「まだ渡していない」「内容を直す」「同じものをもう一度渡す」で処理を分けます。以下は社内運用を組み立てるための確認例で、法定の管理様式ではありません。
| 場面 | 確認すること | 記録することの例 |
|---|---|---|
| 初めて発行する | 入金記録と取引内容、宛先、交付方法を照合 | 取引に対応する領収番号、送付先、渡したファイル |
| 渡した内容に誤りがある | 誤った項目と正しい項目を特定 | 当初と修正後の対応、修正理由、再送先 |
| 紛失などで同じ内容を求められた | 内容を直す必要があるか、前回の発行履歴を確認 | 同じ取引の再送であること、依頼内容、送付履歴 |
| 電子交付の後に紙も求められた | 同じ取引か、内容に差があるかを照合 | 電子と紙の対応、紙を渡した事実と相手先 |
再送や紙の追加交付は、新たな入金とは区別して管理します。領収書の件数を、そのまま入金件数や売上件数として数えない運用にすると、帳簿との照合をしやすくなります。
電子で渡すときの決め方
相手の受取方法と宛先を確認してから送ります。メール添付か、Web上でのダウンロードかを決め、担当者の交代やメール不達のときの連絡先も確認しておくと、再送の手戻りを減らせます。
民法上、支払う側は弁済と引換えに受取証書の交付を請求できます。また、支払う側は弁済と引換えの受取証書に代わる電子データの提供を請求できますが、代金を受領する側に不相当な負担を課する場合は例外です。根拠は民法486条です。
インボイスについては、登録事業者は適格請求書等に記載すべき事項を電子データで提供できます。これは消費税法57条の4第5項の取扱いで、受取証書を請求する権利とは別に確認します。
作成から交付までをつなぐ
- 支払いを照合する。入金記録と請求内容を確認し、未入金の請求書を領収済みの書類と取り違えないようにします。
- 内容を確定してPDFにする。編集用ファイルと、相手に渡すファイルを区別する運用例です。
- 相手と添付内容を確認して送る。送信前に宛先と対象取引を照合します。Web交付なら、相手が案内から対象データへ進めるか確認します。
- 送付結果と控えを結び付ける。エラーメールや相手からの連絡があれば、当初の送付履歴に追記する運用にします。
上の手順は社内運用の例です。送付履歴を残すことと、電子取引データの法定保存要件を満たすことは分けて確認してください。
PDFにする前に確認する内容
電子に変えても、インボイスに必要な情報は省けません。電子領収書という名前やPDF形式だけで、適格請求書になるわけではありません。
以下は、登録事業者が国内の課税取引について、通常の適格請求書として電子領収書を交付する場合の確認表です。簡易インボイスの記載事項とは分けています。
| 照合する欄 | 通常の適格請求書として記録する内容 |
|---|---|
| 発行者 | 氏名又は名称と登録番号 |
| 取引日 | 取引年月日。課税期間内の一定期間の取引をまとめる場合はその期間 |
| 取引内容 | 商品・サービスの内容。軽減税率対象ならその旨 |
| 税率別の対価 | 税込又は税抜の合計額を税率別に区分し、適用税率を記録 |
| 消費税額等 | 税率別に計算した消費税額等 |
| 宛名 | 交付を受ける事業者の氏名又は名称 |
根拠は消費税法57条の4です。小売業などで使える適格簡易請求書では宛名や税率・税額の取扱いが異なるため、領収書の書き方で業種と書類区分を確認してください。
社内の管理番号、送付先メールアドレス、再送理由の欄は、上の法定記載事項とは別の管理項目です。このページの記入例で使う領収番号は、インボイスの登録番号とは別の管理用の番号です。
訂正と再送を分ける
内容が違うなら訂正、同じ内容をもう一度渡すなら再送として扱うと整理できます。依頼の件名が「再発行」でも、宛名や金額の誤りがないか、まず中身を確認します。
登録事業者が課税事業者へ提供した適格請求書等の電子記録に記録事項の誤りがあった場合は、発行側に修正交付の義務があります。根拠は消費税法57条の4第4項・第5項です。
修正方法には、必要事項を全部記載して出し直す方法と、当初の書類との関連を明らかにして修正事項を示す方法などがあります。国税庁「インボイス制度の手引き」の修正例では、発行側は当初と修正後の写しを保存すると説明しています。
たとえば宛名の誤記を直すなら、当初の領収番号と修正後のファイルを結び付け、何を変えたか相手へ伝える運用が考えられます。元のファイルを同名で上書きして、当初の内容をたどれなくする扱いは避けます。
同じ内容を再送する場合は、当初と同じ取引を証するデータである旨をメール等に添える運用ができます。「再発行」の表示は履歴を見分けるための方法で、表示を付ければ保存要件を満たすという意味ではありません。
返品や値引きで取引金額自体が後から変わった場合は、最初の記載ミスの訂正とは分けます。消費税の処理はインボイス制度の解説で返還インボイスなどの取扱いを確認してください。
発行管理表の記入例
取引の記録を軸に、初回発行・修正・再送をひも付けます。以下は、架空の取引先「青葉商店」へ文具購入代金の電子領収書を発行し、宛名の誤記を修正した後、同じ内容を再送する例です。
以下の版名・ファイル名・管理項目は社内運用の架空例で、法定様式ではありません。共通の領収番号「R-A」で同じ取引と分かるようにし、取引日・受領金額は入金記録と照合する欄を別に設ける想定です。
| 場面 | ファイルの例 | 管理表に残す内容の例 |
|---|---|---|
| 初回発行 | R-A_当初.pdf | 宛名を誤記。送付先担当者、送付日時と控えを記録 |
| 宛名を修正 | R-A_修正.pdf | 正しい宛名は青葉商店。当初との対応と修正した宛名を記録 |
| 同じ内容を再送 | R-A_修正.pdfを再送 | 再送依頼の受付と送付日時を記録。取引・入金は増やさない |
| 紙でも追加交付 | R-A_修正.pdfの内容を照合 | 紙を渡した相手と日時、電子と同じ内容かを記録 |
修正後の正しい宛名を顧客マスターへ反映する作業と、当初の発行記録を保存する作業は分けます。顧客マスターを直した結果、過去に渡した書類まで別の内容で再生成されないか、システムの履歴を確認してください。
引継ぎ時には、管理表から当初のファイルと修正後のファイルを開き、送付記録までたどれるかを確認する方法があります。担当者のメールボックスしか手掛かりがない状態を避け、保存先も引き継げるようにします。
紙でも渡す場合の記録
電子交付後に紙も渡した場合は、同じ取引の追加交付だと分かる記録を残します。紙にした理由、渡した相手、電子との内容差を記録する方法があります。
紙を追加したからといって、送付した電子データや当初の発行履歴をすぐ消す扱いにはしません。発行側の保存義務を確認してから管理します。紙の作成に伴う印紙税は、印紙税の判定ツールで文書の種類と記載内容に沿って確認してください。
受け取った相手の保存については、紙も相手から受領し、電子と紙の内容が同じで、紙を正本とする取決めがあれば紙だけで足りる取扱いがあります。一方、電子に紙を補完する取引情報があれば両方の保存が必要です。
これは国税庁「電子帳簿保存法一問一答【電子取引関係】」の同じ情報を紙でも受領した場合の取扱いです。電子データを受け取った側が自分で印刷しただけの場合とは区別し、発行側の控えの保存にもそのまま当てはめません。
発行側に残すデータ
保存の要否は、発行者の区分に合わせて確認します。登録事業者が提供したインボイスの電子記録には、発行側にも保存義務があります。根拠は消費税法57条の4第6項です。
所得税(源泉徴収分を除く)・法人税の保存義務者が電子取引で送付した領収書等も、電子取引データの保存対象です。電子取引の保存では、改ざん防止や検索・表示等の要件と、緩和・猶予等の適用を確認します。
タイムスタンプを使う方法以外にも、要件を満たす履歴管理システム内でデータを授受・保存する方法や、訂正削除の防止に関する事務処理規程を定め、備え付けて運用する方法があります。保存方法の選択と要件の詳細は電子帳簿保存法の解説、検索の方法は検索要件の解説へ進んでください。
発行システムから後で作り直せる場合
発行時の取引情報のすべてが変更されるおそれのない状態で、合理的な方法で編集され、保存要件に従って保存されたデータベースなら、そのデータベースでの保存も認められます。根拠は国税庁の電子取引Q&Aの発行データ保存の回答です。
単に現在の顧客情報でPDFを作り直せるという説明では、発行時の情報が残るか分かりません。宛名や商品名を変更した後も当初の内容を出力できるか、修正履歴と併せて確認します。
保存ファイルと対応付ける索引簿テンプレートを使う索引簿は保存ファイルを探すための道具です。発行管理表の送付履歴や、改ざん防止の措置を自動で代行するものではありません。
まとめ
電子領収書の発行では、支払いと内容を照合し、渡したデータに送付履歴を結び付けます。記載ミスの訂正と同じ内容の再送を分け、修正前後の記録を残します。紙も渡したときは電子との対応を記録し、発行側のデータ保存も確認します。
よくある質問
電子領収書はPDFで送れますか?
PDFなどの電子データで交付する方法があります。登録事業者がインボイスとして電子提供する場合は、適格請求書等に記載すべき事項を記録します。送付前に相手の受取方法と宛先も確認してください。
電子領収書を再発行するときは内容を変えますか?
紛失等に伴う同じ内容の再送と、記載ミスの訂正を分けます。登録事業者が課税事業者へ提供した適格請求書等の電子記録に記録事項の誤りがあれば、発行側が修正交付します。同じ内容を再送する場合は、元の取引に送付履歴を追加する管理例が考えられます。
発行した側も電子領収書を保存しますか?
保存します。登録事業者がインボイスとして提供した電子記録は、発行側にも保存義務があります。また、所得税(源泉徴収分を除く)・法人税の保存義務者が電子取引で送付した領収書等も保存対象です。保存方法の要件と適用する緩和・猶予等を確認します。
出典
- e-Gov法令検索「民法」486条:受取証書と電磁的記録の請求、不相当な負担の例外。
- e-Gov法令検索「消費税法」57条の4:適格請求書等の記載事項、電子提供、修正交付と保存。
- 国税庁「適格請求書等保存方式の手引き」(令和4年9月版):修正した適格請求書の交付方法と当初・修正後の写しの保存。
- 国税庁「電子帳簿保存法一問一答【電子取引関係】」(令和8年7月):紙と同じ情報を受領した場合、送付データの保存、発行データのデータベース保存。
本記事は一般的な情報提供を目的としたものです。個別の判断は税務署・税理士にご確認ください。