合資会社とは|社員の責任・代表権・定款と決算書類の確認表
合資会社は、無限責任社員と有限責任社員を組み合わせる持分会社です。ここでいう社員は出資者を指し、雇用される従業員という意味ではありません。
経理で確認するのは、誰が会社の債務について責任を負うか、誰に代表権があるか、どの決算書類を作るかです。責任の区分と経営上の権限は別に読みます。有限責任社員も、定款に別段の定めがなければ業務を執行します。
以下は国内に本店を置く合資会社についての説明です。設立後の税務届出は会社設立後の届出と期限へ、合同会社の詳説は合同会社の記事へ進めます。
合資会社・合名会社・合同会社の違い
持分会社の種類を分けるのは、社員の責任区分です。合資会社の定款では、一部を無限責任社員、その他を有限責任社員と定めます。
| 会社の種類 | 社員の責任区分 | 見分ける資料 |
|---|---|---|
| 合資会社 | 無限責任社員と有限責任社員を組み合わせる | 定款・登記事項の責任区分 |
| 合名会社 | 社員の全部を無限責任社員とする | 定款の社員構成 |
| 合同会社 | 社員の全部を有限責任社員とする | 定款の社員構成 |
根拠は会社法576条です。「合資」と「合名」の文字の似方や、会社の規模では判断しません。
合資会社も法人です。会社の財産・負債と社員個人の財産・負債は、同じものとして記帳しません。会社の取引を社員個人の口座で立て替えたときも、会社の費用なのか個人の支出なのかを確認して処理します。
また、社員として出資していることと、雇用契約に基づいて働くことは別の関係です。従業員を雇わなければ合資会社を作れない、という意味ではありません。
有限責任社員と無限責任社員の責任
有限責任社員の会社債権者に対する責任限度は、出資の価額から会社に履行済みの出資額を差し引いた額です。出資したお金を失う可能性と、会社債権者から追加で弁済を求められる範囲を分けて考えます。
以下は会社法580条による会社債務の弁済責任の比較です。責任は、会社財産で債務を完済できない場合、または会社財産への強制執行が不奏功の場合に生じます(後者は社員が会社の弁済資力と強制執行の容易さを証明した場合を除く)。
| 社員の区分 | 会社債権者に対する責任の範囲 | 経理で確認する資料 |
|---|---|---|
| 無限責任社員 | 出資額を限度とせず、連帯して会社債務を弁済する責任 | 責任区分、会社の債務・財産の明細 |
| 有限責任社員 | 出資の価額から履行済み出資の価額を除いた額が限度 | 出資の価額、会社への履行済み額と未履行額 |
有限責任社員の「有限」を、会社の債務が本人の出資総額まで自動的に移る意味で読むのは誤りです。逆に、出資の履行が残っているのに、出資者だから追加の負担はないと処理するのも適切ではありません。
有限責任社員の未履行出資額を計算する例
会社財産で債務を完済できない場合の架空の設例です。有限責任社員の出資の価額を100万円、会社への履行済み額を60万円とします。別途の個人保証などによる責任は含めません。
| 設例の項目 | 額・計算 |
|---|---|
| 有限責任社員の出資の価額 | 100万円 |
| 会社への履行済み出資額 | 60万円 |
| 未履行額に応じた責任限度 | 100万円 − 60万円 = 40万円 |
この計算は会社債権者に対する責任の限度であり、会社への出資義務を免除するものではありません。契約書に個人として保証した記載がある場合は、その保証契約も別に確認します。
社員に弁済責任が生じる場合でも、会社が主張できる抗弁を債権者に対抗できます。会社の相殺権・取消権・解除権の行使によって債務を免れるべき限度では、社員も履行を拒めます(会社法581条)。請求額をそのまま本人の負担額として確定させず、債務と出資の資料をそろえて確認する場面です。
業務執行と代表権は別に確認する
有限責任社員だから経営に参加できない、という決まりではありません。定款に別段の定めがなければ、有限責任社員も無限責任社員も業務を執行します。業務執行社員を定款で定めた場合は、その定めを確認します。
| 確認すること | 読む資料・箇所 | 取り違えやすい点 |
|---|---|---|
| 債務についての責任 | 定款と登記の責任区分 | 業務執行や代表の指定とは別 |
| 業務を執行する社員 | 定款の業務執行に関する定め | 有限責任社員を当然に除外しない |
| 会社を代表する者 | 定款・代表者の選定資料・登記事項 | 業務執行者と代表者が同じ範囲とは限らない |
業務執行社員は、他に代表社員その他の代表者を定めた場合を除き、会社を代表します。他に代表者を定めておらず、業務執行社員が複数なら各自が代表します。代表社員を選ぶときは、定款または定款に基づく社員の互選により、業務執行社員の中から定めます。
根拠は会社法590条・591条・599条です。肩書だけで署名権限を判断せず、代表関係の資料を確認します。
会社内部の承認ルールと、対外的な代表権の効力も区別します。代表社員の権限に加えた制限は、善意の第三者には対抗できません。支払承認の社内ルールを決めただけで、代表社員が結んだ契約の効力まで制限できるとは扱わない点に注意が必要です。
定款と設立登記の確認表
合資会社の設立では定款を作り、本店所在地で設立登記をすることで会社が成立します。公証人による定款認証は要しませんが、定款そのものは必要です。
次の表は、合資会社の定款に記載・記録する事項です(会社法576条)。社員の責任区分は、無限責任社員と有限責任社員を組み合わせる形で記します。
| 定款の記載事項 | 確認する内容 |
|---|---|
| 目的 | 会社が行う事業 |
| 商号 | 会社の名称 |
| 本店の所在地 | 本店を置く所在地 |
| 社員の氏名または名称と住所 | 出資者が誰か |
| 社員の責任区分 | 無限責任社員か有限責任社員か |
| 出資の目的と価額または評価の標準 | 有限責任社員の出資の目的は金銭等に限る |
設立時の社員になろうとする者が定款を作成し、紙の定款では全員が署名または記名押印します。電子定款では、法務省令に定める署名等に代わる措置をとります(会社法575条)。
公証人の認証を定める会社法30条は株式会社の定款についての規定です。合資会社の定款の作成と取り違えないようにします。
登記で確かめたい主な項目
合資会社の設立登記では、目的・商号・本店等の所在場所に加え、社員の氏名等と住所、責任区分、有限責任社員の出資の目的・価額・履行済み額などが登記事項になります。
代表社員の氏名等は、代表しない社員がある場合に登記する事項です。代表社員が法人なら、その職務を行う者の氏名と住所も登記します。これらは主な確認項目です。公告方法などを含む登記事項全体は会社法913条に定められています。
設立登記で成立する根拠は会社法579条です。経理を引き継ぐ際は、定款・登記事項証明書・出資の履行を示す資料を照合します。定款に記した出資額と会社が受け入れた額を混同しないようにします。
設立後の法人設立届出書や青色申告の承認申請は、会社設立後の届出と期限で確認できます。ここでは設立登記の申請書一式や、個別の許認可の要件までは扱いません。
会計帳簿・計算書類と保存
合資会社にも会計帳簿と計算書類の作成義務があります。ただし、会社法上の計算書類の範囲は、合同会社と同じとは限りません。
| 書類 | 合資会社で確認すること | 根拠 |
|---|---|---|
| 会計帳簿 | 適時に、正確に作成する | 会社法615条 |
| 成立日の貸借対照表 | 成立の日における貸借対照表を作成する | 会社法617条 |
| 各事業年度の計算書類 | 貸借対照表を作成し、追加書類は下記の区分で確認する | 会社法617条 |
合資会社と合同会社では追加書類の扱いが異なる
次は会社法上の各事業年度の計算書類について、貸借対照表に加える書類の区分です。会社計算規則71条は合資会社・合名会社と合同会社を分けています。税務申告で必要となる書類の省略可否を示す表ではありません。
| 会社の区分 | 貸借対照表に加える計算書類 |
|---|---|
| 合資会社・合名会社 | 損益計算書・社員資本等変動計算書・個別注記表の全部または一部を規則に従い作成すると定めた場合、その定めに応じて作成 |
| 合同会社 | 損益計算書・社員資本等変動計算書・個別注記表 |
合資会社の経理を受け継ぐ場合は、前期の貸借対照表だけでなく、追加書類を作成する定めと過去の決算書一式を確認します。会社法上の書類区分と、税務申告・金融機関への提出に必要な資料を分けて管理します。
決算書類は各事業年度の会計帳簿から作成します。帳簿と決算書で売掛金・買掛金・借入金等の残高がつながるかを確かめる作業は、会社の名称が合資会社でも必要です。
保存期間は同じでも起算点が異なる
以下は合資会社についての会社法上の保存期間です。税法上の保存義務は別に確認します。
| 保存するもの | 起算点と期間 |
|---|---|
| 会計帳簿・事業に関する重要な資料 | 会計帳簿の閉鎖の時から10年間 |
| 計算書類 | 計算書類を作成した時から10年間 |
根拠は会社法615条と617条です。保存管理では、資料の種類と起算点を記録しておくと、単に決算期だけで廃棄時期を判断する誤りを防げます。
合資会社の法人課税と出資の整理
国内に本店を置く通常の営利の合資会社は、内国普通法人として法人税の納税義務を負います。社員の責任が有限か無限かによって、会社の利益をそのまま社員個人の所得として計算する仕組みにはなりません。
根拠は法人税法2条・4条です。社員本人が受け取る給与や利益の分配に関する課税は、会社の所得計算とは区別します。
出資を受け入れた入金と売上を分ける
会社が金銭の出資を受け入れた入金は、売上と分けて記録します。出資は資本等取引に当たり、売上などの収益と同じように益金へ足す取引ではありません(法人税法22条)。
経理の確認例として、社員からの入金を見つけたら、その内容を資料で確認します。出資の履行なのか、会社への貸付けなのか、立替金の精算なのかを見ます。振込人の名前だけでは科目が決まらないため、定款、入金明細、借入契約等を対応させます。
決算利益をそのまま課税所得にしない
法人税の所得計算には、会計上の利益に対する税務上の調整があります。収益・原価・費用・損失の額は、別段の定めがあるものを除き、公正妥当と認められる会計処理の基準に従います。売上原価等以外の販売費・一般管理費その他の費用は、償却費を除き、事業年度末までに債務が確定していない部分を損金に算入しません(別段の定めがある場合を除く)。
会社の形態だけで税率や税負担が決まるわけではありません。税率等の区分は法人税率の記事に、出資の金額や純資産の確認は資本金の記事と貸借対照表の見方に分けています。
法人税の簡易計算で所得に対する税額を試算する試算の入力には、売上や出資の入金額ではなく、税務上の調整を確認した所得を使います。
定款・登記で責任区分と代表関係を照合し、出資の価額と履行済み額を確認します。決算では、合資会社として作成する書類の範囲を確かめ、帳簿・決算書・法人税の所得計算をつなげます。
よくある質問
合資会社の社員は従業員ですか?
会社法上の社員は出資者のことで、雇用される従業員という意味ではありません。合資会社は無限責任社員と有限責任社員で構成されます。
有限責任社員は経営に参加できますか?
できます。定款に別段の定めがなければ有限責任社員も業務を執行します。代表権については、他に代表社員その他の代表者を定めているかを別に確認します。
合資会社にも貸借対照表が必要ですか?
必要です。成立日の貸借対照表と、各事業年度の貸借対照表を作ります。合資会社が損益計算書・社員資本等変動計算書・個別注記表を規則に従い作成すると定めた場合は、その定めに応じて追加書類も作成します。
合資会社の定款は公証人の認証を受けますか?
公証人による認証は要しません。ただし定款の作成は必要で、設立時の社員予定者全員が署名または記名押印します。電子定款では法務省令に定める代替措置をとります。
合資会社の利益は社員個人に直接課税されますか?
国内に本店を置く通常の営利の合資会社は、会社が内国普通法人として法人税の納税義務を負います。社員本人が受け取る給与や利益の分配に関する課税は、会社の所得計算とは別です。
出典
- e-Gov法令検索「会社法」:法人格、持分会社の定款・設立・社員の責任・業務執行・代表、会計帳簿・計算書類、合資会社の設立登記
- e-Gov法令検索「会社計算規則」71条:合資会社・合名会社と合同会社の計算書類の区分
- e-Gov法令検索「法人税法」2条・4条・22条:内国法人・普通法人、納税義務、所得と資本等取引
この記事は一般的な情報提供であり、個別の税務相談ではありません。具体的な申告や判断は、顧問税理士または所轄の税務署にご確認ください。社員の責任や代表権、定款・登記の個別の判断は、弁護士・司法書士等にご確認ください。