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非正規雇用とは — 法律に定義は無い。統計の6区分であって、会社の義務は「短時間・有期・派遣」の3語で決まる

結論から言うと、労働基準法・労働契約法・パートタイム・有期雇用労働法・労働者派遣法のどれにも「非正規雇用」の定義はありません。これは総務省統計局の労働力調査が使っている統計上の呼び名です。労働力調査は、会社・団体等の役員を除く雇用者を勤め先での呼称によって7つに区分し、そのうち「正規の職員・従業員」以外の6区分をまとめて「非正規の職員・従業員」として表章しています。つまり基準は、契約の中身ではなく勤め先がその人を何と呼んでいるかです。

一方、会社側の義務を決めるのは別の言葉です。待遇差の禁止はパートタイム・有期雇用労働法が定める短時間労働者と有期雇用労働者にかかり、派遣労働者は労働者派遣法が別に受け持ちます。社会保険・雇用保険の加入は、勤め先が適用事業所かどうか、所定労働時間や雇用される見込みの期間、健康保険・厚生年金保険では事業所の規模や(厚生年金保険の)年齢など、それぞれの法律が定める条件で決まります。労働基準法・労働契約法・パートタイム・有期雇用労働法・労働者派遣法の条文全文を検索しても、「非正規」という語は出てきません。社内の「正社員/非正規」という括りのまま義務を判断すると、条文の当てはめを外します。

この記事では、まず労働力調査の定義を逐語で確認し、2026年8月分の人数と割合、令和7年の賃金差、非正規の雇用形態についた理由を公表値で押さえます。そのうえで、統計の「非正規」と法律の3語がどこで食い違うかを整理します。個別の制度の中身(無期転換の数え方、同一労働同一賃金の8条と9条、社会保険の加入条件)はそれぞれ専用の記事に譲り、ここではどの記事に行けばよいかが分かる地図として書きます。

統計上の定義 — 7区分のうち6区分が「非正規」

労働力調査の『用語の解説』は、雇用形態を次のように定めています。

会社、団体等の役員を除く雇用者について、勤め先での呼称によって、「正規の職員・従業員」、「パート」、「アルバイト」、「労働者派遣事業所の派遣社員」、「契約社員」、「嘱託」、「その他」の七つに区分した。なお、「正規の職員・従業員」以外の6区分をまとめて「非正規の職員・従業員」として表章している。

「表章」は、集計した結果を表の形にして公表することです。読み取るべき点が3つあります。1つ目は対象が「役員を除く雇用者」に限られること。業務委託や請負で働く人、個人事業主、会社の役員はこの7区分のどこにも入りません。2つ目は区分の基準が勤め先での呼称であること。契約期間の有無や所定労働時間ではありません。3つ目は非正規が6区分の合計であって、それ自体が一つの実体ではないことです。

「非正規」と「有期」は別の軸で集計されている

労働力調査は雇用形態(呼称による7区分)とは別に、雇用契約期間という区分も持っています。こちらは役員を除く雇用者を「無期の契約」「有期の契約」「雇用契約期間の定めがあるかわからない」に分け、有期の契約はさらに1か月未満から5年超までの期間別に分かれます。2つは独立した軸なので、呼称が「正規の職員・従業員」でも契約に期間の定めがある人、呼称が非正規でも無期契約の人が、どちらも集計上あり得ます。「非正規=有期契約」という言い換えは、統計の作り方と合いません。

なお、この「雇用契約期間」の区分は、同じ事業所で更新を繰り返している場合でも最初に契約したときからの通算ではなく、調査時点の契約期間で区分すると『用語の解説』が明記しています。無期転換の5年を数えるときの通算(最初の契約から数える)とは別の数え方なので、統計の「5年超」の人数を無期転換の対象者数として読むことはできません。

労働力調査は、役員を除く雇用者を「呼称による7区分」と「雇用契約期間」という別々の軸で集計している 軸① 雇用形態(勤め先での呼称。7区分) 正規の職員・従業員 … 1区分 パート アルバイト 労働者派遣事業所の派遣社員 契約社員 嘱託 その他 ↑この6区分の合計が「非正規の職員・従業員」 軸② 雇用契約期間(調査時点の契約) 無期の契約 有期の契約 1か月未満/1か月以上3か月以下/3か月超6か月 以下/6か月超1年以下/1年超3年以下/ 3年超5年以下/5年超/期間がわからない 期間の定めがあるかわからない 2つは独立した軸。この図は区分の立て方を示すもので、交差させた人数ではない。 =呼称が「正規の職員・従業員」でも有期契約の人、呼称が非正規でも無期契約の人があり得る。 区分は総務省統計局『労働力調査 用語の解説』の<雇用形態><雇用契約期間>による。
労働力調査は「呼称による7区分」と「雇用契約期間」を別の軸で集計している。非正規は前者の6区分の合計で、後者の有期契約と同じ集団ではない。

人数と割合(2026年8月分の基本集計)

労働力調査(基本集計)の2026年8月分結果(令和8年8月分・2026年10月2日公表)では、2026年8月分の役員を除く雇用者5,861万人のうち、非正規の職員・従業員は2,126万人でした。同じ2026年8月分の正規の職員・従業員は3,735万人で、2026年8月分の役員を除く雇用者に占める非正規の職員・従業員の割合は36.3%、前年同月と同率です。

雇用形態別雇用者数(2026年8月分・労働力調査 基本集計。割合は「正規の職員・従業員」と「非正規の職員・従業員」の合計に占める割合)
区分男女計(2026年8月分)割合(2026年8月分・正規と非正規の合計に占める)男(2026年8月分)割合(2026年8月分・男の正規と非正規の合計に占める)女(2026年8月分)割合(2026年8月分・女の正規と非正規の合計に占める)
役員を除く雇用者5,861万人—3,042万人—2,819万人—
正規の職員・従業員3,735万人63.7%2,354万人77.4%1,382万人49.0%
非正規の職員・従業員2,126万人36.3%688万人22.6%1,438万人51.0%
 パート1,021万人17.4%134万人4.4%888万人31.5%
 アルバイト483万人8.2%237万人7.8%246万人8.7%
 労働者派遣事業所の派遣社員152万人2.6%56万人1.8%96万人3.4%
 契約社員283万人4.8%154万人5.1%128万人4.5%
 嘱託103万人1.8%66万人2.2%37万人1.3%
 その他83万人1.4%40万人1.3%43万人1.5%

この表でいちばん目を引くのは男女の差です。2026年8月分では、女性の役員を除く雇用者2,819万人のうち非正規の職員・従業員は1,438万人で、割合は51.0%と半分を超えています。2026年8月分の男性は22.6%です。同じ2026年8月分の内訳では、女性のパートが888万人で、女性の役員を除く雇用者2,819万人の31.5%を占めます。「非正規雇用の問題」を1つの数字で語ると、この構造が消えてしまいます。

6区分を足すと、公表されている合計と1万人ずれる

上の表のパートからその他までを足すと、2026年8月分では1,021+483+152+283+103+83=2,125万人で、公表されている非正規の職員・従業員2,126万人と1万人ずれます。公表資料の「利用上の注意」は、統計表の数値が表章単位未満の位で四捨五入してあるため、また総数に分類不能又は不詳の数を含むため、総数と内訳の合計とは必ずしも一致しないと述べています。集計の誤りではありません。記事や社内資料で内訳から合計を作り直さず、公表されている合計の値をそのまま使ってください。労働力調査は標本調査なので、万人未満の桁を自分で復元することはできません。

非正規の内側でのシェアを見ると、2026年8月分の非正規の職員・従業員2,126万人のうちパートが1,021万人で約48.0%、アルバイトが483万人で約22.7%です(どちらも公表値から計算した割合で、公表表に載っているのは上の表の「「正規の職員・従業員」と「非正規の職員・従業員」の合計に占める割合」のほうです)。パートとアルバイトの2区分で非正規の約7割を占めるため、派遣・契約社員・嘱託だけを見て非正規の姿を描くと実態から外れます。

賃金の差 — 公表されている比較は「一般労働者」どうし

賃金の差は賃金構造基本統計調査で測られています。令和7年(2025年)賃金構造基本統計調査の結果の概況では、一般労働者の令和7年6月分の所定内給与額は、正社員・正職員358.8千円に対し、正社員・正職員以外241.7千円でした。この2つから計算される雇用形態間賃金格差(正社員・正職員=100)は、令和7年の一般労働者の男女計で67.4です。令和7年の一般労働者の同じ格差は男性69.2・女性71.6で、令和7年の一般労働者の男女計で格差がもっとも大きいのは、企業規模別では大企業の60.7、産業別では「卸売業,小売業」の61.3でした。

この比較に、パート・アルバイトの大半は入っていない

賃金構造基本統計調査は、常用労働者を就業形態で「一般労働者」と「短時間労働者」に分け、それとは別に雇用形態で「正社員・正職員」と「正社員・正職員以外」に分けています。上の令和7年の358.8千円と241.7千円は、結果の概況の「1 一般労働者の賃金」の節に置かれた一般労働者の数字で、短時間労働者は含まれていません。短時間労働者は別の節で集計され、令和7年の短時間労働者の1時間当たり賃金は男女計1,518円(男性1,769円・女性1,418円)です。「正規と非正規の平均賃金の差」として月額の2つを並べるときは、非正規側にパート・アルバイトの多くが入っていない比較であることを添える必要があります。

用語も確認しておきます。この調査の「賃金」は、調査実施年6月分として支払われた所定内給与額の平均です。所定内給与額とは、労働契約等であらかじめ定められている支給条件・算定方法により6月分として支給された現金給与額(きまって支給する現金給与額)から、超過労働給与額(時間外勤務手当・深夜勤務手当・休日出勤手当・宿日直手当・交替手当)を差し引いた額で、所得税等を控除する前の額です。賞与・期末手当は含まれません。手取りでもありません。社内で「平均賃金」と並べるときは、この定義とそろえて比べてください。

また「短時間労働者」の意味も調査ごとに違います。賃金構造基本統計調査でいう短時間労働者は、同一事業所の一般の労働者より1日の所定労働時間が短い、または1日の所定労働時間が同じでも1週の所定労働日数が少ない労働者です。パートタイム・有期雇用労働法2条1項の短時間労働者とは定義が別です。比べる単位も、賃金構造基本統計調査は1日の所定労働時間と1週の所定労働日数、パート有期法2条1項は1週間の所定労働時間で違うため、同じ言葉でも範囲が一致するとは限りません。

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非正規の雇用形態についた主な理由(2026年4〜6月期平均)

非正規で働いている人が、なぜその雇用形態についたのか。労働力調査の詳細集計は、これを本人の回答として集計しています(非正規が増えた原因を集計したものではありません)。2026年4〜6月期平均(2026年8月10日公表)の非正規の職員・従業員2,146万人について、現職の雇用形態についた主な理由は次のとおりです。

現職の雇用形態についた主な理由別の内訳(2026年4〜6月期平均・労働力調査 詳細集計・男女計)
主な理由実数(2026年4〜6月期平均)割合(2026年4〜6月期平均・理由不詳を除く内訳の合計に占める)前年同期比(2026年4〜6月期平均)
自分の都合のよい時間に働きたいから810万人38.6%+79万人
家計の補助・学費等を得たいから341万人16.3%−37万人
家事・育児・介護等と両立しやすいから229万人10.9%+5万人
専門的な技能等をいかせるから175万人8.3%+6万人
正規の職員・従業員の仕事がないから161万人7.7%−15万人
通勤時間が短いから107万人5.1%−1万人
その他274万人13.1%+7万人

「正規の職員・従業員の仕事がないから」は、2026年4〜6月期平均で161万人・7.7%でした。2026年4〜6月期平均で最多は「自分の都合のよい時間に働きたいから」の810万人・38.6%で、前年同期に比べ79万人の増加です。

この割合の分母は、非正規の職員・従業員の総数ではない

公表表の注に、非正規の職員・従業員には「現職の雇用形態についた主な理由不詳」を含むこと、そして割合は理由別内訳の合計に占める割合であることが書かれています。上の7区分の実数を足すと2026年4〜6月期平均で2,097万人になり、同じ2026年4〜6月期平均の非正規の職員・従業員2,146万人との差49万人が理由不詳です。2026年4〜6月期平均の161万人を同じ期の2,146万人で割ると約7.5%になり、公表の7.7%と合いません。2026年4〜6月期平均の割合を自分で計算し直すときは、分母を2,097万人(理由不詳を除いた合計)に取ります。

もう1つ注意があります。この2,146万人は詳細集計の2026年4〜6月期平均の値で、前節の2,126万人は基本集計の2026年8月分の値です。集計の種類も期間も違うので、同じ資料の数字として並べないでください。労働力調査は基本集計と詳細集計で標本の規模が異なり、詳細集計は四半期平均・年平均で公表されます。

法律が使うのは3語 — 短時間労働者・有期雇用労働者・派遣労働者

会社側の義務は「非正規かどうか」では決まりません。条文が名指ししている語は次の3つです。

パートタイム・有期雇用労働法(正式名称は「短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律」)2条は、1項で短時間労働者を「一週間の所定労働時間が同一の事業主に雇用される通常の労働者(……)の一週間の所定労働時間に比し短い労働者」、2項で有期雇用労働者を「事業主と期間の定めのある労働契約を締結している労働者」と定義し、3項でこの2つをまとめて短時間・有期雇用労働者と呼んでいます。1項の「……」の部分には、通常の労働者と同種の業務に従事する労働者については、厚生労働省令で定める場合を除き、その同種の業務に従事する通常の労働者と比べるという読替えが入ります(この読替えの中身は同一労働同一賃金とはで扱っています)。労働者派遣法2条2号は派遣労働者を「事業主が雇用する労働者であつて、労働者派遣の対象となるもの」と定義しています。

条文が使う3語と、どの記事で扱っているか
条文上の語当たるかどうかの決め手主にかかる規定詳しい記事
短時間労働者
(パート有期法2条1項)
1週間の所定労働時間が、同一の事業主の通常の労働者(2条1項のかっこ書による読替えあり)より短いかパート有期法6条〜14条(明示・待遇差の禁止・通常の労働者への転換・説明義務)同一労働同一賃金とは
有期雇用労働者
(パート有期法2条2項)
労働契約に期間の定めがあるか(所定労働時間の長短は問わない)同上+労働契約法17条〜19条(契約期間中の解雇・無期転換・雇止め法理)無期転換ルールの5年
派遣労働者
(労働者派遣法2条2号)
事業主が雇用し、労働者派遣の対象となっているか労働者派遣法30条の3(待遇の比較相手は派遣先に雇用される通常の労働者)、30条の4(労使協定方式。協定で定めた範囲には30条の3を適用しない)、40条の2・35条の3・40条の3(期間制限)派遣の3年ルールと抵触日

この3語は重なります。所定労働時間が通常の労働者より短く、契約期間の定めもあるパートは、短時間労働者であり同時に有期雇用労働者です。派遣元と有期の労働契約を結んでいる派遣社員については、派遣元事業主が労働者派遣法30条の3により派遣先に雇用される通常の労働者との待遇差を問われます(30条の4の労使協定で定めた範囲には30条の3を適用しません)。同時にその人は、派遣元との関係ではパート有期法2条2項の有期雇用労働者でもあります。「派遣だからパート有期法は関係ない」という切り方はできません。

そして、社会保険・雇用保険の加入はこの3語とも別の基準で決まります。健康保険・厚生年金保険は、適用事業所に使用されているかどうか、健康保険法3条1項各号・厚生年金保険法12条各号が定める適用除外に当たらないか、厚生年金保険では70歳未満であるか(厚生年金保険法9条)などで決まります。ただし短時間労働者については、本則の健保法3条1項9号・厚年法12条5号だけでなく、平成24年法律第62号の附則(健康保険は46条、厚生年金保険は17条)が置いた当分の間の取扱い(特定適用事業所以外の適用事業所に使用される一定の短時間労働者は被保険者としない定め)も読む必要があります。判定の条件は社会保険の加入条件で確かめてください。雇用保険は、適用事業に雇用されているかどうかと、雇用保険法6条各号が定める適用除外(1週間の所定労働時間、継続して雇用される見込みの期間、季節的雇用、学生など)に当たらないかなどで決まります。どちらも呼称を見ません。条件の中身は社会保険の加入条件と雇用保険の加入条件で扱っています。

統計の「非正規」と法律の3語は一致しない

統計の区分と条文の区分がずれる場面を、具体的に3つ挙げます。

1つ目。呼称が「正規の職員・従業員」でも、契約に期間の定めがあればパート有期法2条2項の有期雇用労働者です。労働力調査の雇用形態は勤め先での呼称による区分なので、社内で正社員と呼んでいる人を会社は「正規」と答えます。しかし条文が見るのは労働契約に期間の定めがあるかどうかだけです。期間の定めがあれば、呼称にかかわらずパート有期法8条や労働契約法17条の対象になります。9条・18条・19条は、これに加えて別の要件を満たす場合の規定です。9条は職務の内容と配置の変更範囲が通常の労働者と同一であること、18条は通算契約期間が5年を超えることと労働者からの申込み、19条は反復更新や更新への合理的な期待に加えて労働者の申込みと、使用者がそれを拒絶することが客観的に合理的な理由を欠き社会通念上相当と認められないことを、それぞれ要件にしています(要件の全部は無期転換ルールの5年で確かめてください)。

2つ目。呼称が非正規でも、無期契約でフルタイムなら、パート有期法の短時間労働者にも有期雇用労働者にも当たりません。たとえば無期転換後に「契約社員」という呼称を続けている人は、統計上は非正規の職員・従業員に数えられますが、所定労働時間が通常の労働者と同じであればパート有期法2条の定義のどちらにも当てはまりません。この場合、待遇差の問題は同法8条ではなく、「就業の実態に応じて、均衡を考慮しつつ」締結・変更すべきとする労働契約法3条2項や、就業規則の体系の問題として整理することになります。

3つ目。契約の名前だけでなく実態も業務委託・請負である人は、統計の7区分にも、パート有期法の3語にも入りません。労働力調査の雇用形態は「役員を除く雇用者」の区分なので、雇用契約でない人は対象外です。パート有期法2条も「事業主と期間の定めのある労働契約を締結している労働者」と書いており、労働者であることが前提です(労働者に当たるかどうかは契約の名称ではなく実態で判断されます)。ただし労働基準法9条は「労働者」を「職業の種類を問わず、事業又は事務所(以下「事業」という。)に使用される者で、賃金を支払われる者」と定義しており、契約の名前が業務委託でも、事業に使用されて賃金を支払われている実態があれば労働者として扱われることがあります。その線引きは偽装請負で扱っています。

社内資料で「非正規」と書くときの実務

社内の集計や会議資料で「非正規」という語を使うのは構いませんが、その括りで義務を判断しないことが実務上の分かれ目です。待遇差の説明を求められたとき(パート有期法14条2項)、答えを決めるのは呼称ではなく、その人が短時間労働者か有期雇用労働者か、比較対象の通常の労働者は誰かです。名簿に呼称しか残っていないと、この当てはめを後からやり直せません。所定労働時間と契約期間の有無を、呼称とは別の欄で持っておくと、この当てはめをあとからやり直せます。

間違えやすい点

まとめ
  • 「非正規雇用」は法律の用語ではなく、労働力調査が役員を除く雇用者を呼称で7区分し、正規以外の6区分をまとめた統計上の呼び名
  • 2026年8月分の基本集計では、役員を除く雇用者5,861万人のうち非正規の職員・従業員は2,126万人、割合は36.3%(男22.6%・女51.0%)
  • 令和7年の賃金構造基本統計調査では、一般労働者の6月分の所定内給与額は正社員・正職員358.8千円/正社員・正職員以外241.7千円で、雇用形態間賃金格差は一般労働者の男女計で67.4(令和7年の短時間労働者はこの比較に入らず、1時間当たり賃金が男女計1,518円として別に集計されている)
  • 2026年4〜6月期平均の詳細集計では、非正規の雇用形態についた主な理由の最多は「自分の都合のよい時間に働きたいから」810万人・38.6%、「正規の職員・従業員の仕事がないから」は161万人・7.7%
  • 待遇や契約についての会社側の義務が変わるのは、短時間労働者・有期雇用労働者・派遣労働者のどれに当たるか。呼称では決まらない(社会保険・雇用保険の加入はこの3語とも別の基準で決まる)

よくある質問

「非正規雇用」に法律上の定義はありますか?

ありません。労働基準法・労働契約法・パートタイム・有期雇用労働法・労働者派遣法のいずれも「非正規」という語を定義していません。実務で使われているのは総務省統計局の労働力調査の区分で、『用語の解説』は、会社・団体等の役員を除く雇用者について勤め先での呼称によって「正規の職員・従業員」「パート」「アルバイト」「労働者派遣事業所の派遣社員」「契約社員」「嘱託」「その他」の7つに区分し、「正規の職員・従業員」以外の6区分をまとめて「非正規の職員・従業員」として表章すると述べています。したがって非正規は6区分の合計であり、その人に特定の法律効果が結びついているわけではありません。待遇や契約についての会社側の義務を判断するときは、パートタイム・有期雇用労働法2条の短時間労働者・有期雇用労働者、労働者派遣法2条2号の派遣労働者のどれに当たるかを見ます(社会保険・雇用保険の加入はこの3語とも別の基準で決まります)。

非正規雇用の割合は何パーセントですか?

労働力調査(基本集計)の2026年8月分結果(2026年10月2日公表)では、役員を除く雇用者に占める非正規の職員・従業員の割合は36.3%で、前年同月と同率でした。2026年8月分の実数は、役員を除く雇用者5,861万人のうち非正規の職員・従業員2,126万人、正規の職員・従業員3,735万人です。男女で大きく違い、同じ2026年8月分で男性は22.6%、女性は51.0%です。なお、この割合の分母は「正規の職員・従業員」と「非正規の職員・従業員」の合計であって、就業者全体ではありません。自営業主・家族従業者・会社等の役員を分母に含めると別の数字になるので、資料に書くときは「2026年8月分・役員を除く雇用者に占める割合」と分母まで添えてください。

契約社員とアルバイトは、法律上どう違いますか?

どちらも法律の用語ではありません。労働力調査では別の区分ですが、それは勤め先がどう呼んでいるかによる区分です。条文の当てはめは呼称ではなく、1週間の所定労働時間が通常の労働者より短いか(パートタイム・有期雇用労働法2条1項の短時間労働者。同項には、同種の業務に従事する通常の労働者と比べるという読替えのかっこ書があります)、労働契約に期間の定めがあるか(同条2項の有期雇用労働者)の2点で決まります。通常の労働者と同じ所定労働時間で契約期間の定めがある契約社員は有期雇用労働者だけに当たり、所定労働時間が短く契約期間の定めもあるアルバイトは短時間労働者と有期雇用労働者の両方に当たります。無期契約でフルタイムの契約社員は、呼称が契約社員でもどちらにも当たりません。社内の呼称を変えても、この当てはめは変わりません。

正社員と呼んでいる人でも、有期雇用労働者になることがありますか?

あります。パートタイム・有期雇用労働法2条2項は有期雇用労働者を「事業主と期間の定めのある労働契約を締結している労働者」と定義しており、呼称を条件にしていません。したがって社内で正社員と呼んでいても、労働契約に期間の定めがあれば同法8条や労働契約法17条の対象になります。9条・18条・19条はこれに加えて別の要件があり、9条は職務の内容と配置の変更範囲が通常の労働者と同一であること、18条は通算契約期間が5年を超えることと労働者からの申込み、19条は反復更新や更新への合理的な期待に加えて労働者の申込みと、使用者がそれを拒絶することが客観的に合理的な理由を欠き社会通念上相当と認められないことを要件にしています(18条2項の空白期間の扱いなど、要件の全部は無期転換ルールの記事で確かめてください)。労働力調査の側でも、雇用形態(呼称による7区分)と雇用契約期間(無期の契約・有期の契約)は別の軸で集計されているため、呼称が「正規の職員・従業員」で契約が有期という組み合わせは統計上もあり得ます。「正社員なら無期」という前提で名簿を作っていると、この人の取り扱いを取り違えます。

「正規と非正規の平均賃金の差」は、どの数字を使えばよいですか?

賃金構造基本統計調査の令和7年(2025年)の結果では、一般労働者の令和7年6月分の所定内給与額が正社員・正職員358.8千円、正社員・正職員以外241.7千円で、雇用形態間賃金格差(正社員・正職員=100)は男女計67.4です。この2つを使うときは、比較が令和7年の一般労働者どうしであって短時間労働者を含まないことを添えてください。短時間労働者は別に集計されており、令和7年の1時間当たり賃金は男女計1,518円です。また、この調査の「賃金」は6月分として支払われた所定内給与額で、賞与や時間外手当を含まず、所得税等を控除する前の額です。月給と時間給、税引き前と手取りを混ぜないようにしてください。

業務委託や請負で働いている人は、非正規雇用に含まれますか?

労働力調査の雇用形態の区分には含まれません。この区分は「会社、団体等の役員を除く雇用者」を対象にしており、雇用契約ではない業務委託・請負の人は対象外です。パートタイム・有期雇用労働法2条も「労働契約を締結している労働者」を前提にしているため、実態も労働者でなければ同法の短時間労働者・有期雇用労働者にも当たりません。ただし、契約書の名前が業務委託であっても、労働基準法9条の「職業の種類を問わず、事業又は事務所に使用される者で、賃金を支払われる者」に当たる実態があれば、労働者として同法などの適用を受けることがあります。この判断は契約の名称ではなく就労の実態で行われるため、自社の契約形態がどちらに当たるかは、社会保険労務士・弁護士または労働基準監督署にご確認ください。

次に読む

出典

総務省統計局・厚生労働省の公表資料の生テキストと、e-Gov法令検索の条文を読んで確認。

この記事は一般的な情報提供であり、個別の事案に対する助言ではありません。ある従業員がパートタイム・有期雇用労働法2条の短時間労働者・有期雇用労働者に当たるかどうか、待遇差が同法8条の「不合理と認められる相違」に当たるかどうかは、所定労働時間・契約内容・職務の内容などを踏まえて事案ごとに判断されます。自社の雇用区分の整理、待遇差の説明資料、社会保険の加入判定については、社会保険労務士・弁護士、または所轄の労働基準監督署・都道府県労働局の雇用環境・均等部(室)にご確認ください。

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