除却とは|固定資産の廃棄・有姿除却の判定表と仕訳例
除却は、廃棄などで使わなくなった固定資産を帳簿から外す処理です。現物を残す有姿除却では、単に「今は使っていない」だけで法人税の損金にできません。
経理で確認するのは、資産の状態、除却直前の帳簿価額、廃棄や使用廃止を裏付ける資料です。ここでは法人が所有する機械などの通常の除却を扱い、判定表から仕訳と台帳照合までをつなげます。
一括償却資産やリースの中途解約、将来の撤去債務は通常の廃棄と処理が異なるため、本記事の仕訳例の対象外です。
廃棄・有姿除却・一時休止の判定表
廃棄・有姿除却・一時休止は、資産の状態と再使用の予定を確認して区別します。廃棄は物理的な処分、除却はそれに対応する帳簿処理を指します。
現場には、捨てたのか、現物を残して使用を廃止したのか、再び使う予定があるのかを確認します。
| 状態 | 判断の入口 | 経理で確認するもの |
|---|---|---|
| 廃棄・取壊し済み | 処分の事実と時期を確認する | 対象資産、処分日、直前の帳簿価額、残存物、撤去費用 |
| 現物が残り、使用を廃止 | 有姿除却の要件に該当するか確認する | 下の要件表、再使用の可能性、処分見込価額 |
| 一時休止・予備として保管 | 未使用という事実だけで有姿除却にしない | 再稼働・転用の計画、現場の保管目的 |
| 代金を受け取って譲渡 | 売却取引として対価と帳簿価額を確認する | 売買・引渡しの資料、入金額、売却損益 |
収益性が下がった資産の価額を切り下げる減損損失は、廃棄により帳簿から外す処理とは分けて検討します。使っていない資産の検討も、除却だけで完結するとは限りません。
廃棄の損失計算と仕訳
廃棄の仕訳では、除却直前の帳簿価額と撤去費用を分けます。帳簿価額は取得価額ではなく、除却直前に残っている価額です。
機械の取得価額と減価償却累計額を混ぜず、廃棄によって消す残高と撤去のための支払を分けます。
直接法は償却の都度、資産勘定を減らす記帳方法です。間接法は取得価額を資産勘定に残し、別の減価償却累計額を使います。有形固定資産の表示については、会社計算規則の減価償却累計額の表示規定が控除項目による表示と直接控除を定めています。
税込経理の法人の機械を除却する架空例です。除却直前までの償却処理は済み、会計と税務の帳簿価額に差はないものとします。残存物・売却収入はなく、撤去役務は当期に完了し、費用の債務が確定して現金で支払ったものとします。
| 項目 | 金額・計算 |
|---|---|
| 取得価額 | 1,200,000円 |
| 除却直前の減価償却累計額 | 900,000円 |
| 除却直前の帳簿価額 | 1,200,000円 − 900,000円 = 300,000円 |
| 撤去費用の現金支払 | 40,000円 |
| 設例の損失合計 | 300,000円 + 40,000円 = 340,000円 |
上の廃棄の架空例を記帳します。残存物・売却収入はなく、当期に撤去役務が完了し債務が確定して現金払い、除却直前の償却処理済みという前提です。
| 記帳方法・取引 | 借方 | 貸方 |
|---|---|---|
| 直接法:機械の除却 | 固定資産除却損 300,000円 | 機械装置 300,000円 |
| 間接法:機械の除却 | 減価償却累計額 900,000円 固定資産除却損 300,000円 | 機械装置 1,200,000円 |
| 両方法共通:撤去費の支払 | 固定資産除却損 40,000円 | 現金 40,000円 |
撤去費用をまとめて固定資産除却損に含めるか、別の費用科目で管理するかは、自社の科目設定に合わせます。上の設例は廃棄による残高の消去と撤去の支払を別の行にしたものです。合算額をもう一度仕訳するものではありません。
当期に役務が完了して期末までに債務が確定した撤去費を、この設例では費用にしています。将来の見積撤去費や新たな資産の取得価額に含める費用は、この例に当てはめません。
除却前の償却計算は減価償却計算ツールへ有姿除却では処分見込価額を残す
有姿除却では、要件を満たす固定資産の帳簿価額から処分見込価額を控除して、除却損を計算します。現物を解体・廃棄していなくても、所定の要件を満たせば除却損を損金にできる取扱いです。
法人税基本通達の有姿除却は、次のような資産を挙げています。
| 資産の区分 | 要件 | 確認の着眼点 |
|---|---|---|
| 使用を廃止した固定資産 | 今後通常の方法により事業の用に供する可能性がないと認められること | 使用廃止の決定と、再稼働・転用の可能性を支える状況 |
| 特定製品の生産専用の金型等 | 製品の生産中止により、将来使用される可能性がほとんどないことが、その後の状況等から明らかなこと | 生産中止の事実、その後の受注・補修部品の生産予定 |
「倉庫に移した」「今期の受注がない」といった事情だけで、上の要件を満たすと決めないことが大切です。使用廃止を承認した資料だけでなく、設備の状態や製品の生産計画など、判断を支える事情も整理します。
現物が残るため、鉄くず等としての処分見込価額があれば、その分まで損失に含めません。
有姿除却の架空例です。使用を廃止し、今後通常の方法で事業に使う可能性がないと認められる法人の機械を想定します。会計と税務の簿価は一致し、除却直前までの償却処理済みで、撤去費用は発生しないものとします。
| 項目 | 金額・計算 |
|---|---|
| 除却直前の帳簿価額 | 300,000円 |
| 処分見込価額(有姿除却の架空例の設定) | 50,000円 |
| 有姿除却損(架空例) | 300,000円 − 50,000円 = 250,000円 |
| 有姿除却後に残す価額(架空例) | 50,000円 |
処分見込価額は、将来の処分で見込む価額です。すでに代金を受け取った売却収入とは区別します。有姿除却後も現物や残した価額を追えるよう、管理番号と所在の記録を残します。
建物の取壊しは取得目的を確認する
建物の取壊しは、建替えのためか、取得当初から土地を使う目的だったのかで扱いが分かれます。
法人がまだ使用に耐える建物等を取り壊し、代わりの建物等を取得した場合の取扱いです。損金算入額と年度は、法人税基本通達7-7-1で確認します。ただし、土地取得目的の次の取扱いを除きます。
一方、土地と建物等を一緒に取得し、当初から建物等を取り壊して土地を利用する目的が明らかと認められる場合があります。土地の取得価額に算入する範囲は、法人税基本通達7-3-6で確認します。
土地には借地権を含み、自己所有地上の借地人の建物等を取得した場合も対象です。取得後の取壊着手の状況などで当初の目的を確認します。詳細は法人税基本通達の土地とともに取得した建物等の取壊し費等を参照してください。
また、法人の減価償却資産では、会計上の除却損をそのまま申告上の損金としない場合があります。法人税基本通達の償却費の損金経理は、減価償却資産について計上した除却損等のうち、損金にならなかった金額を償却費として損金経理した金額に含めるとしています。会計と税務の帳簿価額が異なる場合は、その差額も照合します。
ソフトウエアの除却
ソフトウエアは、物理的な廃棄がなくても、一定の場合に損金算入できる取扱いがあります。ソフトウエアを今後事業の用に供しないことが明らかな事実がある場合に、その事実が生じた日の属する事業年度で損金算入できます。対象額は帳簿価額から、処分見込価額があればそれを控除した残額です。
| 区分 | 不使用等が明らかになる事実の例 |
|---|---|
| 自社利用 | 処理対象業務が廃止され不使用が明らか、又は機器・OSの変更等で他のソフトを使い、従来のソフトの不使用が明らか |
| 複写販売する原本 | 新製品の出現・版の更新等により、今後販売しないことが社内稟議や販売流通業者への通知等で明らか |
新しいソフトを購入しても、旧ソフトを継続利用するなら、それだけで除却の根拠にはなりません。旧業務の終了記録や移行完了報告など、使用しなくなった事実とその時点を確認します。要件の全文は法人税基本通達のソフトウエアの除却にあります。
台帳と証拠資料を突き合わせる
除却した資産をたどれるよう、台帳の減少記録と証拠資料を突き合わせます。固定資産台帳の元の記録を削除するより、取得から除却までをたどれるように、減少の記録を残す方法が確認しやすくなります。
廃棄の請求書に書かれた機械と、台帳で消す機械が同じものかを資産番号・型番で照合します。
| 確認すること | 突き合わせる資料の例 |
|---|---|
| どの資産か | 資産番号、設置場所、型番・製造番号の写真、台帳の取得記録 |
| いつ廃棄・取壊しをしたか | 引取書、作業完了報告、廃棄証明、処分前後の写真 |
| 有姿除却の要件をどう確認したか | 使用廃止の稟議、生産中止の通知、設備の状態・転用可能性の調査記録 |
| 残す価額はいくらか | 処分業者の見積り、評価の根拠、算定時点を記した資料 |
| 帳簿にいくら残っているか | 除却直前の償却明細、取得価額と累計額、会計と税務の差額明細 |
| 撤去費を重ねて計上していないか | 契約・完了報告・請求書、未払計上と支払仕訳の対応 |
これは判断を説明する資料の例で、法定の統一された提出書類セットではありません。写真や稟議書があれば損金算入が確定するわけでもありません。産業廃棄物の管理票など、処分方法に応じた別の手続きも確認します。
台帳では除却日・事由・数量・金額・相手方を仕訳や資料と対応させ、除却後の残高を元帳と照合します。有姿除却は現物と処分見込価額が残る点も備考に記録します。
記載項目や保存期間は固定資産台帳の作り方、一括償却資産を廃棄した場合の税務処理は少額減価償却資産と一括償却資産で確認できます。
除却の確認は、現物の状態から始めます。廃棄の事実と直前の簿価を確認し、現物が残る場合は有姿除却の要件と処分見込価額を調べます。仕訳・台帳・資料が同じ資産と事実を示すようにそろえます。
よくある質問
使っていない機械は有姿除却できますか?
未使用というだけでは判断できません。法人税の有姿除却では、使用を廃止し今後通常の方法で事業に供する可能性がないと認められる資産などが対象です。一時休止や予備機の保管とは区別し、現物が残る場合の要件を本文の表で確認します。
除却損と撤去費用は同じ金額ですか?
違います。廃棄で帳簿から消す未償却残高と、撤去業者などへの費用は別のものです。通常の廃棄の仕訳例では、未償却残高の消去と当期に完了した撤去の支払を分けて示しています。
有姿除却をしたら帳簿価額はなくなりますか?
処分見込価額があれば、その分は残します。法人税基本通達の有姿除却の要件を満たす場合でも、損金にできる除却損は帳簿価額から処分見込価額を控除した額です。
出典
- 国税庁「法人税基本通達 第七章第七節第一款 除却損失等の損金算入」(建物等の取壊し、有姿除却、ソフトウエアの除却)
- 国税庁「法人税基本通達 第七章第三節第一款」(土地とともに取得した建物等の取壊し費等)
- 国税庁「法人税基本通達 第七章第五節 償却費の損金経理」
- e-Gov法令検索「法人税法」第二十二条
- e-Gov法令検索「会社計算規則」第七十九条
本記事は一般的な情報提供を目的としたものです。個別の判断は税務署・税理士にご確認ください。