税金・経理・補助金ツールズ

租税公課とは — 法律がこの語を使うのは「経費にできない税金」を並べる見出しの中だけ

結論から言うと、租税公課とは、事業に関して納める税金(租税)と、税金以外で国・地方公共団体・公的な団体に納める負担金や賦課金(公課)をまとめて処理する勘定科目です。固定資産税・自動車税・印紙税・不動産取得税・登録免許税・事業所税・商工会議所などの賦課金がここに入り、消費税も税込経理方式を選んでいれば納付額がここに入ります。

ただし「租税公課に計上した=経費(損金・必要経費)になる」ではありません。法人税法38条と55条、所得税法45条が法人税・地方法人税・住民税、延滞税・各種加算税・過怠税、罰金・科料・過料・交通反則金・課徴金を名指しで損金・必要経費から外しています。実は「租税公課」という語そのものは法人税法・所得税法の条文本文に一度も出てきません。出てくるのは、法人税法の目次「第五目 租税公課等(第三十八条―第四十一条の二)」と所得税法の「第一目 家事関連費、租税公課等(第四十五条・第四十六条)」という見出しだけで、その見出しの下に並ぶ条文は全部が「損金の額に算入しない」「必要経費に算入しない」と書かれた条文です。法律にとって租税公課は「経費の名前」ではなく、「経費にしてはいけない税金を並べる棚の名前」だということになります。

この記事は、①条文での「租税公課」の位置、②損金になる税金・ならない税金の一覧、③損金になるかどうかとP/Lのどの行に載せるかは別の軸であること、④いつの事業年度・年分の経費になるか、⑤消費税が租税公課に出てくるのは税込経理のときだけであること、⑥個人事業主の場合、⑦仕訳例、の順で整理します。不動産取得税を取得価額に入れるか租税公課にするかという個別論点は 不動産取得税の仕訳 が持っているので、本記事ではリンクで譲ります。

条文に「租税公課」は出てこない — 目次の見出しと別表五(二)にだけある語

まず「租税公課」という語が法令のどこにあるかを、e-Gov法令API v2 で全文を取得して数えました。

法令条文本文での出現出てくる場所
法人税法0回目次の「第五目 租税公課等(第三十八条―第四十一条の二)」と、昭和40年の附則の経過規定の見出し
所得税法0回目次の「第一目 家事関連費、租税公課等(第四十五条・第四十六条)」
法人税法施行令・所得税法施行令・所得税法施行規則0回
法人税法施行規則0回別表五(二)の名称「租税公課の納付状況等に関する明細書」に1回だけ
会社計算規則・財務諸表等規則0回—(P/Lの税金の行は「法人税、住民税及び事業税」。後述)
国税通則法・消費税法0回

法人税法の「第五目 租税公課等」に並ぶのは、38条(法人税額等の損金不算入)、39条(第二次納税義務に係る納付税額の損金不算入等)、39条の2(外国子会社から受ける配当等に係る外国源泉税等の損金不算入)、40条(法人税額から控除する所得税額の損金不算入)、41条(法人税額から控除する外国税額の損金不算入)、41条の2(分配時調整外国税相当額の損金不算入)です。6本すべてが「損金不算入」の条文です。所得税法の「第一目 家事関連費、租税公課等」も、45条(家事関連費等の必要経費不算入等)と46条(所得税額から控除する外国税額の必要経費不算入)の2本で、やはり両方とも不算入の条文です。

つまり法律の側から見ると、租税公課は「経費になる税金の名前」ではなく、税金のうち経費にしてはいけないものを列挙するための節の見出しです。勘定科目としての「租税公課」は、国税庁の青色申告決算書や会計慣行が使ってきた名前で、そこに計上した税金が損金・必要経費になるかどうかは、この見出しの下の条文で別に決まります。

なお法人税法施行規則の別表五(二)「租税公課の納付状況等に関する明細書」は、法人税申告書の別表の1枚で、法人税・住民税・事業税などの期首未納額・当期発生額・納付額・期末未納額を税目ごとに記録する明細書です。法令が「租税公課」という語を使っている唯一の実体がこの別表で、そこで追いかけているのは「納付状況」、つまり納税充当金で払ったか損金経理で払ったかであって、ここでも「経費になるか」を決めているわけではありません。

租税公課の一覧 — 損金・必要経費になるものとならないもの

損金・必要経費にならない税金は、法人税法38条・55条と所得税法45条が名指しで列挙しています。裏返すと、列挙に無い税金は22条3項(法人)・37条1項(個人)の一般原則で損金・必要経費になります。法人税法38条2項はこう書いています。

内国法人が納付する次に掲げるものの額は、その内国法人の各事業年度の所得の金額の計算上、損金の額に算入しない。

この「次に掲げるもの」が、相続税法の規定による贈与税・相続税(人格のない社団等に課されるもの)と、地方税法の規定による道府県民税・市町村民税(都民税を含む)です。1項は法人税と地方法人税を損金不算入にしています。延滞税・加算税・罰金は別の条文、55条4項・5項です。

国税に係る延滞税、過少申告加算税、無申告加算税、不納付加算税及び重加算税並びに印紙税法(昭和四十二年法律第二十三号)の規定による過怠税
罰金及び科料(通告処分による罰金又は科料に相当するもの及び外国又はその地方公共団体が課する罰金又は科料に相当するものを含む。)並びに過料

「通告処分による罰金又は科料に相当するもの」が、道路交通法の交通反則金です。国税庁タックスアンサー No.5300 はこれらを4つの群にまとめていて、(1)法人税、地方法人税、都道府県民税および市町村民税の本税、(2)各種加算税および各種加算金、延滞税および延滞金(地方税の納期限の延長に係る延滞金は除く)ならびに過怠税、(3)罰金および科料ならびに過料、(4)法人税額から控除する所得税、復興特別所得税および外国法人税、としています。これを踏まえて、実務でよく出る税金・負担金を一覧にします。

税金・負担金法人(損金)個人(必要経費)根拠
固定資産税・都市計画税損金になる業務用部分は必要経費法人税法38条・55条の列挙に無い/所得税基本通達37-5
自動車税・軽自動車税損金になる業務用部分は必要経費同上(国税庁No.2215)
不動産取得税損金になる(取得価額に入れる選択も可)必要経費No.5300・No.2215。選択は 不動産取得税の仕訳
登録免許税損金になる(特許権等は取得価額、車両・船舶等は選択)同左所得税基本通達37-5かっこ書き・49-3、No.2215
印紙税損金になる必要経費列挙に無い
事業所税損金になる必要経費No.5300(申告納税方式の例示)・37-5
法人事業税・特別法人事業税(法人)/個人事業税損金になる(時期は申告の日。9-5-2の特例あり)必要経費38条の列挙に無い(法人税とは)/45条の列挙に無い・所得税基本通達37-7
消費税・地方消費税(税込経理方式)損金になる必要経費国税庁No.6901(税抜経理なら損益に出てこない)
商工会議所・同業組合等の賦課金、受益者負担金、障害者雇用納付金損金になる(繰延資産に当たる部分を除く)必要経費所得税基本通達37-8・37-9・37-9の2(〔租税公課〕の節)
利子税(申告期限の延長・延納に伴うもの)損金になる事業に係る分は必要経費法人税法38条1項3号・所得税法45条1項2号かっこ書き
法人税・地方法人税損金にならない法人税法38条1項
法人住民税(法人税割・均等割)/個人住民税損金にならない必要経費にならない法人税法38条2項2号/所得税法45条1項4号
所得税・復興特別所得税(法人税額から控除する所得税は不算入)必要経費にならない法人税法40条/所得税法45条1項2号
延滞税・過少申告加算税・無申告加算税・不納付加算税・重加算税・過怠税損金にならない必要経費にならない法人税法55条4項1号/所得税法45条1項3号
地方税の延滞金・加算金(納期限の延長に係る延滞金を除く)損金にならない必要経費にならない法人税法55条4項2号/所得税法45条1項5号
罰金・科料・過料・交通反則金損金にならない必要経費にならない法人税法55条5項1号/所得税法45条1項7号
独占禁止法・景品表示法・金融商品取引法などの課徴金損金にならない必要経費にならない法人税法55条5項2〜8号/所得税法45条1項9〜15号
国民健康保険料・国民年金保険料(個人事業主本人)必要経費ではなく社会保険料控除所得税法74条2項2号・5号

見分け方の軸は2つです。①その税金が「所得に対する税金」か(法人税・地方法人税・住民税・所得税は、所得そのものにかかる税金なので、所得の計算に入れると循環する。だから不算入)、②制裁として課されるものか(延滞税・加算税・過怠税・罰金・課徴金は、経費にしてしまうと制裁が軽くなる。だから不算入)。この2つに当たらない税金、つまり固定資産税や印紙税のように「事業を営むうえでかかるコストとしての税金」は損金・必要経費になります。事業税は所得を課税標準にしますが、法人税法38条も所得税法45条も列挙していないので損金・必要経費です。

紛らわしいのが利子税と延滞税です。国税通則法2条4号はどちらも附帯税と定義しています。

国税のうち延滞税、利子税、過少申告加算税、無申告加算税、不納付加算税及び重加算税をいう。

この6つのうち損金・必要経費になるのは利子税だけです。利子税は申告期限の延長や延納を認めてもらう代わりに払う「利息」なので、法人税法38条1項3号が法人税の損金不算入の枠から外し、所得税法45条1項2号のかっこ書きが事業に係る分を必要経費不算入の枠から外しています。延滞税は期限に遅れたことへの制裁なので不算入です。名前は似ていますが扱いは正反対です。

法人税・地方法人税・法人住民税・事業税の実額を試算する(法人税 計算ツール)

「損金になるか」と「P/Lのどの行か」は別の軸 — 事業税は損金だが法人税等の行

「租税公課」という科目で迷いが起きる2つ目の理由は、損金になるかどうかと、損益計算書のどの行に載せるかが別の軸だからです。財務諸表等規則95条の5第1項1号は、税引前当期純利益の次に記載する項目をこう定めています。

当該事業年度に係る法人税、地方法人税、防衛特別法人税、住民税並びに利益に関連する金額を課税標準として課される事業税及び特別法人事業税(以下「法人税、住民税及び事業税」という。)(次号に掲げる項目に該当するものを除く。)

会社計算規則2条3項27号も、税効果会計の定義の中で法人税等を「法人税、住民税及び事業税(利益に関連する金額を課税標準として課される事業税をいう。)」と定義しています。つまり所得(利益)を課税標準とする事業税・特別法人事業税は、損金にはなるけれども、P/Lでは販売費及び一般管理費の「租税公課」ではなく「法人税、住民税及び事業税」の行に載せるのが制度上の区分です。逆に延滞税や加算税は、損金にはならないけれども、法人税等の行ではなく租税公課や雑損失で処理して、申告書の別表四で加算する、という組合せになります。

横軸=損金になるか/縦軸=P/Lのどの行に載せるか 損金になる 損金にならない 法人税、住民税 及び事業税の行 租税公課の行 (販管費・雑損失) 事業税(所得割) 特別法人事業税 損金の時期は申告の日 (9-5-1)。直前年度分は 未申告でも算入可(9-5-2) 法人税・地方法人税 法人住民税(法人税割・均等割) 38条1項・2項2号 別表四で加算(納税充当金) 固定資産税・自動車税 印紙税・不動産取得税 登録免許税・事業所税 消費税(税込経理)・賦課金 =いわゆる「経費になる租税公課」 延滞税・加算税・過怠税 地方税の延滞金・加算金 罰金・科料・過料・交通反則金 課徴金 55条4〜5項。別表四で加算
税金は「損金になるか」と「P/Lのどの行に載せるか」の2軸で4つに分かれる。租税公課の行に載るのは左下と右下で、右下は損金にならないので別表四で加算する。事業税は損金になるのに租税公課の行ではなく法人税等の行に載せる(財務諸表等規則95条の5・会社計算規則2条3項27号)。

実額で確かめます。法人税とは の設例(所得1,000万円・資本金1,000万円・従業者50人以下・標準税率)では、法人税1,664,000円、地方法人税171,300円、法人住民税の法人税割116,400円、均等割70,000円、事業税492,000円、特別法人事業税182,000円、合計2,695,700円でした。このうち損金にならないのは法人税・地方法人税・住民税の合計2,021,700円、損金になるのは事業税と特別法人事業税の合計674,000円です。P/Lではこの6つ全部を「法人税、住民税及び事業税」の1行にまとめて表示しますが、申告書の別表四では2,021,700円の側だけを所得に足し戻します。「法人税等の行に載っている=全部損金不算入」でも「租税公課の行に載っている=全部損金」でもない、というのがこの図の言いたいことです。

いつの損金・必要経費になるか — 申告の日、賦課決定の日、納期の開始の日

損金・必要経費になる税金について次に問題になるのが「いつの事業年度(年分)の経費か」です。固定資産税の納税通知書は決算をまたいで届き、事業税は決算が締まってから申告します。法人税基本通達9-5-1は税金を納め方の方式で3つに分け、それぞれ損金算入の事業年度を定めています。賦課課税方式(固定資産税・自動車税・不動産取得税・都市計画税など)についてはこうです。

賦課決定のあった日の属する事業年度とする。ただし、法人がその納付すべき税額について、その納期の開始の日(納期が分割して定められているものについては、それぞれの納期の開始の日とする。)の属する事業年度又は実際に納付した日の属する事業年度において損金経理をした場合には、当該事業年度とする。
納め方の方式代表的な税金原則の損金算入時期例外(損金経理したとき)
申告納税方式事業税・特別法人事業税・事業所税・酒税・消費税(税込経理)納税申告書を提出した日の事業年度(更正・決定はその日)直前年度分の事業税・特別法人事業税は、未申告でも当期の損金にできる(9-5-2)。申告期限未到来の事業所税等を原価に含めて未払金計上したときはその事業年度
賦課課税方式固定資産税・都市計画税・自動車税・不動産取得税賦課決定のあった日の事業年度納期の開始の日(分割納期はそれぞれの納期)または実際に納付した日の事業年度に損金経理したときはその事業年度
特別徴収方式ゴルフ場利用税・軽油引取税納入申告書を提出した日の事業年度申告期限未到来分を未払金計上したときはその事業年度
利子税・納期限延長の延滞金利子税、地方税の納期限延長に係る延滞金納付の日の事業年度当期対応の未納額を未払金計上したときはその事業年度

固定資産税で具体的に見ます。地方税法362条1項は納期をこう定めています。

固定資産税の納期は、四月、七月、十二月及び二月中において、当該市町村の条例で定める。

3月決算の法人に4月〜6月ごろ届く納税通知書は、4月1日〜翌年3月31日の事業年度に賦課決定されたものです。原則どおりなら通知書に書かれた年税額の全額が、その事業年度の損金です(第4期の納期が翌年2月でも)。一方、納期ごとに「租税公課/現金預金」と損金経理していく処理も認められていて、その場合は第4期分(納期2月)はやはり同じ事業年度に入りますが、仮に12月決算の法人なら第4期分は翌事業年度の損金になります。どちらを選ぶかで損金の期がずれるのは、納期が分割されていて決算期をまたぐ税金だけです。

事業税は逆向きに注意が要ります。3月決算の事業税は5月末に申告するので、原則(9-5-1(1))では翌事業年度の損金です。決算で「法人税、住民税及び事業税/未払法人税等」と未払計上しても、法人税法上はその期の損金にならず別表四で加算し、翌期に申告して納めたときに減算する、というのが基本形です。ただし通達9-5-2は、直前年度分の事業税・特別法人事業税に限って、当期末までに申告等がされていなくても当期の損金にしてよいとしています(法人税の更正・決定をするときは標準税率で計算した額)。この特例が「前期分の事業税は当期の損金」という実務の根拠です。

個人事業主の場合は所得税基本通達37-6が原則を定めています。その年12月31日までに申告等により納付すべきことが具体的に確定したものがその年分の必要経費で、賦課課税方式のうち納期が分割されている税額は、各納期の税額をそれぞれ納期の開始の日または実際に納付した日の年分の必要経費にすることもできる、という構造は法人と同じです。国税庁タックスアンサー No.2215 は固定資産税の第4期分を例に、賦課決定を受けた年分が原則だが、納期の開始の日である翌年分、または実際に納付した年分の必要経費にもできると説明しています。

延滞税は「納めた日」が関係ない延滞税・加算税は55条4項で損金不算入なので、いつ納めても損金にはなりません。時期の問題が生じるのは損金になる税金だけです。延滞税の率や計算は 中間申告の記事、加算税の種類と率は 修正申告と更正の請求 が持っています。

消費税が租税公課に出てくるのは税込経理のときだけ

「租税公課 消費税」という形で調べられることが多いのは、消費税が租税公課に出てくるかどうかが経理方式で変わるからです。国税庁タックスアンサー No.6901 は、税抜経理方式なら課税売上の消費税は仮受消費税等、課税仕入の消費税は仮払消費税等で処理し、納付額は両者の差額なので所得税・法人税の課税所得には影響しないとしています。一方、税込経理方式なら売上も仕入も税込で計上し、納付すべき消費税等の額は租税公課として必要経費または損金の額に算入し、還付を受ける額は雑収入などとして総収入金額または益金の額に算入する、と説明しています。

税込経理の場合の計上時期も No.6901 が示していて、原則は申告書が提出された日の属する年または事業年度、更正・決定ならその日の年または事業年度です。ただし申告期限未到来の納税申告書に記載すべき消費税等の額を未払金に計上した場合(法人は損金経理により)は、その計上した年または事業年度の必要経費・損金にできます。決算で「租税公課/未払消費税等」と計上しておけば、翌期の申告を待たずに当期の費用にできる、ということです。

税抜経理と税込経理のどちらを選ぶかで、交際費の1万円判定や少額減価償却資産の10万円判定も動きます。その比較は 税抜経理と税込経理 に譲ります。なお免税事業者は税込経理しか選べないので、免税事業者のうちは消費税が損益に出てくること自体がありません。

個人事業主の租税公課 — 住民税は事業主貸、固定資産税は按分

個人事業主の場合、所得税法45条1項が必要経費に算入しないものを列挙しています。

居住者が支出し又は納付する次に掲げるものの額は、その者の不動産所得の金額、事業所得の金額、山林所得の金額又は雑所得の金額の計算上、必要経費に算入しない。

列挙されているのは、1号の家事上の経費、2号の所得税(事業に係る利子税を除く)、3号の所得税以外の国税の延滞税・加算税・過怠税、3号の2の森林環境税、4号の住民税、5号の地方税の延滞金・加算金、7号の罰金・科料・過料、8号の政令で定める損害賠償金、9号以下の課徴金です。住民税については4号がこう書いています。

地方税法(昭和二十五年法律第二百二十六号)の規定による道府県民税及び市町村民税(都民税及び特別区民税を含む。)

したがって個人事業主が事業用口座から納めた所得税・住民税は、租税公課ではなく事業主貸で処理します(事業主貸・事業主借とは)。国民健康保険料・国民年金保険料も必要経費ではなく、所得税法74条2項2号・5号の社会保険料控除として確定申告書の所得控除欄で引きます。事業主貸で処理するのはこちらも同じです。

逆に必要経費になる税金は所得税基本通達37-5が列挙しています。

業務の用に供される資産に係る固定資産税、登録免許税(登録に要する費用を含み、その資産の取得価額に算入されるものを除く。)、不動産取得税、地価税、特別土地保有税、事業所税、自動車取得税等は、当該業務に係る各種所得の金額の計算上必要経費に算入する。

ポイントは「業務の用に供される資産に係る」という限定です。自宅兼事務所の固定資産税や、家事にも使う車の自動車税は、業務に使う割合だけが必要経費になります。按分の考え方と「5割を超えないと経費にできない」という誤解については 家事按分の記事 が条文と通達で整理しています。個人事業税は45条の列挙に無いので必要経費で、所得税基本通達37-7が廃業年の事業税を見込みで必要経費にする特例を置いているのも、事業税が必要経費であることを前提にした規定です。

「公課」の中身も、所得税基本通達の〔租税公課〕の節を見ると具体的に分かります。37-8が土地改良法・道路法・都市計画法などで賦課される受益者負担金、37-9が商工会議所・医師会・各種協同組合などが法令や定款に基づいて賦課する費用、37-9の2が汚染負荷量賦課金・障害者雇用納付金を、それぞれ必要経費に算入するとしています(繰延資産に当たる部分を除く)。つまり公課とは、税金ではないが法令・定款に基づいて公的に賦課される負担金・賦課金・納付金で、任意加入の団体の会費(諸会費)や社会保険料とは区別されます。

固定資産税・都市計画税がいくらになるかを試算する(固定資産税 計算ツール)

仕訳例

ここまでの整理を仕訳に落とします。金額は例です。

取引借方貸方備考
固定資産税の納税通知書(年税額120,000円)が届いた(賦課決定)租税公課 120,000未払金 120,000原則の処理。賦課決定の事業年度の損金。各納期に未払金/現金預金で消す
固定資産税の第1期分30,000円を納付(納期ごとに損金経理する方法)租税公課 30,000現金預金 30,0009-5-1(2)ただし書き。決算期をまたぐ納期分は翌期の損金になる
収入印紙4,000円を購入して契約書に貼付租税公課 4,000現金 4,000損金。貼り忘れの過怠税(印紙税法20条、原則3倍・自主申告で1.1倍)は55条4項で損金不算入
前期分の法人事業税・特別法人事業税674,000円を申告納付(法人)法人税、住民税及び事業税 674,000現金預金 674,000損金になるが、表示は租税公課ではなく法人税等の行。決算で未払法人税等に含めていたときは未払法人税等/現金預金
法人税の延滞税15,000円を納付租税公課(または雑損失) 15,000現金預金 15,000損金不算入。別表四で加算
消費税の確定申告(税込経理方式)で納付額300,000円を決算時に計上租税公課 300,000未払消費税等 300,000No.6901。損金経理で未払金計上すれば当期の損金。税抜経理なら仮受消費税等/仮払消費税等の精算で損益に出ない
個人事業主が事業用口座から住民税80,000円を納付事業主貸 80,000普通預金 80,000所得税法45条1項4号。租税公課にしない
個人事業主が自宅兼事務所の固定資産税100,000円を納付(事業割合30%)租税公課 30,000 / 事業主貸 70,000普通預金 100,000所得税基本通達37-5の「業務の用に供される資産に係る」部分だけ必要経費

法人税・住民税を期中に納めたときに「租税公課/現金預金」と仕訳してしまっても、損金不算入の処理(別表四の加算)が正しく行われていれば税額は変わりません。ただし決算書の表示としては財務諸表等規則95条の5・会社計算規則の区分に合わせて「法人税、住民税及び事業税」に振り替えるのが通常で、税効果会計 を適用している会社では法人税等の額が税引後利益の見え方に直結するので、科目の選び方が決算書の読まれ方を変えます。

よくある質問

Q. 租税公課とは何ですか?

A. 事業に関して納める税金(租税)と、税金以外で法令や定款に基づいて公的に賦課される負担金・賦課金(公課)をまとめて処理する勘定科目です。固定資産税・自動車税・印紙税・不動産取得税・登録免許税・事業所税・商工会議所等の賦課金・税込経理方式の消費税などが入ります。ただし「租税公課」という語は法人税法・所得税法の条文本文には出てこず、損金不算入・必要経費不算入の条文を並べる節の見出し(法人税法38〜41条の2、所得税法45・46条)と法人税法施行規則の別表五(二)の名称にあるだけなので、この科目に計上したことと経費になることは別です。

Q. 租税公課に計上した税金は、すべて損金・必要経費になりますか?

A. なりません。法人税法38条(法人税・地方法人税・住民税)、55条4項(延滞税・各種加算税・過怠税・地方税の延滞金と加算金)、55条5項(罰金・科料・過料・交通反則金・課徴金)、所得税法45条1項(所得税・住民税・延滞税等・罰金等)が名指しで損金・必要経費から外しています。これらを租税公課や雑損失で費用計上した場合は、法人税の申告書の別表四で所得に加算し、個人は青色申告決算書・収支内訳書の必要経費に含めません。

Q. 法人税や法人住民税を租税公課で仕訳してはいけませんか?

A. 税額の計算だけなら、別表四で損金不算入の加算をすれば結果は同じです。ただし損益計算書の表示は、財務諸表等規則95条の5第1項1号と会社計算規則2条3項27号が法人税・地方法人税・防衛特別法人税・住民税と利益を課税標準とする事業税・特別法人事業税を「法人税、住民税及び事業税」として税引前当期純利益の次に置くと定めているので、決算書ではこの行に集めます。事業税は損金になるのにこの行に載せる、延滞税は損金にならないのに租税公課や雑損失に載せる、というように「損金になるか」と「どの行か」は別の軸です。

Q. 固定資産税はいつの事業年度・年分の経費になりますか?

A. 原則は賦課決定のあった日の属する事業年度(法人税基本通達9-5-1(2))・年分(所得税基本通達37-6)で、納税通知書に書かれた年税額の全額がその期の損金・必要経費です。ただし納期の開始の日または実際に納付した日の属する事業年度・年分に損金経理(必要経費算入)する処理も認められています。固定資産税の納期は地方税法362条1項により4月・7月・12月・2月中で市町村の条例が定めるので、納期ごとに費用計上する方法を取ると、決算期をまたぐ納期分は翌期の経費になります。

Q. 消費税は租税公課になりますか?

A. 税込経理方式を選んでいる場合だけです。国税庁タックスアンサー No.6901 は、税込経理方式では納付すべき消費税等の額を租税公課として必要経費または損金の額に算入し、還付額は雑収入などとして収入・益金に算入するとしています。税抜経理方式では仮受消費税等と仮払消費税等の差額が納付額になり、課税所得には影響しないので租税公課には出てきません。税込経理の計上時期は申告書を提出した日の属する年・事業年度が原則で、申告期限未到来分を未払金に計上(法人は損金経理)したときはその年・事業年度の必要経費・損金にできます。

Q. 延滞税・加算税・交通反則金はなぜ経費になりませんか?

A. 法人税法55条4項1号が国税の延滞税・過少申告加算税・無申告加算税・不納付加算税・重加算税と印紙税法の過怠税を、同条5項1号が罰金・科料・過料(通告処分による罰金・科料に相当するもの、つまり交通反則金を含む)を損金不算入と定め、所得税法45条1項3号・7号が個人について同じ定めを置いているためです。制裁として課されるものを経費にすると、税金が減る分だけ制裁が軽くなってしまうからです。なお同じ附帯税でも利子税は法人税法38条1項3号・所得税法45条1項2号かっこ書きで損金・必要経費になります。

Q. 個人事業主の住民税や国民健康保険料は租税公課ですか?

A. どちらも租税公課(必要経費)にはなりません。住民税は所得税法45条1項4号が必要経費不算入と定めており、事業用口座から納めたときは事業主貸で処理します。国民健康保険料・国民年金保険料は所得税法74条2項2号・5号の社会保険料控除の対象で、必要経費ではなく所得控除として確定申告書で引きます。必要経費になるのは、所得税基本通達37-5が挙げる業務用資産の固定資産税・登録免許税・不動産取得税・事業所税・自動車税等と、45条の列挙に無い個人事業税・印紙税などです。

Q. 「公課」とは具体的に何を指しますか?

A. 税金ではないが法令や定款に基づいて公的に賦課される負担金・賦課金・納付金です。所得税基本通達の〔租税公課〕の節は、37-8で土地改良法・道路法・都市計画法等により賦課される受益者負担金、37-9で農業協同組合・中小企業協同組合・商工会議所・医師会等が法令・定款に基づき業務に関連して賦課する費用、37-9の2で汚染負荷量賦課金と障害者雇用納付金を、繰延資産に当たる部分を除いて必要経費に算入するとしています。任意加入の団体の会費は諸会費、健康保険・厚生年金の事業主負担は法定福利費で、公課とは区別して処理するのが一般的です。

出典

本記事は一般的な情報提供を目的としたものです。個別の判断は税務署・税理士にご確認ください。

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