年末調整の電子化とは — 令和3年4月以降は承認申請も従業員の事前の承諾等も要らないが、会社と従業員が講じる措置がある
結論から言うと、年末調整手続の電子化とは、従業員が保険会社等から控除証明書等をデータで受け取り、国税庁の年調ソフトなどで年末調整の申告書のデータを作り、データで受け取った控除証明書等のデータ(発行者の電子署名とその電子証明書が付いたもの)と一緒に勤務先に提供し(勤務先と従業員は FAQ 問2-9の措置を講じる)、勤務先がそのデータを給与システム等(取込みに対応しているもの)に取り込んで年税額を計算する仕組みです。国税庁のよくある質問(FAQ)は、年末調整関係書類を必ずデータで提供しなければならないわけではなく、従前どおり書面で提出しても差し支えないとしています。電子化は会社が選ぶ方式で、義務ではありません。
会社が従業員から年末調整の申告書をデータで受け取るのに、令和3年4月1日以降に受け取る分からは、税務署への承認申請は要らなくなりました。従業員から事前に承諾等を受けておく必要もありません(いずれも国税庁FAQ)。その代わり、所得税法198条2項と国税庁FAQ 問2-9が示す要件として、会社と従業員がそれぞれ措置を講じる必要があります(中身はデータで受け取るための措置の節)。源泉徴収票や給与明細をデータで渡す「電子交付」は別の制度で、こちらは事前に従業員の承諾を得る必要があります(給与所得の源泉徴収票と給与等の支払明細書は、会社が用いる電磁的方法の種類と内容を示したうえで、回答の期限と「期限までに回答が無ければ承諾があったものとみなす」旨をあらかじめ通知し、期限までに回答が無ければ承諾があったものとみなされます)。
この記事では、データで受け取れる書類とそれぞれ使えるようになった時期、会社が整える措置、控除証明書データの扱い、国税庁の年調ソフト、準備の段取り、データで受け取った書類の保存を、国税庁の「年末調整手続の電子化及び年調ソフト等に関するよくある質問(FAQ)(令和8年10月改訂版)」と所得税法の条文で確かめて整理します。特定の給与ソフトの紹介はしません。
紙の年末調整と電子化した年末調整の違い
国税庁の「年末調整手続の電子化の概要・メリット」は、これまでの手続と電子化後の手続を4つの段階で比べています。違いは、控除証明書等を書面(ハガキ等)で受け取って書き写すか、データで受け取って取り込むかにあります。
| 段階 | 紙の年末調整 | 電子化した年末調整 |
|---|---|---|
| 控除証明書等を受け取る | 従業員が保険会社・金融機関・税務署等から書面(ハガキ等)で受け取る | 従業員が保険会社等から電子データで受け取る |
| 申告書を作る | 従業員が書面の内容を保険料控除申告書・住宅ローン控除申告書に転記し、控除額を計算して記入する | 従業員が年調ソフト等に住所・氏名等を入力し、受け取ったデータを取り込む(自動入力・控除額の自動計算) |
| 勤務先に出す | 年末調整の申告書と控除証明書等を書面で提出する | 年末調整申告書のデータと、データで受け取った控除証明書等のデータ(発行者の電子署名とその電子証明書が付いたもの)を提供する(勤務先と従業員は FAQ 問2-9の措置を講じる。書面で受け取った証明書は書面で提出又は提示) |
| 勤務先が計算する | 控除額の検算と控除証明書等の確認をしてから年税額を計算する | 提供されたデータを給与システム等に取り込んで年税額を計算する(給与システム等がデータの取込みに対応している場合) |
国税庁はこの仕組みのメリットとして、従業員は手書きの記入や控除額の計算を省け、ハガキを紛失したときの再発行依頼も要らなくなること、勤務先は年調ソフトで作った申告書データを使えば控除額の検算が要らなくなり、控除証明書等データを使えば添付書類の確認の事務が減ることを挙げています。ただし、申告書データで年税額を計算するには、勤務先の給与システム等がそのデータの取込みに対応している必要があります。
データで受け取れる書類と、使えるようになった時期
国税庁FAQ 問1-5は、データでの提供の対象を、年末調整の申告書7種類と控除証明書等3種類の計10種類として挙げています。申告書ごとにデータで出せるようになった時期が違うので、FAQ 問1-6の表と問1-7・問1-14の説明をまとめると次のとおりです。
| 書類 | 申告書をデータで出せる時期 | 添付する証明書のデータ |
|---|---|---|
| 扶養控除等申告書 | 平成19年7月1日以降に提出するものからデータで提供できる | データで出せる証明書は無い(国外居住親族の親族関係書類・送金関係書類(該当する場合は留学ビザ等書類・38万円送金書類も)、勤労学生の証明書などは書面で提出又は提示。国外居住親族の書類が外国語で作成されている場合は訳文も提出又は提示) |
| 配偶者控除等申告書 | 前身の保険料控除申告書兼配偶者特別控除申告書が平成19年7月1日以降に提出するものからデータで提供でき、平成30年分からこの申告書に分かれた | データで出せる証明書は無い(非居住者である配偶者に係る控除を受ける場合の親族関係書類・送金関係書類は書面で提出又は提示。扶養控除等申告書の際に親族関係書類を提出又は提示していれば、その書類は不要。これらの書類が外国語で作成されている場合は訳文も提出又は提示) |
| 保険料控除申告書 | 平成19年7月1日以降に提出するものからデータで提供できる(平成30年分からの名称) | 保険料控除証明書(申告書をデータで出す場合に、発行者の電子署名と電子証明書が付いたデータを申告書と併せて提供)。生命保険料・地震保険料は令和2年10月1日以降に勤務先に提出するものから、社会保険料・小規模企業共済等掛金は令和4年10月1日以後に申告書を提出する場合から |
| 住宅借入金等特別控除申告書 | 令和2年10月以降に提出するものから | 住宅借入金等特別控除証明書と年末残高等証明書(申告書をデータで出す場合に、発行者の電子署名と電子証明書が付いたデータを併せて提供)。家屋の居住年が平成31年(令和元年)以後の場合だけで、年末残高等証明書は令和2年10月1日以降に交付を受けるものに限る。調書方式なら年末残高等証明書は不要 |
| 基礎控除申告書 | 令和2年10月以降に提出するものから | データで出せる証明書は無い |
| 所得金額調整控除申告書 | 令和2年10月以降に提出するものから | データで出せる証明書は無い |
| 特定親族特別控除申告書 | 令和7年12月1日以後に行う令和7年分の年末調整から(この年分から新設された申告書) | データで出せる証明書は無い(非居住者である特定親族に係る控除を受ける場合の親族関係書類・送金関係書類は書面で提出又は提示。扶養控除等申告書の際に親族関係書類を提出又は提示していれば、その書類は不要。これらの書類が外国語で作成されている場合は訳文も提出又は提示) |
注意したいのは、申告書をデータで出せても、添付する証明書までデータで出せるとは限らない点です。住宅ローン控除の住宅借入金等特別控除証明書と年末残高等証明書は、控除を受ける家屋の居住年が平成31年(令和元年)以後のものに限って、申告書をデータで出す場合に発行者の電子署名と電子証明書が付いたデータを申告書の記載事項と併せて提供でき(年末残高等証明書は令和2年10月1日以降に交付を受けるものに限る)、居住年が平成30年以前なら、調書方式で住宅ローン控除を受ける人の年末残高等証明書(提供そのものが不要)を除き、従来どおり書面で勤務先に出します(FAQ 問1-9・問1-10)。
また、国外居住親族に係る親族関係書類・送金関係書類や、勤労学生に該当する旨の証明書のように、FAQ 問1-5の控除証明書等に入っていない書類は、法令上データで提供できません。FAQ 問1-11は、書類の内容を年調ソフト等に手入力したうえで、書類そのものは従来どおり書面で提出又は提示するとしています。申告書の書き方そのものは年末調整の書類の書き方にまとめています。
義務かどうか、承認申請と従業員の承諾の扱い
年末調整の申告書をデータで出せる根拠は、所得税法198条2項です。条文は、給与等の支払者(勤務先)がデータの提供を適正に受けられる措置を講じているなど政令の要件を満たす場合に、給与等の支払を受ける居住者(従業員)が申告書の提出に代えて記載事項をデータで提供することができると定め、提供する従業員には氏名を明らかにする措置を求めています。
第百九十四条から第百九十六条までに規定する給与等の支払を受ける居住者は、これらの規定による申告書の提出の際に経由すべき給与等の支払者が電磁的方法(電子情報処理組織を使用する方法その他の情報通信の技術を利用する方法であつて財務省令で定めるものをいう。以下この項及び第五項において同じ。)による当該申告書に記載すべき事項(以下この項において「記載事項」という。)の提供を適正に受けることができる措置を講じていることその他の政令で定める要件を満たす場合には、当該申告書の提出に代えて、当該給与等の支払者に対し、当該記載事項を電磁的方法により提供することができる。この場合において、当該給与等の支払を受ける居住者は、その者の氏名を明らかにする措置であつて財務省令で定めるものを講じなければならない。
後段の「氏名を明らかにする措置」が、次の節で見る、電子署名をしてその電子証明書を併せて送信する措置や、勤務先から通知されたID・パスワードで送信する措置です。同じ条の5項は、給与等の支払を受ける居住者が保険料控除申告書をデータで出す場合に、保険料を支払った旨を証する書類の提出又は提示に代えて、政令で定めるところにより(国税庁FAQ 問1-14によると、発行者の電子署名と電子証明書が付いたデータを申告書に記載すべき事項と併せて提供する)その記載事項をデータで提供でき、その場合は書類を提出し又は提示したものとみなすと定めています。
誤解が多い3つの点について、国税庁FAQの答えを並べます。
- 電子化は義務か: 義務ではありません。FAQ 問1-8は、必ずしもデータで提供しなければならないわけではなく、従前どおり書面で提出しても差し支えないとしています。
- 税務署への申請: 以前は事前に税務署へ「源泉徴収に関する申告書に記載すべき事項の電磁的方法による提供の承認申請書」を出して承認を受ける必要がありましたが、FAQ 問2-5によると、令和3年4月1日以降に従業員からデータで年末調整の申告書を受け取る場合は申請が不要になりました。
- 従業員の同意: FAQ 問2-13は、年末調整関係書類をデータで提供させるのに、従業員から事前に承諾等を受けておく必要はないとしています。一方、同じ答えの参考として、源泉徴収票や給与明細をデータで交付する場合は事前に従業員の承諾を受ける必要がある、と書き分けています(給与所得の源泉徴収票と給与等の支払明細書は、会社が用いる電磁的方法の種類と内容を示したうえで、回答の期限と「期限までに回答が無ければ承諾があったものとみなす」旨をあらかじめ通知し、期限までに回答が無ければ承諾があったものとみなされます)。
「承認申請書を出す」と説明している解説は、令和3年4月1日より前の取扱いのままです。今から電子化する会社は、申請書を出す代わりに次の節の措置を整えます。
データで受け取るための措置 — 2つの措置と、ほかに3つの対応
国税庁FAQ 問2-9は、年末調整の申告書をデータで受け取るための「一定の要件」を、次の2つの措置をそれぞれ講じることだと説明し、そのほかに3つの対応も必要としています(表の後で説明します)。
| 措置 | 中身 | 具体的な方法(いずれか) |
|---|---|---|
| ①データの提供を受けるために必要な措置 | 従業員からデータを受け取る方法を定めておくこと | イ インターネット経由のメール等で送信する/ロ USBメモリ等に保存して提供する/ハ 勤務先と作成者の従業員だけがアクセスできる領域(社内LANなど)に保存する/ニ 社内LANにログインしてメール等で送信する。イ・ロの場合は、提出データに電子署名を付けるかパスワードを設定する |
| ②提供する者の氏名を明らかにするために必要な措置 | データが従業員本人から出されたことを確認できるようにしておくこと | イ 従業員が申告書情報に電子署名をし、その電子署名に係る電子証明書を申告書情報と併せて送信する(マイナンバーカードやスマートフォンのマイナンバーカードの電子署名・電子証明書を使える)/ロ 勤務先から通知されたID・パスワードを使って送信する(申告書データにパスワードを付ける場合や、個別のID・パスワードで社内LAN等にログインし本人だけに割り当てたメールアドレスから送る場合を含む) |
FAQ 問2-9は、このほかに、従業員がデータでの提供を適正に行えるための措置、提供の際に勤務先がその人を特定できるための措置、申告書の記載事項を画面に表示し書面に出力するための措置も必要だとしています。人事・給与の申請に使う従業員ごとの「社員ページ」に会社が支給したID・パスワードでログインして出す方式なら、①のニと②のロに当たり、一定の要件を満たすというのがFAQ 問2-10の答えです。紙の申告書に求めていた押印の代わりになるのは、②の電子署名かパスワードの設定です(FAQ 問2-14)。
Excelシートや PDF に入力して送る方法や、手書きの申告書をスキャナーで読み込んで送る方法も、法令上は②の措置を講じればデータによる提供に当たります。ただし FAQ 問2-15は、これらの方法では控除証明書等データを使った自動入力ができず、勤務先の確認事務も減らないと指摘しています。年調ソフトで作れる申告書の PDF は書面に印刷して出すためのファイルで、年調ソフトではその PDF に②の措置を講じることはできません。
控除証明書データの扱い — スキャンは原本にならない
控除証明書等をデータで勤務先に提供するとは、法令上、申告書をデータで提供する場合に、証明書に記載すべき事項が記録された情報で、発行者の電子署名とその電子署名に係る電子証明書が付されたものを、申告書に記載すべき事項と併せてデータで提供することです(FAQ 問1-14・問3-14・問3-15)。このため、次の扱いになります。
- 書面の証明書をスキャンしたデータは、発行者の電子署名が無いのでデータ(原本)として勤務先に提供できず、その証明書は書面で提出又は提示します(FAQ 問3-14)。
- 証明書の一部だけが書面で届いた場合でも、データの証明書は保険料控除申告書と一緒にデータで出し、書面で届いた証明書だけを別に書面で提出又は提示すれば、申告書はデータで提供できます(FAQ 問3-13)。
- 会社が申告書を書面で出すよう指示している場合、控除証明書等をデータで提供できるのは申告書をデータで提供できる場合に限られるので、データで受け取った証明書は、e-Taxホームページの「QRコード付証明書等作成システム」で QRコード付控除証明書にして書面に出力し、提出又は提示します(FAQ 問3-15)。
FAQ 問1-13によると、控除証明書等データには保険会社等の電子証明書が付いていて改ざんがあればシステムで検知でき、年調ソフトは自動入力された保険料の金額を修正するとそれが分かるようになっているため、データから自動入力された部分は勤務先のチェックが不要になります。
国税庁FAQ 問3-8によると、控除証明書等データの受け取り方は次の3つで、どの方法でも取得できるデータの内容は同じです。
- マイナポータル連携: マイナンバーカード(スマートフォンのマイナンバーカードを含む)と事前の連携設定があり、証明書の発行主体がマイナポータル連携に対応していれば、民間送達サービスに届いた複数の控除証明書等データを、申告書データを作る途中でマイナポータル経由でまとめて取得できます(発行主体によっては、連携手続を終えてからデータを取得できるまで数日かかる場合があります)。証明書の発行主体がマイナポータル連携に対応している必要があり、国税庁が対応する発行主体の一覧を公表しています。マイナポータル連携の事前準備は、一部の証明書等を取得する場合を除いて初めて使うときの1回だけで、取得する控除証明書等が増えなければ翌年以降は要りません。
- 保険会社等の「お客様ページ」等: データのダウンロードに対応している保険会社等なら、マイナンバーカードが無くても、契約先ごとにホームページ等から控除証明書等データをダウンロードしてソフトに取り込めます。データで交付していない契約先の分は手入力し、書面の控除証明書等は従来どおり提出又は提示します(団体扱い保険のように書面の証明書が通常発行されないものの扱いは FAQ 問3-18)。
- 国民年金保険料の控除証明書の個別取得: マイナポータル連携を使わずに、マイナポータルの「お知らせ」で受け取れます。
国税庁の年調ソフトと、給与システム側の準備
年調ソフト(年末調整控除申告書作成用ソフトウェア)は、従業員が控除証明書等データを使って年末調整の申告書を作り、勤務先に出すデータ又は書面を作るための、国税庁が無償で提供するソフトウェアです。国税庁は令和8年10月1日に令和8年分の年調ソフトの正式版と操作マニュアルを公開しており、令和8年分の年調ソフトは令和8年12月1日以後に行われる令和8年分の年末調整に対応しています。スマートフォンやパソコンは各ストア(App Store・Google Play ストア・Microsoft Store)で入手でき、ストアから入手できないパソコンは国税庁ホームページから Windows版・macOS版を入手します。
従業員が使うソフトは国税庁の年調ソフトに限られません。国税庁の「年末調整手続の電子化へ向けた準備」は、仕様公開を通じて同様の仕組みを取り込んだ民間のソフトウェアでも申告書データを作れるとしています。どのソフトを使うかは会社が決めて従業員に伝えます。
会社側で準備が要るのは給与システムです。国税庁は従業員向けの年調ソフトは提供しますが、給与システム等を提供する予定はないとしています(FAQ 問2-4)。年調ソフトが出力した申告書データと控除証明書等データを自社の給与システム等が取り込めるかは、その開発会社に確認します。年調ソフトから印刷した申告書は国税庁ホームページの様式と見た目が違いますが、法律で定められた記載事項は網羅されているので、これを保管していれば問題は生じないとされています(FAQ 問2-18)。会社が契約している団体扱いの保険も、保険会社からデータをもらい、年調ソフトの管理者機能と e-Taxホームページの「電子的控除証明書等作成用ソフト」を使い、管理者機能で変換したデータの「氏名コード」を従業員の氏名に変換し(事前に「氏名コードと氏名の紐づけデータ」を取り込んでおけば自動化できる)、作成用ソフトで給与担当者等の電子署名を付与して控除証明書等データにしてから各従業員に配付する手順が FAQ 問2-17に示されています。
年末調整の還付・不足額を計算する(令和8年分)準備の段取りと周知の時期
国税庁FAQ 問1-12と問2-1は、電子化の準備を次の順に示しています。
- 実施方法の検討(会社): 従業員が使うソフト(年調ソフトか民間のソフト)と、電子化後の事務の手順を決める。データを受け取る方法と本人確認の方法(2つの措置)もここで決める。
- 従業員への周知(会社): 法令上は事前の同意は要らないが、従業員にも控除証明書等データを受け取るための準備が要るので、使うソフトと事務手順を早めに知らせる。
- 給与システムの改修等(会社): 申告書データと控除証明書等データを給与システム等に取り込んで年税額を計算できるようにする。
- ソフトの取得と控除証明書等データの取得(従業員): 会社の指示に従ってソフトを入手し、マイナポータル連携を使わない場合は、データのダウンロードに対応している保険会社等のホームページ等から控除証明書等データを取得する(国民年金保険料の控除証明書はマイナポータルの「お知らせ」でも受け取れる)。
周知の時期について FAQ 問2-3は、従業員がマイナンバーカードを取得したりスマートフォンにマイナンバーカードを登録したりする期間や、民間送達サービスを開設する期間を考えると、電子化の初年度は年末調整の時期のおおむね2か月前には周知したほうがよいとしています。マイナポータル連携では、発行主体によっては連携手続を終えてからデータを取得できるまで数日かかる場合もあります。
初年度に全員をデータに切り替える必要はありません。電子化は義務ではないので(前の節)、準備が間に合わない従業員から書面で受け付けることもできます。年末調整の期限と、間に合わなかったときの扱いは年末調整はいつまで?を参照してください。
データで受け取った書類の保存
国税庁FAQ 問2-16は、データで提供を受けた年末調整関係書類も書面と同様に、税務署長から提出を求められた場合を除いて、その提出期限の属する年の翌年1月10日から7年間保存する必要があるとしています。データで受け取った申告書は紙で保管しなくてよくなりますが、保存義務そのものはなくならないので、データを、税務署長から提出を求められた場合を除き同じ期間、取り出せる状態で保管し、書面で受け取った証明書などは書面で保管します。
法人の場合、法人事業概況説明書には「年末調整関係書類の電子化の状況」を答える欄があります。欄の書き方は法人事業概況説明書の書き方を参照してください。
年末調整の後の電子化 — 源泉徴収票の電子交付と法定調書のe-Tax
年末調整の後に従業員へ渡す源泉徴収票は、所得税法226条4項により、あらかじめ用いる電磁的方法の種類と内容を示して本人の承諾を電磁的方法又は書面で得ること、画面に表示し書面に出力できる方法であること、受信者ファイルに記録する方法ならその旨を本人に通知すること(パソコン等に直接送信する場合や、本人が閲覧したことを確認した場合などを除く)、本人から請求があれば書面で交付することを満たせば、記載事項をデータで提供(電子交付)できます。年末調整の申告書のデータ受け取りと違って本人の承諾が要り(給与所得の源泉徴収票と給与等の支払明細書は、会社が用いる電磁的方法の種類と内容を示したうえで、回答の期限と「期限までに回答が無ければ承諾があったものとみなす」旨をあらかじめ通知し、期限までに回答が無ければ承諾があったものとみなされます)、電子交付していても本人から書面での交付を求められたら書面で交付します。承諾の取り方(期限までに回答が無ければ承諾とみなす扱いは、退職所得の源泉徴収票や公的年金等の源泉徴収票などには使えないこと)と書面の請求への対応は、源泉徴収票の再発行の記事の「電子交付で渡している会社の注意点」にまとめています。
税務署に出す法定調書の提出方法も変わります。国税庁の令和8年分「法定調書の作成と提出の手引」によると、令和9年1月以降に提出する法定調書は、法定調書の種類ごとに前々年(基準年)に提出すべきであった枚数が30枚以上なら e-Tax 等で提出する必要があり、この基準は100枚以上から30枚以上に引き下げられました。判定は法定調書の種類ごとに行い、令和7年中に提出すべき給与所得の源泉徴収票が30枚以上だった会社は、令和9年に市区町村へ出す給与支払報告書も eLTAX 等で提出します(令和9年1月1日以降は、給与支払報告書を市区町村に出せば給与所得の源泉徴収票を税務署に出したものとみなす特例があり、令和8年分以降は税務署提出用の給与所得の源泉徴収票を作る必要がなくなります)。年末調整の申告書のデータ受け取りが任意であるのに対し、こちらは枚数の基準に当たれば書面では出せない、という違いがあります。
よくある質問
年末調整の電子化は義務ですか?
義務ではありません。国税庁のFAQは、年末調整関係書類を必ずしもデータで提供しなければならないわけではなく、従前どおり書面で提出しても差し支えないとしています。義務になるのは別の話で、令和9年1月以降に税務署へ出す法定調書は、種類ごとに前々年に提出すべきであった枚数が30枚以上なら e-Tax 等での提出が必要です。
電子化するのに、税務署への申請や従業員の同意は必要ですか?
令和3年4月1日以降に従業員からデータで年末調整の申告書を受け取る場合は、税務署への申請も従業員の同意も要りません。税務署への承認申請はこの日以降の受け取り分から不要になりました。従業員から事前に承諾等を受けておく必要もありません。代わりに、会社がデータの提供を受けるための措置(受け取る方法を定めておくことで、メール等で送信させる方法やUSBメモリ等で提供させる方法なら、提出データに電子署名を付すかパスワードを設定する必要がある)を講じ、従業員が電子署名をして電子証明書を併せて送るか、会社から通知されたIDとパスワードを使って送ることで、氏名を明らかにする措置を講じるほか、従業員が提供を適正に行える措置、提供者を会社が特定できる措置、記載事項を画面に表示し書面に出力する措置も必要です。源泉徴収票や給与明細をデータで交付する場合は、別の制度として事前に従業員の承諾が要ります(給与所得の源泉徴収票と給与等の支払明細書は、会社が用いる電磁的方法の種類と内容を示したうえで、回答の期限と「期限までに回答が無ければ承諾があったものとみなす」旨をあらかじめ通知し、期限までに回答が無ければ承諾があったものとみなされます)。
保険会社から届いたハガキをスキャンして、データで出してもらえますか?
原本としては受け取れません。控除証明書等をデータで提供できるのは、勤務先に申告書をデータで提供する場合に、発行者である保険会社等の電子署名とその電子証明書が付いたデータを申告書と併せて提供するときに限られるので、スキャンした画像は従来どおり書面の証明書を提出又は提示してもらいます。証明書の一部だけが書面で届いた場合でも、申告書はデータで出し、書面の証明書だけを別に提出又は提示してもらう形にできます。
マイナンバーカードを持っていない従業員がいても電子化できますか?
できます。マイナポータル連携は控除証明書等データをまとめて取得するための方法の1つで、使えない従業員は、データのダウンロードに対応している保険会社等なら、そのホームページ等から控除証明書等データを取得できます(対応していない契約先の分は手入力し、書面の控除証明書等は従来どおり提出又は提示します(団体扱い保険の扱いは FAQ 問3-18))。勤務先への提出時に氏名を明らかにする措置も、マイナンバーカードで電子署名をして電子証明書を併せて送信する方法のほか、勤務先から通知されたIDとパスワードを使って送信する方法が認められています。
データで受け取った年末調整の書類は、いつまで保存しますか?
国税庁のFAQによると、書面で受け取った場合と同様に、税務署長から提出を求められた場合を除いて、その提出期限の属する年の翌年1月10日から7年間保存する必要があります。年調ソフトから印刷した申告書は国税庁の様式と見た目が違いますが、法律で定められた記載事項は網羅されているので、書面で保管する場合はこれを保管していれば問題は生じないとされています。
出典
国税庁の年末調整手続の電子化のページとよくある質問(FAQ)、所得税法の条文(e-Gov法令検索)、令和8年分の法定調書の手引の原文を読んで確認。
- 国税庁「年末調整手続の電子化に向けた取組について」(年調ソフトの入手方法・令和8年分の対応範囲)
- 国税庁「年末調整手続の電子化の概要・メリット」「年末調整手続の電子化へ向けた準備」
- 国税庁「年末調整手続の電子化及び年調ソフト等に関するよくある質問(FAQ)(令和8年10月改訂版)」 問1-5〜1-14、問2-1〜2-18、問3-13〜3-15
- 国税庁「マイナポータル連携特設ページ」
- 所得税法198条(給与所得者の源泉徴収に関する申告書の提出時期等の特例)2項・5項
- 国税庁「給与所得の源泉徴収票等の電磁的方法による提供(電子交付)に係るQ&A」
- 国税庁「令和8年分 法定調書の作成と提出の手引」(e-Tax等による提出義務の基準)
- 国税庁「令和8年分 年末調整のしかた」(申告書の電磁的方法による提供・控除証明書の電子証明書等)
この記事は一般的な情報提供であり、個別の事案に対する助言ではありません。自社の給与システムがデータの取込みに対応しているかは、会社ごとに開発会社へ確認します。本人確認の方法は、FAQ 問2-9の措置の範囲で会社が定めます。具体的な対応は、税理士または所轄の税務署にご相談ください。