個人事業主の年末調整 — 本人の事業所得は対象外、対象になる従業員の分は事業主が行う
結論から言うと、個人事業主本人の事業所得は年末調整の対象外です。年末調整は給与について行う手続きで、事業の所得は確定申告が必要なときに本人が確定申告で精算します。
一方、従業員や青色事業専従者に給与を払う個人事業主は、給与の支払者として、その人たちのうち年末調整の対象になる人の年末調整をします(対象の条件と家事使用人の例外は下の節)。
本人が会社などから給与も受けていても、勤務先の年末調整で精算されるのは給与だけで、事業の所得は含まれません。
立場別の早見表
令和8年分の所得税について、所得税法と国税庁の「年末調整のしかた」に沿って、個人事業主の立場ごとに年末調整との関係をまとめました。表の「対象の人」は、扶養控除等申告書を出していて、主たる給与の収入金額が2,000万円を超える人などの対象外の区分に当たらない人です。
| 立場 | 年末調整 | 次にすること |
|---|---|---|
| 事業の所得だけの本人 | 対象外 | 確定申告が要るか確かめる |
| 会社などから給与も受ける本人 | 事業の所得は勤務先の年末調整に含まれない | 事業の所得は確定申告が要るか確かめる |
| 事業の従業員に給与を払う事業主 | 対象の人の分を事業主がする | 給与を払う際の源泉徴収から始める |
| 青色事業専従者に給与を払う事業主 | 対象の人の分を事業主がする | 給与を受ける専従者は配偶者控除・扶養控除の対象外 |
| 家事使用人だけを雇う個人 | 例外あり(下の節) | 源泉徴収が要らない場合がある |
本人の事業所得は年末調整の対象にならない
所得税法190条の年末調整で精算するのは、給与等について源泉徴収された所得税の、年税額に対する過不足です。対象になる人の条件と対象外の区分は下の節にあります。
事業所得には、この「給与の支払者」がいません。そのため事業の所得は年末調整の外にあり、確定申告が必要な場合は本人が確定申告で税額を計算して納めます。進め方は確定申告のやり方にまとめています。
対象になる従業員の年末調整は事業主がする
国税庁の「源泉徴収のあらまし」(令和8年版)は、給与などの支払者は、会社でも個人でも源泉徴収義務者になるとしています(常時2人以下の家事使用人のみに給与を払う個人の例外は下の節)。事業の従業員に給与を払う個人事業主は、会社の経理と同じ手順で源泉徴収をし、対象になる従業員の年末調整をします。
人を雇った年にすること
- 国内で給与の支払事務を取り扱う事務所を設けたら、その事実があった日から1か月以内に「給与支払事務所等の開設届出書」を税務署へ出します(所得税法230条)。書き方は開設届出書の記事へ。
- 国内で給与を受ける居住者で、自分を主たる給与の支払者とする従業員から、その年最初の給与を受ける日の前日までに扶養控除等申告書を受け取ります(所得税法194条1項)。
- 居住者に国内で給与を払う際に所得税を源泉徴収し、税務署へ納付します(常時2人以下の家事使用人のみの支払者を除く)。納付期限と納期の特例は納期の特例の記事にあります。
- 対象の従業員の年末調整をします。行う時期と、年の中途に行う例外は年末調整はいつまでにあります。
源泉徴収した所得税を期限までに納付しないと、源泉徴収義務者は延滞税や不納付加算税などを負担することがあります。
年末調整をしない従業員もいる
扶養控除等申告書を受け取った従業員でも、年末調整をしない人がいます。年末調整をしない主な人は、申告書を出していない人、本年中の主たる給与の収入金額が2,000万円を超える人、4つの例外に当たらない年の中途の退職者です。全部で6つの区分があり、年末調整の対象とならない人に整理しています。
従業員を雇うと、報酬の源泉徴収が要ることがある
給与の支払者でない個人は、居住者に国内で弁護士報酬などの報酬・料金を払うとき、ホステス等への報酬を除いて源泉徴収をしなくてよいとされています。従業員を雇って給与の支払者になると(常時2人以下の家事使用人のみに払う場合を除く)、この扱いが外れます。そのため、給与の源泉徴収義務を持つ個人事業主は、居住者である個人の弁護士や税理士などに国内で払う報酬からも源泉徴収をします。
家事使用人だけを雇う場合の例外
常時2人以下の家事使用人のみに給与を払う個人は、その給与の源泉徴収をしなくてよいとされています(所得税法184条)。お店や事務所の従業員を一人でも雇えば、家事使用人のみには当たりません。
この例外の家事使用人のように給与から源泉徴収をされない人は、「源泉徴収のあらまし」で、税額の条件に当たれば確定申告をしなければならない給与所得者に挙がっています。
従業員の年末調整の還付・不足額を計算する(年末調整 計算機)青色事業専従者の給与も従業員と同じ扱い
青色事業専従者は、青色申告の承認を受けた居住者と生計を一にする配偶者その他の親族のうち、15歳未満の人を除き、専らその事業に従事する人です(所得税法57条1項)。15歳未満かどうかはその年12月31日の現況で判定し、事業主が年の中途に死亡・出国したときはその時、親族が既に死亡しているときはその死亡の時の現況によります(同条7項)。青色事業専従者が受ける専従者給与は給与なので、源泉徴収と年末調整の扱いは従業員と同じで、申告書を出していて対象外の区分に当たらなければ事業主が年末調整をします。
専従者給与として必要経費にできるのは、届出書に書いた方法と金額の範囲内で払った給与のうち、労務の対価として相当と認められる額です。
専従者給与の届出
専従者給与を必要経費にするには、その年3月15日まで(1月16日以後に事業を始めた年は開始日から2か月以内)に「青色事業専従者給与に関する届出書」を税務署へ出します(所得税法57条2項)。届出はその年分以後の各年分に効きます。届出書には、専従者の氏名、職務の内容、給与の金額と支給期などを書きます。
青色申告の承認の申請は別の手続きです。青色申告承認申請書と開業届の期限も確かめてください。
給与を受ける専従者は配偶者控除・扶養控除の対象外
青色事業専従者として給与の支払を受ける人は、事業主の同一生計配偶者にも扶養親族にも当たりません(所得税法2条1項33号・34号)。給与の額が少なくても同じで、事業主は確定申告でその人の配偶者控除や扶養控除を受けられません。
白色申告の事業専従者も、同じ条文で除かれています。白色申告の事業専従者控除の計算は、この記事では扱いません(白色申告のやり方)。
本人が会社などから給与も受けるとき
扶養控除等申告書を出すのは、主たる給与の支払者1か所です(所得税法194条1項)。その勤務先で年末まで働き、対象外の区分に当たらなければ、給与はそこで年末調整を受けます。申告書を出していない勤務先の給与は、その勤務先では年末調整の対象になりません。
事業の所得は、勤務先の年末調整では精算されません。確定申告が必要かどうかの条件は、副業の確定申告と副業がある人の年末調整で整理しています。
年の途中で会社を辞めて開業した人
年の中途で退職した人は、死亡退職など4つの例外に当たらない限り、辞めた会社では年末調整を受けません(例外の中身は年末調整の対象とならない人)。確定申告が必要な場合や還付を受ける場合は、年末調整を受けなかった給与を、会社から受け取る源泉徴収票をもとに事業の所得と一緒に申告します。
その年のうちに別の会社に就職して年末まで勤めると、新しい会社の年末調整で前の会社の給与を合わせることがあります。条件は転職した年の年末調整にまとめています。
年末調整の後に出すもの
従業員や青色事業専従者の年末調整をした個人事業主が、その後にすることのうち、期限が条文で決まっているものです。期限が休日に当たる年の日付は各記事で確かめます。
| すること | 相手 | 期限 | 詳しい記事 |
|---|---|---|---|
| 12月に支払った給与の源泉所得税を納付する | 税務署 | 翌年1月10日(その12月分が納期の特例の対象なら翌年1月20日) | 納期の特例 |
| 源泉徴収票を本人に交付する | 従業員・専従者 | 翌年1月31日(年の中途の退職者は退職後1か月以内) | 源泉徴収票はいつ |
納付期限は所得税法183条1項と216条、源泉徴収票の交付期限は所得税法226条1項によります。期限が土日祝日に当たるときの扱いと、税務署長の承認を受けた場合の例外(226条1項ただし書)は各記事で確かめます。常時2人以下の家事使用人のみに給与を払う個人の給与は、源泉徴収票の対象からも除かれています。
令和9年1月1日以後に給与支払報告書を市区町村へ出すと、その報告書に書いた給与について、源泉徴収票を税務署へ出したものとみなされます(所得税法226条6項)。
このほか、税務署へ出す法定調書合計表と、市区町村へ出す給与支払報告書があります。出す範囲と期限は法定調書合計表の書き方と給与支払報告書の書き方で確かめてください。
- 個人事業主本人の事業所得は年末調整の対象外で、確定申告が必要なときは本人が確定申告で精算する
- 従業員や青色事業専従者に給与を払う事業主は、申告書を出していて対象外の区分に当たらない人の年末調整をする
- 青色事業専従者として給与を受ける人は、事業主の配偶者控除・扶養控除の対象にならない
- 本人が会社からも給与を受けても、勤務先の年末調整で精算されるのは給与だけで、事業の所得は含まれない
よくある質問
個人事業主の自分も年末調整を受けられますか?
事業所得については受けられません。年末調整は給与について行う手続きで、事業の所得は確定申告が必要なときに確定申告で精算します。会社などから給与も受けていて、その勤務先で年末調整の対象になる場合も、精算されるのは給与だけです。
アルバイトを一人だけ雇いました。年末調整は必要ですか?
そのアルバイトが扶養控除等申告書を出していて、年末調整の対象外の区分に当たらなければ、事業主が年末調整をします。人数が一人でも同じです。申告書を出していない人や、他の勤務先に出している人は、年末調整の対象になりません。
妻を青色事業専従者にしています。年末調整は必要ですか?
専従者給与も給与なので、扶養控除等申告書を出していて対象外の区分に当たらなければ、従業員と同じく事業主が年末調整をします。あわせて、青色事業専従者として給与を受ける配偶者は、事業主の配偶者控除の対象になりません。
家政婦さんだけを雇っている場合も源泉徴収が要りますか?
常時2人以下の家事使用人のみに給与を払う個人は、その給与の源泉徴収をしなくてよいとされています(所得税法184条)。事業の従業員を一人でも雇えば、この例外には当たりません。
出典
所得税法の条文(e-Gov法令検索)と、国税庁の令和8年分「年末調整のしかた」・源泉徴収のあらまし(令和8年版)の原文を読んで確認。
- e-Gov法令検索『所得税法』190条(年末調整)
- e-Gov法令検索『所得税法』184条(源泉徴収を要しない給与等の支払者)
- e-Gov法令検索『所得税法』57条(青色事業専従者給与と届出)
- e-Gov法令検索『所得税法』2条1項33号・34号(同一生計配偶者・扶養親族)
- e-Gov法令検索『所得税法』194条(扶養控除等申告書)
- e-Gov法令検索『所得税法』226条(源泉徴収票)・230条(給与支払事務所等の開設の届出)
- 国税庁「令和8年分 年末調整のしかた」 年末調整の対象となる人・年末調整を行う時
- 国税庁「源泉徴収のあらまし(令和8年版)」第1 源泉徴収制度について(源泉徴収義務者・納付期限・納期の特例)
- 国税庁「源泉徴収のあらまし(令和8年版)」第5 報酬・料金等の源泉徴収事務
- 国税庁「源泉徴収のあらまし(令和8年版)」第13 給与所得者の確定申告
この記事は一般的な情報提供であり、個別の事案に対する助言ではありません。特定の人が年末調整の対象かどうかや、確定申告が必要かどうかは、その人の給与の支払状況などごとに判断されます。具体的な対応は、税理士または所轄の税務署にご相談ください。個別の税務・労務相談には応じられません。