副業がある人の年末調整 — 受けられるのは申告書を出した1社だけ
結論から言うと、副業がある人が年末調整を受けられるのは、扶養控除等(異動)申告書を出した1社(主たる給与の支払者)だけです。その会社の年末調整に、その年に申告書を出していない副業先の給与や、給与に当たらない業務委託の報酬は含めません。
申告書を受け取っていない副業先は、年末調整をしません。副業分の税額は、確定申告が必要な場合に本人が確定申告で精算します。
この記事では、申告書を出した会社を「本業の会社」、出していない会社を「副業先」と呼びます。年の途中で提出先を変えた人などの例外は下の注にまとめています。
誰が何をするかの早見表
次の表は、令和8年分で、年末調整の対象となる居住者のうち、年の途中で提出先を変えていない従業員の場合です(例外は下の注)。
| 副業の形 | 本業の会社 | 副業先の会社 | 本人 |
|---|---|---|---|
| 給与(パート・アルバイトなど) | 年末調整をする。副業先の給与は入れない | 年末調整はしない。源泉徴収票を交付する | 確定申告が要るかを確かめる |
| 給与以外(業務委託・ネット販売など) | 年末調整をする。副業の収入は入れない | 給与の支払ではないので、年末調整の手続は無い | 確定申告が要るかを確かめる |
給与と給与以外で違いが出るのは、副業先の会社が給与の源泉徴収をするかどうかです。
年末調整を受けられるのは申告書を出した1社だけ
2か所以上から給与を受ける人は、扶養控除等(異動)申告書をどちらか1か所の会社にしか出せません(所得税法194条1項)。どちらに出すかは本人が決めてよく、出した先を「主たる給与の支払者」と呼びます。
申告書を受け取っていない会社では、居住者の給与は乙欄で源泉徴収します(日雇など丙欄の給与を除く)。令和8年分の「年末調整のしかた」は、他の会社に申告書を出している人を年末調整の対象とならない人に挙げています。
乙欄の毎月の税額は、申告書を出した場合の甲欄の税額より高くなっています。乙欄の読み方は源泉徴収税額表の見方にあります。
この記事の前提の外になる人(注)
- 年の途中で申告書の提出先を変えた人は、後の提出先が年末調整をします(対象とならない区分の人を除く)。詳しくは提出先が変わった人の項です。
- 申告書を出した会社でも、年末調整の対象とならない人がいます。令和8年分は、主たる給与の収入金額が2,000万円を超える人や、災害減免法により本年分の給与に対する源泉所得税等の徴収猶予・還付を受けた人などです(年末調整の対象とならない人)。
- 日雇など、日額表の丙欄を使う給与は乙欄で源泉徴収しません。
本業の会社がすること
本業の会社の作業は、副業が無い従業員とほぼ同じです。主な違いは、集計する給与の範囲と、従業員が書く申告書の見積額です。
集計する給与の範囲
その年に申告書を出していない副業先の給与は、従業員から金額を聞いていても集計に入れません。集計する給与と税額の範囲は、未払の給与や最後の給与の税額の扱いを含め、国税庁「年末調整のしかた」(令和8年分)の集計の注意事項に従います。
他社の給与を含める例外は2つで、どちらも年末調整の対象となる人に限ります。1つは、年末調整の対象となる人のうち年の中途で就職した人で、前の会社に扶養控除等申告書を出してその年中に受けた給与とその税額を、源泉徴収票などで確かめて集計します。確かめられるまでは年末調整を見合わせます。もう1つは年の中途で申告書の提出先を自社に変えた人で、次の項の扱いになります。
年の途中で提出先が変わった人
本業と副業の間で、年の中途で扶養控除等(異動)申告書の提出先を変えた人は、年末調整の対象となる区分に当たれば、後の提出先が年末調整をします。前の提出先から変更の時までに受けた給与を含め、集計する範囲は上の項の注意事項に従います。
申告書の見積額には副業も入る
従業員が基礎控除申告書や配偶者控除等申告書に書く「本年中の合計所得金額の見積額」は、2か所以上から給与を受けているなら、その給与の全部で計算します。給与以外の事業所得や雑所得なども、合計所得金額に入ります(源泉分離課税の所得や、確定申告をしないことを選んだ一定の所得などは除く)。
その年に申告書を出していない副業先の給与は、会社の年末調整で精算しませんが、控除を受けられるかの判定に使う見積額には入ります。見積額の出し方は基礎控除申告書の書き方にまとめています。
所得金額調整控除の判定に使う給与
令和8年分の年末調整で所得金額調整控除を受けるときは、「給与の収入金額が850万円を超えるか」を、年末調整の対象となる給与(前職分や提出先を変える前の分を含む)の総額で判定します。この年末調整での所得金額調整控除の850万円超の判定には、その年に申告書を出していない副業先の給与を入れません。
副業先の会社がすること
申告書を受け取っていない副業先の会社は、居住者の毎月の給与を乙欄で源泉徴収し(日雇など丙欄の給与を除く)、年末調整はしません。居住者に支払った給与については、年末調整をしなくても給与所得の源泉徴収票を作って本人に交付します(年の中途で退職した人は退職後1か月以内)。
源泉徴収票の欄の読み方は源泉徴収票の見方にあります。
従たる給与についての扶養控除等申告書
本業の給与の給与所得控除後の金額(所得金額調整控除前)が下の合計額に満たないと見込まれる人に限り、副業先に「従たる給与についての扶養控除等(異動)申告書」を出せます。副業先で受けられるのは、源泉控除対象配偶者についての配偶者(特別)控除と、源泉控除対象親族についての扶養控除・特定親族特別控除です。
比べる合計額は、次の額を足したものです。
- 本業の給与から控除される社会保険料等の額
- 障害者控除・寡婦控除・ひとり親控除・勤労学生控除・基礎控除の額
- 源泉控除対象配偶者についての配偶者(特別)控除、源泉控除対象親族についての扶養控除・特定親族特別控除の額
この申告書を受け取った副業先も乙欄を使い、毎月の給与の税額は、乙欄の税額から申告された人数に応じた額を差し引いて求めます。この申告書を出しても、副業先は年末調整をしません。
源泉控除対象配偶者や源泉控除対象親族の年の中途での申告し直しは、本業の会社から副業先へはできますが、副業先から本業の会社へはできません。
従業員に聞かれたときの答え方
本業の会社の担当者が受けやすい質問と、一般的な答え方の例です。個々の従業員が確定申告をすべきかどうかの判断は、会社では行いません。
| 聞かれること | 答え方の例 |
|---|---|
| 副業先でも年末調整してもらえる? | 本業の会社に申告書を出しているなら、年末調整をするのは本業の会社だけです(対象とならない区分の人を除く)。副業先はしません |
| 副業の分も一緒に年末調整してほしい | その年に申告書を出していない副業先の給与は、会社の年末調整に入れません。副業分は確定申告が要るかを確かめてください |
| どちらの会社に申告書を出せばいい? | どちらに出すかは本人が決めます。両方の会社には出せません |
| 両方の会社に申告書を出してしまった | 申告書は1か所にしか出せません。どちらの会社に出すかを本人に決めてもらいます |
| 年の途中で副業先に申告書を出し直したい | 出し直すと、後の提出先が年末調整をします(対象とならない区分の人を除く)。集計の範囲は上の項を見てください |
| 基礎控除申告書の見積額に副業は入る? | 入ります。給与は全部の会社の分で計算します。給与以外の所得は上の項を見てください |
副業分は、確定申告が要る場合に本人が精算する
年末調整は、1年間の給与の総額で年税額を計算し、源泉徴収した税額との過不足を精算する手続です。その年に申告書を出していない副業先の給与や、給与に当たらない業務委託の報酬はそこに入らないので、精算が要るときは本人が確定申告をします。
確定申告が要るかの境目の金額と例外は、副業の確定申告が要らない条件と確定申告が必要になる金額の記事にまとめています。
住民税の申告は副業の確定申告の記事、年末調整と住民税の関係は年末調整と住民税の関係で扱っています。業務委託の報酬の扱いは業務委託の確定申告にあります。
年末調整の計算機で、本業の給与だけの還付・不足額を確かめる- 年末調整を受けられるのは、扶養控除等(異動)申告書を出した1社(主たる給与の支払者)だけ
- その会社の年末調整には、その年に申告書を出していない副業先の給与や、給与に当たらない業務委託の報酬を入れない(年の途中で提出先を変えた人を除く)
- その年に申告書を出していない副業先は年末調整をせず、居住者には源泉徴収票を交付する
- 申告書の合計所得金額の見積額には、全部の給与と、事業所得・雑所得などの副業の所得を入れる(源泉分離課税の所得などを除く)
- 副業分は、確定申告が必要な場合に本人が確定申告で精算する
よくある質問
副業先でも年末調整を受けられますか?
本業の会社に申告書を出しているなら、受けられません。年末調整を受けられるのは扶養控除等(異動)申告書を出した1社だけで、その年に申告書を出していない副業先は年末調整をしません。副業分は、確定申告が必要な場合に本人が確定申告で精算します。
本業の会社の年末調整に、副業の収入を含めますか?
含めません。その年に申告書を出していない副業先の給与や、給与に当たらない業務委託の報酬は、本業の会社の年末調整の集計に入れません。例外は年の途中で提出先が変わった人の項にあります。ただし、基礎控除申告書などに書く合計所得金額の見積額には、副業先の給与も入ります(上の項)。
本業と副業のどちらに扶養控除等申告書を出せばよいですか?
どちらに出すかは本人の任意で、出した先が主たる給与の支払者になります。年末調整を受けられるのはその1社だけで、両方の会社に申告書を出すことはできません。
給与に当たらない業務委託の副業は、本業の年末調整に関係しますか?
給与所得に当たらない業務委託の報酬は、本業の会社の年末調整では精算しません(報酬の名目でも給与所得に当たるものは給与として扱います)。ただし基礎控除申告書などの合計所得金額の見積額には入ります。確定申告が要るかどうかは、副業の確定申告の記事で確かめてください。
出典
国税庁の令和8年分「年末調整のしかた」、源泉徴収のあらまし(令和8年版)の原文を読んで確認。
- 国税庁「令和8年分 年末調整のしかた」 Ⅱ 年末調整とは(1 年末調整を行う理由・2 年末調整の対象となる人)、所得金額調整控除の注意事項、年末調整の対象となる給与と徴収税額の集計
- 国税庁「令和8年分 年末調整のしかた」 令和9年分の給与の源泉徴収事務(扶養控除等(異動)申告書の受理)
- 国税庁「源泉徴収のあらまし(令和8年版)」 第2 給与所得の源泉徴収事務(給与所得者の扶養控除等(異動)申告書・従たる給与についての扶養控除等(異動)申告書・税額表の適用欄)、給与所得の源泉徴収票、給与所得者の確定申告
この記事は一般的な情報提供であり、個別の事案に対する助言ではありません。特定の従業員の年末調整や確定申告の要否は、その人の給与の支払状況や所得ごとに判断されます。具体的な対応は、税理士または所轄の税務署にご相談ください。