年末調整をしないとどうなる? — 会社がしない場合と、本人が申告書を出さない場合
結論から言うと、年末調整をしないと1年分の所得税の過不足が会社では精算されません。確定申告が必要な人と払いすぎを取り戻したい人は、本人が確定申告で精算します。対象の人について会社がしない場合、払いすぎは会社から戻らず、不足は会社が徴収・納付していない税金になります。
本人が扶養控除等申告書を出さない場合は、その人が年末調整の対象から外れ、確定申告が必要な人や払いすぎを取り戻したい人は自分で精算します。
誰がしないかで変わる — 早見表
次の表は、令和8年分の年末調整の対象になる居住者の場合です。
| しないのは | 起きること | 精算するのは |
|---|---|---|
| 会社(対象の人に年末調整をしない) | 払いすぎは会社から戻らない。不足は会社が徴収・納付していない税金になる | 払いすぎは本人の確定申告。不足は会社が納付する |
| 本人(扶養控除等申告書を出さない) | 乙欄で源泉徴収され、年末調整の対象から外れる | 本人の確定申告 |
| 本人(保険料控除申告書を出さない) | 年末調整はされるが、その申告書で受ける控除が入らない | 本人の確定申告 |
年末調整の対象になるかは、次の節と対象とならない人の記事で確かめてください。確定申告は、申告が必要な人と払いすぎを取り戻したい人がします。
対象の人の年末調整は会社の義務(所得税法190条)
年末調整の対象の人について、年末調整は会社が選んでする手続ではありません。所得税法190条は、対象の人について、その年最後の給与を支払うときに過不足を精算し、不足額を納めることを会社に求めています。
対象の主な条件は、扶養控除等申告書を出した居住者で、その年中に支払うことが確定した給与が2,000万円以下であることです(例外は次の文)。その年のうちに別の会社へ申告書を出すと見込まれる人、多くの中途退職者、その年分の給与の源泉所得税について災害減免法で徴収猶予や還付を受けた人などは対象になりません。
年末調整は通常12月の給与で行いますが、死亡退職など一部の中途退職者は退職の時に行います。対象になる人・ならない人の全区分は年末調整の対象とならない人にまとめています。
会社がしないと起きること
この節は、年末調整の対象の人について会社が年末調整をしない場合の話です。
会社がしないと、払いすぎが会社から戻らない
年末調整で払いすぎ(過納額)が出ると、会社が精算して本人に返します(会社が返せない一定の場合は税務署から還付)。会社が年末調整をしないと、この返金の手続がありません。
払いすぎが出る例は、年の途中で源泉控除対象親族が増えた人、年の途中で就職した人、2年目以降に年末調整で住宅ローン控除を受ける人などです(年末調整のしかた)。本人が確定申告で取り戻す方法は下の節にあります。
不足額は会社が納める税金で、遅れると加算税がかかることがある
不足額は、本人の給与から徴収して納めるのが会社の義務です(徴収の時期や繰延べの扱いは「年末調整のしかた」にあります)。12月に徴収した分の納期限は、納期の特例の承認がなければ翌年1月10日、承認を受けていれば7〜12月分をまとめて翌年1月20日です(休日や土曜日なら休日明けの日)。
年末調整をしないと不足額は徴収されないので、会社が納めない限り未納のまま期限を過ぎます。源泉所得税を期限までに納めないと、会社は延滞税や不納付加算税を負担することがあります(国税通則法60条・67条)。
不納付加算税は、期限後に納めた税額などの10%(告知を予知しない自主納付は5%)です。
期限までに納めなかったことに正当な理由がある場合や、加算税の額が5,000円未満の場合は、不納付加算税はかかりません。期限内に納める意思があったと認められる一定の場合に、告知を予知せず期限から1か月以内に自主的に納めたときも、不納付加算税はかかりません。
延滞税の率と例外の詳細は年末調整の期限の記事にあります。
徴収しない・納付しないことには罰則の規定がある
所得税法には、年末調整で徴収すべき所得税を徴収しなかった者と、徴収して納めるべき所得税を納めなかった者に罰則があります。
| 罰則の対象 | 条文 | 罰則 |
|---|---|---|
| 190条により徴収すべき所得税を徴収しなかった者 | 所得税法242条3号 | 1年以下の拘禁刑又は50万円以下の罰金 |
| 190条により徴収して納付すべき所得税を納付しなかった者 | 所得税法240条 | 10年以下の拘禁刑若しくは200万円以下の罰金、又は併科(不納付額が200万円超なら情状により罰金の上限が上がる等の特則あり) |
同じ所得税について表の2つの両方に当たるときは、240条の例によります(242条ただし書)。
条文があることと、個別の会社に罰則が科されるかは別の話です。この記事では個別の事案を判定しません。
会社が徴収せずに期限後に納めた不足額は、本人に請求できる
年末調整の不足額は、本来は本人の給与から徴収する所得税です。会社が徴収しないまま納付の期限後に納めた場合、その所得税に相当する額を後に支払う給与から差し引くか、本人に支払を請求できます(所得税法222条)。
222条により差し引いた額や、その請求に応じて支払われた額は、源泉徴収された所得税とみなされます。
本人が申告書を出さないと起きること
扶養控除等申告書を出さない — 年末調整されない
居住者が扶養控除等申告書を出さないと、日雇いなど丙欄の給与を除き、源泉徴収は税額表の乙欄になります。乙欄の税額は申告書を出した場合の甲欄より高く設定され、年末調整も行われません(源泉徴収のあらまし)。
2か所以上から給与を受ける居住者が、もう一方の会社に申告書を出している場合も、こちらの会社の給与は乙欄です(丙欄の給与を除く)。掛け持ちの扱いは副業がある人の年末調整にあります。
年末調整の対象とならない人は、確定申告が必要な場合や払いすぎを取り戻したい場合に、自分で確定申告をして税額を精算します。
保険料控除申告書などを出さない — その申告書の控除が入らない
年末調整の対象の人なら、保険料控除申告書を出さなくても年末調整そのものは行われます。年末調整で差し引く生命保険料や地震保険料は、保険料控除申告書に記載されたものに限られます(所得税法190条2号ロ、証明書類の要件もあります)。
配偶者控除等申告書を出さない場合も、その申告書で受ける配偶者控除や配偶者特別控除は年末調整に入りません(同条2号ニ)。年末調整に入らなかった控除は、要件を満たしていれば本人が確定申告で受けられます。
年末調整の後に保険料控除申告書などを出したときは、源泉徴収票を交付する翌年1月末日までなら、会社が年末調整をやり直せる場合があります。日付と分岐は年末調整の期限の記事にまとめています。
してもらえなかった人の精算のしかた
年末調整を受けなかった人のうち、確定申告が必要な人と払いすぎを取り戻したい人は、会社から受け取った源泉徴収票をもとに確定申告で1年分の税額を精算します。年末調整をしていない源泉徴収票の見方は年調未済とはにあります。
確定申告の義務が無い居住者が払いすぎを取り戻すときは、還付申告として出せます(損失申告書を出せる場合を除く)。出せる期間と必要書類は還付申告とは、確定申告が要るかどうかは年末調整と確定申告の違いで確かめてください。
住民税は年末調整では精算しません。年末調整の内容が住民税に届く道筋は年末調整と住民税の関係にあります。
年末調整の計算機で、還付・不足額の目安を確かめる- 年末調整をしないと、1年分の所得税の過不足は会社では精算されない。必要な人は本人が確定申告で精算する
- 対象の人に会社がしない場合:払いすぎは会社から戻らず、不足額は会社が徴収していない税金になり、会社が納めない限り未納のまま残る。期限までに納めないと不納付加算税・延滞税がかかることがある
- 徴収しない・納付しないことには所得税法242条3号・240条の罰則の規定がある。会社が本人から徴収しないまま期限後に納めた所得税は、本人に請求できる(222条)
- 居住者が扶養控除等申告書を出さない場合:丙欄の給与を除き乙欄で源泉徴収され、年末調整の対象から外れる
- 対象の人が保険料控除申告書などを出さない場合:年末調整はされるが、その申告書の控除が入らない。要件を満たす控除は本人が確定申告で受けられる
よくある質問
会社が年末調整をしないのは違法ですか?
年末調整の対象の人について、会社が年末調整をしないことは所得税法190条の義務に反します(対象の条件と例外は本文の「会社の義務」の節)。徴収しなかった場合や納付しなかった場合の罰則の規定もあります(242条3号・240条)。個別の会社に罰則が科されるかは、この記事では判定しません。
会社が年末調整をしてくれないとき、従業員はどうすればよいですか?
まず会社に、扶養控除等申告書が出ているか、年末調整の対象かを確かめてください。年末調整を受けなかった場合、確定申告が必要な人や払いすぎを取り戻したい人は、源泉徴収票をもとに確定申告で精算します。
扶養控除等申告書を出さないとどうなりますか?
居住者の場合、日雇いなど丙欄の給与を除き、源泉徴収が乙欄になり、甲欄より高く設定された税額が差し引かれます。年末調整も行われないので、確定申告が必要な場合や払いすぎを取り戻したい場合は本人が確定申告で精算します。
会社が後から不足額を納めたら、従業員に請求できますか?
会社が年末調整の不足額を徴収しないまま納付の期限後に納めた場合は、その所得税に相当する額を後の給与から差し引くか、本人に支払を請求できます(所得税法222条)。
出典
国税庁の令和8年分「年末調整のしかた」、源泉徴収のあらまし(令和8年版)と、所得税法・国税通則法の条文を読んで確認。
- e-Gov法令検索『所得税法』190条(年末調整)・222条(不徴収税額の支払金額からの控除及び支払請求等)・240条・242条・122条(還付等を受けるための申告)
- e-Gov法令検索『国税通則法』60条(延滞税)・67条(不納付加算税)・119条(国税の確定金額の端数計算等)
- 国税庁「令和8年分 年末調整のしかた」 Ⅱ 年末調整とは(年末調整の対象となる人・年末調整を行う時)、過不足額の精算、年末調整後の再調整
- 国税庁「源泉徴収のあらまし(令和8年版)」 源泉徴収をした所得税の納付(第1 源泉徴収制度について)、給与所得者の扶養控除等(異動)申告書(第2 給与所得の源泉徴収事務)
この記事は一般的な情報提供であり、個別の事案に対する助言ではありません。特定の会社や従業員について加算税や罰則がかかるか、確定申告が要るかは、その事情ごとに判断されます。具体的な対応は、税理士または所轄の税務署にご相談ください。