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年末調整と確定申告の違い — 誰が計算し、いつ行い、どの控除を受けるか【令和8年分】

結論から言うと、年末調整は会社(給与等の支払者)が、対象になる人の給与について所得税の過不足を精算する手続です。確定申告は本人が、1年間の所得と所得税を計算して税務署長に申告書を提出する手続です。

令和8年分の所得税での主な違いは、次の3つです。

年末調整を受けた人にも、確定申告が要る場合があります。国税庁が挙げる区分は年末調整を受けた人に確定申告が要る場合の表に、年末調整の対象になる人の条件は年末調整の節にまとめました。

年末調整と確定申告の違いの一覧表

令和8年分の所得税について、年末調整と確定申告を並べた表です。年末調整の列は年末調整の対象になる人、確定申告の列は居住者である給与所得者の場合です。

比べる点年末調整確定申告
計算と手続をする人給与等の支払者(会社)。本人は扶養控除等申告書などの申告書を会社へ提出する本人。税務署長へ申告書を提出する
行う時期その年最後に給与等を支払う時。通常は12月確定所得申告は、その年の翌年2月16日から3月15日まで。還付申告の期間は別
計算に入れるものその会社が支払う給与等と、その年に前の勤務先へ扶養控除等申告書を提出して受けた給与等その年の1月1日から12月31日までの1年間に生じた所得の金額と、それに対する所得税等の額
差し引ける所得控除所得税法190条2号に挙がる13種類の所得控除年末調整で差し引ける13種類の所得控除と、雑損控除・医療費控除・寄附金控除の3種類の所得控除
住宅ローン控除(住宅借入金等特別控除)最初の年分より後の年分。申告書と証明書類を年末調整のときまでに会社へ提出した場合控除を受ける最初の年分
過不足の精算納め過ぎの額は会社が還付し、不足額は給与等から徴収する源泉徴収された所得税などとの過不足を、本人が申告書で精算する
根拠の条文所得税法190条・191条・192条所得税法120条・121条・122条

表の注:年の途中で退職した人・非居住者になった人の年末調整の時期と、亡くなった人・出国する人の申告の期限は、この表では扱いません。

表に書いていない条件は、次の節にあります。

2つの手続はどちらも1年分の所得税を精算するためのものですが、計算する人と、計算の対象と、受けられる控除の範囲が違います。以下、控除の違い、確定申告が要る場合、それぞれの手続の細部の順に見ていきます。

受けられる控除の違い — 年末調整に入らない3つの所得控除

雑損控除・医療費控除・寄附金控除の3種類の所得控除は、年末調整では差し引かれません。受けるときは、本人が確定申告をします。

年末調整で年税額を計算するときに給与から差し引く金額は、所得税法190条2号のイからヘまでに挙がっています。同号に名前が出る所得控除は、次の13種類の所得控除で、上の3種類の所得控除は列挙にありません。

社会保険料控除、小規模企業共済等掛金控除、生命保険料控除、地震保険料控除、障害者控除、寡婦控除、ひとり親控除、勤労学生控除、扶養控除、配偶者控除、配偶者特別控除、特定親族特別控除、基礎控除

年末調整で差し引ける所得控除(所得税法190条2号) 同号の条件(申告書への記載、書類の提出・提示)を満たすもの 社会保険料控除 小規模企業共済等掛金控除 生命保険料控除 地震保険料控除 障害者控除 寡婦控除 ひとり親控除 勤労学生控除 扶養控除 配偶者控除 配偶者特別控除 特定親族特別控除 基礎控除 確定申告で受ける所得控除 所得税法190条の列挙に無いもの 雑損控除 医療費控除 寄附金控除
令和8年分の所得税で、年末調整で差し引ける所得控除(左・所得税法190条2号)と、確定申告で受ける所得控除(右)

13種類の所得控除を年末調整で差し引く条件

国税庁「令和8年分 年末調整のしかた」は、生命保険料・地震保険料・社会保険料の証明書類について、交付を請求中などのため確認できない場合でも、翌年1月末日までに提出又は提示することを条件に、控除をして年末調整を行ってもよいとしています。

申告書の欄ごとの書き方は年末調整の書き方、控除ごとの額と条文は所得控除の一覧の記事にあります。

年末調整に入らない控除・書き漏らした控除を受けるには

医療費控除の額の出し方は医療費控除はいくらから、ふるさと納税と確定申告の関係はふるさと納税の確定申告のやり方の記事にあります。

住宅ローン控除は、年末調整と確定申告にまたがる

国税庁「令和8年分 年末調整のしかた」は、住宅借入金等特別控除を受ける手続を、年分で分けています。

控除の要件は住宅ローン控除の適用要件の記事にあります。

年末調整を受けた人に確定申告が要る場合

国税庁のタックスアンサー No.1900 は、大部分の給与所得者は給与の支払者が行う年末調整によって所得税額が確定し、納税も完了するので、確定申告の必要はないと説明しています。同じ資料が、確定申告をしなければならない人として挙げているのが、次の表の7つの区分です。

国税庁が挙げる「給与所得者で確定申告が必要な人」

次の表は、国税庁のタックスアンサー No.1900(令和8年4月1日現在法令等)が、給与所得者であっても確定申告をしなければならないとしている人の一覧です。確定申告をすれば税金が還付される人は、この一覧から除かれています。

区分確定申告をしなければならない給与所得者(国税庁 No.1900)
給与の額給与の年間収入金額が2,000万円を超える人
給与が1か所給与の全部が源泉徴収の対象となる場合に、各種の所得金額の合計額が20万円を超える人
給与が2か所以上給与の全部が源泉徴収の対象となる場合に、年末調整されなかった給与の収入金額と、各種の所得金額との合計額が20万円を超える人(注2の人は申告不要)
同族会社の役員など給与を受ける同族会社から、貸付金の利子や資産の賃貸料などを受け取っている人
災害減免法災害減免法により給与の源泉徴収の猶予などを受けている人
源泉徴収の無い給与源泉徴収義務のない者から給与等の支払を受けている人
退職所得退職所得について正規の方法で税額を計算した場合に、その税額が源泉徴収された金額よりも多くなる人

注1:「各種の所得金額」は給与所得と退職所得を除いたもので、確定申告をしないことを選択した上場株式等の配当等や、源泉分離課税とされる預貯金の利子など、合計額に含まれない所得があります。
注2:給与が2か所以上の人のうち、給与の収入金額の合計額から雑損控除・医療費控除・寄附金控除・基礎控除を除く所得控除の合計額を差し引いた金額が150万円以下で、各種の所得金額の合計額が20万円以下の人は、申告不要です。

給与所得者の20万円の判定に入れない所得の範囲と、住民税の申告の扱いは、確定申告はいくらから必要かの記事で条文ごとに分けています。

条文が定める「確定申告書の提出を要しない場合」

次の表は、所得税法121条1項が、給与所得がある居住者で、その年中に支払を受けるべき給与等の金額が2,000万円以下の人について、確定申告書(同法120条1項の申告書)の提出を要しないとしている場合です。

給与等を受ける先確定申告書の提出を要しない場合所得税法121条1項
1か所給与所得及び退職所得以外の所得金額が20万円以下であるとき1号
2か所以上従たる給与等の金額と、給与所得及び退職所得以外の所得金額との合計額が20万円以下であるとき2号イ
2か所以上(2号イに当たらない人)給与等の金額が、150万円と、雑損控除・医療費控除・寄附金控除・基礎控除を除く所得控除の額との合計額以下で、
かつ、給与所得及び退職所得以外の所得金額が20万円以下であるとき
2号ロ

表の注:どの行も、給与等の全部が源泉徴収(年末調整を含む)をされた又はされるべき場合に限ります。提出を要しないとされるのは、課税総所得金額と課税山林所得金額に係る所得税の確定申告書です。

この表に当たっても、不動産その他の資産を給与等の支払者の事業の用に供して対価の支払を受ける場合その他の政令で定める場合は、申告書の提出を要します(所得税法121条1項ただし書)。政令は、同族会社の役員やその親族などが、その会社から給与等のほかに貸付金の利子や資産の使用の対価の支払を受ける場合と定めています(所得税法施行令262条の2)。

義務が無くても、確定申告はできる 所得税法121条1項が定めているのは、確定申告書の提出を「要しない」場合です。年末調整を受けた居住者が、医療費控除などを受けて納め過ぎになった所得税の還付を受けるために申告書を提出することは、所得税法122条1項が認めています(条件は還付を受けるための申告にあります)。

「年末調整を自分でする」ことはできるか

給与を受ける本人が、会社に代わって自分で年末調整をする定めはありません。年末調整は、所得税法190条が給与等の支払者に行わせる手続です。

本人が行うのは、扶養控除等申告書・基礎控除申告書・配偶者控除等申告書・特定親族特別控除申告書・保険料控除申告書などを書いて会社へ提出することです。

会社で年末調整を受けなかった人は、確定申告で精算する

国税庁「令和8年分 年末調整のしかた」は、年末調整の対象とならない人は自分で確定申告をして税額の精算をすることになる、と書いています。同じ資料は、対象とならない人として、本年中の主たる給与の収入金額が2,000万円を超える人や、年末調整を行うときまでに扶養控除等申告書を提出していない人などの区分を挙げています。

区分の全部と、年の中途で退職した人の例外は年末調整の対象とならない人の記事にあります。

年末調整の対象とならなかった人の全員に、確定申告書を提出する義務があるわけではありません。義務があるかどうかは所得税法120条1項や121条などの条件で決まります。義務がない居住者も、源泉徴収された所得税が納め過ぎになっていれば、還付を受けるための申告ができます。

書類の提出が会社の締切に間に合わなかったときの扱いは年末調整はいつまでかの記事にあります。

年末調整の還付・不足額を計算する(令和8年分の計算機)

年末調整 — 会社が行う、給与の所得税の精算

国税庁「令和8年分 年末調整のしかた」は、年末調整を、1年間の給与総額が確定する年末にその年に納めるべき税額を正しく計算し、それまでに給与から徴収した税額との過不足額を求め、その差額を徴収又は還付して精算する手続と説明しています。

対象になる人

所得税法190条は、次の条件に当たる人について、会社がその年最後に給与等を支払うときに所得税の過不足を精算すると定めています。

精算するのは、その年の給与等について徴収された又は徴収されるべき所得税の額の合計額と、最後の支払の時の現況で計算した年税額との過不足です。

災害減免法により源泉所得税の徴収猶予や還付を受けた人は、年末調整の対象から除かれます。対象とならない人の区分の全部は、年末調整の対象とならない人の記事にあります。

前の勤務先の給与があるとき

国税庁「令和8年分 年末調整のしかた」は、年の途中で勤務先が変わった人の給与の集計を、次のように示しています。

行う時期

国税庁「令和8年分 年末調整のしかた」は、年末調整は本年最後に給与の支払をする時に行うので、通常は12月に行うとしています。同じ資料は、次の2つの場合を別に定めています。

納め過ぎのとき・不足のとき

国税庁「令和8年分 年末調整のしかた」は、会社が納付する源泉徴収税額が無いか、ごくわずかで、会社が過納額を還付できない次の場合に、税務署が会社に一括して還付するか、過納となった各人に直接還付するとしています。

還付の時期と額は年末調整の還付金の記事で扱っています。

確定申告 — 本人が、税務署長へ申告書を提出する

国税庁のタックスアンサー No.2020 は、所得税の確定申告を、毎年1月1日から12月31日までの1年間に生じた所得の金額とそれに対する所得税等の額を計算して確定させる手続と説明しています。源泉徴収された税金や予定納税額などがある場合には、この確定申告によってその過不足を精算します。

申告の期間

令和8年分の所得税の確定所得申告(所得税法120条1項)の期間は、令和9年(2027年)2月16日(火曜日)から3月15日(月曜日)までです。

毎年の期間は、所得税法120条1項が、同項の条件に当たる居住者について、その年の翌年2月16日から3月15日までの期間(第三期)と定めています。

義務がなくても、還付を受けるための申告はできる

確定所得申告の義務がない居住者でも、その年分の所得税の計算で源泉徴収税額を控除しきれない金額がある(納め過ぎになっている)ときは、還付を受けるための申告書を税務署長に提出できます(所得税法122条1項)。確定損失申告書を提出できる場合は、この申告の対象から除かれます。

この還付申告を出せる期間は確定申告はいつまでか、申告の進め方は確定申告のやり方の記事にあります。

会社の経理担当が従業員に伝えておくこと

年末調整の書類を配るときに従業員へ伝えておくことを、条文と国税庁の資料から3点にまとめます。どれも一般的な案内で、従業員ごとに申告が要るかどうかを会社が判定するものではありません。

3点目について、国税庁「令和8年分 年末調整のしかた」は、給与の支払者に、このような人には期限までに住所地の所轄税務署長に確定申告書を提出するよう指導することを求めています。確定申告書を提出する義務があるかどうかは、所得税法120条1項や121条などの条件で決まります。

本人が確定申告をするときは、会社から交付される給与所得の源泉徴収票(所得税法226条1項)の内容を申告書に書きます。交付の期限と例外は源泉徴収票はいつもらえるかの記事にあります。

確定申告の税額・還付金を計算する(令和8年分の所得税 計算機)
まとめ
  • 年末調整は、給与等の支払者(会社)が、所得税法190条の条件に当たる人の給与について、所得税の過不足を精算する手続です。
  • 確定申告は、本人が1年間の所得と所得税を計算して税務署長に申告書を提出する手続です(所得税法120条1項)。
  • 年末調整で差し引ける所得控除は、所得税法190条2号に挙がる13種類の所得控除です。差し引く条件は同号が定めています。
  • 雑損控除・医療費控除・寄附金控除の3種類の所得控除は、所得税法190条の列挙に無いので、受けるときは本人が確定申告をします。
  • 住宅借入金等特別控除は、最初の年分は確定申告で受け、その後の年分は申告書と証明書類を会社へ提出すれば年末調整で控除できます。
  • 年末調整を受けた人にも、確定申告が要る場合があります。国税庁が挙げる7つの区分と、所得税法121条1項の条件は、確定申告が要る場合の表にあります。
  • 確定申告の義務がない居住者も、所得税が納め過ぎになっていれば、還付を受けるための申告ができます(所得税法122条1項)。

よくある質問

年末調整と確定申告の違いは何ですか?

年末調整は、給与等の支払者(会社)が、所得税法190条の条件に当たる人の給与について、所得税の過不足を精算する手続です。確定申告は、本人が1年間の所得と所得税を計算して税務署長に申告書を提出する手続です(所得税法120条1項)。計算する人のほか、計算の対象と、受けられる控除の範囲が違います。

年末調整を受けていれば、確定申告は不要ですか?

大部分の給与所得者は、年末調整で所得税額が確定し、確定申告の必要はありません(国税庁 タックスアンサー No.1900)。ただし、給与の年間収入金額が2,000万円を超える人など、同じ資料が確定申告をしなければならないとしている7つの区分に当たる人は、年末調整を受けていても確定申告が要ります。区分の全部と、所得税法121条1項の条件は、本文の「年末調整を受けた人に確定申告が要る場合」の表にあります。

年末調整と確定申告の両方をすると、税金が二重にかかりますか?

二重にはかかりません。国税庁のタックスアンサー No.2020 のとおり、確定申告は1年間に生じた所得の金額とそれに対する所得税等の額を計算して確定させる手続で、源泉徴収された税金などがある場合には、その過不足を精算します。年末調整を受けた給与も確定申告の計算に入れ、給与から源泉徴収された所得税との差額を精算します。

医療費控除や寄附金控除は、年末調整で受けられますか?

受けられません。年末調整で差し引く控除は所得税法190条2号に挙がっており、医療費控除・寄附金控除・雑損控除の3種類の所得控除はその列挙にありません。この3種類の所得控除を受けるときは、本人が確定申告をします。

年末調整を自分ですることはできますか?

年末調整は所得税法190条が給与等の支払者に行わせる手続で、給与を受ける本人が自分で行う定めはありません。国税庁「令和8年分 年末調整のしかた」は、年末調整の対象とならない人は自分で確定申告をして税額の精算をすることになる、と書いています。

年末調整で出し忘れた控除は、どうすれば受けられますか?

本人が確定申告書に書き、その控除に必要な書類を添付又は提示すれば受けられます(所得税法120条3項・122条3項)。確定申告の義務がない居住者も、所得税が納め過ぎになっていれば、還付を受けるための申告ができます(所得税法122条1項)。会社が年末調整をやり直せる場合と期限は、勤務先の給与担当に確かめます。

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出典

所得税法・所得税法施行令・国税通則法の条文(e-Gov法令検索)と、国税庁の手引・タックスアンサーで確認して作成。

本記事は一般的な情報提供を目的としたものです。個別の判断は所轄税務署・税理士にご確認ください。

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