年末調整の訂正・やり直し(再年調)|会社がやれる期限と手順
年末調整の後に年税額を計算し直し、先の年末調整との差額を精算することを、年末調整のやり直し(再年調)といいます。会社がやるかどうかと期限は、差額の向きで分かれます。
税額が減る向き(控除対象扶養親族が増えたなど)は、年末調整の後その年12月31日までの異動を源泉徴収票の作成時までに異動申告書などで申告すれば、会社がやり直せます(義務ではない)。減る向きで会社がやり直さないときは、本人が確定申告で精算できます(既に還付申告をした年分は更正の請求)。
税額が不足する向き(年末調整の後その年12月31日までに控除対象扶養親族が減ったなど)は、会社が本人から扶養控除等(異動)申告書を受けてやり直し、不足額を徴収します。このやり直しと不足額の徴収は、翌年1月末日を過ぎても行う必要があります(国税庁 No.2671)。
やり直した後の年税額と過不足額は年末調整の計算機で試算できます。
早見表:何が分かったら、どう直すか
令和8年分の年末調整の後に分かったことと、会社の対応です。表の「1月末日まで」は、国税庁「令和8年分 年末調整のしかた」43ページが、やり直しができる期限を「給与所得の源泉徴収票」を受給者に交付することとなる翌年1月末日までと書いている時点です。
| 分かったこと | 会社の対応 |
|---|---|
| 年末調整の後その年12月31日までに、控除対象扶養親族が増えた・本人が障害者になった | 源泉徴収票の作成時までに異動申告書を受ければ(1月末日まで)、やり直して差額を精算できる |
| 年末調整の後その年12月31日までに、控除対象扶養親族が減った(子の就職など) | 異動申告書を受けてやり直し、不足額を徴収する(1月末日の後も) |
| 年末調整の後、本年中に生命保険料・地震保険料などを支払った | 保険料控除申告書を受け、1月末日まで、やり直せる |
| 年末調整の後に住宅借入金等特別控除申告書が出た | 1月末日まで、やり直せる |
| 配偶者控除・配偶者特別控除・特定親族特別控除を受けた人で、配偶者・本人・特定親族の所得の見積額と確定額の差により、その控除額が変わる | 1月末日まで、異動後の状況でやり直せる |
| 翌年1月末日までに保険料・掛金の証明書類を出す条件で控除したが、期日までに出なかった | その保険料・掛金を除いてやり直し、不足額を徴収する |
| 本年中に本年分の給与を追加で払うことになった | 追加額を含めて年税額を計算し直し、差額を精算する |
| 翌年の給与改定で、本年分までさかのぼって差額を払う | 本年分の年末調整はやり直さない |
| 扶養控除等(従たる給与の分を含む)・配偶者控除等・特定親族特別控除・基礎控除・保険料控除の各申告書の記載誤りで、徴収不足税額があると知った | 直ちに不足税額を徴収して納付する(前年分以前も) |
やり直しが起きる理由(判定日のずれ)
年末調整では、控除対象扶養親族などに当たるかを年末調整を行う日の現況で判定し、合計所得金額はその日の現況で見積もったその年1年分の額、年齢はその年12月31日の現況で見ます(年の中途の死亡や、本人が出国して非居住者となるときはその時)。
所得税法上は原則としてその年12月31日の現況で判定するので(年の中途の死亡などは例外)、年末調整の後その年12月31日までに控除対象扶養親族などの数が変わると、税額に差が出ることがあります(国税庁 No.2671)。
年の中途で死亡した控除対象扶養親族などは、死亡の日の現況で判定するので、その年分の扶養控除などの対象になります(年末調整のしかた)。
税額が減る向き:その年の異動を源泉徴収票の作成前に申告
所得税基本通達190-5は、年末調整の後その年12月31日までに所得控除に異動があり、その年分の源泉徴収票が作成される時までに申告があれば、会社は年税額を計算し直して差額を還付してよいとしています(先の年末調整の不足額で未徴収の分があれば、まずそれに充当)。
「してよい」という取扱いなので会社の義務ではなく、同じ通達の注は、年末調整の後に異動した所得控除は確定申告で精算できるとしています。
年末調整の後その年12月31日までに控除対象扶養親族などが増えて年末調整をやり直すとき、国税庁 No.2671 は、源泉徴収票を作成・交付する日までに本人から「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」の提出を受けるよう案内しています。
令和8年分の源泉徴収票を本人に渡す期限は、令和9年2月1日(月)です(年の中途で退職した人の分は退職の日以後1か月以内、法定調書の手引)。
減る向きで会社がやり直さないときは本人の確定申告
税額が減る向きで会社がやり直さなかった差額は、本人が確定申告で精算できます(所得税基本通達190-5の注、既に還付申告をした年分は更正の請求)。確定申告の義務がない人の還付申告は、その年の翌年1月1日から5年間出せます(法定申告期限までの申告が要件の特例を使う場合を除く、国税庁 No.2030)。既に還付申告をした年分は、原則として還付申告書を出した日から5年以内に更正の請求で取り戻します(No.2030)。
出し方と期間の早見表は還付申告の解説に、会社の締切を過ぎたときの流れは年末調整はいつまで?にまとめています。
税額が不足する向き:1月末日の後も会社が徴収
年末調整の後その年12月31日までに、子の就職などで控除対象扶養親族などの数が減ったら、会社は本人から異動を書いた扶養控除等(異動)申告書を受け取り、年末調整をやり直して不足税額を徴収します(国税庁 No.2671)。
同じページは、徴収不足税額がある場合のやり直しは、異動があった年の翌年1月末日以降でも行う必要があるとしています。
扶養控除等申告書(従たる給与の分を含む)・配偶者控除等申告書・特定親族特別控除申告書・基礎控除申告書・保険料控除申告書の記載誤りで生じた徴収不足税額は、会社が知った時点で直ちに徴収して納付します(所得税基本通達194〜198共-1)。前年分以前の給与の分も対象です。
申告書の記載誤りによる徴収不足税額を会社が徴収・納付しないときは、会社に過失がなく徴収・納付できない正当な事由がある場合を除き、その不足税額は会社から徴収されます(所得税基本通達194〜198共-2)。
翌年1月末日までに保険料・掛金の証明書類を出す条件で控除して年末調整をし、期日までに証明書類が出なかったときは、その保険料・掛金を除いて控除額を計算し直し、やり直して不足額を徴収します。
加算税・延滞税が個別の事案でかかるかどうかは、この記事では判定しません。
会社の手順:受け取り・再計算・精算・帳票
- 本人から書類を受け取る:異動を書いた扶養控除等(異動)申告書、保険料控除申告書、住宅借入金等特別控除申告書など、やり直しの根拠になるものです。
- 年税額を計算し直す:源泉徴収簿で異動後の内容による年税額を出し、先の年末調整で計算した年税額との差額を求めます。
- 差額を精算する:不足額は本人から徴収し、減る分は還付します(先の年末調整の不足額で未徴収の分があれば、まずそれに充当)。
- 徴収高計算書に書く:精算した月分の所得税徴収高計算書(納付書)の「年末調整による不足税額」欄・「年末調整による超過税額」欄に、実際に精算した金額を書きます。
- 源泉徴収票を作り直す:本人に渡す前なら正しい内容で作ります。
納付する税額が無くなった月も、所得税徴収高計算書は所轄の税務署に出します(年末調整のしかた)。
本人に渡した源泉徴収票の直し方
既に本人に渡した源泉徴収票に誤りがあれば、正しい源泉徴収票を作り、「摘要」欄に誤っていた箇所などを書いて「再交付」と表示し、改めて渡します(国税庁 質疑応答事例)。
税務署・市区町村に出した後の訂正
令和8年分の給与支払報告書を市区町村に出して源泉徴収票をみなし提出した場合は、訂正した給与支払報告書を市区町村に出せば、税務署に訂正分・無効分を別に出す必要はありません。令和8年分をみなし提出した場合、eLTAXで提出した給与支払報告書は提出区分を「訂正」として出し直し、書面などで提出した分の訂正方法は市区町村ごとに異なります(国税庁 みなし提出のQ&A 問12)。
税務署に出した法定調書(令和7年分の源泉徴収票など)の訂正は、先に出したものと同じ内容の無効分と、正しい内容の訂正分を、それぞれの合計表と一緒に出します(法定調書の手引 第9章)。様式の書き方は法定調書合計表の記事にまとめています。
給与の過払い・不足を月々の給与計算で直す方法と仕訳は給与計算の訂正の記事を参照してください。
年末調整の計算機で、やり直した後の過不足額を計算する →前年分以前の誤りに気づいたとき
- 税額が不足していた:扶養控除等・配偶者控除等・特定親族特別控除・基礎控除・保険料控除の各申告書(従たる給与の分を含む)の記載誤りによる徴収不足税額は、前年分以前の給与の分も、会社が知った時点で直ちに徴収して納付します(所得税基本通達194〜198共-1)。
- 本人の税額が多すぎた:本人が確定申告で取り戻します(既に還付申告をした年分は更正の請求)。出せる期間と、既に還付申告をした年分の扱いは本人の確定申告の節にあります。
- 会社が税務署に多く納めた:誤って正当税額を超えて源泉所得税を納付したときは、誤納額還付請求書を所轄の税務署に出します(納付した日から5年間出さないと、請求権は時効で消える)。
誤納額還付請求書には、納付したときの徴収高計算書の写しと、誤納が生じた事実を書いた帳簿書類の写し(総勘定元帳の「預り金」勘定の部分など)を付けます。
まとめ
- 税額が減る向きは、年末調整の後その年12月31日までの異動を源泉徴収票の作成時までに異動申告書などで申告すれば、会社がやり直せます(義務ではない)。
- 減る向きで会社がやり直さないときは、本人が確定申告で精算できます(既に還付申告をした年分は更正の請求)。
- 年末調整の後その年12月31日までの異動で税額が不足する向きは、会社が異動申告書を受けてやり直し、不足額を徴収します(No.2671 は翌年1月末日の後も必要とする)。
- 渡した源泉徴収票は、「摘要」欄に誤りの箇所などを書き「再交付」と表示して渡し直します。
- 令和8年分をみなし提出したなら、訂正した給与支払報告書を市区町村に出せば、税務署への訂正分の提出は要りません。
よくある質問
年末調整のやり直しはいつまでできますか?
年末調整の後その年12月31日までの異動で税額が減る向きは、源泉徴収票の作成時までに異動申告書などで申告があればやり直せます(令和8年分の「年末調整のしかた」は源泉徴収票を交付することとなる翌年1月末日までと説明)。不足する向きは、翌年1月末日を過ぎても会社がやり直して不足額を徴収します。
源泉徴収票を受け取った後に、年末に控除対象扶養親族が増えていたことに気づきました。
その年12月31日までの増加で税額が減るなら、本人が確定申告で精算します(既に還付申告をした年分は更正の請求)。確定申告の義務がない人の還付申告は、その年の翌年1月1日から5年間出せます(法定申告期限までの申告が要件の特例を使う場合を除く)。
年末調整の後、12月中に控除対象扶養親族だった子どもが就職して外れました。
会社は本人から異動を書いた扶養控除等(異動)申告書を受け取り、年末調整をやり直して不足税額を徴収します。国税庁は、徴収不足税額がある場合のやり直しは翌年1月末日以降でも必要としています。
従業員から頼まれたら、再年調は必ずしなければなりませんか?
税額が減る向きのやり直しは、会社の義務ではありません。その年12月31日までの異動を源泉徴収票の作成時までに申告されたとき、会社がやり直して「差し支えない」とする取扱いです(所基通190-5)。会社がしないときは本人が確定申告で精算できます(既に還付申告をした年分は更正の請求)。その年12月31日までの異動で不足する向きは、会社が異動申告書を受けてやり直し、徴収します。
渡した源泉徴収票が間違っていました。どう直しますか?
正しい源泉徴収票を作り、「摘要」欄に誤っていた箇所などを書いて「再交付」と表示し、改めて本人に渡します。
出典
国税庁の年末調整・法定調書の手引き、タックスアンサー、所得税基本通達、質疑応答事例、手続の案内で確認して作成。確認日:2026年10月15日。
- 国税庁「令和8年分 年末調整のしかた」39〜41ページ(過不足額の精算)・42ページ(所得税徴収高計算書の記載)・43ページ(年末調整後の再調整)
- 国税庁タックスアンサー「No.2671 年末調整の後に扶養親族等の人数が異動したとき」
- 国税庁タックスアンサー「No.2030 還付申告」
- 国税庁「所得税基本通達 法第190条《年末調整》関係」190-4・190-5
- 国税庁「所得税基本通達 法第194条から第198条まで共通関係」194〜198共-1・共-2
- 国税庁 質疑応答事例「提出した法定調書に記載誤りを発見した場合の訂正方法」
- 国税庁「令和8年分 法定調書の作成と提出の手引 第2章(給与所得の源泉徴収票)」
- 国税庁「令和8年分 法定調書の作成と提出の手引 第9章(法定調書の訂正・追加)」
- 国税庁「源泉徴収票(給与所得・公的年金等)のみなし提出の特例に関するQ&A」問11・問12
- 国税庁「A2-18 源泉所得税及び復興特別所得税の誤納額の還付請求」
本記事は一般的な情報提供を目的としたものです。個別の事案でやり直しが必要か、加算税がかかるかなどの判断は、税務署・税理士にご確認ください。