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執行役員とは|会社法上の役員ではない社内の役職。執行役・取締役との違い

執行役員は、会社が社内の規程などで置く役職名で、会社法上の役員ではありません。会社法の条文には「執行役員」という語が1回も出てきません。

名前の似た執行役は、指名委員会等設置会社だけに置かれる会社法上の機関で、執行役員とは別物です。執行役員の社会保険や税の扱いは肩書では決まらず、会社と結ぶ契約が雇用か委任かと、働き方の実態で分かれます。

執行役員は会社法の役員ではない

会社法329条1項は、役員と、その選び方を次のように定めています。

役員(取締役、会計参与及び監査役をいう。以下この節、第三百七十一条第四項及び第三百九十四条第三項において同じ。)及び会計監査人は、株主総会の決議によって選任する。

ここで役員とされるのは、取締役・会計参与・監査役の3つです。任務を怠ったときの会社への損害賠償責任を定める423条1項の「役員等」は、これに執行役と会計監査人を加えた5つです。

どちらの列挙にも執行役員は入っていません。会社法の条文全体を検索しても「執行役員」の語は出てきません(2026年8月12日施行の版で確認)。執行役員を置くか、どう呼ぶか、何を任せるかは、会社が就業規則や執行役員規程などで決めます。

取締役が「取締役執行役員」のように執行役員の肩書を兼ねることもあります。その人の会社法上の地位は取締役なので、取締役としての定めがそのまま当たります。

支配人その他の重要な使用人の選任・解任を誰が決めるかは、機関設計で異なります(取締役会設置会社は362条4項3号、監査等委員会設置会社は399条の13、指名委員会等設置会社は416条)。従業員として置く執行役員が重要な使用人に当たるかの基準は条文に無く、会社ごとに判断します。

会社法に定めがある 取締役 株主総会で選任 会社とは委任 氏名を登記 どの株式会社にも置く 執行役 取締役会で選任 会社とは委任 氏名を登記 指名委員会等設置会社だけ 会社法に定めがない 執行役員 社内の役職名・登記しない 雇用型 会社と雇用契約 委任型 会社と委任契約
取締役と執行役は会社法の機関です。執行役員は社内の役職名で、契約の形は会社が決めます。

執行役・取締役との違い(比較表)

取締役と執行役は会社法の条文で、執行役員は会社の規程で決まります。表の条番号は会社法のものです。通常の任期は、選任後その年数以内に終わる最後の事業年度の定時株主総会の終結(執行役はその後最初の取締役会の終結)までです。

項目取締役執行役執行役員
会社法の定めあり(役員の1つ)あり(会社法上の機関)なし(社内の役職名)
置く会社すべての株式会社(326条1項)指名委員会等設置会社だけ。置く義務あり(402条1項)会社が置くかを決める
選ぶ機関株主総会の決議(329条1項)取締役会の決議(402条2項)社内規程による
会社との関係委任(330条)委任(402条3項)雇用か委任かを会社が決める
任期332条で決まる(表の下の注)1年。定款で短縮でき、指名委員会等を置く定めの廃止で満了(402条7項・8項)社内規程による
登記氏名を登記(911条3項13号など)氏名を登記(911条3項23号ロ)登記しない
職務取締役会設置会社では、取締役会で業務執行を決め、職務執行を監督(362条2項)取締役会から委任された業務執行の決定と、業務の執行(418条)会社から任された業務の執行
423条1項の責任対象対象列挙に無い

雇用型と委任型で変わること

取締役と執行役には「委任に関する規定に従う」という定めがありますが(330条・402条3項)、執行役員には会社法の定めがありません。そのため、執行役員と雇用契約を結ぶか(雇用型)、委任契約を結ぶか(委任型)は会社が決めます。

労働保険・社会保険の対象になるかは、制度ごとの条文の言葉で判断します。どの制度も、肩書や契約書の名前だけでは決まらず、働き方の実態で判断されます。

制度対象になる人(条文)執行役員での見え方
労働基準法事業に使用され、賃金を支払われる労働者(9条)雇用型は労働者として扱う前提。委任型でも実態により労働者に当たりうる
雇用保険適用事業に雇用される労働者(雇用保険法4条1項。6条の適用除外あり)雇用型は被保険者の要件を見る。委任型は雇用される労働者に当たるかを実態で見る
健康保険・厚生年金保険適用事業所に使用される者と任意継続被保険者(健康保険法3条1項。適用除外あり)。厚生年金は使用される70歳未満の者(9条。12条の適用除外あり)条文は雇用契約を要件にしていない。委任型でも対象外とは限らない
所得税(就任時の一時金)退職手当等に当たるか(所得税基本通達30-2の2)所得税基本通達30-2の2の条件で判断(次の節)

役員の雇用保険・労災保険は役員は雇用保険に入れるか、健康保険・厚生年金保険は役員の社会保険で扱っています。

従業員から執行役員になるときの一時金

従業員が執行役員になるとき、それまでの勤続期間の分として一時金を払う会社があります。これが退職手当等(退職所得)になるかは、所得税基本通達30-2の2が示しています。前提は、後の退職金でその勤続期間を一切数えないことです。

使用人(職制上使用人としての地位のみを有する者に限る。)からいわゆる執行役員に就任した者に対しその就任前の勤続期間に係る退職手当等として一時に支払われる給与(当該給与が支払われた後に支払われる退職手当等の計算上当該給与の計算の基礎となった勤続期間を一切加味しない条件の下に支払われるものに限る。)のうち、例えば、次のいずれにも該当する執行役員制度の下で支払われるものは、退職手当等に該当する。

例として挙げられた制度は、次の2つの両方に当たるものです。

(1) 執行役員との契約は、委任契約又はこれに類するもの(雇用契約又はこれに類するものは含まない。)であり、かつ、執行役員退任後の使用人としての再雇用が保障されているものではないこと
(2) 執行役員に対する報酬、福利厚生、服務規律等は役員に準じたものであり、執行役員は、その任務に反する行為又は執行役員に関する規程に反する行為により使用者に生じた損害について賠償する責任を負うこと

例に当たらない制度でも、使用人の地位だけを持つ人の就任時に就任前の勤続期間の分として一時に払い、後の退職金でその期間を数えない給与は、勤務関係が大きく変わって従前の延長とみられない特別の事実関係があれば退職手当等に当たります(同通達の注)。

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法人税法の「役員」とは別に判断する

法人税法2条15号は、法人税法上の役員を次のように定めています。

法人の取締役、執行役、会計参与、監査役、理事、監事及び清算人並びにこれら以外の者で法人の経営に従事している者のうち政令で定めるものをいう。

執行役は列挙されていますが、執行役員は列挙されていません。ただし法人税法施行令7条1号は、法人の使用人(職制上使用人としての地位のみを有する者に限る)以外の者で、その法人の経営に従事しているものも役員とします。

同族会社では、職制上使用人としての地位のみを持つ使用人でも、持株の要件を満たし経営に従事していれば役員とされます(同条2号)。

そのため、執行役員が法人税法上の役員(いわゆるみなし役員)に当たるかは、肩書ではなく実態で決まります。この記事では個別の判定はしません。役員の給与の扱いは役員報酬の決め方、役員と使用人を兼ねる場合は使用人兼務役員とはで扱っています。

まとめ

  • 執行役員は会社が規程などで置く役職名で、会社法上の役員ではありません。
  • 執行役は指名委員会等設置会社だけの会社法上の機関で、取締役会が選任し、氏名を登記します。
  • 執行役員の契約が雇用か委任かは会社が決めます。各保険の対象かは、制度ごとの要件(年齢・適用除外を含む)と働き方の実態で判断します。
  • 従業員から執行役員になるときの一時金が退職手当等になるかは、所得税基本通達30-2の2の対象と条件で判断します。
  • 法人税法上の役員(みなし役員)に当たるかは、肩書ではなく実態で判断します。

よくある質問

執行役員は役員ですか?

会社法上の役員ではありません。会社法329条1項の役員は取締役・会計参与・監査役で、執行役員は会社が規程などで置く役職名です。法人税法上の役員(みなし役員)に当たるかは、実態で別に判断します。

執行役と執行役員は同じですか?

別物です。執行役は指名委員会等設置会社に置かれる会社法上の機関で、取締役会が選任し、氏名を登記します。執行役員は会社法に定めのない社内の役職名です。

執行役員は雇用保険に入りますか?

契約と実態によります。雇用保険の被保険者は「適用事業に雇用される労働者」(雇用保険法4条1項)なので、雇用型か、委任型でも実態が雇用される労働者に当たるかで分かれます。6条の適用除外に当たる人は被保険者になりません。

執行役員の任期は会社法で決まっていますか?

決まっていません。会社法は取締役(332条)や執行役(402条7項)の任期を定めていますが、執行役員の任期は会社の規程で決めます。

従業員から執行役員になるときの一時金は退職所得になりますか?

条件を満たせばなります。所得税基本通達30-2の2は、使用人としての地位だけを持つ人の就任時に、就任前の勤続期間に係る退職手当等として一時に払い、後の退職金でその期間を一切数えない給与を対象にしています。そのうち、委任契約で再雇用が保障されず、処遇が役員に準じ、任務や執行役員の規程に反する行為で会社に生じた損害の賠償責任を負う制度の下で払うものを、退職手当等の例としています。

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出典

会社法・法人税法・同法施行令・労働基準法・雇用保険法・健康保険法・厚生年金保険法の条文(e-Gov法令検索)と、国税庁の所得税基本通達で確認して作成。確認日:2026年10月14日。

本記事は一般的な情報提供を目的としたものです。個別の執行役員が労働者や法人税法上の役員に当たるかなどの判断は、税務署・年金事務所・労働基準監督署・税理士・社会保険労務士にご確認ください。

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