税金・経理・補助金ツールズ

労働三法とは — 労働基準法・労働組合法・労働関係調整法の違いと、会社の相談先

結論から言うと、労働三法は労働基準法・労働組合法・労働関係調整法の3つをまとめた呼び名です。法律の名前ではなく通称です。

3つは受け持つ相手が違います。労働基準法は会社と個々の労働者の労働条件の最低基準、労働組合法は会社と労働組合の関係、労働関係調整法は労使の争い(労働争議)を労働委員会が調整する手続を定めています。

労働組合が無い会社にも、労働組合法は関係します。組合に加入しようとした従業員を、そのことを理由に不利益に扱うことは禁じられているためです(労働組合法の節)。

この記事は、3つの法律の担当範囲と窓口を比べます。労働時間や有給休暇などの各論は個別の記事に譲り、個別の事案が違法かどうかの判断はしません。

3つの法律の比較表

会社(使用者)の側から見た整理です。各欄の根拠条文は、この下の各節に書きます。

項目労働基準法労働組合法労働関係調整法
決めている関係会社と個々の労働者会社と労働組合労使の当事者どうしの争い(労働争議)
主な中身労働時間・休日・賃金の払い方・解雇の予告・就業規則などの最低基準不当労働行為の禁止、労働協約あっせん・調停・仲裁、公益事業の争議行為の予告
主な窓口労働基準監督署労働委員会労働委員会(公益事業の争議行為の予告は大臣・知事にも)
法律番号昭和22年法律第49号昭和24年法律第174号昭和21年法律第25号
労働三法の受け持ち。労働基準法は会社と個々の労働者の最低基準。労働組合法は会社と労働組合の関係で、不当労働行為の救済は労働委員会。労働関係調整法は労働争議を労働委員会があっせん・調停・仲裁で調整する 会社(使用者) 個々の労働者 労働条件の最低基準 労働組合 団体交渉・労働協約 労働争議 労働関係の当事者間の主張不一致により、争議行為が発生・発生のおそれがある状態 労働基準法 労働組合法 労働関係調整法 窓口: 労働委員会 窓口: 労働委員会 (不当労働行為の救済) (あっせん・調停・仲裁) 民間の解雇紛争の相談・あっせんは労働局へ(船員・労働争議を除く)
図1 労働三法がそれぞれ受け持つ相手と窓口(労働基準法104条、労働組合法20条・27条、労働関係調整法、個別労働関係紛争の解決の促進に関する法律4条・5条から作成)

労働基準法 — 個々の労働者との労働条件の最低基準

労働基準法は、労働時間・休日・賃金の払い方・解雇の予告・就業規則など、会社が個々の労働者に守る労働条件の最低基準を定めています。1条2項は次のとおりです。

この法律で定める労働条件の基準は最低のものであるから、労働関係の当事者は、この基準を理由として労働条件を低下させてはならないことはもとより、その向上を図るように努めなければならない。

基準に達しない労働条件を定めた労働契約は、その部分が無効になり、労働基準法の基準に置き換わります(13条)。

対象の「労働者」は、職業の種類を問わず、事業に使用されて賃金を支払われる者です(9条)。この定義に、正社員・パート・アルバイトといった雇用形態の区別はありません。

適用されない主な例外は、同居の親族のみを使用する事業と家事使用人です(116条2項)。船員法1条1項の船員には、1〜11条・116条2項・117〜119条・121条を除いて適用されません(116条1項)。

最低賃金は最低賃金法(28条)、安全と衛生は労働安全衛生法(42条)に委ねています。どちらも労働三法には数えないのが普通ですが、労働基準法からつながる法律です。

窓口は労働基準監督署です。労働基準監督署などには労働基準監督官が置かれます(97条1項)。事業場に違反の事実があれば、労働者は行政官庁か労働基準監督官に申告できます(104条1項)。申告を理由に解雇などの不利益な取扱いをすることは禁止です(同条2項)。

会社の実務で使う各論は、次の記事で扱っています。

労働組合法 — 労働組合との関係のルール

労働組合法は、労働者が団結して使用者と対等に交渉することを助け、労働協約を結ぶための団体交渉とその手続を助成する法律です(1条1項)。

この法律の「労働者」は、職業の種類を問わず、賃金・給料その他これに準ずる収入によって生活する者です(3条)。労働基準法9条と違い、「事業に使用される」ことを定義に含みません。

会社がしてはならない行為(不当労働行為)は、7条1〜4号の4つです。

1号のただし書は、特定の工場事業場に雇用される労働者の過半数を代表する労働組合と、組合員であることを雇用の条件とする労働協約を結ぶことは妨げないとしています。

1号は、組合に加入しようとしたこと・結成しようとしたことも理由として挙げています。社内に労働組合が無い会社にも関係するのはこのためです。

不当労働行為の救済は、労働委員会への申立てで求めます。労働委員会は、行為の日(継続する行為はその終了した日)から1年を経過した事件の申立てを受けられません(27条2項)。

労働協約は、書面に作成し、両当事者が署名または記名押印して効力を生じます(14条)。協約に定める労働条件その他の労働者の待遇に関する基準に違反する労働契約の部分は無効になり、基準に置き換わります(16条)。

労働組合の定義、団体交渉の申入れへの対応、協約の有効期間、組合費の天引きは労働組合とはで詳しく扱っています。

労働関係調整法 — 労働争議を労働委員会が調整する手続

労働関係調整法は、労働組合法と相まって、労働争議を予防・解決するための手続を定める法律です(1条)。

労働争議は、労働関係の当事者の主張が一致せず、争議行為が発生しているか、発生するおそれがある状態をいいます(6条)。争議行為は、同盟罷業(ストライキ)・怠業・作業所閉鎖など、当事者が主張を通すために行う行為とこれに対抗する行為で、業務の正常な運営を阻害するものです(7条)。

争議行為が発生したときは、その当事者は直ちに労働委員会か都道府県知事に届け出なければなりません(9条)。

労働委員会による通常の調整は、あっせん・調停・仲裁の3種類です。別に、内閣総理大臣が決定する緊急調整があります(35条の2)。緊急調整の対象と決定要件は、同条を確認してください。

当事者どうしの合意や労働協約の定めで、別のあっせん・調停・仲裁の方法を選ぶこともできます(16条・28条・35条)。

項目あっせん調停仲裁
始まり方当事者の双方か一方の申請、または職権(12条1項)双方の申請など。開始要件は18条各号を参照双方の申請、又は労働委員会への仲裁申請を義務づける協約に基づく双方か一方の申請(30条)
行う人斡旋員(12条1項)使用者・労働者・公益を代表する調停委員の調停委員会(19条)3人以上の奇数の仲裁委員の仲裁委員会(31条)
結果斡旋員が双方の主張の要点を確かめ、解決に努める(13条)調停案を示して受諾を勧告する(26条1項)仲裁裁定は労働協約と同一の効力を持つ(34条)

運輸、郵便・信書便・電気通信、水道・電気・ガスの供給、医療・公衆衛生の事業で、公衆の日常生活に欠くことのできないものは公益事業です(8条1項)。内閣総理大臣は、業務の停廃が国民経済を著しく阻害するか公衆の日常生活を著しく危うくする事業を、国会の承認を経て、1年以内の期間を限って公益事業に追加指定できます(8条2項)。

公益事業の争議行為の予告は、労働関係調整法37条を確認してください。緊急調整時の公益事業の通知制限は、同条2項を参照してください。

困ったときの窓口 — 紛争の内容で確認

窓口は紛争の内容で確認します。個人の不当労働行為救済の対象と受理期間は、労働組合法5条1項・27条を確認してください。

場面窓口根拠
労働基準法の違反の疑い労働基準監督署労働基準法104条1項
民間の労働者との解雇紛争(船員・労働争議を除く)都道府県労働局(助言・指導、紛争調整委員会のあっせん)個別労働関係紛争の解決の促進に関する法律4条・5条
不当労働行為(雇用する労働者の代表者との団体交渉を正当な理由なく拒むことなど)労働委員会(救済の申立て)労働組合法27条
労働組合との労働争議労働委員会(あっせん・調停・仲裁)労働組合法20条、労働関係調整法

個別紛争の解決制度は、個別労働関係紛争の解決の促進に関する法律にも定められています。対象には、募集・採用をめぐる求職者と事業主の紛争も含みます(1条)。民間の労働者について、都道府県労働局長の助言・指導や紛争調整委員会のあっせんは、労働争議に当たる紛争を除きます。船員には窓口の特例があります(同法21条)。あっせんは、さらに募集・採用に関する紛争も除きます。

この節の労働局の説明は民間の労働者が対象で、船員を除きます。行政執行法人関係の除外と、公務員への適用は同法4条・22条を参照してください。

援助・あっせんの申請を理由とする不利益取扱いの禁止は、同法の対象と併せて確認してください(4条3項・5条2項、22条)。

都道府県などの地方公共団体も、個別労働関係紛争の相談・あっせんなどの施策に努めるとされています(同法20条1項)。

厚生労働省の総合労働相談コーナーは、労働者と事業主のどちらからの相談も受け付けています。予約不要・無料で、労働基準法などの違反の疑いがある場合は労働基準監督署などに取り次ぐと説明しています。

違反したときの罰則(主な例)

罰則は条ごとに違い、下の表は主な例です。刑罰の名前は現行の条文の表記です。労働関係調整法の罰則は表の下に書きます。

違反罰則(根拠)
労働基準法32条(労働時間)・37条(割増賃金)など6月以下の拘禁刑又は30万円以下の罰金(労働基準法119条1号)
労働基準法15条1項(労働条件の明示)・89条(就業規則の作成・届出)など30万円以下の罰金(労働基準法120条1号)
確定判決で支持された救済命令等への違反1年以下の拘禁刑若しくは100万円以下の罰金、または併科(労働組合法28条)

確定判決を経ずに確定した救済命令等への違反は、28条の刑罰ではなく、労働組合法32条の過料の対象です。

事業主にも罰金刑が科される場合があります。対象と防止措置による例外は、労働基準法121条1項で確認できます。事業主が違反の計画や違反を知りながら防止・是正の措置を講じなかった場合などは、事業主も行為者として罰せられます(同条2項)。

公益事業の争議行為の予告義務に違反した場合の罰則は、労働関係調整法39条を確認してください。

緊急調整に伴う争議行為の禁止に違反した場合の罰則は、労働関係調整法40条を確認してください。

労働三法と労働三権の違い

労働三権は法律ではなく、憲法28条が保障する団結権・団体交渉権・団体行動権のことです。

勤労者の団結する権利及び団体交渉その他の団体行動をする権利は、これを保障する。

労働組合法と労働関係調整法は、この団結や団体交渉・争議にかかわる手続を定めています。労働基準法は、賃金や就業時間などの勤労条件の基準を法律で定めるとした憲法27条2項につながる法律です。

残業代の計算機で、時間外・休日・深夜の割増賃金を確かめる
まとめ

よくある質問

労働三法と労働三権の違いは何ですか?

労働三権は、憲法28条が保障する団結権・団体交渉権・団体行動権という権利です。労働三法は、労働基準法・労働組合法・労働関係調整法の3つの法律の通称です。団結や団体交渉・争議の手続を定めているのは、このうち労働組合法と労働関係調整法です。

パートやアルバイトにも労働基準法は適用されますか?

労働基準法9条の「労働者」は、職業の種類を問わず、事業に使用されて賃金を支払われる者で、雇用形態の区別はありません。適用されない主な例外は、同居の親族のみを使用する事業と家事使用人(116条2項)です。

労働組合が無い会社でも、労働組合法は関係しますか?

関係します。労働組合法7条1号は、労働組合に加入しようとしたことや結成しようとしたことを理由とする解雇などの不利益取扱いを禁じています。従業員が社外の労働組合に加入して団体交渉を申し込まれた場合の考え方は、労働組合とはの記事に書きました。

従業員個人との解雇のトラブルは、労働関係調整法のあっせんの対象ですか?

個別紛争の解決制度が対象になります。ここでは民間の従業員と会社の解雇紛争に限り、船員は除きます。助言・指導やあっせんの対象と除外は、窓口の節で確認してください。ただし、労働組合がその解雇を取り上げ、争議行為が発生しているか発生するおそれがある状態なら、労働関係調整法6条の労働争議に当たります。その場合は労働委員会のあっせんなどの対象で、労働局の助言・指導・あっせんからは外れます。

最低賃金法や労働安全衛生法は労働三法に入りますか?

入りません。労働三法は、労働基準法・労働組合法・労働関係調整法の3つの通称です。労働基準法は、最低賃金を最低賃金法(28条)に、安全衛生を労働安全衛生法(42条)に委ねています。

次に読む

出典

e-Gov法令検索の条文と、厚生労働省のページを読んで確認。

この記事は一般的な情報提供であり、個別の事案に対する助言ではありません。ある取扱いが労働基準法違反や不当労働行為に当たるかは、事案ごとに判断されます。具体的な対応は、社会保険労務士・弁護士にご相談ください。

この内容をXで共有