確定申告書の書き方・見方|各表の役割と転記元
所得税の確定申告書は、第一表で所得と税額を集計し、第二表でその内訳を示します。分離課税や損失の申告では、専用の表も使います。書き始める前に「元資料の数字を、どの明細と集計欄へ移すか」を揃えると、収入と所得の取り違えを防げます。
ここでは個人の所得税・復興特別所得税の様式を扱います。法人税申告書は別の書類です。提出までの流れは確定申告のやり方、添付・提示する資料は必要書類の一覧で確認できます。
各表の役割を早見表で確認する
まず、金額を集計する表と、計算の根拠を示す表を分けます。第二表は、第一表に書ききれなかった分だけを書く予備の紙ではありません。
以下は、国税庁の令和7年分の公式手引きによる所得税申告の各表の役割です。第三表・第四表は、該当する場合に第一表・第二表と併せて使用します。
| 表 | 役割 | 確認する場面 |
|---|---|---|
| 第一表 | 収入・所得・所得控除・税額・納付額や還付額を集計 | 申告全体の金額が、明細や元資料と合うか確認する |
| 第二表 | 所得や保険料等の内訳、親族、住民税・事業税の事項を記載 | 集計額の根拠や、本人・親族の情報を確認する |
| 第三表(分離課税用) | 申告分離課税の所得と税額を計算 | 申告分離課税の所得がある場合。土地・建物や株式等の譲渡など |
| 第四表(損失申告用) | 損失申告の計算と内容を整理 | 所得金額が赤字、または雑損控除額・繰越損失額を控除すると赤字になる場合 |
赤字を他の所得から差し引けるかは、所得の種類や特例で変わります。赤字があるという理由だけで、全額を第一表から差し引かないでください。
用紙は申告する年分を選ぶ
用紙と手引きは、所得が生じた年分を揃えて選びます。申告書上部の年分、源泉徴収票の年分、使う手引きの年分を照合してください。提出する年だけを見て用紙を選ぶと、過去年分の申告で取り違えます。
国税庁は令和8年分の確定申告書案を公表しており、案の使用は令和9年1月以降で、今後変更される場合があります。
この案の掲載対象は、前年から変更のあった主な様式です。案の注意書きでは、令和8年分から申告書の控用の複写式が廃止されるとされています。全様式の確定版が揃ったという意味ではありません。
以下の欄名と転記例は、令和7年分の様式・手引きを使って説明します。旧年の欄番号を当年用として示さず、欄名で対応を確認します。
第一表は、所得から税額までの集計表
第一表で最初に分けたいのは、収入・所得・所得控除・税額です。同じ資料に載る数字でも、入る場所が違います。
| 欄のまとまり | 何を書くか | 混同しやすいもの |
|---|---|---|
| 住所・氏名等 | 申告者の氏名、納税地、個人番号、職業等 | 申告する年分と、提出日の年の混同 |
| 収入金額等 | 給与・事業等の種類ごとの収入金額 | 給与の手取りや、経費を引いた後の額 |
| 所得金額等 | 所得の種類に応じた計算後の金額 | 売上を、そのまま所得とする誤り |
| 所得から差し引かれる金額 | 社会保険料・生命保険料・扶養等の所得控除額 | 支払った保険料等が、そのまま控除額になるとは限らない |
| 税金の計算 | 税率・税額控除・源泉徴収税額・予定納税額等による精算 | 源泉徴収税額を必要経費や所得控除として引く誤り |
| その他 | 専従者給与等、青色申告特別控除、繰越損失額等の該当事項 | 所得の計算で反映済みの額を、もう一度差し引く誤り |
| 延納の届出・還付される税金の受取場所 | 延納の該当事項と、公金受取口座を使わない場合の還付金の受取先 | 納付額の表示だけで、納付手続も終わったと思うこと |
所得控除は税率を当てる前の所得から、税額控除は計算された税額から差し引くものです。源泉徴収税額と予定納税額は、税額の精算に使います。控除という語だけで同じ欄へまとめないようにします。
第三表を使う申告では、第一表の税金の計算欄に第三表の計算結果が関係します。第一表の収入欄だけで所得が全部揃うとは考えず、専用表と明細を含めて確認してください。
第二表は、金額の内訳と家族情報を確認する
第二表では、第一表の合計だけでは分からない内容を示します。勤務先等の支払者、保険料の区分、親族の情報を、元資料に戻って確かめる場所です。
| 欄 | 元資料・確認内容 |
|---|---|
| 所得の内訳 | 申告する所得の支払者名・所在地等、収入金額、所得税等の源泉徴収税額 |
| 保険料等 | 社会保険料や各保険の支払額、年末調整等以外の額 |
| 本人に関する事項 | 寡婦・ひとり親・勤労学生・障害者等の該当事項 |
| 雑損・寄附金等 | 損害や補塡額、寄附先・寄附金額等。該当する控除の資料と照合 |
| 総合課税の譲渡所得・一時所得 | 対象となる所得の収入、必要経費等、差引金額 |
| 配偶者や親族・事業専従者 | 氏名、個人番号、続柄、生年月日、該当区分等 |
| 住民税・事業税に関する事項 | 所得税の控除欄とは別に求められる、親族・寄附・事業等の該当事項 |
保険料の支払額と、所得控除として差し引く額は分けて確認します。第二表の支払額をそのまま第一表の控除額へ写すと、控除の上限や計算がある区分で誤ります。
親族の欄も、会社へ出した申告書を無条件に写す欄ではありません。該当する控除の要件と、その年分の所得等を確認します。判定の詳しい説明は所得控除の一覧へ、必要な証明書類は確定申告の必要書類へ進んでください。
第二表を記載することと、証明書等を提出・提示することも別の作業です。内訳を埋めただけで書類の準備まで終わったとは扱いません。
元資料と転記先の対応表
元資料から移すときは、金額の名称まで照合します。特に、収入と所得、支払額と控除額、源泉徴収税額と予定納税額を区別してください。
次の対応表は、個人の所得税について令和7年分の公式手引きの欄名で整理したものです。控除の可否や申告に含める所得は、先に確認している前提です。
| 元資料・項目 | 行き先 | 転記時の確認 |
|---|---|---|
| 給与所得の源泉徴収票:支払金額 | 第一表・収入金額等の給与/第二表・所得の内訳 | 手取り額ではなく支払金額。支払者別の内訳を確認 |
| 給与の所得計算 | 第一表・所得金額等の給与 | 税込収入の合計から計算。複数票の控除後額を単純合算しない |
| 事業所得の決算書・内訳書:収入金額 | 第一表・収入金額等の事業 | 青色申告は青色申告決算書、白色申告は収支内訳書から対応させる |
| 事業所得の決算書・内訳書:所得金額 | 第一表・所得金額等の事業 | 収入金額とは別。該当する控除・調整を反映した所得か確認 |
| 所得控除として申告する保険料・寄附等:支払額・内訳 | 第二表の該当事項/第一表の計算後の所得控除額 | 支払額と控除額を区別し、年末調整済みの分を重ねない |
| 申告する所得の源泉徴収税額 | 第二表・所得の内訳/第一表・源泉徴収税額 | 源泉分離課税や申告しない配当等の税額は控除しない |
| 予定納税額の通知:予定納税額の合計 | 第一表・予定納税額 | 実際の払込額や予定納税基準額ではない。減額承認があれば承認後の額 |
給与所得は、該当する所得金額調整控除や特定支出控除も確認します。源泉徴収税額には、申告分離課税で申告する株式等の所得に対応する税額も含めます。
第二表の所得の内訳に書ききれないときは、公式手引きの転記例に沿って、所得の内訳書を使えます。欄が足りない支払者分を省略しないようにします。
予定納税額は、未納分も含めた通知額を記入し、減額承認を受けた場合は承認後の額を使います。これは申告書に転記する額の話で、未納分が消えるという意味ではありません。通知を確認する方法は予定納税の解説で扱っています。
収入と所得を分ける転記例
決算書・内訳書からは、売上だけでなく、計算後の所得も別に移します。収入欄と所得欄へ同じ売上を入れる誤りを、単純な例で確認します。
令和7年分・白色申告の営業等の事業所得を使う架空の設例です。総収入と必要経費は下表の仮定額で、棚卸・減価償却・家事分の除外は反映済みとします。専従者控除、家内労働者等の必要経費特例、その他の調整・他の所得・損失はありません。
| 数字 | この設例の金額 | 申告書との対応 |
|---|---|---|
| 総収入金額 | 120万円 | 第一表・収入金額等の事業(営業等) |
| 必要経費 | 40万円 | 収支内訳書で所得を計算するために使用 |
| 総収入から必要経費を引いた所得 | 80万円 | 第一表・所得金額等の事業(営業等) |
この所得から、該当する所得控除や税額の計算へ進みます。表の所得は課税所得でも納付税額でもなく、還付される金額を示すものでもありません。
青色申告の転記では、青色申告特別控除を反映した所得と、別途記載する控除額の欄を区別します。計算済みの控除を、申告書で再び差し引かないように、青色申告特別控除の説明と決算書を照合してください。
完成した申告書を確認する順番
確認は、合計額だけを見るよりも、元資料からたどるほうが漏れを見つけやすくなります。次の順番は作業上の一例で、用紙の記入順を義務づけるものではありません。
- 年分と本人情報を確認する。源泉徴収票、決算書、控除の資料が同じ年分かを揃えます。
- 元資料と明細を照合する。支払者別の収入・源泉徴収、保険料、寄附、親族の情報を確認します。
- 所得と控除を確認する。収入を所得へそのまま写していないか、控除額の計算が済んでいるかを見ます。
- 税額の精算を確認する。申告する所得に対応する源泉徴収税額と、予定納税額(減額承認があれば承認後)が反映されているかを見ます。
- 該当する専用表・住民税等の事項を確認する。分離課税や損失の計算、第二表の下部も見落とさないようにします。
作成コーナーや会計ソフトを使う場合も、出力された申告書と元資料の対応を確認します。入力する金額の意味が違えば、自動計算されても、意図した内容にはなりません。
第一表は集計、第二表は内訳。元資料の収入・所得・支払額・税額を区別して対応させ、専用表がある申告はその計算も含めて確認します。
提出方法、期限、送信後の受付・納付確認は確定申告のやり方へ、提出後の訂正は修正申告と更正の請求へ進んでください。
よくある質問
第一表と第二表は、どちらから書けばよいですか?
元資料と内訳を先に揃え、集計先の第一表と照合すると確認しやすくなります。事業がある場合は決算書・収支内訳書の計算を先に行います。これは作業順の例で、第二表から書くことを義務づけるものではありません。
第二表の所得の内訳に、勤務先をまとめて書けますか?
給与や公的年金等の源泉徴収票は、票ごとの支払金額と源泉徴収税額を整理します。所得の内訳書を添付するときは、第二表に所得の種類ごとの源泉徴収税額の合計を記入します。
予定納税額は、銀行から引き落とされた額を書きますか?
通知された予定納税額の合計を書きます。実際に納めていない場合も通知額を使い、減額承認を受けた場合は承認後の額を記入します。予定納税基準額と取り違えないようにします。
第一表の所得は、売上や給与の手取りと同じですか?
同じではありません。事業所得は決算書等で必要経費や該当する調整を反映した額、給与所得はその年分の給与所得の計算による額です。収入金額等と所得金額等の欄を分けて確認します。
関連記事・ツール
申告書の作成・提出は国税庁の案内で行います。計算機の対象範囲も確認してください。
出典
- 国税庁「確定申告書等の様式・手引き等」令和7年分:用紙の入手先と各様式。
- 国税庁「令和7年分所得税及び復興特別所得税の手引き」:各表の役割、転記例、事業・給与の所得計算、源泉徴収・予定納税の記入。
- 国税庁「令和8年分の所得税等の確定申告書(案)」:案の位置づけと使用可能時期。
- 国税庁「所得税(確定申告書等作成コーナー)」:所得税申告の公式案内。
本記事は一般的な情報提供を目的としたものです。個別の判断は税務署・税理士にご確認ください。個別の税務・労務相談には応じられません。